法人でも青色申告できる?申告のメリットや必要な手続きを解説

2023/08/31更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

法人は、事業年度ごとに、法人税の確定申告を行う必要があります。個人事業主の所得税の確定申告には、「青色申告」と「白色申告」があり、青色申告を行うとさまざまな特典が受けられます。では、法人の確定申告でも青色申告は可能なのでしょうか。また、法人が青色申告を行うためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。

ここでは、法人の青色申告について、青色申告を行うメリットやデメリット、青色申告を行うために必要な事前手続きなどについて解説します。

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法人でも青色申告できる?

個人事業主の所得に所得税がかかるように、法人も事業によって得た所得に応じて法人税を納めなければなりません。法人は事業年度ごとに決算を行い、確定した決算にもとづいて法人税などを計算して確定申告を行います。

個人も法人も、確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類の方法があります。青色申告と聞くと、個人事業主の確定申告をイメージする方が多いかもしれませんが、法人でももちろん青色申告は可能です。むしろ、法人の場合は白色申告よりも青色申告の方が一般的といえるでしょう。青色申告には白色申告にない多くの節税メリットがあるため、節税効果を考えるなら、青色申告を行うのがおすすめです。

ただし、青色申告を行うには事前に税務署に申請を行い、承認を受ける必要があります。青色申告の申請手続きは、税務署に「青色申告の承認申請書」を提出するだけで手数料もかかりませんが、期限が定められています。そのため、会社を設立したら、早めに青色申告の申請を済ませておくといいでしょう。

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青色申告の手続き方法

前述のとおり、法人が青色申告を行うには、事前に税務署の承認を受ける必要があります。青色申告を始めるための具体的な手続きは、下記のとおりです。

1 青色申告の承認申請書に必要事項を記載する

青色申告の申請のために必要な書類が「青色申告の承認申請書」です。青色申告の承認申請書は、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。必要事項を漏れのないように記入しましょう。また、e-Taxを使えばインターネット上で提出することができます。

2 法人税などを納税する所轄税務署に持参、郵送、またはe-Tax経由で提出する

青色申告の承認申請書の記載が完了したら、納税地を所轄する税務署に、持参、郵送、e-Taxのいずれかの方法で提出します。提出期限は「青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日まで」です。例えば、決算日が3月31日の法人が翌事業年度から青色申告を行いたい場合、申請書の提出期限は、原則として当課税期間の3月31日となります。

なお、新たに会社を設立し、設立1期目から青色申告を行いたい場合は、設立日から3か月を経過した日の前日までに、青色申告の承認申請書を提出する必要があります。例えば、会社設立日が4月1日なら、申請書の提出期限は6月30日です。

ただし、設立日から3か月が経過するより前に1期目の事業年度が終わる場合は、事業年度終了の日の前日が提出期限になります。例を挙げると、設立日が4月1日の会社が、決算日を5月31日に設定したようなケースです。

法人が青色申告をしなかった場合はどうなる?

法人が青色申告をしない場合や、青色申告をしたくても申請期限までに青色申告の承認申請書を提出できなかった場合、その事業年度については白色申告を行うことになります。白色申告も確定申告の方法の1つで、「納めるべき法人税を申告する」という意味では青色申告と同じです。

青色申告との大きな違いは、白色申告は単式簿記での記帳が認められており、青色申告に比べて帳簿付けが簡便であるという点です。ただし、白色申告では、後述するような青色申告のメリットは受けられません。

法人税の確定申告の期限は?

法人税の確定申告の期限は、原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内、つまり決算日の翌日から2か月以内です。これは青色申告でも白色申告でも同様です。確定申告の期限が一律で3月15日と決まっている個人事業主とは異なるため、法人成りした人は注意しましょう。

なお、株式会社の場合は、株主総会の承認を得て決算が確定しなければ、確定申告を行うことができません。株主総会の開催時期が決算から2か月を超える場合は、その旨を定款に定めたうえで納税地の所轄税務署長に申請すれば、申告期限の延長の特例を適用できます。

法人が青色申告を行う3つのメリット

法人が青色申告を行うと、下記に挙げる3つの節税メリットがあります。それぞれについて詳しく説明します。

欠損金の繰越控除ができる

欠損金の繰越控除ができる点は、法人が青色申告を行うメリットの1つです。欠損金の繰越控除とは、その期に生じた赤字を、翌期以降の黒字と相殺できる制度です。青色申告を行っている法人は、赤字を最大で10年(2018年4月1日前に開始した事業年度における赤字は9年)繰越すことができます。

例えば、前期に100万円の赤字が出て、当期が50万円の黒字だったとしましょう。この場合、欠損金の繰越控除が適用されれば、100万円の赤字と50万円の黒字が相殺され、資本金が1億円以下の中小企業の場合は、当期課税所得はゼロになるため法人税はかかりません。さらに、次の期も黒字だった場合は、残っている赤字分の50万円と相殺できるため、法人税額を少なくすることができます。

欠損金の繰り戻しによる法人税の還付ができる

法人は、青色申告を行うことで、欠損金の繰り戻しによる法人税の還付ができます。青色申告をしている資本金1億円以下の中小企業であれば、赤字が出たときに、繰り越しではなく繰り戻しを選択することも可能です。欠損金の繰り戻しとは、当期の赤字を前期の黒字と相殺することです。これにより、当期の赤字分を前期の所得から差し引き、それによって納め過ぎとなった前期の税金が還付されます。

30万円未満の減価償却資産については一括で経費にできる

30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできる点も、法人が青色申告を行うメリットです。税法上、取得価額が10万円以上のものを購入した場合は固定資産とみなされ、法定耐用年数に応じて減価償却を行う必要があります。

ただし、青色申告をしている中小企業などは、年間300万円を限度として、取得価額30万円未満の減価償却資産を一括で経費計上できる特例があります。経費計上できる額が増えれば、その分課税所得が減り、法人税額を抑えることができます。

法人が青色申告を行うデメリット

青色申告では、正規の簿記の原則に従って、帳簿を作成する必要があります。正規の簿記の原則とは、正確な会計帳簿の作成とそれに基づいて財務諸表を作成するという原則です。会計帳簿の作成には一般的に複式簿記を用います。

複式簿記とは、1つの取引を「借方」「貸方」の側面に分け、複数の勘定科目を使って帳簿に記録する方法です。一方、白色申告では、複式簿記よりもシンプルな「単式簿記」による記帳が認められています。そのため、簿記の知識がないと、「帳簿付けが難しくて手間がかかりそう」とマイナスイメージを抱くかもしれません。

しかし、会社は事業年度ごとに必ず決算を行い、決算書を作成しなければなりません。1事業年度の収支をまとめて決算を行うには、日々の帳簿付けが必要不可欠です。また、青色申告で必要な複式簿記による帳簿も、会計ソフトを利用すれば簿記の知識がなくてもスムースに作成できます。青色申告で得られる節税メリットを考えれば、帳簿付けの手間は、さほど大きなデメリットとはいえないでしょう。

法人における青色申告の承認申請書の項目と書き方

青色申告の承認申請書の書き方は、それほど難しいものではありません。記載項目ごとに、具体的な書き方を見ていきましょう。

提出年月日

提出年月日の項目には、申請書の提出日を記載します。窓口提出なら税務署に提出する日、郵送での提出なら発送する日です。

所轄税務署

「税務署長殿」の前に、納税地(本店所在地)を所轄する税務署を記載します。所轄税務署は、国税庁のWebサイトで調べることができます。

納税地

納税地の項目には、会社の本店所在地と電話番号を記入します。固定電話を設置していない場合は、携帯電話の番号でも問題ありません。

法人名等、法人番号

法人名等の項目には、法人の名称を記載します。法人番号については、提出時点で指定を受けていない場合は、記載の必要はありません。法人番号は、国税庁の「法人番号公表サイト」でも確認ができます。

代表者氏名、代表者住所

代表者氏名と代表者住所の欄に記載し、「印」の箇所には会社の実印を押印します。

事業種目、資本金又は出資金額

事業種目の項目には、定款に記載されている事業目的のうち主なものを記載します。資本金の項目には、登記上の資本金の金額を記載しましょう。

事業年度の自令和年月日、至令和年月日

青色申告を開始したい事業年度の開始日と終了日を記載します。会社を設立して、1期目から青色申告を行いたい場合は、設立日が事業年度開始日になります。

最初の事業年度から青色申告を開始するか否かのチェック欄

会社設立後、最初の事業年度から青色申告を開始したい場合は、2つめの「この申告後、青色申告を最初に提出しようとする…」の項にチェックを入れます。日付欄には、会社設立年月日を記入しましょう。

帳簿組織の状況

帳簿の中でも、主要簿と呼ばれる総勘定元帳と仕訳帳は、青色申告では作成が必須となります。「伝票又は帳簿名」の欄には、まず総勘定元帳と仕訳帳を記入しましょう。その他、現金出納帳や預金出納帳などの帳簿を作成する場合は、それらについても記載します。

「左の帳簿の形態」欄は、実態に即した内容を記載します。例えば、クラウドサービスやソフトウェアを使用する場合は「会計ソフト」、その他の方法なら、実態に合わせて「ノート」「エクセル」などと記入しましょう。

その隣の「記帳の時期」欄は、記帳を記入・更新するタイミングについて記載する項目です。「毎年」「四半期毎」「毎月」「毎週」「随時」など、こちらも実態に合わせて記載します。あくまで申請書提出時の予定なので、その後、業務の都合によって変更しても問題はありません。

特別な記帳方法の採用の有無

クラウドサービスやソフトウェアを使う場合は、「ロ 電子計算機利用」にチェックを入れます。それ以外の場合は、チェックなしで問題ありません。

税理士が関与している場合における関与度合

税理士の関与について記載する項目です。税理士に会社の会計業務を依頼している場合は、どのように記載すべきかを確認するといいでしょう。依頼している内容によって、例えば「伝票整理からの一切の事務」「記帳から総勘定元帳作成まで一切の事務」などと記載します。

税理士署名

申請書を税理士が作成した場合は、その税理士の自筆による署名が必要です。

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法人の確定申告は青色申告がおすすめ

個人事業主と同様に、法人の確定申告も青色申告が可能です。法人が青色申告を行うと、赤字の繰越しや繰戻しなど、さまざまな節税メリットがあります。青色申告のデメリットと捉えられがちな複式簿記も、「弥生会計 オンライン」などの会計ソフトを使えばそれほど難しくないため、法人の確定申告は青色申告がおすすめといえます。

ただし、青色申告を行うには、定められた期限までに申請書を税務署に提出し、承認を受けなければなりません。期限までに申請書を提出しないとその事業年度は青色申告ができず、節税メリットのない白色申告を行わざるを得なくなります。うっかり申請を忘れないように、会社を設立したら、できるだけ早めに青色申告の承認申請書を提出しておきましょう。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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