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労働保険の年度更新とは?手続き期間・提出先と申告方法

更新

労働保険の年度更新は、事業主が労災保険と雇用保険の保険料を適正に納付するために必要な手続きです。新しい年度に向けた概算保険料を申告・納付し、前年度分の保険料を確定して精算することで、保険料の過不足を調整します。労働者を雇用する事業主は、雇用形態にかかわらず年度更新を通じて保険料を納付しなければなりません。

本記事では、労働保険の年度更新の概要、提出先や提出期間、計算方法と保険料率、手続きの主な流れとやり方などを詳しく解説します。また、労働保険の年度更新手続きに関するよくある疑問とそれぞれの答えも掲載しているので、ぜひ参考にしてください。

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労働保険の年度更新とは

「労働保険」とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険をまとめた呼び名です。そして「労働保険の年度更新」とは、新しい年度の概算保険料を申告・納付するとともに、前年度に納めた労働保険の保険料を「確定保険料」として申告し、精算するための手続きを指します。

労働保険の年度更新は、実際の賃金総額に基づく保険料の過不足を調整するために行われています。労働保険の保険料は、年度中(4月1日から翌年3月31日まで)に支払った賃金の総額をもとに算出することが可能です。手順は以下のとおりです。

  • 1.
    暫定額の申告と納付:新年度の開始時に、予想される賃金総額に基づいて暫定的な保険料を申告し、納付する。
  • 2.
    確定額の申告と精算:年度終了後、実際に支払った賃金総額を基に確定保険料を算出し、暫定額との差額を精算する。

労働者を一人でも雇用する事業主であれば、毎年労働保険の年度更新を行って適切な保険料を納付する必要があります。なお労働保険は、従業員の雇用形態に関係なく必ず加入しなければなりません。

労働保険の加入条件や手続きなどについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

労働保険の年度更新申告書の提出先

申告書の提出先は複数あり、提出者の都合にあわせて選択できます。具体的な提出先は以下の通りです。

  • 金融機関
  • 労働局・労働基準監督署
  • 社会保険・労働保険徴収事務センター
  • オンラインでの電子申請

金融機関

金融機関では、申告書の提出と保険料納付の両方に対応しています。ただし、申告書のみの提出には対応していないため注意しましょう。全国の銀行や信用金庫のほか、郵便局でも受け付けています。

労働局・労働基準監督署

所轄都道府県の労働局や労働基準監督署も、申告書の提出と保険料納付の両方に対応していますが、労働局または労働基準監督署に申告書のみを提出し、納付は金融機関を利用することも可能です。口座振替を希望する場合、申告書は労働局または労働基準監督署に提出します。なお、労働局・労働基準監督署へ申告書を提出する場合、郵送を選択することが可能です。

社会保険・労働保険徴収事務センター

全国の年金事務所内に設置されている社会保険・労働保険徴収事務センターでも申告書を提出できますが、保険料の納付は行えません。

オンラインでの電子申請

オンラインでの電子申請および電子納付を利用する場合、デジタル庁が運営する行政情報のポータルサイト「e-Govポータル」を活用すると便利です。電子申請および電子納付を行う際は、事前に“GビズID”を取得しなければなりません。2020年4月から、特定の条件を満たす法人には電子申請が義務化されるなど、オンライン手続きの促進を図る動きもみられます。

電子申請の手順について知りたい方は、厚生労働省のサイトに掲載されている「労働保険関係手続の電子申請について」のページで詳細な情報を確認できます。

参照:厚生労働省「労働保険関係手続の電子申請について新規タブで開く

参照:厚生労働省「電子申請義務化リーフレット新規タブで開く

年度更新の手続き期間はいつからいつまで?

労働保険の年度期間は、毎年6月1日から翌7月10日までと定められており、この期間中に手続きを完了しなければなりません。ただし、土日が重なる場合、日付が前後するケースもあります。

手続きが遅れると、前年度分の確定保険料に対して10%の追徴金が課されることがあるため、期間内に提出できるよう準備を進めておきましょう。年度更新申告書は、通常5月末ごろに送付されます。その時期を過ぎても手元に届かない場合は、管轄の都道府県労働局へ早めに問い合わせたほうが安心です。

労働保険料の計算方法と保険料率

労災保険料と雇用保険料は、それぞれ4月1日から翌年の3月31日までに支払った賃金総額に、事業別に定められた保険料率を乗じて算定されます。

労災保険料

労災保険料は、全従業員の賃金総額に労災保険料率を乗じて算出します。労災保険料率は業種ごとに異なり、危険度の高い業種ほど高く設定されているのが特徴です。金融業や不動産業、通信業などは2.5/1000と低く、金属鉱業や石炭鉱業は88/1000と高く設定されています。(令和6年4月1日施行の労災保険率表の場合)

例えば、賃金総額が3億円、労災保険料率が9/1000の製造業では[3億円×9/1000=270万円]となるため、労災保険料は270万円です。

雇用保険料

事業主と労働者の双方で負担する雇用保険料の計算は、賃金総額に雇用保険料率を乗じて求めます。例えば、賃金総額が2億円、雇用保険料率が15.5/1000の場合は[2億円× 15.5/1000 =310万円]となり、雇用保険料は310万円です。

なお、保険料率は年度ごとに変更されるケースがあるため、手続きを行う前は、必ず最新の保険料率を確認してから計算するようにしましょう。最新の保険料率は、厚生労働省の公式サイトや各都道府県労働局のサイトに掲載されています。業種ごとの労災保険の保険料率および雇用保険料の保険料率は、以下のサイトでチェックできます。

参照:厚生労働省「労災保険率表新規タブで開く
参照:厚生労働省「雇用保険料率について新規タブで開く

年度更新手続きの主な流れとやり方

年度更新手続きについて、算定基礎賃金集計表の作成、申告書の記入、申告書の提出と保険料の納付のステップに分けて解説します。

1. 算定基礎賃金集計表を作成する

労働保険料を算定するために、まず、前年度に支払った賃金の総額を把握しなければなりません。総額の計算には「算定基礎賃金集計表」を用います。算定基礎賃金集計表は、毎年5月末ごろに送付されてくる申告書に同封されています。また、厚生労働省のサイトから、Excel形式のデータをダウンロードして利用することも可能です。

算定基礎賃金集計表には、賃金台帳を基に、労働保険の対象となる従業員の人数と支払った金額をすべて記入します。役員報酬や傷病手当金、災害見舞金、解雇予告手当、出張旅費および宿泊費はこの金額に含まれません。算定基礎賃金集計表は計算の補助ツールなので、申告書に添えて提出する必要はありません。

算定基礎賃金集計表(年度更新申告書計算支援ツール)は以下のURLからダウンロードできます。

参照:厚生労働省「年度更新申告書計算支援ツール新規タブで開く

2. 申告書へ記入する

昨今では、一般社員や非常勤だけでなく、アルバイト、パートタイム、フリーランスなど、労働契約の形態が多様化しています。それぞれの労働時間やスキルによって給与も異なってくるため、必要に応じてヒアリングを行いながら、提出する申告書に不備がないよう十分注意しましょう。

  • 1.
    労災保険・雇用保険の対象賃金などの転記

    賃金集計表で算出した労災保険および雇用保険の対象賃金などを、年度更新の申告書に転記します。

  • 2.
    確定保険料算定内訳欄の記入

    申告書の「確定保険料算定内訳」欄に、前年度の算定基礎額(前年度に支払った賃金の総額)と、確定保険料(前年度の算定基礎額に基づいて算出された確定保険料)を記載します。

  • 3.
    概算・増加概算保険料算定内訳欄の記入

    「概算・増加概算保険料算定内訳」は、今年度の見込み額と概算保険料を記入する欄です。今年度の見込み額には、今年度中に支払う予定の賃金の総額を、また概算保険料には、今年度の見込み額に基づいて算出された概算保険料を記入しましょう。

  • 4.
    申告済概算保険料額の記入

    「申告済概算保険料額」欄には、昨年度申告した概算保険料を転記します。これにより、確定保険料額との過不足を算出できます。

  • 5.
    差引額の記入

    最後に、確定保険料額と申告済概算保険料額の差額を「差引額」の欄へ記入しましょう。過不足が明確になると、必要な調整が行いやすくなります。

3. 申告書を提出し、保険料を納付する

申告書を紙で提出する際は「提出用」と記載された1枚と、必要に応じて添付書類を用意し、全国の銀行・信用金庫・郵便局、または所轄の都道府県労働局や労働基準監督署の窓口に直接持参するか、該当の労働局または労働基準監督署に郵送します。

保険料の納付は、申告書の提出後に金融機関から発行される納付書を使って納めるほか、口座振替や電子納付を利用することも可能です。なお、申告書を郵送で提出して「事業主控え」の受付印が必要になる際は、事業主控えの用紙と切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。後日、受付印が押された控えが返送されます。

【Q&A】労働保険の年度更新手続きに関するよくある疑問

労働保険の年度更新手続きを行う際に、多くの方が気にしているポイントをQ&A形式でまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

算定基礎賃金の集計対象になる従業員は?

算定基礎賃金の集計対象は、労働保険に加入するすべての従業員です。一般社員はもちろん、アルバイトやパートタイムなど、雇用契約を結んでいるすべての従業員が含まれます。ただし、労働者として扱われない役員や、出向先や海外で勤務する従業員は集計の対象ではありません(雇用保険に関しては、契約によって集計対象となることもあります)。

また退職者がいる場合には、当該従業員の退職前の賃金が集計の対象です。つまり、退職した従業員が申告対象期間中に支払われた賃金も、算定基礎賃金の集計に含まれます。

休職者に関して、支払われる傷病手当金や休業補償といった給与以外の手当は、賃金総額に計上しません。ただし、労働保険の算定基礎において人数と総賃金の取り扱いは別となるため、当該休職者は常用労働者の人数には含まれます。

月末締め翌月払い給与の取り扱いは?

労働保険料の算定期間は4月1日から翌年の3月31日までです。この期間中に支払いが確定している賃金は、未払いの状態であっても算定基礎賃金に参入します。

ここで注目すべきポイントは、基準が締め日になっていることです。例えば、3月末締めで4月20日に給与を支払う場合、労働保険ではこの給与を3月分の給与として扱います。つまり、3月31日までに締め日を迎えた賃金は、4月に支払う場合であっても3月分として算定基礎賃金に含まれます。

なお、賞与の扱いも同様です。雇用形態によって締め日が異なるケースでは、それぞれの締め日に基づいて個別に集計します。例えば、正社員は月末締め、パートタイマーは15日締めの場合、それぞれの締め日で賃金を集計し、算定基礎賃金に反映させます。

申告済概算保険料と確定保険料に差があったらどうなる?

確定保険料額が申告済概算保険料額よりも多くなった場合には、不足額を差引額欄に記入し、今年度の概算保険料と合算して納付しなければなりません。

例えば、申告済概算保険料が200万円、確定保険料が240万円となっていた場合、不足額の40万円を今年度の概算保険料と一緒に納付する必要があります。確定保険料額が申告済概算保険料額よりも少なくなる場合、差額は今年度の概算保険料または一般拠出金、あるいはその両方のいずれかに充当します。申告書に設けられた「充当意思欄」で、どこに充当するか選択できるので確認しておきましょう。

充当後もまだ残高がある場合は、還付金を請求できます。この場合、申告書と一緒に「労働保険料・一般拠出金還付請求書」の提出が必要です。

労働保険の年度更新を効率化する、給与計算ソフトの導入も検討を

労務管理業務の中でも重要な業務とされる労働保険の年度更新は、年度終了後に実際の賃金総額を基に確定保険料を算出し、過不足を精算するための手続きです。毎年定められた期間内に提出する必要があり、不備があれば再申告を行わなければなりません。

手間のかかる給与計算業務を効率化するには、クラウド給与ソフトの導入がおすすめです。自社の既存システムと連携性に優れたツールを活用し、バックオフィス業務の大幅な効率化を実現させましょう。

  • 2024年9月時点の情報を基に執筆しています。

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この記事の監修者下川めぐみ(社会保険労務士)

社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。
医療機関、年金事務所等での勤務の後、現職にて、社会保険労務士業務に従事。

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