フリーランスエンジニアが経費にできる項目・できない項目の例を解説
監修者: 奥 典久(奥典久税理士事務所)
更新

フリーランスエンジニアとして活動する際は、毎年の確定申告に備え、経費に計上できる項目とできない項目を正確に把握しておくことが重要です。本記事では、フリーランスエンジニアがどのようなものを経費として計上できるのかについて詳しく解説します。また、正確な経費計上が確定申告でどのようにプラスになるのかについてもまとめました。フリーランスとして活動を始める前に知っておきたい経費計上のポイントを理解できる内容ですので、ぜひ参考にしてください。
経費とは事業を行うために必要な費用のこと
フリーランスエンジニアにとって経費とは、事業活動を行うために必要な費用を指します。出費が経費に該当するかどうかを判断するポイントは、事業活動で必要な支出なのか、売上につながるかどうかです。
例えば、業務用のパソコンやソフトウェアの購入費、クライアントとの打ち合わせにかかる交通費などは経費に該当します。その一方で、プライベートの出費や事業に直接関係のない支出は経費として認められません。日々の支払いを経費とそうでないものに正しく区別することで、経理業務がスムーズになり、適切な税務処理を行えます。
フリーランスエンジニアが経費にできる項目の例
ここでは、フリーランスエンジニアが経費にできる費目の例について解説します。経費を正しく把握することにより、事業運営の透明性が高まるだけでなく、財務管理の効率が高まります。
パソコンや周辺機器の購入費
フリーランスエンジニアが、仕事に欠かせないパソコンや周辺機器の取得費用は経費になります。
10万円未満の機器であれば基本的に一括で計上が可能ですが、10万円以上の機器は耐用年数に応じて減価償却処理が必要です。ただし、青色申告をする場合は、少額減価償却資産の特例によって10万円以上30万円未満の資産を取得したその年に一括償却できます。高額な機器を取得したり使用したりすることが多いフリーランスエンジニアには、青色申告がおすすめです。
フリーランスエンジニアが経費に計上できる機器は、パソコンや外付けHDDなどのほか、映像や画像の編集を手がけている場合は外付けグラフィックボードといったものも含まれます。これらは、業務を効率的に進めるために必要不可欠な機材であり、適切に経費として計上することで、税務面でのメリットを享受できます。
インターネット・サーバー代などの通信費
インターネット回線の利用料や月々のサーバー代なども、事業で使うなら経費計上が可能です。また、業務で使用するスマートフォンや固定電話にかかる費用も、経費に含まれます。例えば、回線契約時の手数料やクライアントとの打ち合わせで発生した通話料金、スマートフォンでプロジェクト管理アプリを使用した場合のデータ通信費などは、すべて経費として扱えます。
地代家賃
地代家賃もフリーランスエンジニアが経費に計上できる項目の1つです。仕事専用のオフィスを借りている場合は、その家賃全額を経費として計上できます。
自宅で仕事をしているケースでは、業務に使っているスペースの面積や時間に基づいて按分したうえで、家賃の一部を経費として計上可能です。例えば、自宅の1部屋を仕事場として使っている場合、その部屋の面積が住宅全体の20%であれば、家賃の20%を経費として計上できます。自宅と仕事場を兼用する際は、事業に使用する割合を求めたうえで按分しましょう。
水道光熱費
水道光熱費も経費として計上することが可能です。オフィスを借りている場合、オフィスで使用した電気代、水道代、ガス代などが該当します。これらはすべて事業活動を行うために必要な費用とみなされ、経費として認められます。
自宅で仕事をしている場合は、地代家賃と同様に按分しましょう。具体的には、使用日数や使用時間に基づいて、事業に使用する費用を計算します。例えば、1週間(168時間)のうち50時間を仕事にあてている場合は、水道光熱費の約30%を経費として計上できます。
ただし、フリーランスエンジニアが自宅兼事務所としている場合には、水道光熱費のうち水道代やガス代は直接業務と関係ないことが多いでしょう。そのため、経費計上できるのは電気代が中心になります。
オフィス用品などの消耗品費
業務で使用するオフィス用品や事務用品などの購入代金も、経費として計上できます。経費となるのは、ペンやノート、コピー用紙などの事務用品、USBメモリや外付けHDD、プリンターのインクカートリッジ、セキュリティソフトなど、業務に使うもの全般です。
日々の業務に欠かせない消耗品を適切に経費として計上すると、正確に所得を計算できます。
専門書の購入費・勉強会やセミナーへの参加費
フリーランスエンジニアの仕事に必要な書籍の購入費は、新聞図書費として経費にできます。具体的には、最新技術を学ぶための書籍や業界の動向を把握するための専門誌、技術系情報を配信するニュースサイトの購読料や電子書籍などが該当します。
勉強会やセミナーに参加する際は、参加費だけでなく交通費も経費として計上が可能です。ただし、事業に関係のない書籍の購入費やセミナーへの参加費などは、経費として認められません。
固定資産税・印紙税など
フリーランスエンジニアが経費に計上できる項目には、固定資産税や印紙税も含まれます。オフィスや事業用設備を所有しており、固定資産税が発生している場合、その費用は租税公課として経費計上が可能です。持ち家をオフィスとして使っている場合は、面積や使用日数を基に按分した固定資産税の一部を経費に含めることができます。
また、事業にかかわる契約書の作成や、業務で発生する領収書にかかる印紙代も、すべて経費として計上できます。
接待交際費
フリーランスエンジニアの業務に関係する接待交際費も、経費に計上することが可能です。例えば、クライアントとの商談をスムーズに進めるための会食にかかる費用や、感謝の気持ちを表すために送るお中元・お歳暮の費用などが該当します。これらはすべて、取引相手と良好な関係を築き、維持するために必要な経費として認められます。
第三者に業務を委託する際の外注費
フリーランスエンジニアは、第三者に業務を委託する際の外注費も経費にできます。該当する項目は、事業用ホームページや仕事にかかわる動画コンテンツの制作費、名刺のデザイン料などです。これらの外注費は、事業活動を円滑に進めるために必要なものとして認められます。専門的なスキルを持つ外部のプロフェッショナルに依頼し、クオリティの高い成果物を得ることは、効率的な事業運営にも役立ちます。
出張時の宿泊費・交通費
フリーランスエンジニアが経費にできる項目には、出張時の宿泊費や訪問先へ移動する際の交通費なども含まれます。クライアントとの打ち合わせや事業に関する作業で出張が発生した場合、その際にかかった宿泊費や交通費は旅費交通費として経費計上が可能です。具体的には、新幹線や飛行機のチケット代、宿泊施設の費用、タクシー代などです。
ただし、出張とプライベートの旅行を兼ねる場合は注意が必要です。出張のついでに観光をした場合、観光にかかった費用は経費として計上できません。こういったケースでは、事業に直接かかわる部分を按分し、事業に関連する部分のみを経費として計上します。
フリーランスのエンジニアが経費にできない項目の例
経費は、あくまでも事業で収益を得るために必要な費用です。したがって、プライベートな支出は経費に含めることはできません。経費に該当しない項目は、自宅の家賃の全額や個人的な飲食費、趣味や娯楽に関する支出、生活費全般、家族旅行の費用などです。
国民年金保険料や国民健康保険料などの社会保険料は、経費に含めることはできないものの、確定申告の際に所得金額から控除できます。確定申告で社会保険料控除の申告をすることで、所得税や住民税の負担軽減につながります。
ここからは、フリーランスエンジニアが経費にできない費目の例について解説します。
所得税や住民税などの税金
個人が収める税金は、事業活動を行わなくても発生するため、経費として計上できません。例えば、年間所得に対して課される所得税や自治体に支払う住民税は、事業経費として認められません。
ただし、印紙税や消費税、事業税など、事業にかかわる税金は、経費として計上できます。
スーツや仕事用に使うバッグ
スーツやビジネスバッグは、プライベートでも使用できるため、経費に含めることはできません。ただし、すべての衣服や服飾雑貨が経費にならないわけではなく、例外もあります。
例えば、委任契約で企業に常駐する場合やインフラ設置などに携わるエンジニアの場合、必要に応じて衣服の経費計上が認められることがあります。
この場合に該当するものは、ユニフォームや特定の用途に限られる作業用衣類など、業務でのみ使用することが明確なものです。
その他プライベートでの出費
事業活動に関係ないプライベートな支出は、経費に計上できません。例えば、健康診断にかかった費用や医療費、家庭用医療品の購入費などが該当します。
ただし、一定以上の医療費がかかった場合は、確定申告の際に医療費控除またはセルフメディケーション税制の適用を受けられます。
また、治療を受けたときの医療費の領収書、ドラッグストアで購入した医薬品のレシート、通院にかかった交通費のレシートも保存する必要があります。なお、医療費控除は同一生計の家族分も対象になります。
医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制の適用には健康診断の受診が要件となっているため、健康診断の領収書は捨てずに保管しておきましょう。
医療費控除について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
経費として計上させるには領収書・レシートが必要
正しく経費を計上するためには、実際に支払った金額がわかる証明書が必要です。支払先が発行する領収書やレシートは必ず受け取り、記載されている内容を確認してから保管するようにしましょう。
一般的なレシートには、販売店名や購入日時が印字されていますが、商品名が途中で切れてしまったり、購入品の詳細がわからなかったりする場合もあります。そのようなときは、日付や品名、購入目的などを追記しておくことで、経費としての証明ができます。
ただし、納税者がインボイス登録をしている場合は、発行元の事業者に対して誤りがあったことを伝え、修正を依頼しなければなりません。要件を満たさない領収書は消費税申告では認められないため、自身で修正を加えることがないよう注意しましょう。
また、レシートや領収書は、経費の金額や内容を証明する重要な書類であり、一定の保存期間が設けられています。証憑の保存は義務であり、期間内に処分してはいけません。
領収書は、支払を証明する重要な書類です。税務署に提示を求められた際は、提示・説明ができるよう適切に保存しておく必要があります。領収書の保管期間について、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
領収書・レシートをもらえなかったときの対応
自動販売機や駅の券売機などでは、レシートが発行されません。また、受け取ったレシートや領収書を紛失してしまうこともあるでしょう。こういった場合は、別の書類を領収書やレシートの代わりにすることで、経費として計上可能です。具体的には、請求書や納品書、支払通知書、出金伝票などが代替書類となります。
インボイス(適格請求書)制度に登録している場合は、原則としてインボイス(適格請求書)がないと、経費計上は可能でも消費税の仕入税額控除ができなくなります。ただし、自身が簡易課税制度を選択している場合、売上で受け取った消費税額と、業種ごとに決められた「みなし仕入率」で消費税の納税額を計算するため、受け取る請求書や領収書がインボイスである必要はありません。
不適切な経費計上はペナルティが課されることもある
正確な申告納税を行わないと、税務調査の対象となる可能性があります。
正しく申告するためには、正しく経費を計上することが大切です。例えば、経費にならないものを経費として計上し、本来支払うべき税金よりも少ない金額を申告した場合は、過少申告加算税や重加算税などのペナルティが課されることがあります。特に重加算税は、偽装や隠ぺい行為に対するペナルティであり、35%もの重加算税が加算されることがあります。税金は必ず正確に申告しましょう。
また、電子帳簿保存法では、不正に電子取引のデータ保存やスキャナ保存を行っている場合、さらに重加算税が10%加重されることが定められています。
電子帳簿保存時の不正に対する罰則について詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。
経費にできるもの・できないものを把握して正確に計上しよう
フリーランスエンジニアが事業を効率的に進めるためには、経費にできる項目を正確に把握し、適切に計上することが重要です。パソコンや周辺機器の購入費、通信費、地代家賃などは経費として認められますが、所得税や住民税、プライベートな出費などは経費に含まれません。また、経費の内訳を証明するためには、領収書やレシートを保管しておくことが大切です。弥生の「やよいの青色申告 オンライン」や「やよいの白色申告 オンライン」を活用して、経費の管理と確定申告をスムーズに行いましょう。
無料で【確定申告の流れがわかる手順と確定申告ソフトの活用方法】をダウンロードする
確定申告ソフトなら、簿記や会計の知識がなくても確定申告が可能
確定申告ソフトを使うことで、簿記や会計の知識がなくても確定申告ができます。
今すぐに始められて、初心者でも簡単に使える弥生のクラウド確定申告ソフト「やよいの白色申告 オンライン」とクラウド青色申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」から主な機能をご紹介します。
「やよいの白色申告 オンライン」は、ずっと無料、「やよいの青色申告 オンライン」は初年度無料です。両製品とも無料期間中もすべての機能が使用できますので、気軽にお試しいただけます。もちろん、確定申告もe-Taxでの申告が可能です!
初心者にもわかりやすいシンプルなデザイン

弥生のクラウド確定申告ソフトは、初心者にもわかりやすいシンプルなデザインで、迷うことなく操作できます。日付や金額などを入力するだけで、確定申告に必要な帳簿や必要書類が作成できます。
取引データの自動取込・自動仕訳で入力の手間を大幅に削減

弥生のクラウド確定申告ソフトは、銀行・クレジットカードなどの金融機関の明細や電子マネー、POSレジ、請求書、経費精算等のサービスと連携すると日々の取り引きデータを自動で取得します。
自動取得した取引データはAIが自動で仕訳して帳簿に反映します。学習機能があるので、使えば使うほど仕訳の精度がアップします。紙のレシートは、スマホやスキャンで取り込めば、文字を認識してデータに変換し、自動で仕訳します。これにより入力の手間と時間が大幅に削減できます。
確定申告書類を自動作成。e-Tax対応で最大65万円の青色申告特別控除もスムーズに

弥生のクラウド確定申告ソフトは、画面の案内に沿って入力していくだけで、収支内訳書や青色申告決算書、所得税の確定申告書、消費税の確定申告書等の提出用書類が自動作成されます。
「やよいの青色申告 オンライン」なら、青色申告特別控除の最高65万円/55万円の要件を満たした資料の用意も簡単です。インターネットを使って直接申告するe-Tax(電子申告)にも対応し、最大65万円の青色申告特別控除もスムーズに受けられます。
自動集計されるレポートで経営状態がリアルタイムに把握できる

弥生のクラウド確定申告ソフトに日々の取引データを入力しておくだけで、レポートが自動で集計されます。経営状況やお金の流れをリアルタイムで確認できます。最新の経営状況を正確に把握することで、早めの判断ができるようになります。
この記事の監修者奥 典久(奥典久税理士事務所)
奥典久税理士事務所 代表
簿記専門学校で税理士講座講師として勤めたのち、会計事務所で勤務。その後独立し、奥典久税理士事務所を開業。相続(贈与)対策や事業承継コンサルティング経営、財務コンサルティングから各種セミナーなど、幅広く税理士業務に従事。
