請求書は信書に該当する?信書として送付する方法や注意点を解説
監修者: 市川 裕子(ビジネスマナー監修)
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信書は郵便法が定める方法で送付する必要があります。そのため、取引先や顧客に送付する文書が信書に該当するか否かを把握しておかないと、知らずに法律違反をしてしまうおそれがあります。本記事では、請求書が信書に該当する理由や、請求書(信書)を法令に則って適切に送付する方法を解説します。
信書とは?
信書とは簡単に言うと、特定の相手に宛てた文書です。郵便法4条2項では、次のように定義されています。
特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書
引用:e-gov法令検索「郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第4条2項」
「特定の受取人」とは、次の者を指します。
差出人がその意思又は事実の通知を受ける者として特に定めた者
引用:総務省「信書のガイドライン」
例えば、「〇〇様」と記載された文書は「特定の受取人」に宛てているとみなされます。これは「○○社 御中」というように、宛名が特定の法人や団体、組合などの場合も同様です。請求書は、特定の個人や企業に向けて、支払いの請求(「差出人の意思」)や請求内容(「事実」)を通知する文書にあたるため信書に含まれます。
詳しい内容は後述しますが、郵便法や信書便法によって、信書に該当する文書は特定の方法で送付することが義務付けられています。定められた方法以外で送付すると違反となります。
信書に該当するもの・しないもの
何が信書に該当するのか・しないのかに関しては、総務省がガイドラインを提示しています。そのガイドラインによると、それぞれの具体例は以下のとおりです。
該当するもの
以下が総務省のあげる信書の該当例です。請求書のほか、見積書や納品書などの証憑書類は基本的に信書に該当します。
■書状
■請求書の類
【類例】
◇納品書、領収書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書
◇レセプト(診療報酬明細書等)
◇推薦書
◇注文書
◇年金に関する通知書・申告書
◇確定申告書
◇給与支払報告書
■会議招集通知の類
【類例】 結婚式等の招待状、業務を報告する文書
■許可書の類
【類例】 免許証、認定書、表彰状
※カード形状の資格の認定書などを含みます。
■証明書の類
【類例】
◇印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し
◇健康保険証
◇登記簿謄本
◇車検証
◇履歴書
◇給与支払明細書
◇産業廃棄物管理票
◇保険証券
◇振込証明書
◇輸出証明書
◇健康診断結果通知書・消防設備点検表・調査報告書・検査成績票・商品の品質証明書その他の点検・調査・検査などの結果を通知する文書
■ダイレクトメール
・文書自体に受取人が記載されている文書
・商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文書
引用:総務省「信書のガイドライン」
該当しないもの
他方で、以下のような送付物は信書に含まれません。
■書籍の類
【類例】
◇新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター
◇講習会配布資料
◇作文
◇研究論文
◇卒業論文
◇裁判記録
◇図面
◇設計図書
■カタログ
■小切手の類
【類例】
◇手形、株券
◇為替証書
■プリペイドカードの類
【類例】
◇商品券、図書券
◇プリントアウトした電子チケット
■乗車券の類
【類例】
航空券、定期券、入場券
■クレジットカードの類
【類例】
キャッシュカード、ローンカード
■会員カードの類
【類例】
入会証、ポイントカード、マイレージカード
■ダイレクトメール
・専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのようなもの
・専ら店頭における配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのようなもの
■その他
◇説明書の類(市販の食品・医薬品・家庭用又は事業用の機器・ソフトウェアなどの取扱説明書・解説書・仕様書、定款、約款、目論見書)
◇求人票
◇配送伝票
◇名刺
◇パスポート
◇振込用紙
◇出勤簿
◇ナンバープレート
引用:総務省「信書のガイドライン」
請求書は信書に該当!送付方法に注意
郵便法では、請求書を含めた信書を特定の方法で送付することを義務付けています。そのため、信書を送付する際は、以下の点に注意して法令を遵守しましょう。
請求書の送付方法は3つ
郵便法に従って請求書を送付する方法は、主に以下の3種類があります。
- 郵便
- 信書便
- メール
- 請求書発行サービス
郵便
請求書を紙で送付する最も一般的な方法は、日本郵便の郵便配達を利用することです。普通郵便(第一種/第二種郵便)、レターパック、スマートレターなどが信書に対応しています。重要な請求書の場合は、書留(簡易書留/一般書留)や特定記録郵便を利用して送達過程や引受けの記録を残すのもおすすめです。なお、日本郵便のサービスでも、ゆうパックやゆうメール、ゆうパケット、クリックポストは信書の送付に対応していないので注意してください。
信書便
一部の運送業者は、信書便法に基づき総務省から「信書便事業者」の認定を受けています。この信書便事業者が提供する信書便サービスを利用しても請求書を送付することは可能です。具体例としては、佐川急便の「飛脚特定信書便」があげられます。ただし、信書便事業者が提供するサービスでも、一般的な宅配便は信書の送付に非対応のため必ず信書便サービスを使いましょう。
メール・請求書発行サービス
請求書はPDF化してメールで送ることも可能です。この場合、メール本文が送付状と同じような役割を果たします。メールであれば郵便代の負担もなく、瞬時に先方へ送付することが可能です。また、電磁的方法であれば請求書発行サービスも役立ちます。このサービスを利用することで、請求書のアップロードやダウンロードをインターネット上のプラットフォームで行えるため、スムーズなやりとりが可能になります。
請求書だけを宅配便で送付することはできない
上述のように、信書便サービスで請求書を送ることは可能ですが、これ以外の一般的な宅配便で請求書だけを送ることはできません。ただし、無封(封筒に入れていないか、入れても封をしていない状態)であれば荷物と一緒に送付することは可能です。この場合、請求書は荷物を送るのに必要な添え状または送り状として扱われます。そのため、無封の状態で請求書や納品書を、納品物と一緒に宅配便で送付することも選択肢に入ります。宅配便で送付する場合の理解として知識を持っていることが大切です。
請求書を含む信書を郵送する際のポイント
請求書を含め信書を送付する際には、以下の点にも注意が必要です。
自社内の他部署宛てでも信書として扱う
状況によっては、自社の部署間で請求書(信書)のやりとりをすることもあるでしょう。社内のやりとりでは手続きを省略してしまいがちですが、社内だとしても治外法権ではなく、請求書が信書であることは変わりません。そのため、社内の他部署に請求書を送付する際も、上記で紹介した法律で認められている方法を使うようにしましょう。
不適切な送付方法だと罰則対象になる
先述のとおり、信書の送付方法は郵便法で指定されています。宅配便で請求書単体を送付するなど、不適切な方法を使うと法律違反になり罰則の対象になるので注意してください。また、たとえ実際に法的な罰則を受けることがなくても、不適切な方法で信書を送付すると、顧客や取引先からコンプライアンスの意識が低く危機管理がない企業、常識のない企業だとみなされ、自社の信用が下がるおそれがありますので、十分注意しましょう。
請求書は信書扱いになる!
請求書は信書扱いになります。「郵便」「信書便サービス」「メール」など、法律に則った方法で送付する必要があります。請求書は納品物と一緒に宅配便で送付することも多いですが、その際は無封の状態で入れる必要があります。信書を不適切な方法で送付すると、法律違反になるだけでなく自社の社会的信用にダメージを与えかねません。本記事で解説した方法を理解し、守り、適切な方法で送付しましょう。
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この記事の監修者市川 裕子(ビジネスマナー監修)
マナーアドバイザー上級、秘書検定1級、ビジネス実務マナー、硬筆書写検定3級、毛筆書写検定2級、収納アドバイザー1級、など。 出版社や人材サービス会社での業務を経験。秘書業務経験よりビジネスマナーとコミュニケーションの重要性に着目し、資格・スキルを活かし、ビジネスマナーをはじめとする各種マナー研修や収納アドバイザー講師として活動。