ボーナス(賞与)とは?いつ支給される?平均額や決め方などを解説
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ボーナス(賞与)は、従業員にとって重要な収入源であり、企業にとっても効果的な報酬手段ですが、その法律的なしくみや支給条件について正確に把握し切れていない企業担当者もいるかもしれません。ボーナスの支給に際しては適切な対応を行わないと、従業員との間で社会保険料や源泉徴収等の計算においてトラブルに発展する恐れもあります。
本記事では、ボーナスの基本的なしくみから支給条件、回数、時期、種類、さらには計算方法や平均額までを詳しく解説します。
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ボーナス(賞与)とは
ボーナス(賞与)とは、毎月支払われる給与とは別に、企業が従業員に対して臨時に支給する報酬のことを指します。従業員の労働意欲や士気を高めることが目的で、企業の業績向上や目標達成に寄与した従業員への感謝や評価の意味合いも含まれています。
労働基準法では、ボーナス(賞与)の支給は義務付けられておらず、各企業の裁量に委ねられています。そのため、支給の有無や金額、時期、回数などは企業ごとに異なります。夏季(6~7月)と冬季(12月)の年2回支給されることが一般的ですが、企業の業績や従業員個人の成果に応じて変動することもあります。なお、支給回数が年3回以下のものを賞与として取り扱うことがあります(日本年金機構や健康保険の規定に基づく運用)。
ボーナスと賞与の違いはある?
基本的には同じ意味を持つ言葉であり、英語と日本語の違いに過ぎません。ボーナスは英語の「bonus」に由来し、賞与は日本語で「臨時に支給される報酬」を意味します。どちらも企業が従業員に対して、通常の給与とは別に支給する臨時の報酬を指します。
所得税法第183条第2項でも、賞与について「定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいう」と定義しており、賞与とボーナスを同じ意味合いのものとしています。
参照:国税庁「法第183条《源泉徴収義務》関係(賞与の意義)」
ボーナス(賞与)と類似概念との違い
ここでは、ボーナス(賞与)と類似する概念について「定期的に支給されるもの」と「臨時的に支払われるもの」に分けて解説します。
定期的に支給されるもの
定期的に支給される(または支給されることがある)「給与」「寸志」「インセンティブ」とボーナスとの違いについて解説します。
ボーナス(賞与)と給与との違い
給与は、労働者に対して定期的に支払われる賃金です。労働基準法では、毎月1回以上、一定の期日を決めて、その全額を通貨で直接労働者に支払うことが定められています。給与は毎月確実に支払われるものであり、従業員の生活の基盤を支える重要な収入源です。その一方で、ボーナス(賞与)は臨時の成果や労働に対する追加的な報酬として支給されるもので、定期的な給与とは異なります。
ボーナス(賞与)と寸志の違い
寸志とは、従業員への感謝や労いの気持ちとして与えられる小額の報酬です。特にアルバイトや新入社員のように、賞与支払いの対象にならない場合や全額支給の対象とならない場合に支給されることが一般的です。
ボーナス(賞与)が従業員の仕事の成果や査定結果に基づいて金額が決定されるのに対し、寸志は会社からの感謝の意として支給されるもので、一般的に賞与よりも少額です。
なお、社会保険上では寸志も賞与と同様に扱われるため、源泉徴収や社会保険料の対象となります。この点には注意が必要です。
ボーナス(賞与)とインセンティブの違い
インセンティブとは、従業員が特定の目標を達成することで給与にプラスして支払われる報奨金や奨励金のことです。主に個人の成果や目標達成に対する報酬として支給されるため、従業員のモチベーションを高めるための有効な手段となります。
それに対し、ボーナス(賞与)は企業全体の業績に連動して支給される追加的な報酬で、人事考課を踏まえて支給されることが一般的です。
ボーナスもインセンティブも同じく、社会保険料や源泉徴収の対象となり、両者に区別はありません。
臨時的に支払われるもの
臨時的に支給される「大入り」とボーナスとの違いについて解説します。
ボーナス(賞与)と大入りの違い
大入りとは、もともと支給月も決まっておらず、会社の売上が一時的に上がったときなどに、臨時的かつ恩恵的に支給される報酬のことです。その一方で、ボーナス(賞与)は、企業全体の業績に応じて定期的に年3回まで支給されるものです。
大入りという名目であっても、支給の要件や時期が決まっている場合、年4回以上支給される場合など、支給実態によっては給与やボーナス(賞与)に該当し、源泉徴収の対象となることがあります。
ボーナス(賞与)の種類
ボーナス(賞与)には大きく「基本給連動型」「業績連動型」「決算賞与型」の3種類があります。以下でそれぞれについて解説します。
基本給連動型
基本給に連動して支給額が決定されるボーナスです。基本給が高い従業員ほど高額なボーナスを受け取れるという特徴があります。メリットは、支給額の予測がしやすく、安定している点です。企業の業績や個人の業績にかかわらず、基本給に応じた一定の割合で計算されるため、従業員は計画的な家計管理を行うことができます。
ただし、企業や個人の業績がよくても、それがボーナスに反映されにくいという欠点もあります。そのため、他のボーナスの形式と比べてモチベーションアップの効果は限定的です。
業績連動型
企業や個人の業績に連動して支給額が決定されるボーナスです。従業員一人ひとりの努力やチーム全体の成果が反映されやすいという特徴があります。業績向上に対する意欲が高まるため、従業員のモチベーションアップに寄与します。
その一方で、長期的には支給額を予測しにくいという欠点もあります。企業の業績や市場環境の変動により、支給額が大きく変わることがあるため、従業員にとっては収入が安定しにくいといえます。
決算賞与型
会社の業績に応じて支給されるボーナスです。企業の決算期における業績評価に基づいて支給されるものであり、通常は年に一度支給されます。メリットとしては、従業員のモチベーションアップ効果が期待できる点があげられます。
その一方で、企業の業績が低迷した場合には、支給額が少額になる、場合によっては支給されないケースもあります。
ボーナス(賞与)のしくみ
ここでは、ボーナス(賞与)が支給されるしくみとして、支給対象や支給条件、支給時期、回数、計算方法を解説します。
支給対象
基本的に企業と直接的に雇用契約を結んでいる社員が主な対象です。正社員だけでなく、契約社員やアルバイト、パートタイムの従業員にも、企業の方針や規定により支給される場合があります。なお、ボーナスはあくまで企業の任意で支給されるものであり、法的な支給義務はありません。支給対象者の範囲は企業ごとに異なるため、各社の就業規則や労働契約書を確認する必要があります。
支給条件
支給条件はあくまでも企業の就業規則に基づいて決まりますが、一般的にはボーナスの査定期間中に勤務実績があること、支給日まで在籍していることなどが主な条件です。例えば、夏のボーナスは10〜3月、冬のボーナスは4〜9月など、査定期間を設けて支給の有無や支給額が決められます。
4月入社の新入社員の場合、初年度の夏のボーナスに関しては、在籍期間が短く査定期間を満たしていないことから、支給対象外となることがあります。その場合、企業によっては「寸志」として少額のボーナスが支給されることもあります。
支給時期・回数
ボーナスに関する法的な定めはなく、支給時期や回数は各企業の裁量に任されているものの、多くの企業では年2回、夏(6月下旬〜7月下旬)と冬(12月中旬)に支給されることが一般的です。企業によっては、年に3回支給するところや、年度末に1回だけ支給する場合もあります。また、ボーナスを支給しない企業も存在します。
計算方法
ボーナスは一般的に以下の手順に沿って計算されます。
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(1)ボーナス支給額の決定
企業の業績や個人の評価、基本給に基づいてボーナス支給額を決定します。
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(2)社会保険料の計算
ボーナス支給額に基づき、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料などの社会保険料を計算します。社会保険料の負担額は制度ごとに定められています。
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(3)雇用保険料の計算
支給額に基づいて雇用保険料を計算します。雇用保険料率は法律に基づき決定されており、支給額に料率を乗じて算出します。
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(4)所得税の計算
ボーナス支給額から社会保険料と雇用保険料を差し引いた金額に対して、所得税を計算します。税率はボーナス支給月の前月の給与を基準とし、「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」を参照して求めます。
参照:国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表
」
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(5)最終手取り額の計算
最後に、支給額からすべての控除額(社会保険料、雇用保険料、所得税)を差し引いて、最終的な手取り額を算出します。
ボーナス(賞与)の計算方法について、こちらの記事で解説しています。
ボーナス(賞与)の支給に関する注意点
ボーナスの支給に関しては、いくつか注意すべき点があります。
賞与明細の発行とその重要性
賞与明細の発行は、所得税法により企業に義務付けられています。賞与明細には、支給額、控除額、差引支給額など、賞与の詳細を明記する必要があります。明細書を発行することが、従業員に対して透明性を確保し、信頼を得ることにつながります。適切に明細を発行しなかった場合、従業員との間でトラブルが発生するリスクや税務調査時に指摘される可能性が高まります。
減額や支給しない場合の注意点
ボーナスの減額や不支給を行う際にも注意が必要です。
就業規則や労働契約に基づいて行う
減額や不支給を実施する場合は、原則的に就業規則や労働契約に基づいて行う必要があります。従業員との間で明確なルールが共有され、不透明な対応を避けられます。
一方的な減額や不支給は避ける
一方的に不支給にしたりすることは、労働契約の不利益変更とみなされる可能性があります。
従業員への事前説明と同意
業績や成績の不振などを理由に支給を見送る場合は、従業員への事前説明を行うことが必要です。
従業員からの訴訟リスク
不適切な対応を行うと、従業員からの不信感を招き、労働訴訟に発展するリスクが高まります。
同一労働同一賃金の観点
パートタイムやアルバイトの従業員に対するボーナス支給の有無については企業の判断に委ねられますが、同一労働同一賃金の観点を考慮して判断することが必要です。
ボーナス(賞与)に関係する社会保険料と税金
ボーナスは、総支給額から健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税といった社会保険料や税金が差し引かれます。なお、厚生労働省の通知により、2019年から、ボーナスとみなされるものの判断基準が明確化・厳格化されました。この改正により、従来よりも細かい基準でボーナスが社会保険料や税金徴収の対象となるかどうかが決定されるようになった点に注意しましょう。ここでは、ボーナスから差し引かれる主な保険料と税金について解説します。
所得税や社会保険料の計算方法について、こちらの記事で解説しています。
参照:日本年金機構「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について」
健康保険料と厚生年金保険料
これらはボーナス総額から1,000円未満を切り捨てた金額に、それぞれの保険料率を掛け合わせて算出されます。
雇用保険料
ボーナスの総額に雇用保険料率を掛け合わせて算出されます。具体的な料率は年度や業種によって異なるため、最新の料率を確認しましょう。
所得税
ボーナスが支給される月の前月の給与から所得税率を決定し、総支給額から社会保険料を差し引いた課税対象額に掛け合わせて算出されます。
住民税
住民税は毎月の給与から差し引かれるもののため、ボーナスから直接引かれることはありません。ボーナスの額が影響するのは翌年度の住民税額です。
ボーナスの平均支給額
ボーナスの平均額は企業や業種、地域によって異なりますが、厚生労働省が2024年に公表した「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報等」によれば、令和5年(2023年)の冬季賞与の平均は395,647円、令和6年(2024年)の夏季賞与の平均は414,515円でした。さらに、令和6年9月分結果速報によれば、夏季賞与の平均支給額は対前年度比2.3%増でした。
参照:厚生労働省「毎月勤労統計調査令和6年2月分結果速報等」
参照:厚生労働省「毎月勤労統計調査令和6年9月分結果速報等」
賞与(ボーナス)支払いに伴う事務手続き
ここでは、賞与明細書の発行および賞与支払届の作成・提出について解説します。
賞与明細書の発行
賞与(ボーナス)の支給時には、従業員に対して賞与明細書を発行します。賞与明細書には、控除前の総支給額や社会保険料、雇用保険料、所得税などの控除項目と、それぞれの金額を記載します。賞与明細書は、賞与の支給日までに発行するのが一般的です。
賞与支払届の作成・提出
賞与支払届は、社会保険の被保険者に賞与を支給する手続きとして必要な書類です。支払届の作成・提出は、企業が社会保険料を正確に計算・納付するために義務付けられています。事前に、賞与を支払う予定の月を管轄の年金事務所に登録しておく必要があります。
賞与支払予定月の前月になると、日本年金機構や健康保険組合から「被保険者賞与支払届」が郵送されてくるので、被保険者の氏名、賞与額、社会保険料の算定基準となる情報を記入し、賞与を支給した日から5日以内に、管轄の日本年金機構の事務センターへ提出します。
近年では、クラウド型給与管理システムを活用することで、賞与支払届の自動作成が可能となり、手続きの効率化が進んでいます。
賞与支払届について、こちらの記事で解説しています。
ボーナス(賞与)の基本を理解しよう
ボーナス(賞与)は、企業によって異なる形態で支給される特別な報酬です。定期的な給与とは異なり、企業の業績や個人の成果などに基づいて支給されます。
企業にはボーナスの支給ルールの明文化や支給に伴う事務手続きなど、多岐にわたる業務が生じます。「弥生給与 Next」なら、賞与計算はもちろんのこと、賞与明細のWeb配信や賞与支払届の自動作成にも対応しています。自社にあったサービスを活用して、業務の効率化を目指しましょう。
- ※2024年12月時点の情報を基に制作しています。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務
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