基礎控除とは?制度の意義や税制改正での変更点を解説
更新

基礎控除は一定条件に適用される所得控除の1つです。令和7年度税制改正では、納税者の税負担の軽減等を目的に、所得税の基礎控除などの一部が変更になりました。今後の年末調整処理では、所得額から控除可能な基礎控除の額などに注意しなければなりません。
本記事では、基礎控除の概要から適用条件、控除可能な額、年末調整・確定申告の方法まで解説します。また、令和7年度税制改正で所得税がどのように変わったかについても紹介しています。
※本記事は2025年1月31日時点の情報で制作しており、今後変更される可能性があります。
【最大3か月無料でお試し】弥生のクラウド給与ソフトで大幅コスト削減
今ならAmazonギフトカード半額相当がもらえる「弥生給与 Next」スタート応援キャンペーン実施中!

無料お役立ち資料【「弥生給与 Next」がよくわかる資料】をダウンロードする
基礎控除とは所得金額から引かれる所得控除の1つ
基礎控除は、年末調整や確定申告で所得税を計算する際に、所得金額から差し引きができる所得控除の1つです。控除額が大きくなるほど、最終的に納付する税額が減少するため、税額計算の際に非常に重要な項目となります。
所得控除には基礎控除の他にも、社会保険料控除や医療費控除、生命保険料控除、配偶者控除など、さまざまな種類が存在します。各控除には適用条件が定められており、それらの条件を満たした場合にのみ、税額の計算時に控除額として差し引き可能です。
基礎控除は、納税者の合計所得額が2,500万円以下の場合に適用され、所得金額に応じた控除額が定められています。所得税は、1年分の給与などの総所得額から控除額を差し引いた課税所得に税率を適用して算出します。
給与所得から差し引く控除額が変わると課税所得額が変動するため、その結果が税額にも影響します。計算の際には、税額に大きく影響する控除額などは慎重に取り扱わなければなりません。所得税計算について以下で詳しく解説します。
基礎控除の適用条件と控除額
物価上昇を背景とした税負担額や就業調整のために、令和7年度税制改正により、2025年から所得税の「基礎控除」「給与所得控除」の金額が変更になり、「特定親族特別控除(仮称)」の制度創設も行われました。
基礎控除の額は、所得金額に応じて定められています。「令和7年度税制改正」により、合計所得金額132万円以下の控除額95万円(恒久措置)が新設されました。また時限措置も含めて段階的に控除額が減少し、合計所得金額が2,500万円を超えると控除額が0円となります。なお、税負担の調整などを目的とした改正ではありますが、所得税の基礎控除のみが変更され、住民税の基礎控除には変更がありません。
合計所得⾦額 | 控除額 |
---|---|
132万円以下 | 95万円 |
336万円以下 | 88万円 |
489万円以下 | 68万円 |
665万円以下 | 63万円 |
2,350万円以下 | 58万円 |
2,350万円超~2,400万円 | 48万円 |
2,400万円超~2,450万円 | 32万円 |
2,450万円超~2,500万円 | 16万円 |
2,500万円超 | なし |
参照:財務省「令和7年度税制改正の大綱」
所得税の求め方
所得税は、1年分の収入額と、業務上発生した経費や所得控除の合計額を基に算出します。1月から12月までの1年分の収入額から、同期間に発生した必要経費、基礎控除などの所得控除額を差し引き、課税所得額を算出します。さらに課税所得に税率を掛けることで所得税額の算出が可能です。次に、所得税額から2024年の定額減税などを差し引いて、基準所得税額を算出します。
2013年から2037年までの期間には復興特別所得税(税率2.1%)も徴収されるため、基準所得税額に復興特別所得税額を足した額が、最終的な所得税額になります。
所得税率は課税所得額を7つの区分に分けた区分ごとに設定しています。課税所得額が1,000円~194万9,000円の税率は5%、195万円~329万9,000円は10%などと定められており、詳細は国税庁の公式サイトで確認できます。

- 【所得税の計算手順】
-
-
1.1年の収入額 - 収入から差し引かれる金額(必要経費など) = 所得金額
-
2.所得金額 - 所得控除額 = 課税所得金額
-
3.課税所得金額 × 税率 = 所得税額
-
4.所得税額 - 所得税から差し引かれる金額(例:住宅ローン控除など) = 基準所得税額
-
5.基準所得税額 + 復興特別所得税額 = 最終的な所得税額
-
参照:国税庁「所得税のしくみ」
参照:国税庁「No.2260 所得税の税率」
所得控除の種類
所得控除は15種類あり、控除を受けるには、確定申告または年末調整が必要です。
控除の種類 | 内容 | 申告方法 | |
---|---|---|---|
1 | 基礎控除 | 本人の合計所得金額が132万円以下の控除額95万円(恒久措置)が新設されたほか、時限措置も含めて段階的に控除額が減少する。合計所得金額が2,500万円を超えると控除額が0円となる | 年末調整で対応可能 |
2 | 配偶者控除 | 本人の合計所得金額が1,000万円以下で、税法上の控除対象配偶者がいる場合に適用される。控除額は、合計所得金額と控除対象配偶者の年齢によって変わる | 年末調整で対応可能 |
3 | 配偶者特別控除 | 本人の合計所得金額が1,000万円以下で、かつ配偶者(生計が一など他に要件あり)の合計所得金額が58万円超133万円以下の場合に適用される。控除額は、本人および配偶者の合計所得金額に応じて変わる | 年末調整で対応可能 |
4 | 扶養控除 | 税法上の控除対象扶養親族がいる場合に適用される。控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無などに応じて38万~58万円(特定扶養親族の場合は、63万円※令和7年度税制改正により特定親族特別控除(仮称)が創設) | 年末調整で対応可能 |
5 | 障害者控除 | 本人や、生計を一にする配偶者または扶養親族が、税法上の障害者に該当する場合に適用される。控除額は区分により27万~75万円 | 年末調整で対応可能 |
6 | 寡婦控除 | 夫と離婚または死別した女性が所定の要件に該当する場合、27万円が控除される | 年末調整で対応可能 |
7 | ひとり親控除 | 離婚、死別、未婚など独身で子どもを育てている人が、所定の要件に該当する場合、35万円が控除される | 年末調整で対応可能 |
8 | 勤労学生控除 | 本人が税法上の勤労学生に該当する場合、27万円が控除される | 年末調整で対応可能 |
9 | 生命保険料控除 | 生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に受けられる控除。控除額は、支払った保険料等の金額や、新制度か旧制度かなどによって異なり、合計で12万円が上限となる | 年末調整で対応可能 |
10 | 地震保険料控除 | 地震保険にかかる保険料または掛金を支払った場合に受けられる控除。控除額は支払保険料の金額によって変わり、最高5万円 | 年末調整で対応可能 |
11 | 社会保険料控除 | 健康保険料(健康保険、国民健康保険)、年金保険料(国民年金、厚生年金保険)、介護保険料などの社会保険料について、支払った、または給与などから源泉徴収された全額が控除される | 年末調整で対応可能 |
12 | 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済、iDeCo(個人型確定拠出年金)、心身障害者扶養共済制度の掛金を支払った場合、掛金の全額が控除される | 年末調整で対応可能 |
13 | 医療費控除 | 1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、最大200万円までの医療費控除か、最大8万8,000円までのセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)のいずれかを適用できる(生計を一にする家庭単位) | 確定申告が必要 |
14 | 寄附金控除 | 国や地方公共団体などに対して特定寄附金を支出した場合以下のうち低い方の金額−2,000円 ・特定寄附金の合計額 ・その年の総所得金額等の40%相当額 |
確定申告が必要 (ふるさと納税はワンストップ特例を利用した場合は確定申告不要) |
15 | 雑損控除 | 災害や盗難、横領によって、対象の資産に損害を受けた場合に以下のうち多い方の金額が控除される ・(損失金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-総所得金額など×10% ・(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円 |
確定申告が必要 |
15種類のうち、年末調整では生命保険料控除や地震保険料控除など12種類の所得控除の申告ができます。会社員の場合は年末調整の際に勤務先に必要事項を記入した書類を提出し、勤務先が年末調整の手続きを行います。
会社は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」などの書類を従業員に配布して、記入後に回収します。生命保険料控除の「保険料控除証明書」、住宅ローン控除(住宅ローン控除は上記所得控除ではなく税額から直接控除する税額控除)の「住宅借入金等特別控除申告書」など、各控除を申告する際は、保険会社や金融機関が発行した書類の提出が必要です。
医療費控除、寄附金控除、雑損控除の3種類に加え、初年度の住宅ローン控除は年末調整では申告できないため、注意が必要です。会社員の場合には勤務先の年末調整でほとんどの所得控除の申告が可能ですが、上記3種類の所得控除と初年度の住宅ローン控除の申告は、年末調整とは別に自分で確定申告をしなければなりません。
年末調整は、会社が毎月の従業員の給与や賞与から源泉徴収していた所得税額との差額を調整する手続きです。給与所得額や控除額から正確な所得税額を算出すると源泉徴収税額との差が生じるため、過払い分があれば還付し、不足があれば徴収します。
年の途中で転職した人の場合は、1年分の所得税計算に前職の給与や賞与、給与等から控除された社会保険料や源泉徴収された所得税額も含めなければなりません。そのため、年末調整時に前職の源泉徴収票の提出も必要となります。
基礎控除制度の意義と税制改正による変更点
基礎控除制度は、納税者本人や配偶者・扶養親族の生活維持のために、最低限の収入を守ることを目的に設けられた制度です。令和7年度税制改正によって基礎控除額の拡大などの変更があり、さらに所得税額の軽減が期待されています。
基礎控除によって所得税を抑えられる
所得税は個人の所得に課される税金ですが、生活に必要な最低限の収入まで課税されると、納税者の負担が大きくなります。納税者の生活の安定を考慮し、課税負担を軽減するために控除制度が設けられました。
憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づき、基礎控除は1947年に、納税者が最低限の生活を維持できるよう創設されました。
所得が2,500万円以下の個人に適用され、所得額に応じた税率で軽減されるため所得税を抑えることが可能です。
これまで「103万円の壁」と呼ばれていたものは、給与所得における基礎控除額48万円と給与所得控除55万円の合算額を意味します。この給与所得控除とは、給与所得などの収入から差し引かれる控除額を指します。給与所得控除には給与額に応じて6つの給与区分があり、最も低い区分の162万5,000円以下が55万円、最も高い区分の850万円超には195万円(上限)と、それぞれ控除額が設定されています。
給与所得控除の最低額55万円と基礎控除48万円を合わせると103万円となり、年収103万円までであれば、所得税は課税されません。ただし103万円を超えると、その超過分に対して所得税が課されます。これがいわゆる年収103万円の壁と言われるものです。なお、2025年からは、令和7年度税制改正により基礎控除額・給与所得控除が引き上げられています。
参照:国税庁「所得控除の今日的意義(要約)」
「令和7年度税制改正大綱」による基礎控除額の拡大
これまでの基礎控除は所得額に応じた4つの区分が設けられており、2,400万円以下の所得区分では控除額が48万円とされていました。「令和7年度税制改正」により、合計所得金額132万円以下の控除額95万円(恒久措置)が新設されました。また時限措置も含めて段階的に控除額が減少し、合計所得金額が2,500万円を超えると控除額が0円となります。この改正は2025年から適用されます。
さらに、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられたことで、従来「103万円の壁」とされていた基準が「160万円の壁」へと変更されます。
これにより、パートタイムやアルバイトなどの勤務形態で働く人が、所得税を回避するための年収上限は、基礎控除48万円+給与所得控除55万円の合算103万円から、基礎控除95万円+給与所得控除65万円の合算160万円に引き上げられます。この改正により、より多くの収入を得ても課税を気にする必要が少なくなります。
参照:財務省「令和7年度税制改正の大綱の概要」
基礎控除を適用させる方法
基礎控除を適用させるには、年末調整や確定申告が必要です。会社員の場合は年末調整で処理され、個人事業主は確定申告で手続きを行います。
給与所得者の場合は年末調整
会社員、パート、アルバイトなどの給与所得者は、年末調整を行うことで基礎控除が適用されます。勤務先の給与計算担当者が従業員の1年間の給与に基づく所得税額を計算して年末調整を行い、納税額を調整します。年末調整の際には、従業員は「給与所得者の基礎控除申告書」を提出しなければなりません。
この申告書には、基礎控除の適用に必要な項目だけでなく、配偶者控除、所得金額調整控除を受けるための情報も記載します。漏れなく記載して、正しく控除を受けるようにしましょう。
給与計算担当者は、従業員の年間給与や申告書を基に、最終的な所得税額を算出します。税額が決定すると、これまで源泉徴収していた額との差額を還付または徴収で調整します。年末調整の精算は、主に12月または翌年1月の給与で行われます。 申告書の提出は、例年11月~12月初旬ごろまでが主で提出が遅れると控除が受けられない場合もあるため、従業員には提出日の周知徹底も必要です。
年末調整についてはこちらの記事もご覧ください。
個人事業主の場合は確定申告
1月1日から12月31日までの所得や税額、源泉徴収額を税務署に報告し、納税を行う手続きが確定申告です。個人事業主が基礎控除を受ける場合には、所得を得た年の翌年に自分自身で確定申告をしなければなりません。確定申告の期間は、毎年その翌年の2月16日から3月15日までの間になります。もし3月15日が土日に重なる場合は、次の月曜日が最終期限になります。
なお、2024年分(令和6年分)の確定申告期間は、2025年2月17日(月)~3月17日(月)でした。 確定申告書の基礎控除額を記入する欄に、申告者の所得に基づく控除額を適用します。e-Taxを利用したオンライン申告も可能です。
税制改正による業務負担は「弥生給与 Next」で軽減しよう
基礎控除は、所得税額を算出する際に所得から引かれる控除の1つです。基礎控除を含む所得控除は、年末調整や確定申告によって適用されます。会社員の年末調整では控除額の計算や申告手続き、年間の給与や控除額に基づいて所得税額を算出するなどさまざまな業務が発生します。
給与計算ソフトを利用すれば、これらの業務の効率化が可能です。「弥生給与 Next」を活用すると、毎月の給与計算業務の効率化だけでなく、年末調整のペーパーレス化も実現します。税制改正によって生じるさまざまな業務負担の軽減にもぜひお役立てください。
無料お役立ち資料【「弥生給与 Next」がよくわかる資料】をダウンロードする
「弥生給与 Next」で給与・勤怠・労務をまとめてサクッとデジタル化
弥生給与 Nextは、複雑な人事労務業務をシームレスに連携し、効率化するクラウド給与サービスです。
従業員情報の管理から給与計算・年末調整、勤怠管理、保険や入社の手続きといった労務管理まで、これひとつで完結します。
今なら「弥生給与 Next」 スタート応援キャンペーン実施中です!
この機会にぜひお試しください。
この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務
中小企業を経営する上で代表的なお悩みを「魅せる会計事務所グループ」として自ら実践してきた経験と、約3,000社の指導実績で培ったノウハウでお手伝いさせて頂いております。
「日本で一番喜ばれる数の多い会計事務所グループになる」
この夢の実現に向けて、全力でご支援しております。
解決できない経営課題がありましたら、ぜひ私たちにお声掛けください。必ず力になります。
