給与明細とは?見方や作り方をわかりやすく解説

2022/12/09更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

毎月1度、給料日に発行する「給与明細書」は、1か月の給与額がどのように計算されたのかを記す書類です。従業員にとっても従業員を雇う側にとっても大切な書類なので、会社は書面内容である給与明細の目的や記載方法を正しく知っておく必要があります。

本記事では、給与明細の役割や項目の意味、作り方についてわかりやすく解説していきます。

給与明細の基礎知識

まずは、給与明細がどのようなものなのか、基本を押さえておきましょう。給与明細とは、「勤怠情報や給与の支給額(基本給や各種手当など)や控除額(税金の額、社会保険料など)を明記したもの」のことで、給与の支払い日までに従業員に交付します。

従業員は、給与明細があることで自分が受け取る給与がどうしてその金額になったのかがわかります。また「残業代が思っていた額と違う」などの問題があった場合も、タイムカードと給与明細を見比べることで、計算根拠を確認できます。

給与明細書の発行は会社の義務

所得税法では、給与の支払者(会社)は、給与の支払いを受ける者(従業員)に支払明細書を交付しなければならないと定めています。この「給与の支払明細書」に該当するのが、給与明細書です。

そのため、会社は給与が発生するすべての従業員に対して、給与明細書を交付しなければいけません。

給与明細書の発行方法

給与明細書の発行・交付は、紙もしくはデータの2種類の方法があります。これまで、紙での交付が一般的でしたが、2007年1月の所得税法改正により、従業員の承諾を得れば電子データでの交付が認められるようになりました。人件費やコスト削減、紛失などのリスク軽減の観点から、給与明細書を電子化する会社は増えています。ただし、従業員から請求があった場合は、紙の給与明細書を交付しなくてはなりません。

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給与明細にはどのような項目がある?

給与明細に決まったテンプレートはなく、会社によって書式が違いますが、基本的な構成はほぼ変わりません。

下記は、「やよいの給与明細 オンライン」のテンプレートの1つです。給与明細の構成は、主に「勤怠」「支給」「控除」の3つの項目で成り立っています。この3つの項目と、それ以外の記載内容について、詳しく見ていきましょう。

勤怠

勤怠とは、従業員の出勤日数や労働時間といった勤務状況について記載する欄です。勤怠に書かれる項目は会社ごとに決まっています。ここでは、代表的な項目について解説します。

所定労働日数 所定労働日数とは、給与計算期間中の1か月に出勤すべき日数のことです。例えば、土日祝日休みの会社で、給与が末締め翌月10日払いの会社の場合、2022年8月の所定労働日数は22日となります。
出勤日数 出勤日数とは、所定労働日数のうち各従業員が出勤した日数のことです。遅刻や早退をした日も含みますが、休日出勤をした日は含みません。
欠勤日数 欠勤日数とは、所定労働日数のうち欠勤した日数のことです。
有給日数 有給日数とは、所定労働日数のうち年次有給休暇を取得した日数のことです。年次有給休暇は、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりのある生活を保障するために付与される休暇です。
有給残日数 有給残日数とは、年次有給休暇日数のうち未取得の日数のことです。年次有給休暇は1年ごと(入社直後は6か月後)に付与されるため、定期的に更新が必要です。
普通残業時間

普通残業時間とは、法定労働時間を超過した残業時間のことです。

  • 法定労働時間と所定労働時間が異なる場合は残業時間を区別する必要があります。
深夜労働時間 深夜労働時間とは、所定労働日数のうち夜22時以降朝5時までの労働時間のことです。
休日出勤時間

休日出勤時間とは、所定労働日数のうち休日出勤をした場合の勤務時間のことです。

  • 法定休日の出勤時間と法定外休日の出勤時間は割増率が異なる場合は区別する必要があります。
総労働時間 総労働時間は、所定労働日数の労働時間の合計のことです。

支給

支給欄には、支給される給与が項目別に記されています。こちらも、具体的な項目は会社の規定によって異なります。ここでは、代表的な項目例をご紹介します。

基本給 基本給とは、残業代や各種手当を含まない、ベースとなる基本賃金のことです。基本的に毎月変わりません。
普通残業手当 普通残業手当とは、普通残業時間に応じた手当額のことです。
深夜労働手当 深夜労働手当とは、深夜労働時間に応じた手当額のことです。
休日出勤手当 休日出勤手当とは、休日出勤時間に応じた手当額のことです。

普通残業、深夜労働、休日出勤といった残業代の種類や詳しい計算方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

残業手当の正しい計算方法とは?計算の流れやルールを知っておこう

その他の規定にもとづく手当

基本給や残業代は、すべての会社に支払い義務のある支給項目です。一方、下記のような手当は、会社の規程に応じて支払われる手当です。

  • 通勤手当
  • 役職手当
  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 単身赴任手当
  • 資格手当 など

控除

控除には、給与から差し引かれる金額が記載されます。下記の項目は、法定の要件を満たしている場合、会社でも必ず差し引く必要のあるものとなります。

健康保険料 会社で健康保険に加入している従業員は、健康保険料を支払う必要があります。健康保険制度は、病気やケガ、それによる休業、出産、死亡に備える公的医療保険制度です。健康保険料は会社と従業員が折半で負担します。
介護保険料 40歳以上の健康保険に加入している従業員は、介護保険料を負担します。介護保険制度は、介護が必要になった人を社会全体で支えるために創設された制度です。介護保険料は健康保険料同様、会社と従業員が折半で負担します。
厚生年金保険料 厚生年金保険に加入している従業員が支払う保険料を厚生年金保険料といいます。厚生年金制度は、会社に勤める従業員などが加入する公的年金制度です。厚生年金保険に加入すれば自動的に国民年金に加入することになるため、将来は基礎年金と厚生年金の両方を受け取れます。厚生年金保険料は、会社と従業員が折半で負担します。
雇用保険料 雇用保険に加入している従業員が支払う保険料を雇用保険料といいます。雇用保険制度は、従業員の雇用維持や生活の安定を目的とした保険制度です。従業員が失業した際の再就職の援助や給付、介護や育児による休業時の給付などを受けることができます。雇用保険料は、会社と従業員がそれぞれ規定に従って負担します。
所得税 所得税は、所得が一定以上の場合に支払う税金のことです。
住民税 住民税は、前年の所得が一定以上の場合に支払う税金です。新卒の社員など、前年の所得が一定以下の場合は差し引かれません。

上記の他、必要に応じて控除される項目に、団体保険料や寮費、各種会費などがあります。

その他

給与明細には、上記で紹介した項目以外に、下記のような内容も記載されます。ただし、実際の項目名は、会社によって異なります。

いつの給与明細なのか 給与明細にはいつの明細なのかわかるように、「◯年◯月分」という形式で記載します。
支給日 支給日とは、給与が支払われる日を指します。
従業員の情報 従業員の情報とは、氏名や社員番号などです。
差引支給額 差引支給額とは、総支給額から各種控除額を引いた、実際に支給される金額です。いわゆる「手取り額」のことです。
課税支給累計 給与計算期間(1~12月)に支給された給与のうち、所得税などの税金がかかる対象となる金額の合計を課税支給額合計といいます。具体的には、基本給と時間外労働の手当が対象となり、非課税通勤交通費は含まれません。
社会保険累計 その年(1~12月)に支給された給与から、差し引かれた社会保険料の累計額を社会保険累計といいます。ここでいう社会保険料とは、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料のことです。
所得税累計 その年に支給された給与から、差し引かれた所得税の累計額を所得税累計といいます。

一般的な給与明細作成の流れ

給与明細を作成する際には正確さが求められますので、慌てず計画的に進めましょう。具体的には、下記の5つのステップで作成します。

1. 給与の締日に勤務時間の集計をする

給与の締日になったら、従業員ごとの勤務時間を取りまとめます。タイムカードや出勤簿をもとに、休日出勤日数や残業時間なども集計します。

なお、締日は会社ごとにあらかじめ定められています。

締日の例

  • 末締め翌月10日払い
    1日から末日までの勤怠を取りまとめて、翌月10日に給与を支給します。
  • 20日締め当月末日払い
    前月21日から当月20日までの勤怠を取りまとめて、当月末日に給与を支給します。

2. 給与計算を行う

勤怠データをもとに、給与計算を行います。

具体的な給与計算の方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

給料計算のやり方とは?流れを4つのステップでわかりやすく解説

3. 賃金台帳を作成する

給与の計算結果を賃金台帳に記載します。

賃金台帳とは、従業員の給与の支払い情報を記録した台帳のこと。法定三帳簿と言われる帳簿の1つで、会社に作成が義務付けられている書類です。

4. 給与明細を作成する

賃金台帳の内容を給与明細に転記します。賃金台帳に記された各項目の数字と給与明細の数字は、必ず一致します。

5. 給与支給日までに従業員に給与明細書を交付する

給与支給日までに、給与明細書を従業員に交付します。特に、紙での交付の場合、給与明細書は個人情報ですので、他の従業員に見られたり、他人の給与明細書を渡してしまったりしないように注意しましょう。

給与明細のよくある質問

給与明細について、よくある質問と答えをまとめました。給与明細書発行にあたっての参考にしてください。

Q. パートやアルバイトにも給与明細書の発行は必要?

給与明細書は、パートやアルバイトにも発行が必要です。給与を支給する全従業員の給与明細書を作りましょう。

Q. 派遣社員の給与明細はどうすればいい?

派遣社員の給与明細は、派遣元の派遣会社が作成し交付します。派遣社員を利用している会社が作る必要はありません。

Q. 給与明細の内容を間違えた場合はどうしたらいい?

給与明細に記載した支給額自体が間違っていた場合は、すみやかに従業員に連絡をしましょう。その後、翌月の給与などで過不足の調整を行います。一方、明細の打ち間違いなど支給額に影響しない場合は、明細を再作成して正しいものを従業員に交付します。

なお、給与明細を作り直す際は、賃金台帳の数字も必ず正しいものに修正してください。

Q. 発行した給与明細書の控えは保存が必要?

会社側に、給与明細書の控えの保存義務はありません。ただし、給与明細書を作成するもととなる賃金台帳は、5年間(改正労働基準法の施行日以降、経過措置として当分は3年間)の保管が義務付けられています。

給与明細をミスなくスピーディーに作成するために給与計算ソフトを活用しよう

給与明細は、従業員に対して支払う給与額の計算根拠となるものですから、間違いがないように作成しなければいけません。しかし、給与明細の計算を手作業で行っていると、どうしても計算間違いや転記ミスが起こりがちになります。給与明細を間違いなく、スピーディーに作成するために、給与計算ソフトを活用しましょう。

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この記事の監修税理士法人古田土会計
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