副業でネットショップを開くには?準備の手順やメリットなどを解説
監修者: 齋藤一生(税理士)
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副業として、「自分のネットショップを開いてみたい」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。しかし、「副業でもできるのだろうか?」「どのような準備が必要なのだろうか?」といった疑問を持つ人もいるでしょう。
今回は、副業でネットショップを開く方法や、準備を進める際の手順をわかりやすく解説します。ネットショップを開くメリットや注意点もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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副業のネットショップ開業準備でやるべきこと
ネットショップを開業するには、事前準備が重要です。副業でネットショップを開業するにあたってやるべきことがいくつかあります。以下の7点については、必ず押さえておきましょう。
会社が副業禁止かどうかを確認しておく
ネットショップに限らず、副業を始める際には本業の就業規則を確認しておく必要があります。勤務先が従業員の副業を禁止していたり、副業を始めるにあたって届出をするよう規定を設けていたりする可能性があるからです。
近年は副業を認める企業が増えているものの、競業避止義務の観点などから、従業員の副業に対して慎重な姿勢を示している企業も少なくありません。勤務先の就業規則に抵触した場合、何らかの処罰を受ける可能性があります。勤務先で信頼を失わないためにも、副業に関する規定をしっかりと確認しておくことが大切です。
売上のシミュレーションを立てる
副業でネットショップを始めるにあたって、まず取り組むべきことは売上のシミュレーションです。副業を通じて、どれだけの収入を得たいのかを検討し、目標金額を定めます。
目標金額があいまいなままネットショップを始めてしまうと、自分のビジネスが順調かどうかを判断するための基準も不明確になりがちです。結果として無理をしすぎたり、反対に売上を伸ばすチャンスを逃したりすることにもなりかねません。初めのうちは売上目標が小規模でも、自分なりの目標を決めたうえで取り組むことが大切です。
ネットショップで販売する商品のジャンルを決める
ネットショップでの売上のシミュレーションを立てたら、次にネットショップで販売する商品のジャンルを決めましょう。取り扱うジャンルは、自分にとって興味のあるもの・好きなものを選ぶことをお勧めします。一般的にネットショップで稼ぎやすいといわれている商材であっても、自分自身に興味がなければ長続きしません。趣味で続けてきたものなど、興味関心を持ち続けられそうなジャンルを選ぶことが大切です。
具体的に取り扱う商品を決めていく際には、仕入先を想定しておくことも重要なポイントです。ネットショップの収益は「販売額-仕入原価-販売管理費」で計算されます。つまり、仕入原価を抑えるほど収益も多くなるのです。なお、仕入価格は変動する場合があるため、いくつかの仕入先をピックアップしておくことも1つの方法です。
なお、中古品を販売する場合、古物商許可を申請する必要があります。
ネットショップのコンセプトを決める
ネットショップで取り扱うジャンルや商品が決まったら、ネットショップのコンセプトを検討します。
自分自身が消費者としてネットショップを利用する際、特徴のあるショップや他店では扱っていない商品を購入できるショップに興味を持ったという人もいるのではないでしょうか。このように、セールスポイントを明確に打ち出しているネットショップは、多くの消費者から選ばれやすい傾向があります。
また、ネットショップのコンセプトを決める際には、同ジャンルのショップも参考にしてください。既に成功している他店と同じコンセプトで出店してしまうと、後発のショップは容易に売上が上がらない可能性があります。できるだけ個性的なコンセプトを打ち出し、他店との差別化を図ることが重要です。
商品の販売サイトを決める
ネットショップで何を売るのかが決まったら、次に「どこで売るのか」を決めていきます。インターネット上で商品が販売できる場所は、大きく以下の4つに分けられます。
ネットショップの種類・特徴と具体例
種類 | 特徴 | 具体例 |
---|---|---|
無料のカートシステム | 商品を買い物かごに入れ、レジ画面で決済するシンプルなしくみ。無料で利用できる。 | ・BASE ・STORES ・カラーミーショップ |
マーケットプレイス | 主に個人が出品するのに適している。販売手数料のみで運営できる。 | ・メルカリ ・楽天ラクマ |
ECモール | さまざまなショップが集まっている。ユーザー数が多い。 | ・Amazon ・楽天市場 ・Yahoo!ショッピング |
自作ECサイト | 自分でWebページを立ち上げ、ECサイトとして運営する。 | – |
自作ECサイトを構築するのは専門知識も必要ですから、まずは無料のカートシステムを利用するのも1つの方法です。また、マーケットプレイスやECモールでの販売も決して難しいものではないので、同ジャンル商品の取り扱いが多い販売サイトを選ぶことをお勧めします。
集客するための準備をする
ネットショップの販売サイトを決めたら、集客するための準備をします。ネットショップを立ち上げたばかりのころは、ショップの存在自体が認知されていません。よって、ネットショップを訪れてもらえるよう、集客施策を講じていく必要があります。
具体的には、ネット広告を出したりSNSやブログで宣伝したりする方法が考えられます。ネット広告は広告費がかかるものの、短期間で多くの見込み客を集客するには効果的な手法です。既にSNSやブログで一定数以上のフォロワーや読者を確保しているようなら、ネットショップを開業予定であることを少しずつ告知していくことも集客につなげる手段の1つです。
開業届を税務署に提出する
ネットショップの販売サイトも決まり、運営が具体的になってきたら、開業届を税務署に提出します。副業であっても、ある程度の事業規模があり、継続的な運営を予定している場合、開業届の提出が必要です。
開業届には「屋号」を記入する欄があるので、ショップ名が決まっている場合は記載します。屋号のついた金融機関口座を作成する場合に、開業届の提示を求められることが多いので、屋号の口座が欲しい人は開業届に屋号を記入しましょう。開業届の提出期限は、原則として事業を始めてから1か月以内です。
なお、開業届を提出しなかった場合、特に罰則などは設けられていません。
そのため、開業届を提出しなくても、確定申告が必要になった際にきちんと申告すれば問題ありません。ただし、ネットショップの運営初年から個人事業主として事業規模で開業を行い、青色申告をしたい場合には、「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」の両方を一緒に提出すると二度手間や提出漏れの心配もありません。
副業の事業規模や継続性の観点から、開業届を提出する必要があるかどうか不明な場合は、管轄の税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。開業届を出したからといって、事業所得として確定申告ができると認められるわけではないので誤解のないようにしましょう。
開業届についてはこちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
副業でネットショップを開くメリット
副業でネットショップを開くことによって、どのようなメリットを得られるのでしょうか。主な4つのメリットを見ていきましょう。
好きなこと・得意なことでショップを開ける
好きなことや得意なことに関連するネットショップを開くことで趣味や得意分野を活かせることはメリットの1つといえます。
ネットショップで扱う商品は、自分で自由に決められます。インターネットでの取引が禁止されている物品を除けば、どのような商品でも扱えるのがネットショップの大きな魅力です。
例えば、趣味で集めている物や自分で制作したハンドメイド作品などを、自分のネットショップで販売することも可能です。
すきま時間を有効活用できる
ネットショップの運営は勤務時間が決められていません。空いた時間を利用して少しずつ作業を進めることも可能です。本業に多くの時間を費やす会社員にとって、すきま時間を有効活用できることは大きなメリットといえます。
週に何日、何時から何時まで作業するかについても自分で決められるため、本業との両立が図りやすいこともネットショップ運営の魅力です。
本業に活かせるスキルを磨ける
ネットショップ運営を通じて身に付けたスキルを、本業に活かせる場合もあります。ネットショップの運営を通して商品写真の撮影や商品説明文のライティング、集客や広告施策などのマーケティング、顧客の問い合わせに対応する際のコミュニケーションなど、幅広い能力やスキルを身に付けることも可能です。
こうしたスキルは、思わぬところで本業にも活かせることがあります。本業の担当業務をこなしているだけでは身に付かなかったスキルを、副業を通して体得できることは大きなメリットの1つです。
軌道に乗ったら独立開業ができる
ネットショップ運営が軌道に乗り、収益が一定水準に達すれば独立開業することも可能です。実際に、ネットショップの中には小規模の個人事業からスタートし、売上規模が大きくなったことで本格的に事業化したケースも見られます。
初めからネットショップだけで生計を立てるのは難しくても、副業から始めれば経済的なリスクを大幅に抑えられます。将来的に独立起業を目指したい人にとって、副業でのネットショップ運営が独立への足掛かりとなる可能性は十分にあるのです。
なお、独立開業する場合には、開業届の提出が必要です。
副業でネットショップを開く際に気を付けること
副業でネットショップを開く際には、いくつか気を付けておきたいポイントがあります。想定していなかった事態に見舞われないようにするためにも、以下の2点を押さえておくことが大切です。
労働時間が長くなりがち
すきま時間に作業を進められることはネットショップ運営のメリットですが、労働時間が長くなりやすいというデメリットにもなり得ます。例えば、出勤前の時間帯に注文状況を確認し、お昼休みに発送準備を進め、帰宅後に発送作業を行うといったように、本業以外の時間の多くを費やして運営する必要が生じる可能性があるからです。
常に副業の作業に追われている状況に陥らないようにするには、やるべきことの優先順位を決め、計画的に進めていく必要があります。適度な休憩時間も計画に盛り込むことが、長続きさせるコツといえるでしょう。
すぐには収益が出ない
開設したばかりのネットショップは認知度が低いため、開設当初はほとんど商品が売れないことも十分にあり得ます。副業でネットショップを始めたからといって、すぐには収益が出ないことを想定しておくことが重要です。
収益が出ない時期を乗り切るためにも、売上シミュレーションを長期的な視点で作成しておくことをお勧めします。初月から売上が上がるような計画にはせず、年単位で運営計画を立てましょう。
また、新規顧客の獲得と並行してリピーターを獲得していくことも大切です。ていねいな対応で顧客満足度の向上を図り、2回目以降の購入につなげてください。
副業を行う際のデメリット
ネットショップ運営をはじめ、副業に取り組むうえで生じるデメリットとして、モチベーションを維持しにくい点があげられます。
副業は基本的に1人で取り組むため、自分から動かなければ売上も増えていきません。特にネットショップ運営の場合、商品を出品するペースを緩めれば必然的に作業量も少なくなっていきます。楽をしようと思えばできてしまうのです。しかし、出品ペースを緩めると更新頻度が下がり、顧客の満足度も下がってしまいます。
モチベーションを保っていくには、自分が好きなこと・得意なことにかかわりの深いジャンルの商品を扱うのが得策です。また、売上シミュレーションを基に時期ごとの売上目標を決め、着実に達成していくことが、モチベーションの維持につながるでしょう。
副業でも確定申告が必要
ネットショップの売上が増えていくと、確定申告が必要になります。副業の場合、多くは雑所得に該当しますが、事業規模や帳簿付けなどの状況によっては、事業所得として申告も可能です。
これらの副業による所得(雑所得または事業所得)を含めて本業以外の所得の合計額が年間20万円を超えた場合には、確定申告をしなければなりません。また、所得が年間20万円以下であっても、1円でも利益があれば居住地の自治体に住民税の申告が必要になります。
所得とは、売上から必要経費を差し引いた金額のことです。ネットショップを運営していくうえで必要な物品や機材の購入、インターネット回線利用料などは経費として計上できます。自宅で作業する場合には家賃や電気代・通信費など副業の業務で使用する分は経費に計上できます。
なお、販売相手が適格請求書(インボイス)発行事業者の場合、適格請求書を求められる可能性があります。副業のちょっとしたネットショップでも適格請求書登録事業者となった場合、消費税の申告が必要です。しかし、販売相手が一般消費者であれば、適格請求書の発行は必要ないため、適格請求書発行事業者になる必要はありません。
ネットショップを始める際には、販売相手によっては、適格請求書発行事業者登録と消費税申告も視野に入れておくことをお勧めします。
副業の確定申告についてはこちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
副業でネットショップを開いてみよう
ネットショップは、個人が副業として始めるには適したビジネスの1つといえます。近年は初心者でも簡単にネットショップを開設できるサービスが数多く提供されているため、好きなことや得意なことを活かして始めやすい副業といえるでしょう。
その一方で、副業を始める際には押さえておくべき注意点もあります。今回ご紹介した事前準備の必要事項や、副業を始める際の注意点を参考に、ぜひご自身のネットショップを開設してください。
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事業所得になる副業の確定申告は会計ソフトを使って楽に済ませよう
会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。
事業所得になる副業は、帳簿付けが必要です。そんなときにおすすめなのが、弥生のクラウド確定申告ソフト『やよいの白色申告 オンライン』です。『やよいの白色申告 オンライン』はずっと無料で使えて、初心者や簿記知識がない方でも必要書類を効率良く作成することができます。e-Tax(電子申告)にも対応しているので、税務署に行かずに確定申告をスムーズに行えます。
副業の所得区分を事業所得・雑所得どちらにするか迷っている場合、まずは帳簿付けをしておきましょう。事業所得で確定申告する場合は帳簿が必要です。雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。
なお、『やよいの白色申告 オンライン』では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、『やよいの白色申告 オンライン』で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。
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