法人税申告書とは?書き方や提出方法・提出期日などを解説
監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所
2024/01/12更新
法人は、事業年度ごとに、必ず法人税の確定申告を行わなければなりません。このときに税務署に提出する書類が、法人税申告書です。
申告書と聞くと、個人の所得税の確定申告書をイメージする方も多いのではないでしょうか。しかし、法人税申告書は、所得税に比べて書類の種類が多く、書き方も複雑であるため、スムースに作成できるようにしっかり準備をしておくことも大切です。
ここでは、法人税申告書の種類や書き方、提出方法、提出期日の他、期日までに提出できなかった場合の対処法などについて解説します。
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法人税申告書とは、法人の確定申告の際に提出する書類のこと
法人税申告書とは、法人が法人税の確定申告のために税務署に提出する書類です。法人税申告書には、法人がその事業年度に得た所得に応じて納める法人税の内容が記載されます。
個人の所得に所得税がかかるように、法人も、法人の所得に応じて法人税を納める義務があります。法人税が課せられる所得とは、益金から損金を引いた金額のことを指します。益金とは、商品・製品などの販売や役務提供による売上収入や土地・建物の売却収入のほか、無償による資産の譲渡・役務提供その他の無償取引に係る収益などのことです。損金は、売上原価や販売費、災害などによる損失など費用や損失にあたる金額です。
法人税は、納税者自身が納めるべき税金を計算して、税務署に申告・納付する申告納税方式となっています。法人は、定款で定めた事業年度ごとに納めるべき法人税額を計算し、期限までに確定申告を行わなければなりません。この確定申告の際に必要になる書類が、法人税申告書です。
法人税の課税対象となる法人には、株式会社や合同会社といった会社の他、協同組合や一般社団法人、NPO法人なども含まれます。
損金については別の記事で解説していますので、参考にしてください。
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法人税申告の際に提出が必要な書類は?
法人税申告書には、「別表一」から「別表二十」まであり、そのうちの別表一を「確定申告書」とも呼びます。それ以外の別表は確定申告書の「明細書」として取り扱われており、すべてを合わせると書類の種類は100種類以上にものぼります。また、これらの書類は税務署で入手できるほか、国税庁のウェブサイトからもダウンロードできます。
ただし、法人税の確定申告において、すべての企業が100種類以上の書類を提出しなければいけないというわけではありません。提出が必要な書類は、企業の決算の内容によって異なります。
別表のうち主なものを、下記の表にまとめました。表にある書類のうち、一般的には、別表一、別表二、別表四、別表五(一)、別表五(二)は必ず提出します。
別表番号 | 別表名 |
---|---|
別表一 | 各事業年度の所得に係る申告書 |
別表二 | 同族会社等の判定に関する明細書 |
別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書 |
別表五(一) | 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 |
別表五(二) | 租税公課の納付状況等に関する明細書 |
別表六(一) | 所得税額の控除に関する明細書 |
別表七(一) | 欠損金の損金算入等に関する明細書 |
別表八(一) | 受取配当等の益金不算入に関する明細書 |
別表十一(一) | 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 |
別表十一(一の二) | 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 |
別表十四(二) | 寄附金の損金算入に関する明細書 |
別表十五 | 交際費等の損金算入に関する明細書 |
別表十六(一) | 旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
別表十六(二) | 旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
別表十六(六) | 繰延資産の償却額の計算に関する明細書 |
別表十六(七) | 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書 |
別表十六(八) | 一括償却資産の損金算入に関する明細書 |
詳細は、国税庁ホームページの「法人税申告書一覧表」を参照してください。
法人税申告書の書き方
法人税申告書はどのように記載すればよいのでしょうか。ここでは、法人税申告書の作成方法を、流れに沿って解説していきます。
1 当期の取引を記帳する
決算と法人税の確定申告を行うには、まず、当期の記帳をすべて完了させなければなりません。決算前にまとめて記帳をしようとすると、作業量が膨大になるうえ、ミスや漏れも発生しやすくなります。そのため、日ごろから取引をしっかり記帳しておくことが大切です。記帳が完了したら、帳簿のデータと実際の残高を突き合わせして、内容が合致するかどうかを確認しましょう。
2 財務諸表を作成する
法人税申告書に取り掛かる前に、財務諸表を作成します。法人税申告書は、財務諸表がなければ作成することができません。財務諸表とは、事業年度ごとに企業の財政状態や経営成績をまとめた書類で、一般的に「決算書」と呼ばれます。
財務諸表のうち、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書は「財務三表」と呼ばれる重要な書類です。特に、貸借対照表と損益計算書は、企業の規模にかかわらず作成が必要です。キャッシュ・フロー計算書については、上場企業の場合、決算時に作成する必要がありますが、中小企業の税務申告においては作成義務がありません。
貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書については別の記事でそれぞれ解説していますので、参考にしてください。
3 財務諸表の内容をもとに、明細書を作成する
財務諸表の内容をもとに、「別表六」以降の書類を作成しましょう。「別表六」以降の明細書(別表)には、減価償却費や交際費、繰延資産など個別の項目について記載します。また、「別表七」は、欠損金や災害損失金といった損金算入などに関する明細書となっています。「別表六」以降の明細書(別表)が完成したら、各項目について、「別表四」に反映していきます。
4 前回の法人税申告書の内容をもとに、明細書を作成する
前回提出した法人税申告書の内容から、必要項目を明細書(別表)に記載しましょう。「別表五(一)」の期首現在利益積立金額や期首現在資本金等の額は、前期の法人税申告書に記載されているので転記します。また、「別表四」の当期利益または当期欠損の額については、決算書から転記を行います。
5 別表四の金額から所得金額を確定する
「別表四」の金額をもとに加算や減算を行い、所得金額を確定させます。申告書上で加算・減算する場合に税務上有効となるものを「申告調整」といい、申告調整には、任意申告調整事項と必須申告調整事項の2種類があります。このうち任意申告調整事項は、調整するかどうかは法人の任意ですが、調整しなければ税法上の適用は受けられません。
一方、必須申告調整事項は、申告書で必ず調整しなければならないもので、調整しないと税法上の更正処分を受けることになってしまいます。
必須申告調整事項の代表的な内容は、下記のとおりです。
主な必須申告調整事項
- 減価償却費の繰入超過額
- 役員給与の損金不算入
- 寄附金や交際費の損金不算入
- 各種引当金や準備金などの繰入超過額
- 法人税、住民税の損金算入
6 それぞれの資料の情報を転記して申告書にまとめる
それぞれの明細書(別表)で算出した金額を、「別表一」の申告書にまとめていきます。これによって、納めるべき法人税額が確定します。
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法人税申告書の提出方法・提出期限
法人税申告書の提出先は、納税地を所轄する税務署です。税務署窓口への持参、郵送の他、e-Taxでの申告も可能です。また、法人税の確定申告の期限は事業年度終了日の翌日から2か月以内です。申告期限と納付期限は同じなので注意が必要です。例えば3月期決算の法人なら、申告期限・納付期限は5月31日です。ただし、期限にあたる日が土曜日、日曜日、祝日などの場合は、その翌日(休み明けの平日)が期限となります。
なお、株主総会の開催を「事業年度終了の翌日から3か月以内」と定款で定めている場合は、法人税の申告期限を1か月延長し、事業年度終了日の翌日から3か月以内とすることが可能です。ただし、別途申請が必要となります。この場合、延長されるのは申告期限だけで、納付期限は変わりません。そのため一般的には、本来の申告期限までに暫定的な税額を見込納付し、申告の際に改めて精算を行います。
法人税の申告・納付期限を守らないと、延滞税や無申告加算税、重加算税といったペナルティが発生することがあります。さらに、青色申告をしている法人の場合、2期連続で期限内の申告がない場合、青色申告の承認が取り消されてしまうため、注意が必要です。青色申告が取り消されると、欠損金(赤字)の繰越控除や、減価償却費を通常時より多く計上できる特別償却、一定額の法人税を控除できる特別控除など、さまざまな節税メリットが受けられなくなってしまいます。
たとえ赤字で法人税がかからない事業年度であっても、法人税の確定申告は必要です。期限までに確定申告を終えられるように、余裕を持って法人税申告書の作成を進めましょう。もし自分だけで法人税申告書を作成するのが難しい場合は、税理士に依頼または相談することをおすすめします。
期限までに申告できなかったらどうなる?
もし、法人税申告書の作成が間に合わなかったなどの理由で、期限までに確定申告ができなかった場合はどうすれば良いのでしょうか。
確定申告の期限までに申告できなかった場合でも、そのまま放置してはいけません。もし定められた期限までに確定申告ができなかった場合は、できるだけ早く申告を行いましょう。期限を過ぎると、申告が遅くなればなるほど、延滞税などのペナルティが重くなってしまいます。
法人税の確定申告期限に間に合わなかったらどうなるのか、期限後に自ら申告した場合と税務署に指摘されるまで放置した場合の2つのケースに分けて解説します。
期限後に自ら申告した場合
期限内に申告ができなかったとしても、法定深刻期限より1か月以内に自ら確定申告と納税を行えば、ペナルティは延滞税の支払いのみで済みます。これは、税務署に指摘されるまで無申告のまま放置した場合に比べると、かなり軽いペナルティです。そのため、確定申告の期限を忘れていた場合は、気づいたタイミングで可能な限り早く申告を行うことが大切です。このような申告期限を過ぎてからの申告を「期限後申告」といいます。
ただし、申告する前に税務調査が入り、税務署が所得金額や税額を確定させる通知が届いた場合は、期限後申告を行うことはできません。
税務署に指摘されるまで放置した場合
税務署に指摘されるまで確定申告を行わないまま放置した場合、税務調査が入る可能性があります。税務調査では、税務署が所得金額や納めるべき税額を判断して納税額の通知を行います。通知を受け取った納税対象者は、その決定にもとづき法人税を納付しなければなりません。税務署の指示に従わない場合は督促が行われ、それでも税金を納付しないと財産差し押さえなどの処分が下されることもあります。
「無申告にもかかわらず現段階ではまだ税務調査が入っていない」という場合でも、できる限り早く申告を行いましょう。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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