夜勤手当とは?深夜手当(深夜割増賃金)との違いや計算方法を解説

2024/03/01更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

夜勤が発生する職場等では、従業員に夜勤手当が支払われることがあります。一方、労働基準法では、深夜労働に対して深夜手当(深夜割増賃金)を支払うよう、使用者に義務付けています。夜勤手当と深夜手当に、違いはあるのでしょうか。また、従業員が深夜労働をした場合に支払う割増賃金は、どのように計算すれば良いのでしょうか。

ここでは、夜勤手当と深夜手当の意味の違いや、法律で定められた深夜手当のルール、計算方法などについて解説します。

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夜勤手当は給与規程によるもの

夜勤手当は、企業が任意で設けている、夜間に働く従業員に支給する手当のことです。例えば、看護師や介護職、建設業などで、任意で設定した夜勤手当を支給しているケースは少なくありません。夜勤手当の金額や、対象となる時間帯に法律上の規定はなく、支給額は各企業の給与規程によって定められています。そのため、夜勤1回あたりの支給額が設定されている場合もあれば、一定の時間以降の勤務を夜勤と定め、1時間あたりの支給額を設定している場合もあります。

一方で、深夜手当は、労働基準法によって企業に義務付けられているものです。従業員に深夜労働をさせたとき、企業は所定の割増賃金を支払わなければなりません。この深夜手当を支払わないと、労働基準法違反になります。深夜手当は、企業が自由に支給ルールを決められる夜勤手当とは違い、対象となる時間や計算方法が法律によって定められています。

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深夜手当のルール

労働基準法によって、深夜手当にはいくつかのルールが定められています。法令違反にならないように、深夜手当のルールをしっかり確認しておきましょう。

対象時間は夜22:00~翌朝5:00

労働基準法では、22時~翌5時を深夜労働時間として扱います。この時間の勤務は深夜労働になり、企業は従業員に深夜手当を支払わなければなりません。

業種によっては、深夜の勤務が不可欠な場合もあるでしょう。しかし、深夜労働は生活リズムが不規則になり、労災(労働災害)につながりやすいことから、従業員の業務負荷が高くなります。そのため、労働基準法では、深夜労働をした従業員に対して、割増賃金の支給を義務付けているのです。

基本給の25%以上の割増

深夜手当の割増率は、基礎賃金の25%以上と決まっています。25%を下回ることは認められません。なお、「深夜手当」という呼び方をしていなくても、夜勤手当として、規定の時間(22時~翌5時)の労働に対して25%以上の賃金を支給していれば問題はありません。

反対に、「深夜手当」などと呼んでいても、支給する金額が基礎賃金の25%を下回る場合は、労働基準法違反になります。

深夜手当の計算方法

前述のとおり、深夜手当の割増率は基礎賃金の25%以上です。この基礎賃金とは、通常の労働をした場合の1時間あたりの賃金を指します。

ここからは、時給制・日給制・月給制のそれぞれのケースに分けて、深夜手当の具体的な計算方法について見ていきましょう。なお、これらの計算式で求められるのは、通常の賃金に追加で支払う「深夜手当のみ」の金額です。

時給制の従業員の深夜手当

時給制の場合は、通常の時給の金額をベースに深夜手当を計算します。計算式は下記のとおりです。

時給制の従業員の深夜手当の計算式

深夜手当=1時間あたりの賃金×割増率(0.25)×深夜労働時間

日給制の従業員の深夜手当

日給制の場合は、まず、日給の金額を1日の労働時間(所定労働時間)で割って、1時間あたりの賃金を求めます。例えば、所定労働時間が8時間の場合は、「日給÷8時間」が1時間あたりの賃金ということになります。1時間あたりの賃金を求めたら、あとは時給の場合と同様に深夜手当を計算しましょう。計算式にすると、下記のとおりです。

日給制の従業員の深夜手当の計算式

深夜手当=1時間あたりの賃金(日給÷所定労働時間)×割増率(0.25)×深夜労働時間

月の給与が固定的に支給される月給制の従業員の深夜手当

月給制の場合は、その月に支給される支給額(所定内給与)を1か月の所定労働時間数で割って、1時間あたりの賃金を算出します。ただし、1か月の所定労働時間数は常に同じとは限りません。祝日などの関係で、労働日数が月によって変動することもあるでしょう。そのため、平均所定労働時間数を求め、1年を通して同じ支給額(所定内給与)で割増賃金を計算できるようにします。このような計算過程は、すべて給与規程に定めます。

平均所定労働時間数を求めるには、まず年間日数(365日)から年間休日数を引き、その数に1日の所定労働時間を掛けます。この処理により1年間の労働時間数を算出することができ、その時間数を12か月で割ることで、1か月の平均所定労働時間数が算出できます。計算式にすると、下記のとおりです。

平均所定労働時間の計算式

平均所定労働時間=(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12か月

平均所定労働時間が算出できたら、それをもとに1時間あたりの賃金を求め、あとは時給制や日給制の場合と同様に割増賃金を計算します。

月給制従業員の深夜手当の計算式

深夜手当=1時間あたりの賃金(月給÷平均所定労働時間)×割増率(0.25)×深夜労働時間

事業主が注意すべき深夜手当のポイント

深夜手当には、事業主が注意するべきポイントがいくつかあります。割増賃金を正しく計算するためにも、しっかりと確認しておきましょう。

深夜手当はパート・アルバイトも対象となる

深夜手当の支払い対象は正社員だけではありません。従業員に深夜労働をさせた場合は、正社員やパート、アルバイトといった雇用形態にかかわらず、同じ割増率で深夜手当を支払わなければなりません。

深夜手当は管理職(管理監督者としている場合)も対象となる

割増賃金は、深夜労働の他、時間外労働や休日労働においても発生します。労働基準法の「管理監督者」としている管理職は、このうち時間外手当と休日手当が適用されません。ただし、管理監督者であっても、深夜労働をした場合は所定の割増賃金を支払う必要があります。

なお、管理監督者とは、労働基準法41条により、労働条件の決定などにおいて、経営者と同等の地位や権限を付与されている人のことを指します。管理監督者に該当するかどうかは役職名ではなく、職務内容や権限、賃金などから実態を踏まえて総合的に判断されます。管理職だから管理監督者であるとは限らないため注意が必要です。

条件が重なった場合、割増率を合算して計算する

割増賃金は1種類だけではなく、重複して発生する場合もあります。前述のように、割増賃金は時間外労働や休日労働でも発生します。時間外労働とは「1日8時間、週40時間」という法定労働時間を超える労働のことで、割増後の賃金は基礎賃金の125%以上となります。また、休日労働とは、法定休日(週1日または4週に4日)における労働のことで、割増後の賃金は基礎賃金の135%以上です。

この時間外労働や休日労働と、深夜労働が重なった場合は、両方の割増率が合算されて適用されます。例えば、時間外労働が深夜の時間帯(22時~翌5時)に及んだ場合の割増後の賃金は、「時間外労働(125%以上)+深夜労働(25%以上)」で、基礎賃金の150%以上となります。また、深夜労働をした日が法定休日だった場合は、「法定休日労働(135%以上)+深夜労働(25%以上)」で、基礎賃金の160%以上になります。

最低割増率の一覧
残業の種類 最低割増率
時間外労働(法定労働時間を超える労働) 1.25
時間外労働(上記の法定労働時間60時間を超過した場合)(※1) 1.5
深夜労働(22時~5時の労働) 0.25(※2)
法定休日労働 1.35
  • ※1 2023年4月1日より開始(大企業では、既に施行済み)
  • ※2 「深夜手当のみ」の割増率

一部の手当等は割増賃金の基礎となる賃金から除外される

下記に挙げる手当等は、割増賃金の計算のもととなる基礎賃金から除外されます。

基礎賃金から除外される手当等

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

上記に限定列挙された手当以外の賃金は、すべて割増賃金の基礎賃金としなければなりません。なお、家族手当や通勤手当、住宅手当は、給与規程によって全社員に一律で支給する場合は、除外の対象にはなりませんので、個別に判断するなど注意が必要です。

深夜労働は誰でもできるわけではない

18歳未満の年少者は、未成年者保護の観点から、労働基準法によって深夜労働が禁止されています。また、妊婦や産後間もない女性の従業員から申請があった場合も、深夜労働をさせることはできません。

その他、育児・介護休業法では、小学校就学前までの子供や要介護状態の家族を持つ従業員が、育児や介護のために請求した場合には、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜労働をさせてはならないとしています。ただし、深夜に保育や介護ができる同居家族がいる場合などを除きます。

夜勤手当と深夜手当の違いを知り、割増賃金を正しく計算しよう

夜勤手当は企業が任意で設定する手当ですが、深夜手当は労働基準法で定められた割増賃金です。従業員を22時~翌5時の深夜の時間帯に働かせたときには、必ず所定の割増賃金を支払わなければなりません。

深夜手当の計算方法は、従業員の給与形態によっても異なります。また、深夜労働が時間外労働や休日労働にあたる場合は、複数の割増率を合算して割増賃金の計算を行う必要があります。従業員一人ひとりの労働時間を管理し、正しく賃金を計算するのは、かなり手間がかかってしまうかもしれません。

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