厚生年金保険料とは?計算方法や納付方法を企業向けに解説
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本記事では、厚生年金保険料について調べている給与計算担当者を対象に、厚生年金保険料の基本的知識に加え、標準報酬月額や標準賞与額の計算方法をステップごとに解説し、具体的な支払期限や納付方法も紹介します。
よくある質問に答える形で「厚生年金保険料がどのように使われるのか」「納付しないとどうなるのか」など、重要なポイントも解説します。厚生年金保険料に関する知識を深め、正確な給与計算業務にぜひお役立てください。
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厚生年金保険料とは
厚生年金保険料とは、会社員や公務員が対象の公的年金制度「厚生年金」の加入者が支払う保険料のことです。厚生年金は、すべての日本国民が加入する「国民年金」のうえに成り立つ2階部分に該当します。厚生年金保険料には国民年金(第2号被保険者)の保険料が含まれています。
厚生年金保険料は、労使折半(企業と従業員がそれぞれ半分ずつ)の形で支払います。保険料の額は収入所得に応じて変動し、将来受け取る年金額も納めた保険料に応じて変わります。このしくみによって、所得の高い人ほど高い保険料を支払うことになりますが、その分将来受け取る年金額も増えます。
さらに企業は、厚生年金保険料と共に、「子ども・子育て拠出金」も負担する必要があります。かつては児童手当拠出金と呼ばれていたもので、少子化対策として子育て支援や児童手当のための原資となっています。労使折半ではなくすべて会社負担であり、現在の拠出金率は0.36%(2024年(令和6年)4月から)です。
厚生年金保険料は従業員の現在の収入所得に基づいて計算され、将来の生活を支える重要な制度のための資金です。企業と従業員がそれぞれの役割を果たすことで、持続可能な年金制度が維持されます。
厚生年金保険料のしくみ
以下の表で、2024年度の標準報酬月額に基づく厚生年金保険料額を確認できます。
厚生年金保険料額表(2024年度(令和6年度)版)
(単位:円)
標準報酬 | 報酬月額 | 一般・坑内員・船員 (厚生年金基金加入員を除く) |
||
---|---|---|---|---|
全額 | 折半額 | |||
等級 | 月額 | 18.300% | 9.150% | |
1 | 88,000 | 円以上 円未満 ~ 93,000 |
16,104.00 | 8,052.00 |
2 | 98,000 | 93,000 〜 101,000 | 17,934.00 | 8,967.00 |
3 | 104,000 | 101,000 ~ 107,000 | 19,032.00 | 9,516.00 |
4 | 110,000 | 107,000 ~ 114,000 | 20,130.0 | 10,065.00 |
5 | 118,000 | 114,000 ~ 122,000 | 21,594.00 | 10,797.00 |
6 | 126,000 | 122,000 ~ 130,000 | 23,058.00 | 11,529.00 |
7 | 134,000 | 130,000〜138,000 | 24,522.00 | 12,261.00 |
8 | 142,000 | 138,000 ~ 146,000 | 25,986.00 | 12,993.00 |
9 | 150,000 | 146,000 ~ 155,000 | 27,450.00 | 13,725.00 |
10 | 160,000 | 155,000 ~ 165,000 | 29,280.00 | 14,640.00 |
11 | 170,000 | 165,000 ~ 175,000 | 31,110.00 | 15,555.00 |
12 | 180,000 | 175,000 ~ 185,000 | 32,940.00 | 16,470.00 |
13 | 190,000 | 185,000 ~ 195,000 | 34,770.00 | 17,385.00 |
14 | 200,000 | 195,000 ~ 210,000 | 36,600.00 | 18,300.00 |
15 | 220,000 | 210,000 ~ 230,000 | 40,260.00 | 20,130.00 |
16 | 240,000 | 230,000 ~ 250,000 | 43,920.00 | 21,960.00 |
17 | 260,000 | 250,000 ~ 270,000 | 47,580.00 | 23,790.00 |
18 | 280,000 | 270,000 ~ 290,000 | 51,240.00 | 25,620.00 |
19 | 300,000 | 290,000 ~ 310,000 | 54,900.00 | 27,450.00 |
20 | 320,000 | 310,000 ~ 330,000 | 58,560.00 | 29,280.00 |
21 | 340,000 | 330,000 ~ 350,000 | 62,220.00 | 31,110.00 |
22 | 360,000 | 350,000 ~ 370,000 | 65,880.00 | 32,940.00 |
23 | 380,000 | 370,000 ~ 395,000 | 69,540.00 | 34,770.00 |
24 | 410,000 | 395,000 ~ 425,000 | 75,030.00 | 37,515.00 |
25 | 440,000 | 425,000 ~ 455,000 | 80,520.00 | 40,260.00 |
26 | 470,000 | 455,000 ~ 485,000 | 86,010.00 | 43,005.00 |
27 | 500,000 | 485,000 ~ 515,000 | 91,500.00 | 45,750.00 |
28 | 530,000 | 515,000 ~ 545,000 | 96,990.00 | 48,495.00 |
29 | 560,000 | 545,000 ~ 575,000 | 102,480.00 | 51,240.00 |
30 | 590,000 | 575,000 ~ 605,000 | 107,970.00 | 53,985.00 |
31 | 620,000 | 605,000 ~ 635,000 | 113,460.00 | 56,730.00 |
32 | 650,000 | 635,000 ~ | 118,950.00 | 59,475.00 |
参照:日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)」
厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率18.3%を乗じて算出されます。報酬月額は、3か月間の給与の平均額から決定され、その額に応じて保険料が設定されるしくみです。入社時には、最初の給与から標準報酬月額が決定されます。通常の定時改定は年1回行われますが、給与に大幅な変更(固定給の変動等)があった場合には臨時改定が行われることもあります。実際の保険料の負担は、上述したとおり、会社と従業員が半分ずつ負担するため、従業員の負担額は算出された額の半分になります。
標準報酬月額は、次のような方法で決定または見直しが行われます。まず、新たに加入する際には、加入時の給与を基に標準報酬月額が決まります。毎年1回の「定時決定」では、4月から6月までの3か月間の給与の平均額を基に標準報酬月額を見直します。また、昇給や降給などで給与が大幅に変動した場合は、4か月目から標準報酬月額が改定される「随時改定」が適用されます。さらに、育児休業が終了した場合には、復職後の翌月から標準報酬月額が改定されるしくみです。
特定のケースにおいては、保険者(政府や健康保険組合)が標準報酬月額を決定することもあります。
なお、標準報酬月額には上限が設けられており、月給が100万円であっても65万円を上限として保険料や年金額が計算されます。
資格取得時の決定
変更がない場合には資格取得月からその年の8月(または翌年の8月)まで適用され、その間の保険料の基準となります。
例えば、4月に資格を取得した場合、その年の8月までは、決定された標準報酬月額が適用されるしくみです。変更がない場合には9月から翌年8月までの各月に適用され、厚生年金保険料の計算基準となります。月々の給与の変動に左右されることなく、安定した保険料負担が実現されています。
定時決定には、従業員も企業も計画的な資金管理がしやすくなるというメリットがあります。標準報酬月額表で2等級以上変動した場合、その変動後の3か月間の平均報酬額を基に新たな標準報酬月額を決定します。例えば、昇給や降給により報酬が変わり、その平均額が以前の標準報酬月額と比べて大きく異なる場合、4か月目から新たな標準報酬月額が適用されます。随時改定は通常、固定的賃金に変更があった場合に適用され、変動賃金(例えば残業手当や賞与など)には影響を与えません。また、改定後の標準報酬月額は次回の定時改定まで維持されることが一般的です。
随時改定により、従業員の実際の報酬額に応じた適切な保険料が算出されるため、公平な負担が実現されます。企業としても、従業員の報酬変動に対して適切に対応することで、正確な保険料を納付できるようになります。
育児休業等終了時の改定
育児休業が終了したタイミングで被保険者の事業主が届出を行いますが、これには本人からの申出が必要です。届出が行われると、育児休業等終了日の翌日が含まれる月から3か月間の報酬の平均額に基づいて、新たな標準報酬月額が設定されます。新しい標準報酬月額は、育児休業などが終了した翌月から適用され、厚生年金保険料の計算基準となります。
具体的には、育児休業などが終了した際に、被保険者の報酬に大きな変動がある場合、変動後の3か月間の平均報酬額を基に標準報酬月額が見直されます。例えば、育児休業から復帰した際に勤務時間が変更されて、報酬が変わる場合、この平均額を基に新たな標準報酬月額が設定されます。
本改定により、育児休業後の新たな労働条件に応じた保険料が算出され、公平かつ正確な保険料負担が実現します。企業としても従業員の育児休業終了後の給与変動に対応した適切な保険料を徴収できます。
保険者決定
保険者決定とは、厚生労働大臣が被保険者の報酬月額を算定し、標準報酬月額を決定または改定する手続きです。
例えば、定時決定の際に、通常の算定方法で適切な報酬月額が算出できない場合、この保険者決定が用いられます。
このような手続きにより、被保険者は適切な保険料を支払い、将来公平な年金額を受け取ることが可能となります。
標準賞与額の計算方法
標準賞与額は、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた金額です。例えば賞与の支給額が149万9,999円であれば、標準賞与額は149万9,000円となります。その一方で、賞与の支給額が150万円を超える場合は、標準賞与額の上限が1回の支給につき150万円に設定されているため、支給額が150万円以上であっても、150万円として厚生年金保険料が計算されます。
厚生年金保険における標準賞与額に該当する賞与は、賃金や給料、俸給、賞与などの名称にかかわらず、労働の対価として年3回以下で支給されるものが対象です。さらに、現物給付も標準賞与額に含まれますが、これは福利厚生目的で支給される物品(例えば、社員割引や福利厚生の一環として支給される商品など)とは異なり、労働の対価として支給されるものである必要があります。したがって、福利厚生目的で支給される物品やサービスは、標準賞与額には含まれません。
厚生年金保険料の支払期限
厚生年金保険料は日本年金機構が徴収し、事業主は従業員負担分と事業主負担分を翌月末までに納付する義務があります。従業員の保険料は、当月の給与から前月の標準報酬月額に基づいて控除されます。賞与からも、標準賞与額に基づいて控除されます。
例えば、5月分の厚生年金保険料は6月末が納付期限であり、控除額は6月の給料日に差し引かれます。これを繰り返すことで、保険料は月次で計算され、翌月末までに納付するというサイクルが維持されます。
正確な納付を行うために、給与計算ソフトの活用や専門家の助言を受けることも有効です。
厚生年金保険料の納付方法
厚生年金保険料には、3つの納付方法があります。
- 口座振替
- 金融機関の窓口
- 電子納付(Pay-easy)
口座振替で納付する
厚生年金保険料は口座振替で納付することが可能です。口座振替を利用するためには、事業主が「保険料口座振替納付(変更)申出書」に記入し、押印する必要があります。申出書には、会社名義の口座情報などを記載します。金融機関の窓口で確認印を受けた後、管轄の年金事務所に持参するか、郵送することで手続きが完了します。
通常、会社が口座振替を行う際は会社名義の口座を使用しますが、金融機関との相談によって、代表者名義の口座から振替を行うことも可能な場合があります。口座振替の手続きを行うことで、毎月の納付が自動化され、手間を省けるという利点があります。
実際、多くの企業がこの方法を採用しており、約9割以上が口座振替で納付しています。口座振替を利用すれば、納付の忘れや遅延を防ぎ、効率的に保険料を納付できます。
金融機関の窓口で納付する
金融機関の窓口での納付も可能です。この場合、納付書を使用して現金で支払うことが一般的です。納付書を持参し、銀行や信用金庫などの金融機関の窓口で手続きを行います。
納付期限は、納付対象月の翌月末日までです。例えば、5月分の保険料は6月末までに納付する必要があります。納付書には期限が設定されているため、早めの納付を心がけることが大切です。なお、納付期限を過ぎた場合は新たに納付書を発行してもらうことも可能ですが、期限を守ることが重要です。
金融機関の窓口で納付するメリットは、納付完了後に領収証書を受け取れる点です。この領収証書が納付の証明として利用できます。
電子納付(Pay-easy)で納付する
電子納付(Pay-easy)を利用して納付することも可能です。この方法では、インターネットバンキングやテレフォンバンキングを通じて簡便に納付手続きを行えます。ただし、電子納付を利用するためには、事前に金融機関と契約を結ぶ必要があります。
具体的な納付手続きとしては、保険料納入告知書に記載されている「収納期間番号」「16桁の納付番号」「6桁の確認番号」を使用します。
ただし、電子納付はインターネット上で完結するため領収証書が発行されません。領収証書が必要な場合は、金融機関の窓口での納付をお勧めします。
参照:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」
厚生年金保険料に関するよくある質問
厚生年金保険料について、疑問に思われる点についてお答えします。
厚生年金保険料は何に使われているのか?
厚生年金保険に加入すると、退職後に老後の年金(老齢厚生年金)を受け取れます。老齢厚生年金は、受給者が定年退職した後、一定の年齢(通常は65歳)に達し、受給要件(10年以上加入)を満たした場合支給される年金であり、受給資格や年金額は、加入期間や支払った保険料に基づいて計算されます。これは厚生年金保険料の主な用途ですが、他にも重要な役割があります。
厚生年金は、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の3種類に分かれています。各年金にはそれぞれ要件や制度が異なります。老齢厚生年金は、主に老後の生活を支えるための年金で、障害厚生年金は、けがや病気で障害等級に該当する障害が残った場合に支給されます。遺族厚生年金は、受給者が亡くなった際にその配偶者や子供などの遺族に支給される年金です。
そのため、厚生年金は老後の生活支援だけでなく、働けなくなったり、収入を得ることが難しくなったりした場合や、家族の生活を支える人が亡くなった場合の支援としても重要な役割を果たします。例えば、事故や病気で障害が残った場合には障害年金が支給され、また、家族の収入を支える人が亡くなった際には遺族年金が支給されることで、遺族の生活を支えます。
このように、厚生年金保険料は、労働者とその家族の生活を幅広く支えるために活用されています。加入することで、予期せぬ事態にも対応できる安心感を得られ、社会全体の安定にも貢献する制度です。
厚生年金保険料を払わないとどうなる?
厚生年金保険料を納付せずに期限を過ぎると、日本年金機構から督促状が送付されます。さらに、指定の期限までに支払いがない場合、延滞金が発生する可能性があり、未納の保険料に加算されることで負担額が増えてしまいます。
納付が難しい場合は、早めに最寄りの年金事務所に相談することが大切です。納付猶予や分割納付の制度を利用することで、負担を軽減できる場合もあります。未納を放置していると、最終的には差し押さえなどの強制徴収が行われることもあるため、早めの対応が必要です。
厚生年金保険料を正しく計算するために給与計算ソフトを活用しよう
厚生年金保険料は、会社員や公務員が将来の老齢年金や、けがや病気による障害年金、遺族年金を受けるための重要な制度です。企業にはしくみや計算方法、納付方法について理解し、正確に対応することが不可欠です。標準報酬月額や賞与額を基にした保険料の計算、支払期限の管理、さらには適切な納付手続きを行うことで、従業員の安心と企業の信頼を維持することが可能です。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
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