年末調整の生命保険料控除の上限はいくら?旧制度と新制度の違いや計算方法も解説
2024/03/01更新
年末調整の生命保険料控除を毎年おこなっているものの、控除額がどのくらいなのかわからない方もいるのではないでしょうか。生命保険料控除には上限が定められており、一定金額以上の保険料を払い込んでも控除額は変わりません。
ここでは、生命保険料控除の上限額や計算方法を解説します。
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生命保険料控除とは
生命保険料控除とは、1月1日から12月31日までまでに生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料を支払った場合に所得から控除される制度です。
生命保険料控除は、保険加入契約を締結した日付によって旧制度と新制度に分けられます。旧制度は平成23年12月31日以前に契約した保険契約に適用され、新制度は平成24年1月1日以降に契約した場合に適用されます。
なお、保険期間が5年未満の契約は、生命保険料控除が利用できない場合もあるため注意しなければなりません。
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生命保険料控除の旧制度と新制度の違い
生命保険料控除の旧制度と新制度には、下表のように、控除の適用対象となる保険に違いがあります。
旧制度 | 新制度 |
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平成22年度の税制改正により、生命保険料控除の新制度が創設されました。しかし、改正前から契約されている保険も多くあるため、旧制度と新制度という形で分けられています。
生命保険料控除の上限額は旧制度と新制度で異なる
生命保険料控除の控除額上限は、旧制度と新制度で異なります。控除額上限の違いは年末調整の還付金にかかわるため、相違点を理解しておきましょう。
旧制度の生命保険料控除の上限額
旧制度の生命保険料控除の上限額は、下表のとおりです。
控除の種別 | 上限額 |
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所得税:5万円 住民税:3.5万円 |
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所得税:10万円 住民税:7万円 |
各生命保険料控除にはそれぞれ上限額が設定されています。そのため、控除額の合計が上限額を超える金額になったとしても限度額が適用されます。
新制度の生命保険料控除の上限額
新制度の生命保険料控除の上限額は、下表のとおりです。
控除の種別 | 上限額 |
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所得税:4万円 住民税:2.8万円 |
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所得税:12万円 住民税:7万円 |
なお、新制度の各種保険料控除の住民税上限額を合計すると8.4万円になりますが、全体の上限額は7万円です。そのため、控除額の合計が7万円を超えても、上限額の7万円が適用されます。
生命保険料控除の計算方法|シミュレーション計算付き
生命保険料控除の控除額は、計算方法がわかれば簡単に算出できます。ただし、旧制度と新制度では計算内容が異なるため、違いを理解しておきましょう。ここでは、生命保険料控除の計算方法を旧・新の制度に分けて解説します。
旧制度の生命保険料控除の計算方法
旧制度の生命保険料控除の所得税控除額と住民税控除額の計算方法は異なるため、別々に計算をしなければなりません。それぞれの計算方法を解説します。
旧制度の所得税控除の計算
旧制度の所得税控除額の計算方法は、下表のとおりです。
年間に払い込んだ保険料 | 控除額 |
---|---|
25,000万円以下 | 年間払込保険料の全額が控除額 |
25,000円超50,000円以下 | 年間払込保険料 × 1/2 + 12,500円 |
50,000円超100,000円以下 | 年間払込保険料 × 1/4 + 25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
- ※計算方法は旧生命保険料控除・旧個人年金保険料控除共通
- ※国税庁「No.1140 生命保険料控除」
例えば、旧制度の生命保険料控除の対象となる保険料を、年間30,000円払ったときの所得税控除額の計算方法は以下のとおりです。
30,000円 × 1/2 + 12,500円 = 27,500円
旧制度の住民税控除の計算
旧制度の住民税控除額の計算方法は、下表のとおりです。
年間に払い込んだ保険料 | 控除額 |
---|---|
15,000円以下 | 年間払込保険料の全額が控除額 |
15,000円超40,000円以下 | 年間払込保険料 × 1/2 + 7,500円 |
40,000円超70,000円以下 | 年間払込保険料 × 1/4 + 17,500円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
- ※計算方法は旧生命保険料控除・旧個人年金保険料控除共通
- ※東京主税局「個人住民税」
例えば、旧個人年金保険料控除の対象となる保険料を、年間30,000円払ったときの住民税控除額の計算方法は以下のとおりです。
30,000円 × 1/2 + 7,500円 = 22,500円
新制度の生命保険料控除の計算方法
新制度も旧制度と同じく、生命保険料控除の所得税控除額と住民税控除額の計算方法は異なるため、別々に計算をしなければなりません。ここからは、新制度の計算方法を解説します。
新制度の所得税控除の計算
新制度における所得税控除額の計算方法は、下表のとおりです。
年間に払い込んだ保険料 | 控除額 |
---|---|
20,000万円以下 | 年間払込保険料の全額が控除額 |
20,000円超40,000円以下 | 年間払込保険料 × 1/2 + 10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 年間払込保険料 × 1/4 + 20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
- ※計算方法は新生命保険料控除・新個人年金保険料控除・介護医療保険料控除共通
- ※国税庁「No.1140 生命保険料控除」
例えば、新制度の生命保険料控除の対象となる保険料を、年間50,000円払ったときの所得税控除額の計算方法は以下のとおりです。
50,000円 × 1/4 + 20,000円 = 32,500円
新制度の住民税控除の計算
新制度における住民税控除額の計算方法は、下表のとおりです。
年間に払い込んだ保険料 | 控除額 |
---|---|
12,000万円以下 | 年間払込保険料の全額が控除額 |
12,000円超32,000円以下 | 年間払込保険料 × 1/2 + 6,000円 |
32,000円超56,000円以下 | 年間払込保険料 × 1/4 + 14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
- ※計算方法は新生命保険料控除・新個人年金保険料控除・介護医療保険料控除共通
- ※東京主税局「個人住民税」
例えば、新個人年金保険料控除の対象となる保険料を、年間50,000円払ったときの住民税控除額の計算方法は次のとおりです。
50,000円 × 1/4 +14,000円 = 26,500円
生命保険料控除の手続き方法
生命保険料控除は、年末調整での手続きと確定申告での手続きで方法が異なります。自分がどちらで申請するのか決まっている方は、利用する申請方法の手続きの仕方を確認してください。
年末調整で生命保険料控除するときの手続き方法
年末調整で生命保険料控除を申請するときの手続き方法は、以下のとおりです。
-
1. 毎年11月頃に会社から配布される以下の書類を記載する
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
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2. 給与所得者の保険料控除申告書の添付書類である以下の書類を用意する
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 個人型の確定拠出年金の掛金の払い込みを証明する書類
- 国民年金基金や国民年金の掛金の払い込みを証明する書類
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3. 内容を記載した給与所得者の保険料控除申告書と添付書類を会社に提出する
これらの手続きを行うと、会社が税務署に年末調整書類を提出します。
確定申告で生命保険料控除するときの手続き方法
確定申告で生命保険料控除を申請するときの手続き方法は、以下のとおりです。
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1. 確定申告書を用意する
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2. 生命保険料控除の控除額を計算する
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3. 確定申告書内の「所得から差し引かれる金額」にある「生命保険料控除」に控除額を記載する
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4. 各種払込証明書を用意する
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5. 確定申告の必要記載事項を記入して生命保険料控除以外の添付書類を用意する
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6. 税務署に確定申告書と添付書類を提出する
確定申告で用意する払込証明書は、年末調整時に提出する書類と同じです。ただし、e-Taxで確定申告する場合は払込証明書を5年間保存することを条件に、払込証明書を添付しなくても生命保険料控除が認められます。
生命保険料控除するときの注意点
生命保険料控除をするときの注意点は、以下のとおりです。
- 控除額が節税額になるわけではない
- 保険見直しを行うと控除額が変動することもある
- 生命保険料控除の対象外の保険がある
生命保険料控除の注意点を理解しておきましょう。それぞれ詳しく解説します。
控除額が節税額になるわけではない
節税額は、生命保険料控除の控除額に所得税率をかけて算出した数字です。つまり、生命保険料控除の控除額はあくまで所得から差し引ける金額ということです。所得税率は人によって異なるため、節税額も違ってきます。
生命保険料控除の所得税控除額が5万円だとした場合、所得税率による節税額の差がどうなるのか見ていきましょう。例えば、所得税率の最高税率の人と最低税率の人との節約額の違いは、以下のとおりです。
- 所得税率45%:5万円 × 45% = 22,500円(節税額)
- 所得税率5%:5万円 × 5% = 2,500円(節税額)
計算例でわかるとおり、所得税率の違いによって節税額は大きく変わります。
保険見直しを行うと控除額が変動することもある
保険見直しを行うと、控除額が変動する場合もあるため注意しましょう。生命保険料控除の控除額は、1月1日から12月31日までの払込保険料の額に影響を受けます。年間の払込額が増えると控除額が増え、払込額が減れば控除額が減ります。ただし、払込額が増えたとしても、すでに控除額の上限に達していると節税額は変わりません。
また、保険を見直すことにより、生命保険料控除の対象外となるケースもあります。保険を見直すときには保険内容だけでなく、生命保険料控除が受けられるかどうかも確認しておきましょう。
生命保険料控除の対象外の保険がある
生命保険料控除の対象外の保険契約は、以下のとおりです。
- 保険期間が5年未満の保険
- 外国生命保険会社と国外で加入した保険
- 財形貯蓄
- 財形住宅貯蓄
- 財形年金貯蓄
- 信用保険
- 傷害保険
また、これらの保険以外に加入したとしても、保険料控除を受けるには以下のような要件を満たさなければなりません。
- 個人年金保険料の場合、年金の受取人は、保険料もしくは掛金の払込みをする者、またはその配偶者とその他の親族となっている契約であること。
- 個人年金保険料の場合、保険料等は、年金の支払を受けるまでに10年以上の期間にわたって、定期に支払う契約であること。
- 個人年金保険料の場合、年金の支払は、年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払うとされている10年以上の定期または終身の年金であること。
(注) 被保険者等の重度の障害を原因として年金の支払いを開始する10年以上の定期年金または終身年金であるものも対象となります。
生命保険料控除を受けるには、対象外になる保険と契約内容を把握しておく必要があります。
年末調整の生命保険料控除の上限に関してよくある質問
年末調整の生命保険料控除の上限に関してよくある質問は、以下のとおりです。
- 生命保険料控除は年末調整と確定申告のどちらで行うのが得?
- 生命保険料控除の上限を超えたらどうなる?
- 生命保険料控除の旧・新両制度の保険に加入している場合はどうなる?
それぞれの回答を見ていきましょう。
生命保険料控除は年末調整と確定申告のどちらで行うのが得?
生命保険料控除は、年末調整と確定申告のどちらが得ということはなく、どちらの手続きでも同じ控除額になります。年末調整も確定申告も所得税額を確定させるための手続きであり、控除額に違いはありません。
ただし、以下の控除は年末調整ではおこなえず、確定申告で申請する必要があります。
- 1回目の住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
- 医療費控除
- 寄附金控除
- 雑損控除
生命保険料控除の上限を超えたらどうなる?
生命保険料控除の控除額上限を超えたとしても、超えた分の払込額は控除額に反映されません。生命保険料控除の所得税・住民税の控除上限額は、以下のとおりです。
- 旧制度
- 旧制度の保険料控除額の合計:所得税10万円・住民税7万円
- 旧生命保険料控除:所得税5万円・住民税3.5万円
- 旧個人年金保険料控除:所得税5万円・住民税3.5万円
- 新制度
- 新制度の保険料控除額の合計:所得税12万円・住民税7万円
- 新生命保険料控除:所得税4万円・住民税2.8万円
- 新個人年金保険料控除:所得税4万円・住民税2.8万円
- 介護医療保険料控除:所得税4万円・住民税2.8万円
生命保険料控除の旧制度と新制度両方の保険に加入している場合はどうなる?
生命保険料控除の旧制度と新制度の両保険に加入していた場合、以下のような形で年末調整・確定申告ができます。
- 旧制度の保険のみの申告
- 新制度の保険のみの申告
- 両方の制度の保険を合わせた申告
なお、旧・新の両制度を合わせた場合の控除額上限は、新制度と同じ以下の金額です。
- 新制度の保険合計:12万円
- 新生命保険料控除:4万円
- 新個人年金保険料控除:4万円
- 介護医療保険料控除:4万円
旧制度の控除額上限が適用されるのは、旧制度のみの保険で申告をしたときだけです。なお、新旧両方の制度を合わせたときの控除額の計算方法は、国税庁のホームページ「旧生命保険料と新生命保険料の支払がある場合の生命保険料控除額」を参照ください。
生命保険料控除には上限があり制度によって限度額が異なる
生命保険料控除には控除額の上限があり、旧制度と新制度によって異なります。また、旧・新それぞれの制度で控除額の計算方法も違うため、各制度の内容について理解しておかなければなりません。
生命保険料控除の内容を理解できれば、年末調整で生命保険料控除の控除額がいくらになるのかを自分で計算できるようになります。年末調整をスムーズに進めるためにも、生命保険料控除の内容をしっかりと把握しておきましょう。
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