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副業したら雇用保険の取り扱いは?加入条件や失業保険について解説

監修者:齋藤一生(税理士)

2024/09/03更新

これから副業を始める予定の人の中には、「会社員が副業を始めたら雇用保険はどうなるのだろう?」「副業がアルバイトの場合、副業先でも雇用保険に入るべき?」といった疑問を持っていた人もいるでしょう。個人事業主の場合、本業以外にアルバイトを始めると雇用保険に加入する必要があるのか、気になっていた人もいるのではないでしょうか。

本記事では、副業をする場合の雇用保険の取り扱いについてわかりやすく解説します。本業の働き方による雇用保険の取り扱いの違い、雇用保険の加入条件や失業保険を受け取る際に注意したい点などについても知っておきたいポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

雇用保険とは?

雇用保険とは、労働者の生活の安定および雇用の促進、失業予防や労働者の能力開発を目的とした公的保険制度です。所定の条件を満たしている労働者は、基本的に全員が加入することになっているため、「強制保険制度」とも呼ばれます。

例えば、会社員として働いている人が何らかの事情で勤務先を退職することになった場合、次の就職先が見つかるまでの間は収入がなくなってしまいます。この期間中に失業手当を受給することにより、安定的な暮らしを維持することが雇用保険制度の目的の1つです。

本業が会社員の人は、既に勤務先で雇用保険に加入しているため、副業がどのような契約形態であっても雇用保険に関しては基本的に影響を受けません。そのため、副業を辞めたり、副業先を失職したりしても、失業手当を受け取ることができません。

その一方で、本業が個人事業主やフリーランスの場合、副業で雇用契約を結ぶようなら、条件によっては雇用保険に加入することも考えられます。

本業が会社員の場合は、要件を満たしていても副業では雇用保険に加入できない

雇用保険は原則として、生計を維持するために必要な賃金が支給されている企業で加入します。副業先で、アルバイトなどの雇用契約を結んで働く仕事であっても、既に本業の勤務先で雇用保険に加入していれば二重に加入できない点に注意してください。パート先やアルバイト先が雇用保険の申請手続きを行うことがないよう、副業であること、本業の勤務先で雇用保険に加入していることを事前に伝えておきましょう。

副業を失業しても雇用保険は受け取れない

雇用保険の失業手当を受け取ることができるのは、退職や倒産などの事情により生計を維持するために必要な賃金が受け取れなくなった場合です。副業の仕事がなくなったとしても、本業で給与を受け取っているのであれば失業したことにはなりません。したがって、失業手当も支給されないことになります。

個人事業主が副業のアルバイトを辞めることになった場合も、生計を維持するために必要な事業収入が得られていれば失業手当は受け取れません。雇用保険はあくまでも労働者の安定した暮らしを維持することを目的とした制度のため、副業分の収入が減ったといった理由では失業手当を受け取ることができないのです。

本業が個人事業主の場合、副業のアルバイトで雇用保険に加入できる場合がある

フリーランスなどの個人事業主が副業先の企業と雇用関係にあり、前述の加入条件を満たしていれば雇用保険に加入できます。例えば、副業がアルバイトで給与所得があるといったケースでは該当する可能性があります。

その一方で業務委託契約の場合は事業者として対等な立場で取引をすることから、雇用関係にあるとは見なされません。例えば、フリーランスが業務委託契約を締結して業務を受注するようなケースが該当します。本業・副業共に業務委託契約の場合は、どちらも雇用関係とならないため、原則として雇用保険に加入できないのです。

雇用保険の加入条件

雇用保険に加入するには、以下の条件を満たしている必要があります。

雇用保険に加入できる労働者の条件

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 雇用開始から31日以上の雇用見込みがあること
  • 昼間学生ではないこと

これらの条件を満たしていれば、正社員だけでなくパートやアルバイトの場合も雇用保険に加入するのが基本的なルールです。なお、昼間学生であっても、学校を卒業後そのまま同じ勤務先で働くことが決まっていれば、雇用保険に加入することになります。
また、内定した企業で卒業までの期間中にアルバイトをするようなケースも、卒業後に雇用されることが確定しているため雇用保険の適用対象です。

雇用保険の給付の種類と内容

雇用保険の給付には、「求職者給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」の4種類があります。それぞれの給付内容と、給付を受ける際の条件を押さえておきましょう。

求職者給付

求職者給付とは、被保険者が失業した際に生活を保障するために支給される給付金のことです。倒産や解雇といった事情で仕事を辞めざるを得なかった場合のほか、自己都合退職の場合にも給付されます。失業した際に利用されるケースが多い保障は、以下の5つです。

求職者給付の主な種類

  • 基本手当(失業手当):働く意思のある被保険者が失業し、求職活動をしている間に支給される
  • 技能習得手当:技能習得やスキルアップのために職業訓練を受け、早期再就職を目指す被保険者に支給される
  • 寄宿手当:職業訓練時に通所施設が遠方などの事情で、被保険者が扶養家族と別居する必要がある場合に支給される
  • 傷病手当:病気やケガにより連続して15日以上就業できない被保険者に支給される
  • 高年齢求職者給付金:65歳以上で働く意思のある被保険者が失業した場合に支給される

就職促進給付

就職促進給付は、離職中の人の早期再就職を支援するための給付金です。前述の「基本給付(失業手当)」は失業期間中のみ支給されますが、就職促進給付は再就職後も離職前の賃金よりも下がっている場合、給付金を受け取れます。主な給付金は以下の4つです。

就職促進給付の主な種類

  • 再就職手当:失業手当を受給している被保険者が再就職した場合に支給される(個人事業主になる場合を含む)
  • 就業促進定着手当:再就職手当を受給していた被保険者が、再就職から6か月以上就業した場合に支給される
  • 移転費:被保険者が職業訓練を受ける事業所や訓練施設への通勤または通所時間が、自宅から往復4時間以上かかるなど、ハローワークが転居の必要があると認めた場合に支給される
  • 広域求職活動費:被保険者が、ハローワークの紹介で遠方の企業にて選考を受ける際の交通費・宿泊費として支給される

教育訓練給付

教育訓練給付は、雇用の安定と就職促進のためにスキルアップを図る場合などに支給されます。給付金の種類は以下の3つです。

教育訓練給付の種類

  • 一般教育訓練給付金:被保険者が、一般的な資格や検定を受ける場合や、大学院に通う場合に支給される
  • 特定一般教育訓練給付金:被保険者が、早期再就職に直結しやすい国家資格の分類の1つである業務独占資格などの取得を目指す教育訓練の受講費用のうち、一定の割合が支給される
  • 専門実践教育訓練給付金:被保険者が、業務独占資格のほか、中長期的なキャリア形成に役立つ教育訓練の受講費用のうち、一定の割合が支給される

雇用継続給付

雇用継続給付とは、労働者が私生活との両立を図りやすい環境づくりを支援するための給付金です。給付金には以下の2つがあります。

雇用継続給付の種類

  • 高年齢雇用継続給付:被保険者が定年後に再雇用され、給与が75%未満になった際に支給される
  • 介護休業給付:家族の介護に伴い休業している被保険者が、条件を満たした際に支給される

育児休業給付

育児休業給付は、子育てにより休業している被保険者に支給される給付金です。原則として、1歳未満の子の育児のために休業している人を対象に給付されます。例外的に、認可保育所に入れなかった場合など、要件を満たすと延長できることになります。

副業しながら本業退職による雇用保険の失業手当を受け取れる条件

副業を続けているものの、本業の勤務先を退職したことにより失業手当を受け取る際には、いくつかの条件を満たしている必要があります。失業手当の受給資格は以下のとおりです。なお、2024年5月現在、雇用保険の加入条件や失業手当給付期間の見直しについて、2025年度から緩和の方針が厚生労働省から提案されています。情勢によって条件が変わる可能性があります。

失業手当の受給資格

  • 就職する意思と能力はあるものの失業している
  • 失業期間中にハローワークに求職の申し込みをし、求職活動をしている
  • 自己都合退職の場合、離職日前の2年間で12か月以上雇用保険に加入していた
  • 会社都合退職の場合、離職日前の1年間で6か月以上雇用保険に加入していた

ハローワークにおいて、これらの条件を満たしているかどうかを確認したうえで失業手当の支給可否が判断されます。
なお、副業をしている人の場合は、副業での働き方も条件に加わる点に注意が必要です。失業手当を受け取るのであれば、以下の条件を満たす必要があります。

待機期間の7日間は副業を行わない

ハローワークに離職届を提出した日から7日間は、「待機期間」と呼ばれます。待機期間は、届出者が実際に失業状態にあるかどうかが調査するための期間であるため、被保険者は、失業手当を受け取ることができません。そのため、待機期間中に副業を行った場合、失業中とはいえないと判定され、その翌日からさらに7日間の待機期間が設定されます。

失業手当を受給するのであれば、待機期間中、副業はできません。これは、待機期間に賃金や報酬を受け取らなければよいということではなく、将来的に収入につながる何らかの「仕事」をしていないことを証明しなければならない期間だからです。待機期間の7日間は副業を一切しないよう、注意してください。

副業を行う際は1日4時間未満・週20時間未満

待機期間後に副業を行う際には、1日4時間未満・週20時間未満に抑える必要があります。これらの条件を超えて副業をしていると、失業状態にはないと判定されて、失業手当の支給が停止されます。
雇用保険では、1日4時間以上の労働を「就職または就労」、1日4時間未満の労働を「内職または手伝い」と区分しています。副業であっても1日4時間以上・週20時間以上働いていれば「就労」状態に該当するため、失業手当は受給できません。

なお、副業が1日4時間未満・週20時間未満であっても、実際に得た報酬額や給与額によっては失業手当が減額されたり、支給停止になったりする場合もあります。副業の収入が一時的に増える場合には特に注意が必要です。

失業手当の不正受給は罰則がある

失業手当の申請をする際には、「失業認定申告書」をハローワークに提出します。この申告書を基に受給資格の有無や受給額が決定されるため、実態どおりの就労状況・収入状況を記入しなければなりません。
万が一、実態とは異なる内容を申告して失業手当を受給した場合には、不正受給と見なされ罰則を科されます。不正が発覚した日から失業手当が支給停止となるほか、悪質なケースでは不正受給した金額の返還や受給額の2倍の金額の納付を命じられることもあるため、必ずありのままを申告しましょう。

失業認定申告書

失業認定申告書

例えば、待機期間後に副業で得た報酬額を実際よりも少なく申告したり、求職活動をしていないにもかかわらず実績として申告したりすることで失業手当を受給するのは、典型的な不正受給です。
たとえ故意ではなくても、申告内容が実態と異なっていれば罰則の対象となる可能性があるため十分注意してください。

副業で年間20万円超の所得がある場合は、雇用保険に関係なく確定申告が必要

雇用保険による失業手当を受給している・していないを問わず、副業の年間所得が20万円を超えた場合には所得税の確定申告が必要になります。ただし、その年の本業の収入が少なく、副業も含めた合計所得が48万円以下の場合は、副業が20万円超であっても申告不要です。

所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことを指します。例えば、1年間に、副業にかかった経費の合計額が5万円で、副業収入の合計額が22万円だった場合、副業の年間所得は17万円のため確定申告は不要です。副業の種類によって異なるものの、経費として申告できるものがあれば経費に計上しておくことをお勧めします。

なお、会社員か個人事業主かによって、確定申告をしなければならない条件が異なります。

会社員の副業の場合

会社員で副業による所得を含め、本業の収入以外の所得が年間20万円を超えた場合、確定申告をする必要があります。なお、年間所得が20万円以下であっても、利益が1円でもある場合は、住民税の申告は必要です。

また、副業の報酬から源泉徴収されて支払われていた場合、確定申告をすることで還付が受けられる可能性があります。その場合は副業の年間所得が20万円以下であっても、確定申告をしておいた方がよいでしょう。

さらに、医療費控除の適用などで確定申告をする場合は、副業所得が20万円以下でも副業の所得も併せて申告をすることが必要です。なお、住民税は確定申告の情報を基に計算されるため、確定申告をしておくと住民税の申告が不要となります。

個人事業主の副業の場合

個人事業主は基本的に確定申告が必要です。副業による所得がある場合、副業の所得も併せて確定申告を行います。

本業が会社員なら、副業を始めても雇用保険には基本的に影響なし

本業が会社員であるか個人事業主であるかによって、雇用保険の取り扱いが変わってきます。会社員が本業を退職し、副業としていた仕事を本業として始める際には、失業手当の給付条件に注意が必要です。不正受給と見なされることのないよう、今回ご紹介した条件を十分に理解したうえで支障のない範囲で副業に取り組むようにしましょう。

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事業所得になる副業の確定申告は会計ソフトを使って楽に済ませよう

会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。

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この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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