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月額変更届とは?定時決定と随時改定の違いや書き方、提出方法を解説

昇給や降給などで従業員の固定的賃金に変動があった場合、事業主側は月額変更届の提出が必要になる可能性があります。月額変更届の手続きをしなかった場合は罰則が科せられることもあるため、事業主側は注意が必要です。では、月額変更届とはどのような手続きで、どのようなタイミングで必要になるのでしょうか。

本記事では、月額変更届の概要や書き方、提出方法を紹介するほか、標準報酬月額の定時決定と随時改定の違いについても解説します。

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月額変更届とは標準報酬月額を変更するための届出書のこと

月額変更届とは、標準報酬月額を変更するために、事業主側が年金事務所または事務センターや健康保険組合に提出する書類で、正式には「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」といいます。

標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料を算定する際のベースになる金額です。健康保険や厚生年金保険の保険料は従業員の給与額に応じて決まりますが、月々の給与の増減に合わせて毎月の保険料を計算することは煩雑で手間がかかります。そこで、従業員の給与を一定の幅(等級)に区分して標準報酬月額を決め、その金額を基に保険料を計算します。

標準報酬月額があることで、残業代などで月々の給与に変動があっても控除する保険料は一定となり、保険料の把握が簡便化されるのです。

標準報酬月額は、健康保険と厚生年金保険で別々に定められており、健康保険は50段階、厚生年金保険は32段階に等級が分かれ、それぞれの等級区分は、「保険料額表」によって確認できます。

なお、会社員などが加入する健康保険(被用者保険)には、全国健康保険協会(協会けんぽ)、組合管掌健康保険(健康保険組合)、各種共済などがありますが、本記事では協会けんぽについて解説します。

令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表度保険料額表(東京)

令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表度保険料額表

標準報酬月額の定時決定と随時改定の違い

標準報酬月額の決定や変更のタイミングは、算定基礎届の提出によって行う「定時決定」と、月額変更届の提出によって行う「随時改定」の主に2種類があります。それぞれの内容を見ていきましょう。

定時決定

定時決定は、4~6月に支給する給与額を基に、年に1回行われる標準報酬月額の見直しのことです。原則として、毎年4・5・6月の給与の平均支給額を基に標準報酬月額が決定され、その年の9月分から翌年8月分までの保険料に使用されます。定時決定では、毎年7月10日までに「算定基礎届」を事業所管轄の年金事務所または事務センターに提出します。

随時改定

随時改定とは、昇(降)給や雇用契約の変更などによって固定的賃金が大きく増減した場合に、定時決定を待たずに標準報酬月額の見直しを行うことです。固定的賃金とは、稼働実績に関係なく支給額や支給率が決まっているもので、基本給や役職手当、通勤手当、家族手当などを指します。

年度途中で報酬額が大幅に変動すると、実際の給与額と標準報酬月額の間に乖離が生じてしまうため、随時改定によって適正な社会保険料を算定できるように標準報酬月額を改定します。この随時改定を行う際に提出するのが、「月額変更届」です。

定時決定と随時改定の時期が重なった場合

定時決定と随時改定のタイミングが重なった場合は、随時改定が優先されます。例えば、4・5・6月のいずれかの月で固定的賃金に大幅な変動があった場合は、その変動を反映するために随時改定が行われ、定時改定よりも早く適用されます。

また、随時改定が行われた翌月以降も、標準報酬月額が変更されないわけではありません。例えば、随時改定後に再度給与に大きな変動があれば、再び標準報酬月額が改定される可能性があります。

月額変更届の提出が必要な3つの条件

月額変更届の提出による随時改定が行われるのは、次の3つの条件をすべて満たす場合です。

随時改定の条件

  1. 1. 昇給または降給等により固定的賃金に変動があった
  2. 2. 変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
  3. 3. 3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

上の場合、ケース別に月額変更届の有無をまとめると以下になります。

月額変更届の必要性
増額改定 減額改定 対象外
固定的賃金
(基本給、役職手当、家族手当等)
上がる
上がる
下がる
下がる
上がる
下がる
非固定的賃金
(残業手当、皆勤手当等)
上がる
下がる
下がる
上がる
下がる
上がる
3か月の平均額(2等級以上の差) 上がる
上がる
下がる
下がる
下がる
上がる
月額変更届の必要性 必要
必要
必要
必要
不要
×
不要
×

では、それぞれの随時改定の条件について詳しく見ていきましょう。

1. 昇給または降給等により固定的賃金に変動があった

固定的賃金とは、稼働実績などで支給額や支給率が変動しない賃金のことです。固定的賃金の変動には、次のような場合が考えられます。

固定的賃金の変動の具体例

  • 昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
  • 給与体系の変更(日給から月給への変更等)
  • 日給や時間給の基礎単価の変更
  • 請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
  • 住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、通勤交通費など支給額の変更

2. 変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた

固定的賃金の変動があった月から3か月以内の給与支給額の平均に該当する標準報酬月額と、それまで適用されていた標準報酬月額を比較したとき、2等級以上の差が生じていることが、随時改定の条件の1つです。

ただし、標準報酬月額の上限または下限にわたる等級変更の場合は、2等級以上の差が生じていなくても随時改定の対象となる場合があります。標準報酬月額の等級については、全国健康保険協会「保険料額表新規タブで開く」で確認できます。

3. 3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

支払基礎日数とは、給与計算の対象となる日数のことです。支払基礎日数の数え方は、給与形態によって異なります。

日給月給制

日給月給制とは、1か月の賃金が決まっているものの、欠勤をすれば欠勤日数に応じて減額される給与形態です。日給月給制の支払基礎日数は、就業規則などで定められた給与計算の基礎となる月平均所定労働日数から、欠勤日数を差し引いた日数となります。

完全月給制

完全月給制とは、1か月の賃金が決まっていて、たとえ欠勤しても減額がない給与形態のことです。完全月給制の場合は、休んだ日も含めた暦日数が支払基礎日数となります。

時給制・日給制

時給制や日給制の場合は、出勤した日数がそのまま給与計算の基礎日数となります。

給与計算の基礎日数についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

随時改定の対象にならないケース

固定的賃金の増減があっても、随時改定の対象にならないケースもあります。例えば、休職による休職給を受けている人は、固定的賃金の変動がある場合には該当しないため、随時改定の対象とはなりません。

また、次のような場合は随時改定の対象外です。

随時改定の対象にならないケース

  • 固定的賃金は上がったが、残業手当等の非固定的賃金が減ったため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より下がり、2等級以上の差が生じた場合
  • 固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増加したため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より上がり、2等級以上の差が生じた場合

随時改定の手順

固定的賃金に変動があり随時改定が必要な従業員がいた場合は、適切に手続きを行わなければなりません。スムーズに手続きを進めるために、随時改定の手順を確認しておきましょう。

1. 随時改定の要件を確認

固定的賃金の変動があった従業員が、随時改定の対象となるかを判定します。固定的賃金の変動から3か月後に、賃金が上がった後の報酬平均額と現在の報酬平均額を比較して、2等級以上の違いがあるかどうか確認します。

2.月額変更届の作成

随時改定の対象となることがわかったら、月額変更届を作成します。改定後の標準報酬月額は給与の変動があってから4か月目からの適用となり、社会保険料の支払いは当月分翌月払いです。

手続きの状況にかかわらず、給与の天引きは上記の改定に合わせて反映されます。そのため手続きが遅れると、給与天引きと社会保険料の支払額に不整合が生じてしまうため、給与天引きの金額と社会保険料の支払額に差が出ないように、できるだけ早く手続きを行う必要があります。

月額変更届の用紙は、日本年金機構「随時改定に該当するとき(報酬額に大幅な変動があったとき)新規タブで開く」からダウンロード可能です。月額変更届には、事業所の情報と随時改定を行う従業員の情報を記入します。

従業員の情報は、1枚につき5名まで記載でき、固定的賃金の変動があった月から3か月の給与と支払い基礎日数を書き入れる必要があります。賃金台帳などを確認し、正確に記入するようにしましょう。

月額変更届の記入例

月額変更届の記入例

3. 書類の提出

作成した月額変更届を提出します。月額変更届を提出するには、電子申請、郵送、窓口提出の3つの方法があります。ただし、健康保険組合の場合は、年金事務所管轄と健康保険組合の2か所に提出が必要となります。

電子申請

電子申請をする場合は、「e-Gov」を利用します。なお、資本金等の額が1億円を超える法人や相互会社、投資法人、特定目的会社については、月額変更届の電子申請が義務付けられています。

郵送

地域ごとに設置された事務センターに、月額変更届を郵送する方法もあります。なお、事務センターでは持ち込み提出は受け付けていません。各地域の事務センターの一覧は、日本年金機構「全国の事務センター一覧(健康保険・厚生年金保険の適用に関する届書等を郵送する場合)」新規タブで開くで確認できます。

窓口提出

事業所を管轄している年金事務所へ月額変更届を持参し、直接提出することもできます。管轄の年金事務所は日本年金機構「全国の相談・手続き窓口新規タブで開く」から確認可能です。

4. 標準報酬月額の変更を反映

固定的賃金の変動から4か月後の給与から、標準報酬月額の変更を反映させます。厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料がそれまでとは変わるため、給与計算時には十分注意が必要です。

月額変更届の手続きを行う上での注意点

月額変更届を提出して随時改定の手続きを行う際には、いくつかの点で注意が必要です。ここからは、月額変更届の手続きをするうえでの注意点を見ていきましょう。

月額変更届の提出は可能な限り早めに行う

随時改定の条件に該当する従業員がいる場合は、できるだけ早く月額変更届を提出しましょう。手続きを怠ったことにより未納の保険料が発生すると、最大で過去2年分までさかのぼって未納分の保険料を徴収されます。また、正当な理由なく月額変更届の書類提出をしなかった場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることがあります。

決定通知が届いたら、従業員に通知する

日本年金機構から決定通知が届いた場合、事業者は、速やかに被保険者、または被保険者であった従業員へ通知する義務があります。正当な理由なく通知しなかった場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。年金機構からの決定通知の種類は以下のとおりです。

日本年金機構からの決定通知の種類

  1. 1. 被保険者の資格取得または喪失
  2. 2. 標準報酬月額の決定または改定
  3. 3. 標準賞与額の決定
  4. 4. 適用事業所以外の事業所が認可を受けて適用事業所となったこと
  5. 5. 上記(4)の適用事業所が認可を受けて適用事業所以外の事業所となったこと
  6. 6. 適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者が認可を受けて厚生年金保険の被保険者となったこと
  7. 7. 上記(6)の被保険者が認可を受けて被保険者の資格を喪失したこと

新しい保険料率で給与計算が実施されるタイミングを確認する

前述したとおり、随時改定後、新しい標準報酬月額が適用されるのは、報酬の変動があった月から数えて4か月目からとなります。一方、定時決定の場合は、毎年9月から標準報酬月額が適用となります。随時改定と定時決定では変更のタイミングが異なるので、給与計算の際に間違えないように注意しましょう。

固定的賃金に変更があったら月額変更届の提出が必要か確認しよう

固定的賃金の増減により随時改定の対象になった場合は、月額変更届の提出が必要です。ただし、月額変更届の提出について、年金事務所などから案内が届くわけではありません。月額変更届を提出するべきかどうかは、各企業の担当者が判断し、適切に手続きを行う必要があります。

また、月額変更届を提出して随時改定を行った後は、給与から控除する社会保険料の額が変わります。給与や社会保険料の計算をスムーズに行うには、給与計算ソフトの導入がおすすめです。給与計算ソフトを使用すれば、標準報酬月額が変更になった場合でも、簡単に給与計算ができます。毎月の給与計算から年末調整業務を効率化できる「弥生給与 Next」のようなソフトがおすすめです。自社に合った給与計算ソフトを活用して、給与計算業務の効率化を目指しましょう。

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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務

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