法人成り・法人化で申請できる創業融資は?必要書類や審査のポイントも解説
監修者: 森 健太郎(税理士)
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会社を設立するときには、まとまった資金が必要になることも多いものです。そのため、起業時の資金調達の手段として、創業融資の申し込みを検討される方も多いでしょう。では、個人事業主からの法人成り(法人化)の場合でも、創業融資を利用できるのでしょうか。
個人事業主からの法人成りの場合には、個人事業主時代における事業実績があるため、純粋な創業とは言えません。そのため、創業融資制度の中には、個人事業主の法人成りは対象外となるケースもあります。その一方で、法人成りでも申請できる融資制度もあるため、創業融資の種類や適用要件などを確認しておくことが大切です。
本記事では、法人成りでも申請可能な創業融資制度や、創業融資を申請する際の必要書類、審査のポイントなどについて解説します。
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法人成りをした場合、創業融資は申し込める?
個人事業主からの法人成りでも、創業融資を申し込むことは可能です。起業・開業の際に事業者が受けられる融資制度を総称して、創業融資といいます。
ただし、各制度の要件によっては、法人成りが対象外となる場合もあるため注意しましょう。
法人成りとは個人事業主が会社を設立し、行ってきた事業を法人に移すこと
法人成りとは、個人事業主が株式会社や合同会社といった会社を設立し、それまで個人で行っていた事業を引き継ぐことです。「法人化」とも呼ばれます。
個人事業主と法人では、課税される税金のしくみや、経費の範囲、社会的な信用度などが異なります。そのため、個人事業主として一定の事業実績を積んだ後で、売上が拡大してきた場合や取引先からの信頼を高めたいといった目的がある場合に、法人成りを検討するケースが多いと言えるでしょう。
創業融資とは創業時に事業者が利用できる融資制度
創業融資とは創業時に事業者が利用できる融資制度の総称です。代表的なものに、日本政策金融公庫の融資制度や、自治体・金融機関・信用保証協会による制度融資があります。
起業・開業にあたっては、まとまった資金が必要になることも少なくありません。
しかし、事業実績のない創業期には、民間金融機関からの通常の融資を受けるのは困難です。そこで、創業を支援するために創業初期でも利用しやすい融資制度が設けられており、これらをまとめて創業融資と呼びます。
法人成りをすると創業融資を利用できない場合がある
個人事業主からの法人成りであっても創業融資を申し込めますが、事業実績によっては創業融資を利用できない場合があります。
創業融資には、「事業開始から◯年」というように、事業年数を基準とした適用要件が設けられています。この事業年数は、個人か法人かを問いません。そのため、法人成りするまでの個人事業主としての事業年数が、定められた年数を超えていた場合には、創業融資の対象外です。
その一方で、個人事業主からの法人成りであっても、トータルでの事業年数が所定の年数を超えていなければ、創業融資を申し込むことができます。
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法人成りした事業者が申請できる創業融資制度の一覧
ここからは、法人成りの際に申請できる創業融資制度について紹介します。
法人成りで利用できる主な創業融資は、以下のとおりです。
法人成りの際に申請できる創業融資制度
融資制度 | 対象者 | 融資限度額 | 借入先 |
---|---|---|---|
新規事業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連) | 事業開始後おおむね7年以内で、女性または35歳未満か55歳以上の方 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | 日本政策金融公庫 |
新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連) | 事業開始後おおむね7年以内で、廃業歴のある方 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | |
新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営力強化関連) | 事業開始後おおむね7年以内で、中小会計を適用する方 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円 | |
生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付) | 生活衛生関係の事業を創業する方、または創業後おおむね7年以内の方 | 7,200万円~4億8,000万円 | |
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン) | スタートアップや新事業展開・海外展開・事業再生など、所定の要件を満たす方 | 7,200万円 | |
制度融資 | 自治体によって異なる | 自治体によって異なる | 指定金融機関 |
新規事業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)
「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」は、女性の方、35歳未満または55歳以上の方の創業を支援する、日本政策金融公庫の融資制度です。事業開始後7年以内であれば、法人成りでも申請できます。
融資限度額は、7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)
「新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)」は、廃業歴があり、創業に再チャレンジする方の創業を支援する、日本政策金融公庫の融資制度です。新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方で、次の要件をすべて満たす場合に利用できます。
新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)の利用要件
- 廃業歴のある個人または経営者が営む法人であること
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みであること
- 廃業の理由・事情がやむを得ないものであること
融資限度額は、7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営力強化関連)
「新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営力強化関連)」は、中小会計を適用する方の創業を支援する、日本政策金融公庫の融資制度です。
利用対象者は、「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している、または適用予定で、自ら事業計画書の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方です。事業開始後7年以内であれば、法人成りでも申請できます。
融資限度額は、7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)
「生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)」は、生活衛生関係の事業で創業する方を支援する、日本政策金融公庫の融資制度です。生活衛生関係の事業を創業する方、または創業後おおむね7年以内の方が申請できます。
一般貸付の融資限度額は、使用用途や返済期間、担保の有無などによって変わり、7,200万円~4億8,000万円です。
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」は、スタートアップ・新事業展開・海外展開・事業再生などに取り組む事業者の財務体質強化や、ベンチャーキャピタル・民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援する、日本政策金融公庫の融資制度です。
上記の「新規開業・スタートアップ支援資金」など、日本政策金融公庫が実施する所定の融資制度の対象になる方で、「地域経済活性化にかかる事業を行う」「税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税などを完納している」という要件を満たしている場合に申請できます。
融資限度額は7,200万円です。
制度融資
制度融資とは、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行う融資制度です。
信用保証協会が債務を保証することで、創業から間もない会社でも金融機関から融資を受けやすくなります。信用保証協会の保証が付くため、「信用保証付き融資」と呼ばれることもあります。融資を希望する場合には、自治体や近隣の信用保証協会に直接問い合わせるか、指定金融機関を経由することで申し込みが可能です。
制度融資の内容や要件などは、自治体によって異なります。例えば、東京都が実施する「東京都中小企業制度融資『創業』」の場合、「東京信用保証協会の保証対象業種」「創業前、または創業から5年未満の中小企業」などの要件があります。
各自治体の融資制度
紹介してきた融資制度以外にも、独自の創業融資制度を設けている自治体もあります。融資制度の有無や要件、申請方法などは自治体によって異なるため、弥生株式会社の資金調達に関連するWebサービス「資金調達ナビ」や事業所のある自治体のWebページなどで確認してみましょう。
創業融資については以下の記事も併せてご覧ください。
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創業融資を申請する際の必要書類
創業融資を申請する際には、事業計画書や確定申告書および決算書、納税証明書といった書類を提出する必要があります。また、必要に応じて、許認可の証明書や事業用物件の契約書などの提出も求められます。
提出書類は、利用する融資制度によって異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。ここでは、例として、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」の申請に必要な書類をご紹介します。
「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」を申請する際の必要書類
書類名 | 概要 |
---|---|
借入申込書 | 融資の借入申込書。日本政策金融公庫のWebページからダウンロード可能 |
創業計画書 | 設立する会社の事業内容や戦略、収益見込みなどをどのように展開していくかなどを具体的にまとめた計画書 |
設備資金の見積書 | 設備資金を借り入れたい場合は、見積書の提出が必要 |
履歴事項全部証明書 | 会社の登記情報を証明する書類。登記簿謄本 |
本人確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど |
許認可証 | 飲食店などの許可・届出などが必要な事業を営んでいる場合 |
不動産の登記事項証明書 | 担保を希望する場合は提出が必要 |
上記の他に、申請者に応じて提出が必要な書類もあります。創業融資を申し込む際には、必ず申請先に確認のうえ、不備や不足のないように必要書類を揃えましょう。
資金調達の申請に必要な書類については以下の記事も併せてご覧ください。
- 資金調達ナビ「融資申請時の提出書類 「創業融資の際に必要な資料」」
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創業融資の審査でチェックされるポイント
創業融資の審査では、事業計画書(創業計画書)や面談などの内容を基に、審査が行われます。審査では、主に以下のような点がチェックされます。
創業融資の審査でのチェックポイント
- 返済能力に問題がないか
- 事業の実現に説得力があるか
- 資金計画は妥当で無理がないか
返済能力に問題がないか
融資審査で最も重視されるのが、返済能力に問題がないかという点です。具体的には、事業計画書に記載された月々の売上や利益の予測に合理的な根拠があるか、事業計画全体が現実的であるか、などがチェックされます。
また、経営者個人の信用情報も審査に影響します。例えば、過去にクレジットカードの支払いやローンの返済などを延滞していた場合、たとえ事業計画が優れていても融資を断られてしまう可能性があります。
もし、支払遅延や滞納の心当たりがある場合には、自分の信用情報がどのように記録されているかを確認できます。個人の信用情報を管理している信用情報機関には、CIC、JICC
、KSC
といった組織があり、各機関に情報開示請求をすると、信用情報を確認できます。
事業の実現に説得力があるか
創業融資では、事業の実現可能性があるかどうかも重要なチェックポイントになります。単にアイデアがおもしろいというだけでは不十分で、経営者自身にその事業を継続・発展させる力があるかどうかが重要です。
例えば、関連業界における業務経験がある、業務に必要な資格を保有している、同様のプロジェクトを成功させた実績があるなど、具体的な裏付けがあると、事業の実現可能性に説得力が生まれます。その反対に、個人事業主として行っていた事業とはまったく関係ない分野での法人成りなど、未経験の分野にいきなり参入しようとしている場合には、実現性が低いと見なされることもあります。
資金計画は妥当で無理がないか
資金計画の妥当性も、創業融資の審査で重視される要素です。
例えば、借入金に頼りすぎて自己資金がほとんどないような状況では、「本当に事業を継続できるのか?」と不安視されてしまうかもしれません。また、設備投資に大きな資金を使いすぎて、運転資金が不足しているケースなども、資金計画に無理があるとみなされる可能性があります。
特に、日本政策金融公庫の創業融資は、借入金の使いみちにも要件が定められています。資金の使いみちを具体的に説明できるかどうかも、審査通過の大きなポイントです。
日本政策金融公庫の融資審査については以下の記事も併せてご覧ください。
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法人成りで融資を受けやすくするための対策
法人成りの場合、個人事業主としての事業実績のあることが融資審査において有利に働く可能性もあります。融資の申し込みにあたり、直近の売上などをまとめて提示すれば、事業計画や資金計画に説得力を持たせることができるでしょう。
その他にも、法人成りで融資を受けやすくするには、以下のような対策があります。
法人成りの際に融資を受けやすくする対策
- 資本金の金額を少なくしすぎない
- 事業目的に記載する業種はよく検討する
- 信頼できる本店所在地の住所を設定する
- 信用情報などに問題のない役員を選ぶ
資本金の金額を少なくしすぎない
資本金は、会社の元手となる資金であり、外部からの信用度を左右する要素の1つです。創業融資の審査でも、会社の安全性を見るために、「自己資金がいくらあるか」が必ず確認されます。法律上は資本金1円から会社設立が可能ですが、資本金の額があまりにも少ないと、融資を受けにくくなってしまうかもしれません。
また、資本金額が少ないと、融資される金額が少なくなる可能性もあります。一般的に、創業融資を受けられる金額は、自己資金の3~4倍程度が目安とされています。特に融資希望額が大きい場合、その希望額に見合った自己資金を用意する必要があるでしょう。
事業目的に記載する業種はよく検討する
事業目的として記載する業種は、よく検討する必要があります。
融資申込時に提出する事業計画書(創業計画書)には、事業を始めようと考えたきっかけや、創業に至る背景、事業を通じて何を実現したいのか、といった「事業目的」を記載します。
事業目的は、会社の活動の範囲や業種を定めるもので、将来的に予定している事業を記載しても問題ありません。しかし、あまりに漠然としていたり、実現性の低い内容を多く並べたりすると、何がメインなのかわからず不信感を抱かれる可能性があります。将来の事業展開も考慮したうえで、慎重に選定するようにしましょう。
なお、日本政策金融公庫では、「金融業や投機的な事業、一部の遊興娯楽業などの業種」は、原則として融資対象外とされています。
信頼できる本店所在地の住所を設定する
法人成りして創業融資を申し込むのであれば、賃貸オフィスなど実態のある住所を、会社の本店所在地として設定したほうがよいでしょう。
本店所在地は登記事項の1つであり、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)や定款にも記載されます。バーチャルオフィスやレンタルオフィスなどを本店所在地としても、法的に問題はありませんが、「実態のない会社ではないか」などと疑念を抱かれる可能性もあります。
信用情報などに問題のない役員を選ぶ
法人成りにあたり、自分以外に役員を選任する場合は、信用情報に問題がないかを事前に確認することが大切です。創業融資の審査では、経営者だけではなく、役員の信用調査も行われる場合があります。
例えば、過去に自己破産をしている、クレジットカードやローンの支払いを滞納していた、という人を役員に選任した場合、融資審査で不利になる可能性があるでしょう。
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法人成りしたら創業融資を申し込もう
法人成りして会社を設立すると、事業の規模や幅が広がり、まとまった資金が必要になる場合があります。そのようなときに大きな助けになるのが、創業融資です。創業融資は創業時に事業者が利用できる融資で、代表的なものに、日本政策金融公庫の融資制度や、自治体・金融機関・信用保証協会による制度融資があります。
法人成りの場合でも、個人事業主を含めた事業年数が要件を満たしていれば、創業融資の申し込みは可能です。法人成りにおける資金面の不安を解消したい場合は、創業融資の利用を検討してみましょう。
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この記事の監修者森 健太郎(税理士)
ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネルを運営。