配偶者(特別)控除と年収の関係は?4つの年収の壁についてわかりやすく解説
2024/03/01更新
配偶者控除の適用を検討している場合、「配偶者控除と配偶者の年収はどのように関係するの?」と気になる方は多いでしょう。また、配偶者控除には配偶者特別控除という制度もあり、複雑で難しいと感じる方もいるかもしれません。
ここでは配偶者控除と配偶者特別控除の概要や受けられる条件、控除額とともに、よく耳にする「年収の壁」についても解説します。
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配偶者控除とは
配偶者控除とは、所得税法における税制上の優遇措置のひとつで、一定以下の所得金額の配偶者をもつ納税者が受けられる所得控除です。ここでは以下の3つの観点から、配偶者控除について解説します。
- 配偶者控除を受ける条件
- 控除額
- 納税者の合計所得金額が1,000万円を超えると配偶者控除を受けられない
条件によって控除額が変わったり、制度が適用されなかったりするため、しっかり理解しておきましょう。
配偶者控除を受ける条件
配偶者控除の対象となる条件は、その年の12月31日時点で、以下の4つの条件をすべて満たしている必要があります。
- 民法の規定による配偶者であること
- 納税者と生計を一にしていること(日常の生活費を共用している状態)
- 年間の合計所得金額(給与所得以外の所得もすべて含めた所得額)が48万円以下であること
- 給与のみの場合は給与収入が103万円以下(給与収入103万円-給与所得控除55万円=48万円)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
この中で多くの方に関わる条件が配偶者の収入でしょう。ここでは配偶者控除に関わる年収の壁についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
控除額
配偶者控除による控除額は以下の通りです。
控除を受ける納税者本人の 合計所得金額 |
控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※国税庁「No.1191 配偶者控除」
上表の老人控除対象配偶者とは、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の控除対象配偶者を指します。控除される金額は、納税者本人の合計所得金額や、配偶者の年齢によって変わります。
納税者の合計所得金額が1,000万円を超えると配偶者控除を受けられない
配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると適用できなくなります。配偶者控除において、納税者の合計所得金額は950万円超から1,000万円以下が上限とされており、それを超える合計所得金額では適用されません。
また、後述する配偶者特別控除も合計所得金額が1,000万円を超えると適用されません。該当する可能性がある場合、年末調整の際に自分の合計所得金額を確認して、配偶者控除を受けられるか確認してみましょう。
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配偶者特別控除とは
配偶者控除の適用が受けられないときでも、条件に応じて控除を受けられる場合があります。これを配偶者特別控除といいます。ここでは、以下のポイントを解説します。
- 配偶者特別控除を受けるための条件
- 控除額
配偶者控除を受けられなくても配偶者特別控除なら受けられる場合があるため、内容を理解しておきましょう。
配偶者特別控除を受けるための条件
配偶者特別控除の条件は、前述した配偶者控除の条件に加えて以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(給与等の年収が103万円超201.6万円未満)であること
- 配偶者が配偶者特別控除を適用していないこと
- 配偶者が給与所得者の扶養控除等申告書、または従たる給与について扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないこと
- 配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと
控除額
配偶者特別控除で控除される金額は以下の通りです。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配偶者の合計所得金額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 | |
133万円超 | 0円 | 0円 | 0円 |
※国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
配偶者控除に比べて、配偶者の合計所得金額が細分化されています。配偶者の合計所得金額が48万円を超える(年収103万円を超える)場合は、上記の表を参考にして控除額を計算してください。
【年収別】配偶者控除と配偶者特別控除の控除額早見表
配偶者控除と配偶者特別控除で控除できる金額の早見表は以下の通りです。以下の表は配偶者が給与等の収入を得ている想定で、合計所得金額ではなく受け取った収入をベースに控除額を示しています。
納税者本人の合計所得金額 (給与所得のみの場合における給与等の収入金額) |
||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 (1,095万円以下) |
900万円超950万円以下 (1,095万円超 1,145万円以下) |
950万円超1,000万円以下 (1,145万円超 1,195万円以下) |
||
配偶者 控除額 |
給与等の収入 103万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
配偶者特別 控除額 |
給与等の収入 103万円超150万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
150万円超155万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
155万円超160万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
160万円超166.8万円未満 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
166.8万円以上175.2万円未満 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
175.2万円以上183.2万円未満 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
183.2万円以上190.4万円未満 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
190.4万円以上197.2万円未満 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
197.2万円以上201.6万円未満 | 3万円 | 2万円 | 1万円 | |
201.6万円以上 | 0円 | 0円 | 0円 |
※国税庁「家族と税」
上表を参考に、自身が受けられる配偶者控除もしくは配偶者特別控除の控除額を確認してください。
よく聞く配偶者控除の年収の壁4つ
ここでは配偶者控除と配偶者特別控除に関わる年収の壁について詳しく解説します。
-
1 年収100万円の壁【住民税の課税ライン】
-
2 年収103万円の壁【所得税の課税ライン】
-
3 年収150万円の壁【満額控除を受けられる限度額】
-
4 年収201万円の壁【配偶者特別控除を受けられる限度額】
それぞれの年収の壁について解説します。
1.年収100万円の壁 【住民税の課税ライン】
年収100万円の壁とは、住民税の課税ラインです。住民税の非課税限度額は45万円であり、年収100万円以下であれば給与所得控除の55万円を差し引いて合計所得金額が45万円以下になるため、住民税が非課税となります。
しかし、これは所得割の要件です。住民税には所得割と均等割という2つの課税方法があります。所得割に関しては年収100万円以下で非課税になりますが、均等割に関しては自治体によっては金額が異なる場合があります。そのため年収100万円はあくまで目安で、自治体によっては均等割が課税される可能性があるため注意しましょう。
住民税については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
2.年収103万円の壁 【所得税の課税ライン】
年収103万円の壁とは、配偶者控除を受けられる配偶者の年収の上限です。年収103万円の場合、給与所得控除55万円を差し引いて所得金額が48万円になります。配偶者控除の条件のひとつに「配偶者の合計所得金額が48万円以下」があるため、年収103万円は配偶者控除が受けられる最大の収入額であるという考え方です。そのためパートやアルバイトの方の中には、年収103万円を基準にして収入を調整している方もいます。
配偶者控除を受けられると納税者の合計所得金額から38万円が控除されるため、103万円を超えて稼ぐよりも103万円以下の収入の方が得という考え方です。配偶者控除の適用を希望する方は、年収103万円が配偶者控除のラインであることを覚えておきましょう。
3.年収150万円の壁 【満額控除を受けられる限度額】
年収150万円の壁は、配偶者特別控除において満額38万円の控除を受けるための、配偶者の年収の上限です。配偶者特別控除で38万円の控除を受けるためには、配偶者の合計所得金額が48万円超95万円以下である必要があります。
年収150万円の場合、給与所得控除の55万円を差し引いて合計所得金額が95万円になるため、配偶者特別控除の控除額が38万円となります。収入が1円でも上回ると控除額が36万円になるため、配偶者特別控除を利用する方は150万円の壁を意識しておきましょう。
4.年収201万円の壁 【配偶者特別控除を受けられる限度額】
配偶者特別控除を受けられる年収の上限を、年収201万円の壁と呼びます。具体的には201万6,000円を超えると配偶者特別控除を受けられなくなります。
配偶者特別控除において、控除を受けられる配偶者の合計所得金額の上限は133万円です。年収が201万6,000円の場合は給与所得控除が68万4,800円であるため、控除後の所得は133万1,200円となり、133万円を超えます。ただし配偶者特別控除は配偶者控除の収入が大きいほど、受けられる控除額は少なくなります。そのため配偶者の年収を201万円以下に抑えるか、それを超える収入を得るかの選択は、控除額を考慮して決めるとよいでしょう。
年収130万円と106万円の壁は社会保険の扶養に関係する
よく耳にする言葉として「年収130万円の壁」と「年収106万円の壁」もあります。配偶者控除や配偶者特別控除の壁と混同されることが多いですが、これら2つの壁は社会保険の扶養に関する壁であるため配偶者控除等とは関係ありません。
年収130万円の壁とは、雇用形態や企業の規模に関わらず、社会保険の扶養から外れる年収です。年収106万円の壁は、勤務先の雇用条件や規模によっては扶養から外れてしまう年収です。
年収106万円の壁に関しては、2024年の社会保険の適用範囲拡大によって対象者が増加する予定です。社会保険の扶養については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
年末調整で配偶者控除の申告を忘れてしまった場合の対処法
年末調整で配偶者控除の申告を忘れてしまった場合、担当者に申告のやり直しを申請するか、自分で確定申告するかの2つの対処法があります。
配偶者控除の申告は、事前に担当者から書類を受け取り、期限内に収入や控除に関わる内容を記入して提出するのが一般的です。配偶者控除に関する記入を忘れていたり、期限をすぎて提出したりする場合、担当者に相談すれば、配偶者控除の申告をやり直せる可能性があります。そのため、まずは担当者に確認をしましょう。
やり直しができない場合は、自分で確定申告を行います。確定申告では、会社が行う年末調整の作業を自分で行うため時間や手間がかかります。年末調整で手間や時間を取られず配偶者(特別)控除を受けるために、申告内容を忘れず記入して、期限内に年末調整の申告書を提出するようにしましょう。
確定申告の方法については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
確定申告のやり方は?初めての方向けに流れや手順、申告方法を解説
配偶者(特別)控除を満額で受けられるのは年収150万円まで
配偶者控除は配偶者の年収が103万円を超える場合に受けられなくなり、配偶者特別控除は150万円を超える場合に満額の控除が受けられなくなります。また、配偶者の年収が201万6,000円以上の場合は、控除が適用されなくなるため注意しましょう。
配偶者控除や配偶者特別控除における年収の壁を考える際は、控除を受けて節税できる金額と、配偶者が壁を気にせず働いた場合に増加する収入の大きさを比較するとよいでしょう。年収の壁を気にしすぎるあまり、より多くの収入を得られる機会を逃す可能性があるためです。解説した配偶者控除と配偶者特別控除の条件や控除額を参考に、控除を適用するか考えてみてはいかがでしょうか。
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