納品書に収入印紙は必要?必要なケースや知っておきたいポイント
監修者: 名取 弘美(税理士)
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日々の業務では、さまざまな文書を取り扱います。その中でも課税文書にあたるものについては収入印紙が必要です。では「納品書」に収入印紙は必要なのでしょうか?本記事では納品書に収入印紙が必要なケースや押さえておくべきポイントについて紹介します。
納品書には収入印紙の貼付は基本的に不要
結論として、納品書に収入印紙を貼る必要はありません。ここでは、なぜ必要ないのか?についても理解しておきましょう。
まず、収入印紙とは印紙税を納めるために必要な証票のことです。不動産売買契約書などの営利目的の契約書(課税文書)に対して、定められた文書の種類と印紙税額に基づき税金を支払い、収入印紙を貼ります。
他方、納品書は取引先から依頼された商品を届けたこと、サービスを提供したことを証明する書類です。発行者は商品名やサービス名、数量や納品日等を記載し、受け取る側は事前に決定した取引内容と相違がないかを確認するのに使用します。したがって、金銭のやり取りについて確認するための書類ではないため、収入印紙を貼付する必要がないのです。
金銭のやり取りの事実を示す書類は、契約書や領収書などであり、これらには収入印紙が必要です。それぞれの書類の役割をあらためて整理しておき、収入印紙が要る・要らないのを確認しておいた方がよいでしょう。
納品書に収入印紙が必要なケース
例えば、納品書でも代金を前払いする場合や、納品と同時に支払を行う時などに「納品書兼領収書」として発行することがあります。このような金銭のやり取りを示す書類に該当する場合には、収入印紙が必要になります。
ただし、こういった場合でも収入印紙が必要になるのは、書類に記載する合計金額が5万円以上(税込)の場合に限られます。売上代金が5万円未満であれば、収入印紙を貼る必要はありません。
収入印紙が必要な主な書類
収入印紙が必要なのは「課税文書」に該当する文書です。印紙税法別表第1(課税物件表)には、例えば「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書」を第1号文書、商品やサービスの売上に関する「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」のことを第17号文書などと分類しています。
これらは、文書のタイトルや文言などの形式的な表現が課税文書に該当するのか、ではなく、実質的な内容が、課税文書に該当するのか、により、判断する必要があります。そのため、収入印紙が必要ないと認識していても、内容次第で課税文書とみなされる場合があることに注意してください。
参照:国税庁|No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断
参照:国税庁|印紙税額の一覧表
納品書と収入印紙に関して知っておきたいポイント
納品書と収入印紙に関して、押さえておきたいポイントは3つです。
- 課税文書に収入印紙を貼付しないとペナルティが発生
- 間違って収入印紙を貼付してしまったら、還付手続きが必要
- 電子発行の「納品書兼領収書」などに収入印紙は不要
以下で詳しく解説します。
課税文書に収入印紙を貼らないと過怠税の対象になる
収入印紙が必要な書類に収入印紙を貼付しないと、本来納付すべき印紙税額の3倍の過怠税が徴収される可能性があります。さらに、課税文書であると認識していなかった場合も、過怠税が課されることがあるため、注意しなければなりません。
間違って収入印紙を貼付した場合は還付手続きをとる
「必要ない書類に収入印紙を貼ってしまった」「必要な税額よりも過大な額の収入印紙を貼ってしまった」という場合は、無理にはがしたり切ったりせずに、書類ごと税務署に持参して還付の手続きを行います。また、封筒や行政機関に提出する書類など明らかに課税文書ではないものに貼付してしまった場合も還付の対象となります。
電子発行の納品書には収入印紙は不要
電子帳簿保存法やペーパーレス化の動きで、取引先と電子文書でやり取りする機会も増えています。このような電子文書は、印紙税法上の文書には該当しないと規定されています。したがって、電子発行の「納品書兼領収書」も課税文書にならず、収入印紙を貼る必要がありません。
これまで紙で発行していた各種書類を電子発行のサービスを活用して作成・送付することで、事務処理や印刷、郵送料などのコストをまとめて削減でき、さらに印紙税の負担も減らすことができるのです。
納品書に収入印紙を貼るべきケースを整理しておきましょう
納品書と記載された文書でも、領収書や契約書を兼ねる内容の場合には課税文書とみなされるため、収入印紙の貼付が必要になります。収入印紙が必要であるか否かは、文書のタイトルだけでなく、内容で判断してください。
納品書をはじめ請求書などを作成してそのまま電子発行できるサービスを利用すれば、印紙税の負担を軽減できます。今後、ペーパーレス化が進めば、紙の書類ではなく電子発行を求められる機会も増えてくるかもしれません。クラウド請求書作成ソフト「Misoca」はそのような需要に応える充実した機能を備えています。この機会にぜひ、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者名取 弘美(税理士)
税理士法人ベリーベスト 税理士
事業会社の経理業務に長年従事しており、2017年に税理士法人ベリーベストに入所。主に法人税務を担当し、2年前からTax audit and service部門にて税務案件のリサーチ、社内研修、申告書のレビュー等を行っている。数多くの企業案件に携わる中で得た専門知識を活かし、精確な情報提供を心掛けている。
