見積書が複数枚になる場合の書き方とは?作成のポイントも解説
監修者:小林祐士(税理士法人フォース)
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見積書を作成する際に項目数や明細が多いと複数枚にわたるケースがあります。自社の見積書のフォーマットが複数枚でない場合は、どのように作成したらよいでしょう?また、複数枚にわたる見積書を買手側に送る際はどのようなことに配慮すれば良いかがわからないことがあるかもしれません。
ここでは、見積書が複数枚になる場合の書き方や送付時のポイントを解説します。併せて、見積書が複数枚にわたる場合の管理する方法、見積書の記載項目や見積書を適格請求書(インボイス)として扱えるのかどうか、などについても紹介します。
見積書を発行する目的とは?
見積書を発行する目的は、提供する商品・サービスの価格や数量などを買手側にまえもって提示することです。したがって、見積書は契約が締結される前に取り交わされるのが基本です。
見積書の発行は義務ではありませんが、買手側は商品・サービスの価格などを他社の見積書と比較して契約先を決めたり、社内での予算の承認書類として添付したりすることもあるため、ビジネスでは一般的です。
また、見積書を発行してあらかじめ商品・サービスの価格や数量を明示しておくと、受注や請求の際にトラブルが起こりにくくなります。見積書は、取引をスムースに進めるための重要な役割を果たしているのです。
なお、後述しますが一般的には見積書が、適格請求書(インボイス)として利用されるケースは少ないでしょう。
見積書が複数枚になるケース
見積書は、記載する商品・サービスの品目や明細が多いと、複数枚にわたるケースがあります。
その他にも、納期や納品場所、支払期限などを細かく分けて記載する場合や、見積書をパターン別に作成する場合にも2枚以上となることがあります。
例えば、OA機器のリースなどの場合は、本体のリース料をはじめ、消耗品代や配送代、設置工事費用など、多数の項目や説明が必要です。このように見積書1枚にすべての項目を記載しきれない場合は、複数枚にわたって作成することとなります。
見積書の記載項目
見積書の記載項目に決まりはありませんが、一般的には以下の項目を記載します。見積書を作成する際は参考にしてください。
(1)見積書の宛先
見積書の宛先は、見積書を受領する事業者の名称を記載します。必要に応じて、担当者の所属部署名や氏名も記載してください。
宛先には敬称を忘れずに付けましょう。担当者などの個人名には「様」を、会社や部門には「御中」を付けます。会社名は「(株)」などで省略せず、正式名称で記載します。誤った名称を記載しないよう、作成前の確認が大切です。
(2)見積書の発行日
見積書の発行日は、発行年から記載してください。西暦・和暦について特にルールはありませんが、自社で使用する表記で統一するのが一般的です。
(3)通番
見積書を管理しやすくするため、通番を振っておくことをおすすめします。通番は、発行元が設定するのが一般的です。
通番は、一定のルールに基づいて振っておくと管理しやすくなります。買手側ごとの番号を決め、いつ取引が行われたのかを記載するといった振り方をするケースが多いようです。
通番の設定を自社内でルール化しておかないと、経理業務の負担が増してしまうため、きちんとルールを設定しておきましょう。なお、見積書が複数枚にわたる場合は、枝番を振ることで対応ができます。例えば、通番を「001」と設定したら、1枚目は「001-1」、2枚目は「001-2」と枝番を振るとわかりやすくなります。
(4)発行側の会社名、住所、電話番号など
見積書の発行側の会社名や住所、電話番号は、受領側がどの会社からの見積書であるかを確認する際に必要です。
見積書の内容について、受領側が問い合わせたい場合にスムースに連絡できるように、電話番号やメールアドレスなどの連絡先も記載します。担当者の所属部門も記入しておくと、より親切です。
(5)発行側の会社印
発行側の会社印は、見積書に必須というわけではありません。しかし、会社印の押印があれば印影の真偽の検証によって「該当の企業や個人事業主が発行したものである」という信頼性や信憑性を持つものと考えられています。2021年4月からは税務関係書類への押印義務が原則として廃止され、今後も、押印を必須とする流れは弱まっていく見込みです。
ただし、ビジネスにおいてトラブルを避けるためにも、先方から押印を希望されたら、できる限り対応することをおすすめします。
(6)見積書の有効期限
見積書に有効期限を記載することで、期限が過ぎてからの金額変更や申し込みなどを避けたりすることができます。記載している有効期限を過ぎると、その見積書は無効となるため、自社のルールに則って期限を設定しましょう。提示先においても有効期限後は、社内の発注承認ができなかったり、再発行を依頼されたりするケースもあるでしょう。
(7)見積金額
見積金額は、税込みの場合も税抜きの場合もあります。特に企業間取引の場合は、商品やサービスの価格と消費税額などを明確にするために税抜で記載するケースもあるので、買手側に確認して適切に対応してください。
(8)商品名・商品コード
取引する商品・サービス名は、見積書の受領側(買手側)がわかりやすいようにすることが大切です。商品名や商品コードなど、買手側に伝わるように記入してください。特に見積書が複数枚にわたる場合は、同じ商品やサービスはページごとに記載が変わるとわかりにくいので、統一するようにしましょう。
(9)商品・サービスの数量
商品・サービスの数量は、単位と共に記載します。間違いのないように記載しましょう。
(10)商品・サービスの単価
商品・サービスの単価は、税抜価格で記載するのが一般的です。正確に記載してください。
(11)商品の金額
商品の金額は、品目ごとに「その商品の単価×数量」で算出される金額を記載します。こちらも間違えるとトラブルになる可能性があるため、正確に記載することが大切です。
(12)小計
見積書では商品ごとの金額を足して小計を記載します。複数枚にわたる見積書では、ページごとや要件の塊ごとに小計を記載することもあるでしょう。
(13)消費税など
消費税は、標準税率(10%)と軽減税率(8%)の2種類があるため、両方が含まれる取引の見積書では税率ごとに分けて記載します。
小数点以下を切り上げるのか、切り捨てるのかなどのルールは、買手側と事前に取り決めておきましょう。
なお、適格請求書では税率ごとに消費税を記載する必要があります。適格請求書発行事業者である場合、発行する見積書が適格請求書に該当しない場合でも、適格請求書の記載ルールに合わせて記載しておくのが無難です。適格請求書として発行する請求書や領収書の消費税額も見積時に提示しておくことで、付け合わせが楽であったり、金額の認識のずれを軽減できるためです。
(14)合計金額
合計金額は、見積金額と同じになります。相違ないかどうかを必ず確認してください。特に複数枚にわたる見積書では、すべてのページの集計漏れがないように十分に確認を行いましょう。
(15)備考
備考には、買手側との認識の齟齬を軽減するために、補足情報や付帯情報を記入します。キャンセルポリシーや返品・返金に関するポリシー、品質保証についてなど、その他の条件や取引に関する注意事項も必要に応じて記入してください。
その他、納品先が複数ある場合の商品・サービスの納品先や納期、支払条件などを記入します。支払条件については、「現金」「振込」などの支払方法のほか、振込先金融機関の口座番号、支払期限、一括か分割かなどを記載します。ただし、これらは別の書類に明細として記載するケースもあるため、そのような場合には記入する必要はありません。
見積書の記入イメージ
見積書を複数枚作成する際のポイント
見積書を複数枚にわたって作成する場合は、いくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは、4つのポイントについて解説します。
合計枚数がわかるようにする
見積書が複数枚にわたる場合は、送付先が混乱せず内容を確認できるよう、また自社側でも漏れなく管理するためにも、合計枚数がわかるように作成することをおすすめします。枚数がわかることで問い合わせ対応の際、何枚目の件、枚数が足りないなど 確認が容易になります。
見積書に限らず、複数枚で1組となる書類はすべて揃った状態で送付・保管する必要があります。合計が何枚なのかがわかるようにするには、枝番を振ることがおすすめです。
例えば、営業部が作成した1通目の見積書の通番が「001」の場合、1枚目は「001-1」、2枚目は「001-2」と枝番を振るとわかりやすくなります。
送付先から問い合わせがあった場合も、枝番を振っておくとスピーディーに対応できるようになるため便利です。
なお、見積書が複数枚にわたる場合は備考欄にもページ数を記載しておくことをおすすめします。全部で5枚ある場合の1枚目には「1/5」、2枚目には「2/5」というようにページ数を振っておくと、一部のページを紛失した場合でも、どのページがないのかがすぐにわかり、スピーディーに対応可能です。
合計金額をわかりやすく記載する
見積書の記載方法には、明確な取り決めがありません。そのため、合計金額の書き方もさまざまです。複数枚にわたる場合は、合計金額を1枚目に大きく記載することもあれば、最後のページに記載するケースもあります。
ここで注意したいのは、複数のページに合計金額を記載しないことです。どのページにも合計金額が載っていると、そのページの小計なのか、見積書全体の合計金額なのかがわかりにくくなってしまいます。受領側を混乱させないためにも、見積書は見やすく作成しましょう。
1枚ごとに小計金額を記載する
見積書が複数枚にわたる場合は、合計金額とは別に、1ページごとに小計金額を記載するのがおすすめです。すべてのページの同じ位置に小計欄があれば、ページごとの内容を把握しやすくなります。また、見落としを防ぐことにもつながります。
送付する際に合計枚数を伝える
複数枚にわたる見積書を送付する際は、受領側に合計枚数を伝えることが大切です。見積書を郵送する場合は、送付状を添付することがビジネスマナーとなっています。
送付状は、書類の発送元や宛先、同封されている書類の内容などが簡潔に記載されている添え状です。郵送の場合は、この送付状に見積書の合計枚数を記載してください。
一方、現在はメールに見積書のPDFファイルを添付して送付するといったケースも増えています。この場合は、メールの本文が添え状の役割を果たすため、見積書の合計枚数を記載しておきましょう。
あらかじめ見積書が何枚なのかを伝えておくことで、受領側は見積書の枚数がわかるだけでなく、その場で枚数を確認して、全ページ揃っているかどうかを判断することも可能です。
見積書の備考欄にページ数を記入しておくだけでは、先方が見落としてしまう可能性があるため、送付状やメール本文にも記載しておくことをおすすめします。
見積書は適格請求書として扱える?
一般的には見積書だけで適格請求書(インボイス)として利用することは少なく、買手先に求められる場合などに限られると考えられます。 なぜなら、見積書は取引が発生する前に取り交わされる書類であり、取引金額と消費税額が確定していないためです。
適格請求書とは、適格請求書発行事業者である売手側が買手側に対して適用税率や消費税額を正確に伝えるため、一定の事項を記載して作成する書類です。インボイス制度では、買手側が仕入税額控除を受けるため、要件を満たした事項が記載された適格請求書が必要です。
なお、単独書類で適格請求書の要件を満たさない場合、複数の証憑書類を相互に関連付けることによっても適格請求書として取り扱うことができます。
例えば、請求書が適格請求書の記載要件を満たしていない場合は、その請求書の基となった納品書や見積書を組み合わせることで適格請求書の記載要件を満たせるなら、複数の書類を合わせて適格請求書とすることができます。これは、見積書が複数枚になった場合も同様です。この場合も、取引前に発行する見積書を適格請求書として関連付けて使用することはまれと考えて良いでしょう。
見積書は、整理と保存の観点で管理する
見積書が複数枚にわたる場合、「整理」と「保存」の2つの観点で考えると管理しやすくなります。それぞれのポイントは以下のとおりです。
見積書の整理
複数枚にわたる見積書を整理する方法は、大きく2パターンあります。それぞれの方法について解説します。
取引先別に整理する方法
見積書が複数枚にわたる場合でも、取引先別に整理すると、同じ取引先と継続的に取引をしている場合に管理がしやすいというメリットがあります。デメリットは、月ごとの全体取引額を把握しにくいことです。複数枚にわたる見積書はバラバラにならないように保存することも大切です。
月別に整理する方法
見積書が複数枚にわたる場合でも、月別で整理すれば月間の取引額を把握しやすくなります。ただし、特定の取引先との取引総額や回数などを確認したい場合などにそれぞれ各月から該当する取引先の見積書をさがす時間がかかる点はデメリットといえます。
さらに見積書を事業年度の月でまとめておくと保存期間を過ぎた書類が一目で判断できるので、廃棄するタイミングがわかりやすくなります。保存期間の過ぎた見積書をスムースに廃棄するためには「毎年1年分の見積書を業者に廃棄してもらう」など、廃棄のルールを決めておくのがおすすめです。こうしたルールを決めておけば、手間をかけずに見積書を管理できます。
一般には見積書は納品書や請求書と併せて「月別に整理する」ケースが多いようです。
見積書の保存
見積書を受領したら、適切に保存する必要があります。複数枚にわたる見積書を紙で受領した際は、まずは一時的にファイルに入れて保存することをおすすめします。発注に至らないケースの見積書もあるでしょう。そのため、納品書や請求書といった他の書類と混同させないことが大切です。
見積書を電子データで受領した場合は電子帳簿保存法の「電子引のデータ保存」に則り、電子データのまま保存する必要があります。2024年1月1日以後の電子取引はデータのまま要件に従って保存することが、完全義務化されているので法人・個人を問わずほぼすべての事業者は対応が必要です。
なお、電子帳簿保存法では、紙で受領した見積書をスキャナで読み取り、データ化して保存することが認められています。スキャナ保存をするかどうかは任意ですが、スキャナ保存をする場合は、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件に沿って対応してください。
見積書を発行する側は、受注に至った見積書と受注に至らなかった見積書をどのように保管するかルールを決めて運用することをおすすめします。
受注に至った見積書は、納品書・請求書と関連書類が発生しますので、決められた期間保存をします。
一方、受注に至らなかった見積書は、後日「この前の金額で再検討したい」などの問い合わせの対応やほかの取引での参考になることもあるからです。そのため、受注に至らなかった見積書については、どのように保管するかをルールを決めておくと管理が容易です。
なお、一つの取引に関して、異なる取引条件等に応じた複数の見積金額が記録された見積書データを授受した場合、検索機能における記録項目である「取引金額」は、課税期間において自社で一貫して規則性を持っている限り、見積書データに記録されている見積金額のうち、どの見積金額を用いても差し支えないと電子帳簿保存法一問一答に記載されています。
見積書を複数枚作成する際は、わかりやすさが大切
見積書は、取引をする商品・サービスが多岐にわたると、複数枚の発行が必要になる場合があります。見積書の枚数が増えた場合は、すべてが揃った状態で送付できているかどうか、十分に注意することが重要です。
見積書を複数枚作成する際に大切なのは、わかりやすさです。合計枚数は通番に枝番を振り、合計金額は小計とは区別して大きく記載するなどして、受領側に正確に伝わるようにすることをおすすめします。
また、見積書を適切に管理するには、取引先別・月別などで整理し、わかりやすく保存しましょう。見積書を電子データで受領した際は、電子帳簿保存法の「電子取引のデータ保存」の要件に沿って保存が必要です。
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この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
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税理士法人フォース 代表社員
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