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ROA(総資産利益率)とは?計算方法やROEとの違い、改善方法などを解説

監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所

2024/01/12更新

企業の経営状況を把握する財務指標の1つが、「ROA(総資産利益率)」です。ROAは、貸借対照表に記載されている総資産と、損益計算書にある利益によって導き出される指標です。ROAを見ることで、企業の収益性を測ることができます。会社の状態を正しく把握するためにも、ROAがどのような意味を持つのか知っておきましょう。

ここでは、ROAの計算方法や分析時の注意点、ROAの数値を改善する方法の他、ROAと混同されやすい「ROE(自己資本利益率)」との違いなどについて解説します。

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ROAとは、資産に対してどれだけの利益を生んでいるかを示す指標

ROA(Return On Assets、総資産利益率)は、資産に対してどれだけの利益を生んでいるかを示す指標です。「利益÷総資産」で計算され、企業が自社の総資産をいかに効率よく活用できているかがわかります。

ROAの計算に用いる利益は、損益計算書に記載されている営業利益や経常利益、当期純利益などです。例えば、資産を使って本業でどれだけ利益を上げているかを知りたければ営業利益を使い、また会社の最終的な利益、つまり株主に帰属する利益と比べたければ当期純利益を使うなど、分析する内容に沿って使うべき利益が異なります。

ROAは、この後に解説するROE(自己資本利益率)と併せて、投資家が企業に投資する際に参考にする数値の1つです。ROAの数値が高ければ、それだけ企業の資産をうまく活用して売上を伸ばしていることを示します。

反対に、ROAの数値が低い企業は、資産の投資効率が悪いということになります。ただし、ROAの数値は業種などによっても異なるため、一概に高いから良い、低いから悪いとも言い切れない点に注意が必要です。

損益計算書についてはこちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

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ROE(自己資本利益率)との違いとは?

ROAと混同されやすい指標の1つに「ROE(Return On Equity、自己資本利益率)」があります。ROEは「自己資本(純資産)を使ってどれだけ利益を上げているか」がわかる指標で、「当期純利益÷自己資本(純資産)」という計算で算出されます。

ROAとROEは、どちらも資産をどの程度活用できているかを測る指標ですが、計算のもとになる「資産」の条件が異なります。ROAの分母となるのは、自己資本だけでなく借入金などの他人資本(負債)も含めた総資産です。

一方、ROEの分母は、総資産から負債を引いた自己資本(純資産)です。また、ROAが分析したい内容に併せて異なる利益を使うのに対して、ROEは必ず、当期純利益を使って算出します。これは、自己資本(純資産)を構成するのは主に資本金や利益剰余金などの株主資本であり、株主に帰属する利益は当期純利益だからです。

ROAは会社の全ての資産によって計算される指標ですが、ROEは会社の資産のうち負債を除いた自己資本をどれだけ効率的にできているかを測る指標です。ROAとROEという2つの指標を併せて見ることで、より詳細な経営分析を行うことができます。

ROEについては別の記事で解説していますので、参考にしてください。

ROAからわかること

ROAを計算することで、具体的にどのようなことがわかるのでしょうか。ROAから判断できるポイントは、主に下記の2点です。

企業の資産を有効に活用できているか

ROAを計算すると、会社が資産を元手としてどれくらい利益を上げているのかがわかります。

例えば、同業他社と比較してROAの数値が高ければ、少ない資産に対して多くの利益を上げている、つまり資産を有効活用できていると考えられます。反対に、同業他社よりもROAの数値が低い場合は、資産の大きさに対してそれほど利益が上がっていない、つまり資産を効率的に活用できていないといえるでしょう。

単純な利益額だけを見るのではなく、総資産に対する利益の割合を把握することで、自社の実態を確認でき、経営改善へとつなげやすくなります。

企業の成長につながる投資ができているか

複数年にわたるROAの推移を見ることで、企業の成長につながる投資ができているかがわかります。

企業が長期的な成長を目指すには、投資が不可欠です。今は順調に利益を生み出せていたとしても、設備や人材などに適切な投資を行わなければ、いずれ先細りになってしまう可能性があります。

ただ、投資する金額が大きくなればなるほど、総資産は増え、その分ROAの数値は低くなります。そのため、単年だけの数値を見ると、「ROAが低く、資産を有効活用できていない」という評価になるかもしれません。しかし、その後の推移を見ていくなかで、ROAが高くなっているようであれば、「投資が功を奏して企業の効率性を向上させた」といえます。

同様に、ROAが高い場合も、単年だけではそれが良いか悪いかを判断することはできません。ROAが高いということは、効率的な経営ができていると考えることもできますが、「長期的な成長を見据えた投資ができていない」「従業員に対するリターンが少ない」というような課題を抱えている可能性もあるからです。

このように、ROAの推移を見ると、企業の成長性を測ることができます。特に多額の投資を行ったときなどは、その後のROAの推移に注目し、投資の結果がどのように反映されているかを把握するようにしましょう。

ROAの計算方法

ROAは、企業の総資産に対する利益の割合を数値で表した指標です。計算式にすると、下記のようになります。

ROAの計算式

ROA(%)=利益÷総資産✕100

ROAの計算式は、分母が「自己資本(純資産)」ではなく「総資産」となります。総資産とは、貸借対照表の「資産の部」の合計値にあたり、自己資本だけではなく他人資本も含めた全ての資産のことです。

また、ROAを計算するために必要な「利益」は、損益計算書を見るとわかります。損益計算書に記載されている「利益」は、売上総利益(粗利)、営業利益、経常利益、税引前当期純利益(税引前利益)、当期純利益(純利益)という5種類です。中でも、ROAの計算に用いられることが多いのが当期純利益ですが、営業利益や経常利益が使われることもあります。

当期純利益の算出方法

当期純利益とは、1年間の事業活動で得られた利益から、仕入代金や人件費といった全ての経費や税金を引いた最終的な金額のことです。当期純利益は、純利益とも呼ばれ、一会計期間の最終的な経営成績を表します。

当期純利益は、税引前当期純利益(経常利益に特別利益を加え、特別損失を引いた利益)から、法人税、法人住民税、法人事業税などの税金を引き、さらに企業会計と税務会計の費用の処理方法の違いによるずれを調整することで求められます。計算式は、下記のとおりです。

当期純利益の計算式

当期純利益=税引前当期純利益-法人税等(法人税+住民税+事業税など)+(または-)法人税等調整額

当期純利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

営業利益の算出方法

営業利益とは、その企業の本業における営業力で稼ぎ出した利益のことです。

例えば飲食店なら、商品として提供している飲食物を売って稼いだ利益が、営業利益に該当します。営業利益は、売上高から売上原価を引いた「売上総利益」から、商品やサービスを販売するために必要な経費である「販売費及び一般管理費」を差し引いて求めます。

計算式にすると、下記のようになります。

営業利益の計算式

営業利益=売上総利益(売上高-売上原価)-販売費及び一般管理費

営業利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

経常利益の算出方法

経常利益とは、会社の本業で得られた営業利益だけではなく、運用利益などの本業以外で得た利益や、有価証券の売却や金利で得た利益などの、企業が行うすべての業務によって得た利益を指します。経常利益を見ると、運用利益など本業以外の活動を含め、通常稼働時に企業が1年間でどれくらいの利益(または損失)を出したかがわかります。

経常利益は、下記の計算式で求められます。

経常利益の計算式

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

経常利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

総資産の算出方法

貸借対照表 ○○会社 ○年○月○日現在 単位:円 資産の部:流動資産、固定資産(有形固定資産、無形固定資産)、繰延資産(投資その他の資産) 資産合計 負債の部:流動負債、固定負債 純資産の部:株主資本(資本金、利益剰余金) 負債純資産合計

総資産とは、会社が持っている全ての資産の合計値のことです。貸借対照表では、資産は「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3種類に分けて記載されますが、これら全ての合計が総資産となります。

これら3種類の資産の詳細は、下記のとおりです。

貸借対照表に記載されている資産の種類
資産の種類 内容
流動資産 1年以内に現金化できる流動性の高い資産のこと。現金・預貯金、売掛金、棚卸資産(在庫)、前払金、未収金などが該当する
固定資産 流通や販売を目的とせず企業が長期間保有する資産や、1年を超えて現金化・費用化される資産のこと。土地や建物、機械設備といった形のある資産の他、ソフトウェアなど形のない資産も含まれる
繰延資産 既に支払い済みまたは支払い義務が確定し、サービスや品物の提供を受けていて、その効果が将来にわたって影響を与える費用のこと。具体的には、創立費や開業費、開発費、株式交付費などが該当する。繰延資産は本来なら費用に分類・処理されるが、将来にわたって費用の効果があることから、一時的に資産として計上し、その後少しずつ償却することで費用化できる

総資産についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

ROAを改善するには?

自社のROAを分析する過程で、「ROAが低い」「もっと数値が高い方が良いのでは」と感じることがあるかもしれません。しかし、ROAは、単純に高い、低いだけで判断できる指標ではありません。

例えば、新事業のために資金を借り入れたり設備投資をしたりして、まだ利益の回収につながっていないような場合、ROAは一時的に低くなります。また、ROAの数値は業種によっても傾向が異なります。単純に「ROAが低いから悪い」と考えるのではなく、業種や自社の状態などをふまえて判断することが大切です。

そのうえで、ROAを改善したい場合は、下記のような方法があります。

売上高当期純利益率を上げる

売上高当期純利益率が上がることで、ROAも上がります。売上高当期純利益率とは、売上高のうち何%が利益として残っているかを示す数値です。売上高当期純利益率は「当期純利益÷売上高」で求められ、数値が大きいほど効率の良い経営が行われているといえます。

売上高当期純利益率を上げるためには、経費を増やさずに売上高を増加させるか、売上高を減少させずに経費を減らすかのいずれかが必要です。ただ、一般的には売上を増やすと経費も上がることが多いため、短期的に売上高当期純利益率を上げようとするなら、経費を減らす方が効果的といえます。例えば、業務効率化を高めて無駄をなくしたり、利用していない設備の維持費を削減したりするなど、経費を減らせる余地がないか検討してみましょう。

総資産を減らす

ROAは「利益÷総資産」で算出できるため、分母である総資産が減れば、ROAは上がります。会社の資産を洗い出し、不要な資産がないかどうかを改めて確認してみましょう。

例えば、利益を生み出さない土地や建物、設備などを売却する、不良在庫を処分するなどの方法が有効です。また、費用処理できる繰延資産がある場合は、費用として処理することで総資産を減らすことができます。

総資産回転率を上げる

総資産回転率が上がれば、ROAも上がります。総資産回転率は、総資産でどれだけ効率良く売上を上げたのかがわかる指標です。総資産回転率は「売上高÷総資産」の計算式で算出され、数値が高いほど効率的に総資産を活用できていると判断できます。

総資産回転率を上げるには、総資産を増やさずに売上高を増加させるか、売上高を減らすことなく総資産を減少させることが必要になります。効果的な販売戦略などによって売上を増やす、または遊休資産を処分するなどして総資産を減らす、といった工夫が求められるでしょう。

ROAを用いて経営状況を分析する際の注意点

ROAを用いて企業の経営状況を分析する際には、どのような点に気をつければよいのでしょうか。ここでは、ROAを用いて企業の経営状況を分析するうえでの2つの注意点について説明します。

業種によってバラつきがあるので異業種間の比較に向いていない

ROAの数値は、業種や形態によって大きく異なるため、ROAを使った分析は異業種間の比較には向いていないことに注意しましょう。

例えば、工場や機械といった大規模な設備投資が必要な製造業などは、どうしても他の業種に比べてROAは低くなります。反対に、設備投資をそれほど必要としないIT系の企業などは、総資産の残高が小さいためROAが高くなりがちです。そのため、ROAを使って他社との比較分析を行うときは、必ず同業他社と比べるようにしましょう。

ROA単体で見るのではなく、安全性も測る

ROAを使って比較をするときには、同時に安全性分析も行うことが大切です。たとえROAが高く、事業の効率が良いように思えても、多額の借金を抱えて今にも倒産しそうな状態では、その企業の経営状態はとても良いとはいえません。ROAを見るときには、数値だけではなく、借入金が多すぎないか、安全性についてもしっかりチェックすることが大切です。

安全性分析の手法はいくつか種類がありますが、「自己資本に対して他人資本が大きすぎないか」「流動資産に対して流動負債の比率が大きすぎないか」など、いろいろな角度から分析をすると良いでしょう。

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ROAの意味を知って自社の分析に役立てよう

ROA(総資産利益率)は、企業の効率性や収益性を測る財務指標の1つです。ROAを見ることで、企業が、資産をどれくらい効率的に活用しているかがわかります。ただ、ROAは、数値が高ければ良い、低ければ悪いと言い切れる指標ではありません。ROAを計算したら、なぜそのような数値になっているのか、推移はどうなっているのかなどを、しっかり確認することが重要です。

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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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