法人税の計算方法は?申告方法や計算・納付の際の注意点と共に解説
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法人が納める税金のうち、代表的な税金が法人税です。法人は、事業活動で得た所得を基に納めるべき法人税額を計算し、税務署に申告・納付しなければなりません。では、法人税の税額はどのような方法で計算すれば良いのでしょうか。
本記事では、法人税の計算方法や申告方法、納付時の注意点、法人税の計算シミュレーションなどを解説します。
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法人税とは事業活動で得た所得にかかる税金のこと
法人税とは、法人の事業活動で得た所得にかかる税金のことです。税金は、国に納める国税と、都道府県や市町村に納める地方税に分類されますが、法人税は国税に当たります。
法人に課せられる税金には、国税である法人税の他に、地方税である法人住民税と法人事業税もあり、これらをまとめて一般的に「法人税等」と呼びます。税法上、法人税を課される法人は、株式会社や合同会社といった普通法人の他、協同組合、一般社団法人、NPO法人などです。
法人税の税額は、一事業年度の課税所得に、所定の税率を掛けて求めます。法人は、事業年度ごとに納めるべき法人税額を計算し、確定申告を行わなければなりません。法人税の申告・納付期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。
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法人税の計算方法
法人税の税額は、課税所得に法人税率を掛け、そこから税額控除を差し引いて算出します。具体的な計算の手順について、解説していきます。

1 課税所得を計算する
法人税額を算出する際には、まず、ベースとなる課税所得を計算する必要があります。課税所得とは、益金から損金を引いた金額のことを指します。
益金とは、商品・製品などの販売による売上収入や土地・建物の売却収入などです。それに対し、損金は売上原価や販売費、災害などによる損失など費用・損失に当たるものです。
課税所得を求める計算式は、以下のとおりです。
課税所得を求める計算式
課税所得=益金-損金
なお、益金と損金は税法上の考え方であり、企業会計上の収益や費用(経費)と金額が一致しないこともあるため注意しましょう。実際には、収益から費用を引いた利益に、法人税法の規定に基づく税務調整を行ったものが、課税される所得となります。
2 法人税率を確認する
課税所得を計算したら、次に、適用される法人税率を確認しましょう。
法人税の税率は、法人の種類や資本金、所得の額によって変動します。例えば、株式会社や合同会社などの普通法人の場合、資本金が1億円以下で年間の所得が800万円以下なら、法人税率は15%です。
また、資本金が1億円以下で年間の所得が800万円を超える場合、800万円以下の部分は税率15%、800万円超の部分については23.2%となります。資本金が1億円を超える普通法人は、所得金額にかかわらず税率は23.2%です。
法人の区分ごとの詳しい法人税率は、国税庁「No.5759 法人税の税率」で確認できます。
3 法人税額を計算する
課税所得と法人税率が確認できたら、これらを乗じて、法人税額を計算しましょう。
計算の際に1円未満の端数があるときは、切り捨てとなります。さらに、税額控除を適用する場合は、その金額を差し引きます。法人税額を求める計算式は、次のとおりです。
法人税額を求める計算式
法人税額=課税所得×法人税率-税額控除
税額控除とは、課税所得に法人税率を掛けて求めた金額から、直接一定の金額を差し引くことができる制度です。税額控除には、利子などに関する所得課税控除や外国税額控除など二重課税を防ぐ目的で設けられているものの他、青色申告をしている中小企業などが前年度より給与支給額を増加させた場合に一部を税額控除できる「賃上げ促進税制」などもあります。税額控除を適用するには所定の要件があるため注意が必要です。
法人税の計算シミュレーション
実際に例を挙げて、法人税の計算をシミュレーションしてみましょう。なお、いずれの場合も、税額控除はないものとして計算します。
資本金500万円、年間所得200万円の普通法人の法人税額
資本金が500万円であれば、資本金1億円以下かつ年間所得800万円以下の普通法人に該当するため、法人税率は15%となります。
資本金500万円、年間所得200万円の普通法人の場合、法人税額の計算式は以下のとおり、法人税額は30万円です。
法人税額を求める計算式
200万円×15%=30万円
資本金500万円、年間所得1,000万円の普通法人の法人税額
同じ資本金1億円以下の普通法人でも、年間所得が800万円を超える場合は、800万円以下の部分と800万円を超える部分で法人税率が変わります。800万円以下の部分は15%、800万円超の部分は23.2%となります。
資本金500万円、年間所得1,000万円の普通法人の場合、法人税額の計算式は次のとおりとなり、法人税額は166万4,000円です。
法人税額を求める計算式
年800万円以下の部分:800万円×15%=120万円
年800万円超の部分:200万円×23.2%=46万4,000円
法人税額の合計:120万円+46万4,000円=166万4,000円
年間所得3,000万円の公益法人(公益社団法人や公益財団法人)の法人税額
公益社団法人や公益財団法人などの公益法人の場合、法人税法上の収益事業によって得た所得は、法人税の課税対象となります。公益目的事業から生じた所得は課税対象になりません。
公益社団法人や公益財団法人の法人税率も、収益事業で生じた年間所得が800万円以下と800万円超で法人税率が変わります。この場合の税率は、800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が23.2%となります。
収益事業から得た年間所得が3,000万円の公益法人の場合、法人税額の計算式は次のとおりとなり、法人税額は630万4,000円です。
法人税額を求める計算式
年800万円以下の部分:800万円×15%=120万円
年800万円超の部分:2,200万円×23.2%=510万4,000円
法人税額の合計:120万円+510万4,000円=630万4,000円
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法人税の申告方法
法人税は、納税者自らが納めるべき税額を計算して申告・納税する申告納税方式の税金です。そのため、法人は事業年度ごとに法人税額を計算し、確定申告を行わなければなりません。法人税の確定申告の方法や申告先、申告期限について、しっかりと確認しておきましょう。
申告方法
法人税の確定申告は、書面の申告書を税務署窓口に持参または郵送の他、e-Taxによる電子申告も可能です。
e-Taxを利用する場合は、利用者識別番号や電子証明書の取得などが必要になるため、事前に準備しておきましょう。電子申告が義務化されている大法人でなければ、e-Taxで電子申告をして、財務諸表(決算書)や勘定科目内訳明細書などの添付書類は書面で提出することも可能です。
なお、会計ソフトの中には、作成した決算書データを、国税庁のWebサイトで公開している「e-Taxソフト」に取り込めるものもあります。
法人税の申告先
法人税の申告先は、納税地を所轄する税務署です。税務署の所在地は、国税庁のWebサイト「税務署の所在地などを知りたい方」から確認できます。
なお、「法人税等」と呼ばれる税金の中でも、国税である法人税と、地方税である法人事業税や法人住民税では、申告先が異なるため注意しましょう。
例えば、法人事業税の申告先は、事務所などが所在する都道府県税事務所です。また、法人住民税は道府県民税と市町村民税に分かれるため、都道府県税事務所と市町村役場のそれぞれに申告が必要です。ただし、東京23区内の場合は、道府県民税・市町村民税共に、都税事務所に申告書を提出します。
法人税の申告期限
法人税の確定申告の期限は、申告期限や課税期間について特別な届出などを行っていなければ、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。法人事業税や法人住民税についても同様に、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内が申告期限です。期限に当たる日が土日祝日に重なる場合は、翌平日が期限となります。
なお、申告期限と納付期限は同じ日なので注意しましょう。例えば、3月末決算の法人なら、2か月後の5月31日が申告・納付期限になります。
法人税の計算・納付の際の注意点
法人税の計算や確定申告をする際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは、法人税を計算・納付する際の4つの注意点について解説します。
納付書を忘れずに書く
法人税を税務署や金融機関の窓口で納める場合は、納付書の記載を忘れてはいけません。納付書は、法人税の申告期限までに税務署から送付されます。もし届かない場合は、税務署窓口で入手することもできます。
納付書には事業者名が記載されているので、誤りがないかどうかの確認が大切です。また、本税や重加算税、加算税、利子税、延滞税、合計額などの欄は空欄になっているため、該当する部分に、忘れずに金額を記入しましょう。
なお、e-Taxでダイレクト納付利用届出書を提出している法人には、法人税の納付書は送付されません。さらに、2024年5月以降は、e-Taxにより申告書を提出している法人や、e-Taxでの申告が義務化されている法人、クレジットカードなど紙の納付書を使わずに法人税を納付している法人は、納付書の事前送付が取りやめとなります。
中間申告が必要になる場合がある
前事業年度の法人税額が20万円を超えた場合は、原則として、法人税の中間申告が必要となる点に注意しましょう。
法人税の中間申告とは、事業年度開始から6か月時点までを課税期間として税額を見積もり、前もって申告・納付することです。中間申告が必要な法人には、税務署から、中間申告書が送られてきます。
法人税の中間申告および納付の期限は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内です。例えば、3月末決算の法人なら、事業年度開始の日である4月1日から6か月を経過した日の10月1日から2か月以内となるため、11月30日が期限になります。
法人税の中間申告の方法には、前期分の確定法人税額の6か月分を申告納付する「予定納税」と、事業年度開始から6か月間を一課税期間として仮に決算を行う「仮決算」の2種類があり、どちらを選んでも問題ありません。もし期限までに中間申告書を提出しなかった場合は、自動的に予定納税とみなされるため無申告加算税は課されませんが、納付期限を過ぎると延滞税が発生するため注意が必要です。
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赤字決算の場合でも確定申告は必要
法人税額は課税所得に法人税率を掛けて算出されるため、課税所得がゼロ、つまり赤字決算の場合は法人税が発生しません。ただし、赤字決算で法人税がかからないとわかっていても、確定申告は必要なので注意しましょう。
なお、法人税等のうち、法人住民税の均等割については、課税所得に関係なく計算されるため、赤字でも原則として納税義務があります。
申告期限に間に合わなかった場合はペナルティが発生する
期限内に法人税の申告・納付を行わないと、延滞税や無申告加算税といったペナルティが発生してしまうため、注意しましょう。
前述したように、法人税の確定申告の期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。期限内に法人税の期限内に法人税の申告・納付を行わないと、延滞税や無申告加算税といったペナルティが発生します。さらに、2期連続で申告期限を過ぎると、青色申告の承認が取り消されてしまいます。
法人税等の金額を左右するのは、決算の内容です。決算を確定させるには、決算処理をして決算書を作成した後、株式会社の場合は原則として株主総会で承認を受ける必要があります。さらに、法人税申告書は書類の種類が多く、書き方も複雑です。期限までに法人税の確定申告を終わらせるためには、余裕を持って準備を進めておくことが大切です。
なお、株主総会の開催を「事業年度終了の翌日から3か月以内」と定款で定めている場合は、確定申告の期限を2か月から3か月に延長できる特例があります。ただし、延長されるのは申告期限だけであって、納付期限は変わらないため、注意が必要です。確定申告の期限を延長した場合、一般的には、本来の申告期限までに暫定的な税額を見込納付し、申告の際に改めて精算を行います。
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法人税の納税額は、益金から損金を引いた課税所得に所定の税率を掛けた金額から、税額控除を差し引いて求めます。法人税の税率は、法人の種類や資本金、所得の額によって変動します。資本金1億円以下の中小企業の場合は、年間所得が800万円を超えるかどうかで法人税の税率が変わってくるので注意が必要です。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
