税額控除とは?種類や所得控除との違い、確定申告時の注意点を解説
監修者:岡本匡史(税理士)
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確定申告をする際の控除には「税額控除」と「所得控除」がありますが、算出された税金の額から、一定の金額を差し引くことを税額控除といいます。税額控除には住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)をはじめ、さまざまな種類があります。上手に活用することで、節税を目指しましょう。
本記事では、税額控除と所得控除の違いや、税額控除の種類の他、確定申告をする際の注意点について解説します。
税額控除と所得控除の違い
税額控除と混同しやすい控除として、所得控除があります。税額控除が税金から差し引くものであるのに対して、所得控除とは所得額から一定額を差し引く制度です。所得控除は全15種類あり、扶養控除や医療費控除などは所得控除にあたります。どちらも節税になりますが、控除のタイミングが異なるのが特徴です。
所得税は所得額に対して課税されるため、所得額が少ないほど所得税は少なくなります。所得控除は所得額の計算段階で控除され、課税される所得額を少なくすることで、節税できる控除です。一方、税額控除は所得額が確定し、所得税額が計算された段階で、所得税額から控除されます。
例えば、所得額が100万円で、税率が5%、所得控除が10万円だとします。もし所得控除がなければ、100万円×5%で税額は5万円ですが、所得控除10万円があるため、税額は(100万円-10万円)×5%で4万5,000円となり、5,000円の節税です。
一方、課税される所得額が100万円で、税率が5%、税額控除が3万円だった場合には、100万円×5%-3万円で、税額は2万円になります。税額から直接差し引かれる税額控除の方が、節税のインパクトは大きくなります。
所得控除については別の記事で解説していますので、参考にしてください。
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税額控除の種類
税額控除にはさまざまな種類があります。一般的に利用されることが多いのは住宅借入金等特別控除ですが、それ以外の主な税額控除についても知っておきましょう。節税のためには、利用できる控除を見落とさないことが大切です。
住宅借入金等特別控除
一般的に住宅ローン控除と呼ばれる住宅借入金等特別控除は、住宅ローンを借りて一定の要件を満たす住まいを新築、取得、増改築した場合に利用できる控除です。住宅ローンの12月31日時点の借入残高をもとに控除額が決まります。
なお、住宅借入金等特別控除は、初年度の確定申告が必要ですが、2年目以降は勤務先の年末調整で申告できます。給与所得者は初年度のみ確定申告をしてください。年末調整を受けられない個人事業主やフリーランスなどは、2年目以降も確定申告が必要です。初年度の確定申告では必要書類が多く、手続きも複雑なため、税務署等に問い合わせて行うのが確実です。
住宅ローン控除については別の記事で解説していますので、参考にしてください。
配当控除
上場株式の配当金が支払われる際には所得税等が源泉徴収されます。確定申告をする場合は、総合課税か申告分離課税のどちらかを選択しなくてはいけません。総合課税を選択した場合に限り、配当控除を受けることができます。配当控除は原則として、配当所得の金額の10%または5%に相当する金額です。
控除される割合は、課税総所得金額等によって変わります。課税総所得金額等が1,000万円以下であれば、剰余金の配当等の配当所得は10%の控除、証券投資信託の収益の分配金による配当所得は5%(特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建等証券投資信託の場合は2.5%)の控除です。
なお、申告分離課税を選択すると、配当控除は受けられません。課税所得金額によって、総合課税と申告分離課税のどちらにメリットがあるかは異なるので、検討したうえで選択しましょう。
分配時調整外国税相当額控除
分配時調整外国税相当額控除は、外貨建てMMF(マネー・マネジメント・ファンド)などの集団投資信託の分配金から、外国所得税が控除されている場合に利用できる控除です。確定申告で控除の計算に関する明細書を添付して申告します。
外国税額控除
下記の要件をすべて満たす所得がある場合、確定申告時に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」や「外国所得税額を課されたことを証する書類」等を添付することで、外国税額控除を利用できます。日本と外国とで二重課税にならないように設けられている制度です。
外国税額控除の適用要件
- 外国で生じた所得がある
- 上記の所得は日本で課税される
- 上記の所得に、外国の法令による所得税相当の税金が課税されている
政党等寄附金特別控除
政党等寄附金特別控除は、政党や政治資金団体に対する寄附をした際に選択できる控除です。通常、寄附金は所得控除の一種である寄附金控除の対象ですが、政党や政治資金団体への寄附は、政党等寄附金特別控除と寄附金控除のどちらかを選択して申告できます。
政党等寄附金特別控除を利用する場合は、「政党等寄附金特別控除額の計算明細書」と、総務大臣または都道府県の選挙管理委員会等の確認印が押印された「寄附金(税額)控除のための書類」を確定申告書に添付し、申告してください。
認定NPO法人等寄附金特別控除
認定NPO法人に寄附をした場合も、所得控除の寄附金控除ではなく、認定NPO法人等寄附金特別控除を選択できます。利用する場合は、「認定NPO法人等寄附金特別控除額の計算明細書」と、寄附内容の詳細を証明する書類を確定申告書に添付する必要があります。
公益社団法人等寄附金特別控除
公益社団法人等への寄附金も、所得控除の寄附金控除ではなく、公益社団法人等寄附金特別控除を選択できます。利用する場合は、確定申告書に「公益社団法人等寄附金特別控除額の計算明細書」と、寄附内容の詳細を証明する書類、寄附先の法人が税額控除対象法人であることを証する書類の写しを添付します。
住宅耐震改修特別控除
住宅耐震改修特別控除は、1981年5月31日以前に建築された建物のうち、一定の要件を満たす家屋の住宅耐震改修工事を行った場合に利用できる控除です。耐震改修工事の証明書や登記簿謄本の写しなどの書類を添付して申告します。
住宅特定改修特別税額控除
下記のいずれかの改修工事または複数の工事を併せて行った場合、「住宅借入金等特別控除」か「住宅特定改修特別税額控除」のどちらかを選択して適用できます。住宅特定改修特別税額控除は、借入金等の有無は問われません。改修工事にあたり借入金等があり、住宅借入金等特別控除の適用条件に当てはまる場合には、住宅借入金等特別控除を選んだ方が控除額は大きくなります。
改修工事の種類
- バリアフリー改修工事
- 省エネ改修工事
- 多世帯同居改修工事
- 耐久性向上改修工事のうち、住宅耐震改修工事や省エネ改修工事と同時に行うもの
工事の内容に応じた必要書類を添付して申告しましょう。控除額は、工事にかかった金額をもとに算出します。
認定住宅等新築等特別税額控除
認定長期優良住宅や認定低炭素住宅等を新築または取得した場合、「認定住宅等新築等特別税額控除」または「住宅借入金等特別控除」のどちらかを選択して適用できます。認定住宅等新築等特別税額控除を選択した場合、認定基準に適合するために必要な標準的なかかり増し費用の10%相当額の控除を受けられます。
試験研究を行った場合の所得税額の特別控除
青色申告事業者が試験研究を行った場合、試験研究費の一部が控除されます。試験研究費に関する控除制度には、「試験研究費の総額に係る特別税額控除制度」「特別試験研究費に係る税額控除制度」「中小企業技術基盤強化税制における特別税額控除制度」があります。
高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
下記の要件を満たす青色申告事業者は、高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除を利用できます。
控除の適用要件
- 新品の高度省エネルギー増進設備等を取得して事業に利用している
- 上記の設備等について、特別償却の適用を受けない
- 上記の設備等を2021年3月31日以前に取得している(もしくは、エネルギーの使用の合理化等に関する法律の計画の認定または一定の確認を受けた上記の設備等を2021年4月1日以降、2022年3月31日以前に取得している)
中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告をしている中小事業者が下記の要件を満たす場合に、所得税額の特別控除を利用できます。
控除の適用要件
- 新品の特定機械装置等を取得して事業に利用している
- 上記について、特別償却の適用を受けない
地域経済牽(けん)引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告事業者が下記の要件を満たす場合に、地域経済牽(けん)引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 地域経済牽引事業者の承認を受けている
- 一定の地域内で承認地域経済牽引事業計画に従い、特定地域経済牽引事業施設等の新設または増設をする
- 上記の新設または増設のために2017年7月31日以降に特定事業用機械等を取得している
- 特定事業用機械等を事業に利用している
- 特定事業用機械等について、特別償却の適用を受けない
地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告事業者が下記の要件を満たす場合に、地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 認定都道府県知事から「地方活力向上地域等特定業務施設整備計画」の認定を受ける
- 認定を受けた日から一定期間以内に、計画に沿って一定規模以上の建物、建物附属設備、構築物を取得して事業に利用している
- 上記について特別償却の適用を受けない
地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除
青色申告事業者が下記の要件を満たす場合に、認定日を含む3年間まで、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定を受けた認定事業者である
- 雇用保険法第5条第1項に規定されている適用事業を行うなど一定の要件を満たす
特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告をしている一定の中小事業者が下記の要件を満たす場合に、特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 経営改善設備を2013年4月1日~2021年3月31日に取得した
- 経営改善設備を事業に利用している
- 経営改善設備について特別償却の適用を受けない
特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告をしている一定の中小事業者が下記の要件を満たす場合に、特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 特定経営力向上設備等を取得した
- 特定経営力向上設備等を事業に利用している
- 特定経営力向上設備等について特別償却の適用を受けない
給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除
青色申告事業者が下記の要件を満たす場合に、給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 国内の従業員を雇用し、給与等を支給している
- 継続雇用者給与等支給増加割合が3%以上(中小事業者の場合1.5%以上)
認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告事業者が下記の要件を満たす場合に、認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律に規定されている認定導入事業者である
- 認定特定高度情報通信技術活用設備を取得等している
- 上記の設備を事業に利用している
- 上記の設備について特別償却の適用を受けない
事業適応設備を取得した場合等の所得税額の特別控除
青色申告事業者が下記の要件を満たす場合に、事業適応設備を取得した場合等の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 産業競争力強化法によって定められている認定事業適応事業者である
- 情報技術事業適応のために特定ソフトウェアの新設か増設をした
革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告事業者が下記の要件を満たす場合に、革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除が受けられます。
控除の適用要件
- 生産性向上特別措置法に規定する認定革新的データ産業活用事業者である
- 2018年6月6日~2021年3月31日に、一定規模以上の革新的情報産業活用設備を取得した
- 上記の設備を事業に利用している
- 上記の設備について特別償却の適用を受けない
税額控除を活用する際のポイント
続いては、税額控除を利用するときに気をつけておきたいポイントを2つご紹介します。税額控除は節税効果の高い制度ですが、適用するには申告が必要で一定の手間がかかる点に注意しておきましょう。
確定申告の必要がある
税額控除は、基本的に確定申告でないと申告できません。住宅借入金等特別控除において、会社員が勤務先の年末調整で2年目以降の申告をする場合を除き、確定申告が必須です。(住宅借入金等特別控除においても、初年度は確定申告が必須)
個人事業主やフリーランスなど、そもそも確定申告をしている方は、通常の申告と併せて税額控除の申告も行いましょう。税額控除は申告しなくても罰せられることはありませんが、特に住宅借入金等特別控除などは節税効果が大きいことから、利用できるのであれば申告することをおすすめします。
適用する税額控除によって必要書類が異なる
税額控除にはさまざまな種類があり、それぞれで必要書類が異なります。利用したい税額控除の必要書類をその都度調べて、対応しなければいけません。
特に、利用する方の多い住宅借入金等特別控除は必要書類の数が多く、揃えるのに時間がかかります。対象となる借入を行った際は、早い段階から書類の準備を始めましょう。
税額控除の申告で節税をしよう
所得控除と比べて、計算された税額から控除を受けられる税額控除は、節税のインパクトが大きい制度です。利用できる控除がないかどうか確認して、漏れなく申告しましょう。
税額控除の申告は、基本的に確定申告で行います。特に自営業者は、2年目以降の住宅借入金等特別控除についても確定申告で対応しなければいけません。「やよいの青色申告 オンライン」や「やよいの白色申告 オンライン」を活用すれば、スムースな確定申告が可能です。
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この記事の監修者岡本匡史(税理士)
「岡本匡史税理士事務所」の代表税理士。
1979年和歌山県生まれ。滋賀県立膳所高校、横浜国立大学経営学部卒業。城南信用金庫、公認会計士事務所勤務を経て、2012年に豊島区池袋にて岡本匡史税理士事務所を設立。
低価格で手厚いサポートを行うことを目標としており、特に開業前~開業5年目の法人・個人事業主の税務会計が得意。
毎年、市販の確定申告本や雑誌の監修にも携わっている。