住民税はいつから納付が必要?納付の時期や計算方法などを解説
監修者: 岡本匡史(税理士)
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社会人1年目は、前年に所得がなければ住民税はかからないことが一般的です。そのため、いつから住民税の納付が始まるのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
本記事では、住民税の算定期間や納付時期、均等割と所得割の計算方法の他、納付できない場合の対処法について解説します。
住民税とは居住する地方自治体に納める地方税
住民税とは、居住する地方自治体に納める地方税です。地方自治体と国は、住民に提供する行政サービスを分担しており、上下水道や消防・救急サービス、福祉、学校教育などといった、生活に身近な行政サービスは、地方自治体によって提供されています。住民税はこうした地方自治体の行政サービスを支えるための税金です。
住民税には、都道府県に納付する道府県民税(都民税)と、市区町村に納付する市町村民税(特別区民税)の2種類があります。ただし、実際に納付する際は、道府県民税(都民税)と市町村民税(特別区民税)をまとめて納付するため、両者を区別して考える必要はありません。
また、住民税は個人住民税と法人住民税の2種類に分かれますが、住民個人が負担するのは個人住民税です。そのため、本記事では個人住民税を住民税と表記して解説します。
住民税については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
住民税の算定期間は前年の1月から12月まで
住民税の算定期間は、前年の1月から12月までです。住民税の額はこの期間の所得を基に計算され、翌年に納付します。そのため、年末調整や確定申告で前年の所得金額が確定している人は、住民税に関して申告をする必要はありません。
一方、年末調整や確定申告をしていない人は、所得などの条件に応じて市区町村への住民税の申告が必要になる場合があります。
ここでは、給与所得者と個人事業主やフリーランスに分けて、1年間の所得金額や住民税の算出について解説します。
給与所得者は1年間の給与と賞与を基に計算する
給与所得者の場合、1月から12月までに支給された給与と賞与を基に、年末調整で所得金額と所得税を確定し、それに応じて住民税の額も決まります。4月入社の新社会人の場合は、4月から12月までの9か月間の給与と賞与から所得金額と所得税が決まり、翌年から住民税が課税されるというしくみです。
ただし、給与が月末締め翌月払いの企業では、12月分の給与は翌年1月に支払われるものの、この場合は前年の所得ではなく翌年の所得となります。
個人事業主やフリーランスは1年間の売上と経費を基に計算する
個人事業主やフリーランスの場合は、1月から12月までの売上から経費を差し引いた金額が、1年間の所得金額です。この所得金額から所得控除などを差し引いた、課税所得金額を基に住民税が計算されます。
個人事業主やフリーランスの所得金額は、一般的に取引の成立時点で売上があったとみなす発生主義で計算します。例えば、12月締め翌年1月払いの売上があった場合、発生主義ではこの売上は、翌年1月ではなく、12月の売上です。なお、取引先の倒産などによって未回収になってしまった売上については、その時点で必要経費になります。
ただし、一定の条件を満たす場合は、実際の入金のタイミングで売上があったとみなす現金主義を採用できます。この場合、12月締め翌年1月払いの売上は翌年1月に計上するため、その年の所得金額には含まれません。現金主義を採用している個人事業主やフリーランスは、1月から12月までに入金された金額を基に確定申告をします。
いつから住民税を納付するのか
住民税の納付方法は、年末調整の対象となる給与所得者と、確定申告を行う個人事業主やフリーランスで異なります。ここでは、給与所得者と個人事業主やフリーランスに分けて、住民税の納付が始まる時期について解説します。
給与所得者は社会人2年目の6月の給与から差し引かれる
給与所得者の場合は、社会人2年目の6月以降、給与から住民税が差し引かれるようになります。住民税は前年の所得を基に計算されるので、多くの場合、社会人1年目は住民税の負担がありません。
1年目の年末調整で所得金額が確定すると、その所得金額を基に、地方自治体が住民税の額を計算します。住民税の額が決定すると、社会人2年目の6月から3年目の5月までの12か月間の給与から、均等に差し引かれ、賞与からの控除はありません。住民税の額に端数がある場合は、6月給与からの控除で調整されます。
なお、住民税は前年分の所得を基に計算されるため、勤務先を退職しても納付の義務はなくなりません。給与所得者が退職する場合は、以下のいずれかの方法で、1年間の住民税の残額を納付します。
給与所得者が退職する場合の納付方法
- 給与や賞与から一括で特別徴収して納付する
- 転職先の企業で特別徴収を継続する
- 普通徴収で納付する
個人事業主やフリーランスの最初の納期限は確定申告年の6月
個人事業主やフリーランスの場合、住民税の最初の納期限は、初めて確定申告をした年の6月です。確定申告をしていない場合は、税務署と地方自治体で情報を共有できないため、別途、居住している自治体に住民税の申告が必要になるので注意してください。
6月ごろになると、自宅に住民税決定通知書と納付書が送付されてくるので、6月末日、8月末日、10月末日、翌年1月末日の年4回、届いた納付書を使って納期限内にそれぞれ納付します。住民税は金融機関やコンビニエンスストア、市区町村窓口などで納付でき、一部の自治体では、クレジットカード決済やスマホ決済も利用できます。
また、住民税は1年分をまとめて納付することもできるため、納付忘れや納付書の紛失が不安な場合は、まとめて納付するとよいでしょう。口座振替での納税も可能で、一度手続きをすれば、その後は納付の手間がかかりません。
なお、個人事業主やフリーランスを廃業した場合でも、引き続き住民税の納付が必要です。住民税は廃業をした年の所得にも課税されるため、年の途中で廃業したとしても、その年1年間の所得に応じた住民税を、翌年も納付しなければなりません。
住民税の額は均等割と所得割の合計で算出できる
住民税は、所得金額にかかわらず定額の均等割と、前年の所得金額に応じて負担する所得割で構成されており、それぞれの税額を計算して合計すれば、住民税の額がわかります。また、毎年6月ごろに納税者本人や勤務先に届く住民税決定通知書でも確認することが可能です。
均等割は、所得金額にかかわらず定額が課されます。均等割の額は自治体によって異なりますが、一般的に道府県民税(都民税)は年1,000円、市町村民税(特別区民税)は年3,000円で、合計年4,000円です。
所得割は、所得金額に応じた額が課されます。所得割の額は、前年の1月1日から12月31日までの所得に、自治体ごとに決められた税率を掛けて算出されます。なお、所得割の税率は地方自治体によって異なりますが、一般的に道府県民税(都民税)が4%、市町村民税(特別区民税)は6%で、合計10%です。均等割と所得割で構成される、住民税の内訳のイメージは以下のとおりです。
個人住民税の内訳

均等割と所得割については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
納期限までに住民税の納付が難しい場合の対処方法
住民税を納期限までに納付できない人は、速やかに市区町村役場の税務課に相談してください。分納などの対応をとってもらえる可能性があります。また、納付書をなくしてしまった場合も、市区町村役場の税務課に依頼すれば、新しい納付書を発行してもらうことが可能です。
住民税を納期限までに納付しなければ、督促状が届きます。住民税を延滞すると、延滞した金額と日にちに応じた延滞税がかかるため、督促状が届く前に納付することが重要です。督促状が届いても納付しない場合には、さらに催告書が届きます。催告書を受け取った後、それでも納付しなければ、財産が差し押さえられてしまいます。住民税の納付が遅れて、財産の差し押さえの処分を受けることがないよう、住民税に関して不安があれば、できるだけ早く市区町村役場の税務課に相談しましょう。
また個人事業主やフリーランスの場合、確定申告の内容によって還付金を受けられる場合があります。住民税の納付時期や金額を事前に把握し、還付金を住民税の納付に充てられるか検討しておくことも大切です。
適切に住民税を納付するため正しく確定申告をしよう
住民税の額は前年の所得を基に計算します。個人事業主やフリーランスの場合は、確定申告で決定した課税所得金額を基に住民税の額が算出されるため、正しく確定申告をすることが重要です。
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よくあるご質問
住民税はいつから差し引かれる?
住民税の算定期間は、前年の1月から12月までです。住民税の額はこの期間の所得を基に計算され、翌年に納付します。
給与所得者の場合は、社会人2年目の6月以降、給与から住民税が差し引かれるようになります。そのため多くの場合、社会人1年目は住民税の負担がありません。
詳しくは「いつから住民税を納付するのか」の項目をご確認ください。
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この記事の監修者岡本匡史(税理士)
「岡本匡史税理士事務所」の代表税理士。
1979年和歌山県生まれ。滋賀県立膳所高校、横浜国立大学経営学部卒業。城南信用金庫、公認会計士事務所勤務を経て、2012年に豊島区池袋にて岡本匡史税理士事務所を設立。
低価格で手厚いサポートを行うことを目標としており、特に開業前~開業5年目の法人・個人事業主の税務会計が得意。
毎年、市販の確定申告本や雑誌の監修にも携わっている。
