2022/5/30更新 日本政策金融公庫の審査で失敗しないポイントと利用前の注意点を解説

起業・開業時の資金調達先の1つに、日本政策金融公庫による融資があります。しかし、日本政策金融公庫は、日常生活で利用する金融機関と違って、あまり馴染みがない方もいるかもしれません。
ここでは、日本政策金融公庫の概要とおすすめする理由の他、審査のポイントについて解説します。

起業・開業する方への融資などを行う日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、国が100%出資している政府系金融機関です。2008年10月に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行(国際金融等業務)の4つを統合して作られた金融機関で、「日本公庫」「公庫」とも呼ばれています。
日本政策金融公庫は民間金融機関の補完的な役割を担い、中小企業や小規模事業者、これから起業・開業する方への融資をはじめとする、さまざまな支援を行っています。また、経営課題に応じたコンサルティングや、全国152支店のネットワークを活かした商談会なども実施しています。
日本政策金融公庫の融資の中でも、起業・開業時に多く利用されているのが「新創業融資制度 新規ウィンドウで開く」です。新創業融資制度は、原則として無担保無保証人で、最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)まで融資を受けられます。ただし、新たに事業を始める方や創業後に税務申告を1期終えていない方は、創業に必要な資金の10分の1以上の自己資金が必要です。

日本政策金融公庫をおすすめする理由

日本政策金融公庫は、事業の実績がないなど、民間の金融機関が融資を行いづらい方への支援を補う公的金融機関であるため、これから起業・開業する方にとっておすすめの資金調達方法です。どういった点がおすすめなのか、具体的に見ていきましょう。

創業時から融資を受けられる

まず、日本政策金融公庫がおすすめなのは、創業時から融資を受けられるということが挙げられます。

銀行など民間の金融機関で融資を希望する場合は、過去の事業状況や財務状況、資金繰り、他の金融機関との取引状況などが重視されます。しかし、創業前や創業間もないタイミングでは、当然のことながら提示できるような実績はありません。そのため、創業前や創業時は銀行からの融資はハードルが高く、受けられないケースも多くあります。

一方、日本政策金融公庫は、国が政策として、地域の開業率を引き上げることで、雇用機会を創出し、国内総生産(GDP)の引き上げを目指しているという背景があります。そのため、日本政策金融公庫では、銀行などから融資を受けることが難しい中小企業や小規模事業者、これから起業・開業する方への融資を積極的に行っています。例えば、創業時に利用されることの多い「新創業融資制度 新規ウィンドウで開く」は、新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象としています。さらに、女性または35歳未満か55歳以上で起業する方(または事業開始後概ね7年以内の方)を対象とした「女性、若者/シニア起業家支援資金 新規ウィンドウで開く」や、生活衛生関係の事業を創業する場合(または事業開始後概ね7年以内)に利用できる「生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付) 新規ウィンドウで開く」といった融資制度もあります。

創業時の融資を日本政策金融公庫で受けることで実績になり、その後、民間金融機関などに融資を申し込んだ際にも、審査が通りやすくなることもあるでしょう。

事業計画書の書き方についてアドバイスが受けられる

事業計画書の書き方についてアドバイスが受けられることも、日本政策金融公庫をおすすめする理由の1つです。

融資を申し込む際には、事業計画書(創業計画書)をはじめとする必要書類の提出が求められますが、事業計画書の書き方を相談したい方やチェックしてもらいたい方もいるのではないでしょうか。日本政策金融公庫では全国152支店に「創業サポートデスク」を設置し、事業計画書の立て方や融資申し込みの流れの他、融資制度などの相談に対応しています。

事業計画書の作成目的やメリットについては、こちらの記事も併せてご覧ください。

民間金融機関よりも金利が低い

日本政策金融公庫の融資は、民間の金融機関に比べて金利が低く設定されています。利用する融資制度や使い道、融資期間など条件によって異なりますが、金利は概ね1%~3%前後です。例えば、前述した新創業融資制度(無担保無保証人)の金利は、0.93%~3%となっています(2022年4月1日現在)。
銀行の場合は金利が2%~4%前後となっていることが多く、それに比べて日本政策金融公庫の融資は低金利だということもおすすめの理由です。事業開始後は、資金計画どおりに利益が上がらないこともありますので、金利は抑えられた方が安心でしょう。

返済期間が民間の金融機関よりも長い

返済期間が民間の金融機関よりも長い点も、日本政策金融公庫をおすすめする理由の1つです。返済期間が長ければ、その分月々の返済負担額が軽くなり、余裕のある返済計画が可能です。

返済期間は利用する融資制度によって異なりますが、例えば、新たに事業を始める方または事業開始後約7年以内の方を対象とした「新規開業資金 新規ウィンドウで開く」の場合、返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金が7年以内(うち据置期間2年以内)となります。
据置期間とは、利息のみを支払う期間のことです。事業開始後すぐは利益を得にくく、元本と利息の両方を用意することが難しい場合があるため、利息のみを返済する据置期間が設けられています。
融資の返済期間が比較的長い点と、元本の返済が猶予され利息のみを支払う「据置期間」がある点はメリットといえます。しかし返済期間の長さによって金利額がかさみ、返済総額が増える点には注意しましょう。

開業資金の融資元や上限額については、こちらの記事も併せてご覧ください。

日本政策金融公庫を利用する際の注意点

日本政策金融公庫は創業前・創業時の資金調達先としておすすめですが、注意すべき点もあります。融資を検討する際には、注意点も把握しておくことが大切です。日本政策金融公庫を利用する際の注意点は下記のとおりです。

申し込みから融資実行まで時間がかかる

日本政策金融公庫の融資は、民間の金融機関に比べて審査期間が長くなる傾向にあります。利用する融資制度や申し込み者の条件によっても異なりますが、申し込みから実際に融資を受けるまでの期間は概ね3週間~1か月程度といわれています。そのため、日本政策金融公庫の融資を希望する方は、時間に余裕をもって申し込みをするといいでしょう。

制度融資よりも金利が高くなることがある

日本政策金融公庫の融資は、民間の金融機関よりも金利は低く設定されていますが、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行う制度融資よりも金利が高くなることがあります。例えば、埼玉県制度融資の場合、金利は1.0%~1.5%です(2022年4月1日現在)。ただし、制度融資は別途保証料がかかりますので、金利以外にも注目するようにしましょう。

日本政策金融公庫の審査に通るためのポイント

民間金融機関では融資を受けることが難しい中小企業や小規模事業者、これから創業する方であっても、日本政策金融公庫であれば審査に通りやすい傾向があります。しかし、日本政策金融公庫の審査基準が甘いというわけではありません。融資審査に通るためには、審査の準備をしっかり進めておくことが重要です。
ここでは、融資審査に通るためのポイントについて解説します。

創業融資の審査に必要な書類の書き方については、こちらの記事も併せてご覧ください。

事業計画書に現実的な内容を記載する

日本政策金融公庫の審査を受ける際には、具体的な事業内容や実際に取引可能な取引先一覧などの現実的な内容を、事業計画書に記載しておくことがポイントです。
融資の申し込みには事業計画書の提出が必要ですが、書類としての体裁が整っていたとしても、事業計画書が客観的に見て妥当性のある内容である必要があります。特に創業時に融資を希望する場合、これからどのような事業を行うのかを具体的に示すことは最低限の条件です。

資金用途を明確にする

資金用途を明確にしておくことも、日本政策金融公庫の融資審査に通るポイントの1つです。資金用途が明確でないと、審査に通らなかったり、融資額が減額されたりする可能性があります。資金用途をはっきり示したうえで、見積書や資金繰り表など、それを証明する書類を用意すると良いでしょう。

説得力のある資金計画を立てる

日本政策金融公庫がいくら創業支援に積極的だといっても、返済見込みのない方にお金を貸すことはできません。そのため、創業後の売上や仕入れ、経費など、お金の流れを明らかにし、説得力のある資金計画を立てることがポイントです。

支払遅延や滞納をしない

融資審査では申し込み者個人の信用情報もチェックされます。公共料金や税金、ローン、クレジットカードの支払いなどの遅延や滞納があると、審査に通らない可能性があります。過去に支払遅延や滞納の心当たりがある場合は、自分の信用情報がどのように記録されているかを確認しておくといいでしょう。信用情報は開示請求して確認することが可能です。情報開示請求は、個人の信用情報を管理する信用情報機関「株式会社シー・アイ・シー(CIC) 新規ウィンドウで開く」のWebサイト、郵送、窓口で受け付けています。なお、情報開示には、利用手数料として1,000円がかかります。

創業する事業の経験をアピールする

創業する事業の経験をアピールするのも、日本政策金融公庫の融資審査に通るポイントの1つです。民間金融機関の融資は、過去の業績などをもとに審査が行われます。しかし、これから創業する方には審査の判断基準になるような実績がありません。そのような場合でも、創業する事業と同じ業種の仕事をした経験があればアピールするようにしましょう。

面談は自分の言葉でしっかり伝える

融資の申し込み後に融資担当者が行う面談では、経営者の経歴や創業動機、顧客開拓方針や自社の強みなどを含めた事業内容、今後の売上や利益計画、自己資金や借入金の有無などを聞かれます。面談では自分自身の言葉で、具体的かつ、どのように社会貢献していきたいかなど創業への本気度もしっかり伝えることがポイントです。
業種によっては店舗などを訪問されることもあるため、面談と同時進行で店舗などの準備も進めておきましょう。

自分に合った資金調達手段を手軽に探す方法

日本政策金融公庫の審査基準を満たせない方や、自分に合った資金調達方法をもっと知りたいという方はいるかもしれません。資金調達にはさまざまな方法がありますが、自力で情報を集めるには手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「資金調達ナビ 新規ウィンドウで開く」がおすすめです。

「資金調達ナビ」は、事業を営むうえで必要不可欠な資金調達を探したり、相談したりできる完全無料のクラウドサービスです。全国の行政が提供する補助金や助成金の他、連携する金融機関の融資情報を一括で検索でき、自分に適した資金調達手段をかんたんに探せます。

「資金調達ナビ」はこんな方におすすめ

「資金調達ナビ」は、特に次のような方におすすめです。

資金調達の探し方がわからない方

「資金調達ナビ」では、補助金、助成金、給付金、融資、制度融資を、地域や事業形態で絞り込んで検索できます。例えば、国や自治体が実施する補助金、助成金、給付金の最新情報と、全国の主要な金融機関の融資などの一括検索が可能です。かんたんな操作で、自社に適した資金調達手段を見つけることができます。

開業資金を集めたい方、自己資金だけで起業しようと思っている方

起業・開業時には、店舗や事務所を借りた場合の敷金や礼金といった初期費用の他、仕入れ代金などさまざまなお金が必要になります。自己資金を準備していても、事業開始後、計画どおりに進まないこともあるでしょう。融資は、赤字経営のときよりも、創業前のほうが受けやすいという傾向があります。そのため、自己資金でまかなえそうであっても、創業前に余裕をもって資金調達しておくことが大切です。「資金調達ナビ」を使えば、自分に合った資金調達手段を手軽に探せます。

資金調達の専門家に相談したい方

資金を調達するには、申請書類の作成や事業計画の策定などが必要です。そのため、資金調達にあたって不安が生じ、専門家に相談したいと思う場面が出てくるかもしれません。「資金調達ナビ」では、業界最大規模の全国1万1,000のパートナー会計事務所から、資金調達について相談できる税理士を、完全無料で最短翌日までに紹介することが可能です(2021年11月現在)。紹介料は一切かかりません。

自分で事業計画書を作成したい場合

専門家に頼らず、自力で事業計画書を作成したいという方もいるかもしれません。その場合は、ツールを使うと便利です。弥生株式会社と株式会社プロジェクトニッポンが共同運営する「事業計画作成サポートツール 新規ウィンドウで開く」なら、創業融資の申請時に必要な事業計画書を、ブラウザ上で作成できます。飲食業や小売業(店舗)、ネットショップなど業種ごとのフォーマットが用意されており、質問に答えていくだけで事業計画書や数値計画書の作成ができます。利用料は一切かかりません。さらに、先輩企業の事業計画と照らし合わせて資金計画をシミュレーションすることも可能です。
融資を申請する際には、どのように事業を運営し、利益を上げていくのかを示す、事業計画書は欠かせないものです。フォーマットを活用できるツールで、融資元に納得してもらえる事業計画書を提示し、スムースに資金調達をしましょう。

著者:森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル 新規ウィンドウで開くを運営。
URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/ 新規ウィンドウで開く

資金調達ナビ 資金調達を支援するための様々な手法を紹介しています。

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