法人住民税とは?法人税・法人事業税との違いやしくみを解説
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法人に課される税金の1つに「法人住民税」があります。法人住民税は、都道府県民税と市町村民税に分かれる地方税の一種です。個人住民税と同様、法人も所在地の地方自治体へ法人住民税を納める義務があります。その一方で、法人住民税の計算方法や納期限は個人住民税とは異なる点に注意しましょう。
本記事では、法人住民税と法人税・法人事業税との違いやしくみについて解説します。法人住民税が免除されるケースや、納期限・納付方法に関してもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
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法人住民税は法人が地方自治体に納める地方税
法人住民税とは、法人が事業所を構える地方自治体に納める地方税で、都道府県民税と市町村民税から構成されています。法人に課される税金には法人住民税の他に、法人税や法人事業税などがあります。これをまとめた総称が「法人税等」です。法人住民税は、地域に属する法人が地域社会の運営費用を幅広く負担することを目的としています。道路の整備や警察・消防といった公的サービスにかかる費用などは、法人住民税の使途の一例です。法人は、こうした地域社会の運営に必要なこれらの費用を負担する役割を担い、法人住民税の支払が義務付けられています。
法人住民税では、法人の事業所を「事業所等」と表し、以下の3つの条件をすべて満たすものが該当します。
法人住民税における事業所等の条件
- 人的設備
- 物的設備
- 事業の継続性
なお、登記や自己所有の有無を問わず、上の条件を満たしていれば事業所等に含まれる点に注意しましょう。一例として、商品の引渡しのみのために設置されている出張所のような場所であっても、人的・物的設備を備え、事業の継続性が認められれば事業所等に含まれます。また、本社や本店以外に支社、支局、支店などがある法人の場合、事業所等の条件に該当するすべての場所において法人住民税を分割して支払うため、それぞれの住所地の自治体へ納付しなければなりません。
法人住民税と法人税の違い
法人住民税と法人税では、税金の種類が異なります。
法人住民税は、法人が事業所を構える地方自治体に納める地方税で、法人税額、従業員数、資本金の額に応じて決まります。これに対して、法人税は、企業の利益に対して課される法人税等のうち唯一の国税です。法人税は個人の場合の所得税に該当し、法人の事業年度における課税所得額に応じて納税額が決定します。なお、法人税は所得に対して課税されるため、当該事業年度が赤字であれば発生しません。また、法人税は税金を納める者・負担する者が同一となる直接税で、比例税率(固定税率)が採用されています。法人税の計算式と、法人の区分ごとの主な法人税率については以下のとおりです。
法人税の計算式
法人税=所得×法人税率
法人の区分ごとの主な法人税率
区分 | 課税所得 | 法人税率 | |
---|---|---|---|
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 15% (適用除外事業者19%) |
年800万円超の部分 | 23.20% | ||
上記以外 | 23.20% | ||
公益法人等 | 公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人、公益法人等とみなされているもの | 年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.20% | ||
上記以外 | 年800万円以下の部分 | 15% | |
年800万円超の部分 | 19% | ||
協同組合等 | 年800万円以下の部分 | 15% | |
年800万円超の部分 | 19% | ||
人格のない社団等 | 年800万円以下の部分 | 15% | |
年800万円超の部分 | 23.20% |
- ※2022年4月1日以後に事業を開始した法人に適用される税率
-
出典:国税庁「No.5759 法人税の税率
」
法人住民税と法人事業税の違い
法人住民税と法人事業税では、課税対象が異なります。
法人住民税は、個人の住民税と同様に都道府県民税と市町村民税に分かれ、法人自体に課される地方税です。東京23区に事業所がある場合のみ、例外的に都民税としてひとまとめになります。その一方で、法人事業税は、法人が事業所を構える都道府県での事業に課される地方税です。なお、法人事業税の税率は、資本金や事業内容によって異なります。法人事業税の計算式と東京都における法人事業税率は以下のとおりです。
法人事業税の計算式
法人事業税=所得×法人事業税率
法人事業税率(東京都・2022年4月1日以後に開始する事業年度)
事業の区分 | 法人の種類 | 事業税の区分 | 税率 | |
---|---|---|---|---|
標準税率 | 超過税率 | |||
1号 | 普通法人 公益法人等 人格のない社団等 |
年400万円以下の所得 | 3.5% | 3.75% |
年400万円超800万円以下の所得 | 5.3% | 5.665% | ||
年800万円超の所得 | 7.0% | 7.48% | ||
特別法人 | 年400万円以下の所得 | 3.5% | 3.75% | |
年400万円超の所得 | 4.9% | 5.23% | ||
外形標準課税法人 | 所得割 | (1.0%) | 1.18% | |
付加価値割 | – | 1.26% | ||
資本割 | – | 0.525% | ||
2号 (電気供給業・ガス供給業・保険業・貿易保険業) |
収入割 | 1.0% | 1.065% | |
3号 (小売電気事業者・発電事業等または特定卸供給事業) |
普通法人 公益法人等 人格のない社団等 特別法人 |
収入割 | 0.75% | 0.8025% |
所得割 | 1.85% | 1.9425% | ||
外形標準課税法人 | 収入割 | (0.75%) | 0.8025% | |
付加価値割 | – | 0.3885% | ||
資本割 | – | 0.1575% | ||
4号 (特定ガス供給業) |
収入割 | (0.48%) | 0.519% | |
付加価値割 | – | 0.8085% | ||
資本割 | – | 0.336% |
- ※()内は特別法人事業税の基準法人所得割額・基準法人収入割額の計算に用いる税率
-
出典:東京都「法人都民税・事業税、特別法人事業税の中間・確定申告書(第6号様式(その3))記載の手引
」
法人住民税のしくみ
法人住民税は、「法人税割」と「均等割」の2つの要素で構成され、これらの合計額が税額となります。ここでは、法人住民税のしくみを解説します。
法人税割:法人税額を基に算出される
法人税割は、法人税の税額を基にして算出・課税される住民税です。法人税割では、法人税額に法人の規模によって定められている税率を掛けて計算します。
法人税割の計算式
法人税割=法人税額×税率
法人税の税額は課税所得に基づいて決まるため、所得が多いほど法人税割の税額も高くなります。法人税を納付する必要がない場合は、法人住民税の法人税割は発生しません。
法人税割の税率には「標準税率」があり、各地方自治体は原則として自由に税率を設定できます。2025年1月時点においては、都道府県に対して納める都道府県民税が1.0%、市町村に対して納める市町村民税が6.0%と、それぞれ設定されている標準税率が異なります。
なお、地方自治体によっては標準税率とは別に、一定の条件を満たす法人には「超過税率」が適用される場合があるため、詳細については事業所が属する各自治体に確認してみましょう。
均等割:資本金の額や従業員数に応じて算出される
均等割は、法人の資本金の額や従業員数などに応じて算出・課税される住民税です。資本金の額や従業員数が多い法人ほど、課税額が高くなります。厳密には、都道府県民税では法人の資本金等の額にて、市町村民税では資本金等の額と従業員数に応じて納めるべき税額が区分されるしくみです。
なお、決算が赤字の場合は課税されない法人税割とは異なり、均等割は課税所得に関係なく課税されます。したがって、赤字の場合でも原則として均等割の納税義務が生じる点に注意しましょう。均等割の税額の標準となる区分と税額は以下のとおりです。
均等割の区分と税額(自治体によっては、条例により以下の金額を超える金額で課税される場合もあります。)
資本金等の額 | 都道府県民税均等割 | 市町村民税均等割 従業者数50人超 |
市町村民税均等割 従業者数50人以下 |
---|---|---|---|
1,000万円以下 | 2万円 | 12万円 | 5万円 |
1,000万円超1億円以下 | 5万円 | 15万円 | 13万円 |
1億円超10億円以下 | 13万円 | 40万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 54万円 | 175万円 | 41万円 |
50億円超 | 80万円 | 300万円 | 41万円 |
-
出典:総務省「法人住民税
」
例えば、資本金が1,000万円以下で従業者数が50人以下の法人の場合、都道府県民税均等割の2万円と市町村民税均等割の5万円で、均等割の税額は7万円となります。
法人住民税が免除されるケース
個人の場合、「前年の合計所得金額が定められた額以下」などの要件を満たすと、住民税は非課税となりますが、法人の場合でも同様のケースがあります。ここでは、法人住民税が免除されるケースを見ていきましょう。
赤字決算の場合の法人住民税
法人住民税のうち法人税割の部分に関しては、決算が赤字であれば課税されません。法人税は課税所得に対して課税されるため、赤字(=課税所得がマイナス)であれば法人税も発生しないことになります。よって、法人税が発生せず課税されなければ、それを基に算出される法人税割も必然的に課税されません。
特定の条件を満たした法人の均等割
法人住民税のうち均等割に関しては、資本金等の額や従業員数に応じて税額が算出されるため、課税所得が黒字・赤字にかかわらず、法人が存続する限り基本的には課税されます。ただし、場合によっては均等割の課税が免除されるケースがあります。均等割の課税が免除される可能性があるのは、主に以下の2点のうちいずれかに該当している場合です。
法人住民税の均等割が免除されるケース
- 一般社団法人などについて、非営利法人として活動している場合や収益事業を営んでいない場合
- 法人としての活動を休業している場合
上のいずれかに該当しており、かつ地方自治体によって設定されている条件を満たせば、均等割の課税が免除されることがあります。自治体によって免除の可否や条件が異なるため、詳細については各自治体へ問い合わせてください。
法人住民税の納期限
法人住民税は、法人が自ら税額を計算し、事業年度終了日の翌日から原則として2か月以内に自治体へ申告・納付しなければなりません。例えば、事業年度が4月1日~3月31日の法人の場合、納期限は5月31日です。
個人住民税は、市区町村が税額を決定し、個人宛または勤務先宛に納税通知書(特別徴収税額決定通知書)を送付します。これに対して、法人住民税は市区町村が税額を決定するわけではありません。法人側で税額を計算し申告しなければならない点に注意しましょう。
なお、法人住民税の申告書の提出先は、都道府県民税は道府県税事務所、市町村民税は市町村役場です。ただし、東京23区の場合はいずれも都税事務所へ提出します。
法人住民税の納付方法
法人住民税の納付方法には、複数の選択肢があります。具体的には、市役所等や金融機関の窓口、都税事務所(東京都23区の場合)での納付、eLTAXによる電子納税があげられます。
eLTAXとは、地方税の電子申告をはじめ、各種申請・届出・共通納税などを行うことができるシステムのことです。自宅やオフィスから、地方税の納付手続きを電子的に行う共通納税においては、インターネットバンキングやクレジットカード、ATMを利用して法人住民税を納付できます。また、eLTAXを利用することで市役所等や金融機関の窓口へ出向く必要がなくなることに加え、24時間いつでも納付手続きを行える点が大きなメリットです。ただし、対応している納付方法は地方自治体によって異なる他、法人住民税の納付可否に関しても金融機関ごとにさまざまです。そのため、法人住民税の納付に先立って、利用できる納付方法を確認する必要があります。
なお、インターネットバンキング、ATMなどの利用にあたっては、金融機関ごとに所定の手数料が必要となる場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。クレジットカードでの納付を選択した場合、納付額に応じてシステム利用料がかかります。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
