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建設業会計とは?一般会計との違いや勘定科目の種類を解説

一般的な会計処理では、一事業年度の収支や損益をまとめ、その期間の経営状態を明らかにするために決算を行います。しかし、建設業では、着工から引き渡しまで数年かかるケースも珍しくなく、一般会計では対応が難しい取引も少なくありません。そのため、建設業界では、「建設業会計」と呼ばれる独特な会計基準が用いられています。建設業会計では、一般会計とは異なる勘定科目や仕訳が発生するため、注意しましょう。
本記事では、建設業会計と一般会計との違いや建設業会計で使用する勘定科目の種類などについて解説します。

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建設業会計は建設業の事情に沿った独特の会計基準

建築業会計とは、建設業特有の事情に対応するために設けられた独特な会計基準のことです。
商品を販売したりサービスを提供したりする一般的な業種では、一事業年度(多くの場合1年間)における収益や費用を計算し、損益状態や財務状況を把握します。しかし、建設業ではプロジェクトの完了までに長期間を要することが多く、特に大規模なプロジェクトでは着工から完成、引き渡しまでに1年以上かかるケースが珍しくありません。こうした建設業の実情を考慮せず、一般会計と同じ会計基準を適用すると、工事の進行中は支出が増える一方で、売上が計上されない期間が続きます。その結果、プロジェクトが完成して引き渡された年度に一度に多額の売上や利益が計上されることになります。これでは企業の財務状況を正確に把握することが難しく、経営判断を誤るリスクも高まるでしょう。
そのため、建設業では建設業会計という他業種とは異なる会計基準が採用されているのが特徴です。建設業会計では、長期間にわたる工事の正確な収益認識ができるように、建設業独特のサイクルに対応した会計処理を行います。また、使用する勘定科目も一般会計とは異なるなど、建設業会計は一般会計の知識だけでは対応が難しいため、建設業経理士(建設業経理事務士)という専門資格があります。建設業を営む事業者は、建設業会計について正しく理解し、適用することが重要です。

建設業会計と一般会計との違い

建設業会計と一般会計では、売上や費用を計上するタイミングの会計基準が異なります。一般会計においては、売上・収益については実現主義、費用については、原則、発生主義で計上します。実現主義は、商品の納品やサービスの完了など、売上を得る権利が確定した時点で売上・収益を計上するのに対し、発生主義は、費用や収益が発生したタイミングで計上する方法です。
その一方で、建設業会計では、主に「工事完成基準」または「工事進行基準」を用います。建設業会計の処理を行うには、この2つの会計基準を理解しておく必要があります。

工事完成基準:工事完了後、引き渡し時点で売上や費用を計上する会計基準

工事完成基準とは、請け負った工事が完了し、引き渡しが行われた時点で売上や費用を計上する会計基準です。工事完成基準では、工事の進行中には収益や費用を計上せず、引き渡し時に一括で計上します。そのため、この後解説する工事進行基準に比べて会計処理がシンプルです。ただし、成果物を引き渡すまで実際の収益が確定しないため、特に大規模なプロジェクトではリスクが伴います。例えば、工事が終了して初めて赤字が判明するケースもあります。
さらに、工事期間中に追加の要望や設計の変更が発生した場合、工事完成基準では、その都度収益や費用を正確に計算することが難しい点にも注意しましょう。結果として、収益や費用が正確に把握できていない状態で追加の要望を受け、詳細なコスト管理がなされないまま工事が進行する可能性もあります。

工事進行基準:工事の進捗に応じて売上や費用を計上する会計基準

工事進行基準とは、工事の進捗に応じて売上や費用を計上する会計基準です。工事進行基準では、「工事収益総額」「工事原価総額」「工事進捗度」という3つの要素を基に、工事の進行状況を合理的に見積もり、決算ごとに売上と費用を段階的に計上していきます。税務上、工期が1年以上、かつ請負金額が10億円以上の工事でその工事に係る契約において、その請負の対価の額の2分の1以上がその工事の目的物の引き渡しの期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていないものである場合、原則、工事進行基準が適用されます。
工事進行基準の大きなメリットは、長期間にわたる工事であっても、工事の進行中に実質的な利益を把握できる点です。これにより、工事の進捗に合わせて資金計画を立てやすくなり、資金繰りの安定を図ることが可能になります。また、工事の進捗に応じた売上計上ができるため、工事が完了するまで利益が把握できない工事完成基準に比べて、早い段階での経営判断を行いやすくなります。
その一方で、工事進行基準の適用にあたっては、契約段階で工事内容や費用などを詳細に定めておくことが必要です。さらに、工事の進捗を正確に把握するための情報管理が求められ、会計処理も工事完成基準に比べて複雑になります。

建設業会計の独自の勘定科目

建設業会計では、一般会計とは異なる勘定科目が数多く用いられます。ここからは、建設業会計独自の勘定科目について解説していきます。それぞれの勘定科目の意味と、一般会計ではどの勘定科目に相当するのかを、仕訳例と共に確認しておきましょう。

完成工事高:工事完了後、引き渡し時に得られる売上

完成工事高とは、工事が完了して引き渡したときに得られる売上のことです。一般会計における「売上高」に当たります。
完成工事高として計上されるのは、建設業における本業の売上のみです。例えば、建設業と並行して資材の卸売や不動産業を営んでいるような場合、本業以外で得た売上は、完成工事高ではなく「雑収入」などの勘定科目で計上します。
なお、一般会計の場合は、掛取引で商品を販売した際には貸方が売上高、借方が売掛金になりますが、建設業会計では売掛金に当たる「完成工事未収入金」という勘定科目で仕訳します。

仕訳例:1,000万円で契約していた工事の引き渡しが完了した。代金は後日入金される

借方 貸方
完成工事未収入金 10,000,000円 完成工事高 10,000,000円

完成工事原価:完成工事高を得るために直接かかった費用

完成工事原価とは、工事が完了し、完成工事高を得るために直接かかった費用のことです。一般会計における「売上原価」に当たります。
具体的には、工事完成のために必要となった材料費、作業員の労務費、外部業者に支払う外注費、そして工事に関連するその他の経費が含まれます。そのため、完成工事原価は、工事ごとのコスト管理や利益の把握において重要な要素です。
なお、工事を受注するための販管費や事務所の家賃、水道光熱費といった、直接工事に関係のない費用は完成工事原価には含まれません。

仕訳例:完成した工事を引き渡した後、未成工事支出金3,000万円を完成工事原価に振り替えた

借方 貸方
完成工事原価 30,000,000円 完成工事未収入金 30,000,000円

完成工事総利益:完成工事高から完成工事原価を差し引いた粗利益

完成工事総利益とは、完成工事高から完成工事原価を差し引いて算出される、いわゆる粗利益のことです。一般会計における「売上総利益」に当たります。
完成工事総利益は、一般会計の売上総利益と同様に損益計算書に記載されます。一般会計では、売上高における売上総利益の割合は、売上総利益率(粗利率)です。建設業会計においても、完成工事高における完成工事総利益の割合を計算することで、完成工事高総利益率(粗利率)を算出できます。計算式は、「完成工事高総利益率(%)=完成工事総利益÷完成工事高×100」です。この粗利率が高いほど、収益性が高いと判断されます。なお、一般財団法人 建設業情報管理センター「建設業の経営分析(令和3年度)」によると、建設業(大会社を除く)の粗利率は平均約20%です。

未成工事支出金:完成していない工事にかかった費用

未成工事支出金は、まだ完成していない工事にかかった費用を計上するための勘定科目です。一般会計における「仕掛品」に当たります。
未成工事支出金には、完成工事原価に計上されていない工事費用の材料費や労務費、経費、外注費などが含まれます。
建設工事は長期間にわたることも多く、着工から完成までに決算をまたぐケースも珍しくありません。そのため、期末時点で工事が完成していない場合の材料費や労務費などの費用は、決算時に未成工事支出金として計上しておき、完成してから工事原価へと振り替えます。

仕訳例:工事進行基準を適用している工事について、1年目の決算時に、材料費500万円、労務費700万円、経費300万円を未成工事支出金として計上した

借方 貸方
未成工事支出金 15,000,000円 材料費 5,000,000円
労務費 7,000,000円
経費 3,000,000円

完成工事未収入金:完成売上高のうち未回収の費用

完成工事未収入金は、一般会計における「売掛金」に該当する勘定科目です。計上した完成工事高のうち未回収のものは、完成工事未収入金として計上します。例えば、工事の引き渡しを行い、後日代金が入金された場合の仕訳は以下のようになります。

仕訳例:1,000万円で契約していた工事の引き渡しが完了した

借方 貸方
完成工事未収入金 10,000,000円 完成工事高 10,000,000円

仕訳例:工事代金1,000万円が、当座預金口座に振り込まれた

借方 貸方
当座預金 10,000,000円 完成工事未収入金 10,000,000円

未成工事受入金:未完成の工事に対して受け取った代金

未成工事受入金は、まだ引き渡しが完了していない工事代金の一部を、先に受け取ったときに使用する勘定科目です。一般会計における「前受金」に当たります。未成工事受入金は、未完成の工事に対して受け入れたお金のことを指します。

仕訳例:翌期に完成予定の工事代金3,000万円のうち、1,000万円が当座預金に入金された

借方 貸方
当座預金 10,000,000円 未成工事受入金 10,000,000円

仕訳例:翌期に完成した工事を引き渡した

借方 貸方
完成工事未収入金 20,000,000円 完成工事高 30,000,000円
未成工事受入金 10,000,000円

工事未払金:工事原価において未払いの費用

工事未払金は、材料費や外注費などの工事原価のうち、まだ支払っていない費用を計上する勘定科目です。一般会計では「買掛金」や「未払金」に当たります。
工事未払金として計上するのは、工事のために直接かかった費用(原価)のうち、未払いのもので販売費や一般管理費などは含みません。

仕訳例:工事のために材料100万円の引き渡しを受け、支払いは掛けとした

借方 貸方
材料費 1,000,000円 工事未払金 1,000,000円

仕訳例:工事未払金として計上していた100万円を、当座預金から支払った

借方 貸方
工事未払金 1,000,000円 当座預金 1,000,000円

建設業会計独自の引当金

引当金とは、来期以降に発生する可能性が高い支出に備えて、あらかじめ計上しておく見積金額のことです。代表的なものに、債権の貸倒れに備えて設定される「貸倒引当金」や、翌期に支払う賞与を準備するための「賞与引当金」、固定資産の修繕費用に備える「修繕引当金」などがあります。さらに、建設業会計では、一般会計とは異なる以下のような独自の引当金があります。

工事損失引当金:工事によって見込まれる損失を計上する引当金

工事損失引当金とは、将来的に赤字が発生する可能性のある工事について、その見込まれる損失を計上する引当金のことです。工事損失引当金を計上できるのは、損失が発生する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合に限られます。例えば、販売直接費を含む工事原価の総額が、工事収益総額を超えると見込まれる場合、超過分の金額を工事損失引当金として計上します。

完成工事補償引当金:完成した工事の瑕疵(欠陥)に備えて計上する引当金

完成工事補償引当金とは、完成工事に瑕疵(欠陥)があった場合に備えて計上する引当金のことです。建設業においては、建物などの引き渡しの後、一定の条件を下に無償修理を行う契約になっていることがあります。例えば、引き渡した工事に契約上の不適合があった場合は、修繕など適切な対応が求められます。このような支出に備えて計上する引当金が、完成工事補償引当金です。

環境対策引当金:環境対策に必要な支出に備える引当金

環境対策引当金とは、環境対策に関する支出に備える引当金です。具体的には、有害性が認められ期限内処理が定められているポリ塩化ビフェニル(PCB)の処分や、アスベストの撤去などにかかる費用を、あらかじめ見積もって計上する際などに用いられます。

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建設業特有の会計処理を理解しておこう

建設業は、工事期間が長期にわたり決算をまたぐケースが珍しくありません。そのため、建設業独特の事情に沿った、建設業会計による会計処理が行われます。建設業会計は、売上・費用の計上基準や使用する勘定科目、引当金の種類などが一般会計とは異なります。建設業で適切な会計処理を行うためには、建設業会計の特徴をしっかり理解しておくことが大切です。

弥生会計 オンライン」は、必要に応じて勘定科目のカスタマイズができるので、独自の勘定科目を追加することもできます。また、建設業会計に不安がある場合は、建設業界に詳しい税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。会計ソフトを活用したり、専門家の力を借りたりして、スムーズな仕訳と業務効率化を目指しましょう。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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