給料計算のやり方とは?流れを4つのステップでわかりやすく解説
2022/12/09更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

「給料」と「給与」。呼び名は違いますが、どちらも会社が労働の対償として労働者に支払う賃金のこと、つまり同義語です。給与計算は、各種手当の計算のほか、社会保険料や税金の控除額算出など、とても複雑です。
従業員を雇っている会社では、毎月必ず給与計算をしなければいけません。とはいえ、「本業の傍らで給与計算に時間をかけるのは負担が大きい」と感じている事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、給与計算のやり方について、解説していきます。
給与計算の流れ
給与計算は、4つのステップで進めます。どのような流れで計算を行うのか、まずは大枠を理解しておきましょう。
1. 勤怠情報を取りまとめる
勤怠情報の取りまとめを行います。タイムカードや出勤簿を確認して、それぞれの従業員の勤怠を一覧表にしましょう。
確認すべき勤怠情報は、出勤日数と有給休暇取得状況、欠勤日数、遅刻や早退の有無と労働時間、残業時間などです。
2. 支給額の計算を行う
勤怠情報をまとめたら、次に支給額の計算を行います。
支給額には、基本給や役職手当のような基本的に毎月変わらないものと、残業手当のような毎月変動するものがあります。正しく計算を行った後、合計額を算出しましょう。
3. 控除額の計算を行う
支給額の計算を終えた後、控除額を計算します。遅刻早退控除や欠勤控除といった勤怠状況に応じた控除の他、社会保険料や所得税、住民税などについても金額を確認し、控除合計額を算出しましょう。
4. 振込支給額を求める
支給合計額から控除合計額を差し引いて、振込支給額(差引支給額)を求めます。この金額が、実際に従業員の口座に振り込む金額です(現金払いの場合は、振り込みではなく該当の金額を手渡しします)。
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STEP1 勤怠情報を取りまとめる
勤怠情報を取りまとめる際、確認すべき項目についてご紹介します。具体的な確認項目は、会社規程によっても変わりますが、ここでは代表的な例を見ていきましょう。
所定労働日数 | 所定労働日数とは、給与計算期間(月末締めであれば1日~末日まで、20日締めであれば前月21日~当月20日までなど、給与の計算対象となる期間)中の、従業員が出勤しなければならない日数のことです。 同じ勤務形態で働いている従業員の所定労働日数は、基本的に全員同一です。カレンダーを見て、出勤すべき日数が何日あったのか確認しましょう。 |
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勤務日数 | 勤務日数とは、所定労働日数のうち、それぞれの従業員が実際に出勤した日数です。なお、休日出勤した日数は、勤務日数に含めません。 |
労働時間 | 給与計算期間中の、従業員ごとの労働時間を分単位で合計します。 |
有給取得日数と有給残日数 | 有給取得日数は、給与計算期間中に取得した有給休暇の日数。有給残日数は、取得済の有給休暇を反映させた、残りの年次有給休暇の日数です。 有給休暇を使うタイミングや付与されるタイミングは、従業員ごとに異なります。有給休暇の付与には、出勤率が影響してくるため、有給休暇管理簿を作成して、勤怠と合わせて管理することがおすすめです。 |
欠勤日数 | 給与計算期間中に、欠勤した日数を確認します。 |
遅刻および早退時間 | 給与計算期間中に遅刻や早退をした従業員については、遅刻、早退時間を確認して合計を算出します。 |
普通残業時間 | 給与計算期間中の、残業時間(深夜残業時間を除く)の合計を算出します。 |
深夜残業時間 | 夜22時~朝5時までの残業は「深夜残業時間」として、普通残業時間とは別にまとめます。これは、残業手当の計算方法が異なるためです。 |
休日出勤時間 |
休日出勤をした従業員については、休日の勤務時間を確認します。 休日出勤の種類
|
どの曜日が法定休日で、どの曜日が所定休日に該当するのかは、それぞれの会社で規程により定められています。また、法定休日出勤は割増賃金の支払いが必要ですが、所定休日出勤に割増賃金を適用するかどうかは、各会社の規程によります。
ただし、割増賃金を適用しない場合でも、休日出勤をしたことで労働時間が1日8時間または1週あたり40時間を超える場合は、通常の残業手当と同じ割増賃金を支払わなければいけません。
休日出勤時の残業手当の計算方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
残業手当の正しい計算方法とは?計算の流れやルールを知っておこう
STEP2 支給額の計算を行う
支給額には、基本的に毎月変わらない項目と、毎月の勤怠状況に応じて変わる項目があります。それぞれの項目について計算を終えてから、最後に支給額の合計を算出します。
基本給
基本給は、昇給や減給がない限り、基本的に毎月同じです。前の月の基本給をそのまま転記しましょう(「新入社員の初回給与」など、日割りで計算をした場合は、次月も日割りにしないよう注意)。なお、昇給などがあった場合は、忘れずに反映させてください。
また、欠勤や遅刻、早退があった際は、課税処理をする前の基本給(総支給額)からその分を控除します。この控除金額は、「欠勤・遅刻・早退の控除」の欄に入力します。
賃金規程にもとづく各種手当
賃金規程などにもとづいて、支給する手当を確認します。手当も基本給と同様、新たに支給対象になった従業員や支給対象外になった従業員がいなければ、毎月変わらない場合が多いでしょう。
手当の例
- 通勤手当
- 家族手当
- 住宅手当
- 役職手当
- 資格手当 など
なお、残業手当や休日出勤手当のような、勤怠にもとづく手当については、次の「時間外手当」で別途解説します。
時間外手当
所定の労働時間を超えて働いた従業員には、残業手当を支払わなければいけません。時間外手当は、勤怠状況に合わせて個別に計算して支給します。
時間外手当の計算式
1時間あたりの賃金×(1+割増率)×残業時間=時間外手当
月給制であっても、1時間あたりの賃金を算出してから計算します。また、残業には割増賃金の支払いが必要です。
1時間あたりの賃金の計算式
(基本給+手当(職務手当、資格手当、通勤手当等、一部手当を除く))÷1か月あたりの平均所定労働時間=1時間あたりの賃金
例)
年間休日122日、1日8時間労働の会社における、基本給20万円、資格手当5万円の従業員の1時間あたりの賃金
(365日-122日)×8時間÷12か月=162時間(1か月あたりの平均所定労働時間)
(20万円+5万円)÷162時間=1,543円
- ※ 1円未満は四捨五入
よって、この従業員の1時間あたりの賃金は、1,543円です。
なお、法律により最低割増率が定められていますが、残業の種類によって割増率は異なります。
最低割増率
- 普通残業(労働時間が1日8時間または週40時間以上):25%以上
- 深夜残業(22時~5時までの残業):25%以上
- 法定休日残業(週1日の法定休日の残業):35%以上
なお、2つ以上の条件にあてはまる場合は、両方の割合を合算します。例えば、普通残業かつ深夜残業の場合の割増率は、50%以上でなければいけません。
例)
1時間あたりの賃金が1,327円の従業員が、普通残業4時間、深夜残業1時間を行ったときの残業手当
1,327円×(1+0.25)×4時間=6,635円(普通残業手当)
1,327円×(1+0.5)×1時間=1,991円(深夜残業手当)
- ※ 1円未満は四捨五入
残業手当の計算方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
残業手当の正しい計算方法とは?計算の流れやルールを知っておこう
通勤手当
通勤手当は、賃金規程にもとづいて一般的に実費を支給します。
通勤手当の計算方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
通勤交通費の計算方法は?非課税になる範囲や規程の作り方を解説
STEP3 控除額の計算を行う
支給額の計算が終わったら、次に控除額を計算します。勤怠状況に応じた控除や社会保険料、税金の計算を行いましょう。
欠勤控除
従業員が欠勤したときは、賃金規程で定めた計算方法により、控除金額を算出します。
欠勤控除額の計算式
月給÷1か月あたりの平均所定労働日数(もしくはその月の所定労働日数)×欠勤日数=欠勤控除額
1日あたりの欠勤控除額を求めるために、月給を1か月あたりの平均所定労働日数ではなく、その月の所定労働日数で割ってもかまいません。ただし、月によって「1日休んだときに引かれる金額」が変わってしまうので、前者の方がわかりやすい計算方法だといえるでしょう。
また、上記の「月給」を基本給だけにするのか、一部手当を含めるのかは、会社が賃金規程により決めることができます。ただし、従業員によって対応を変えることはできません。常に同じ方法で計算しましょう。
遅刻早退控除
従業員が遅刻、早退をしたときは、規程の金額を給与から控除します。
遅刻早退控除額の計算式
月給÷1か月あたりの平均所定労働時間×遅刻早退時間=遅刻早退控除額
この場合の「月給」も、一部手当を含めるのかどうか、事前に定めておく必要があります。
厚生年金保険料
厚生年金保険料は、4~6月まで3か月間の平均の賃金、または昇給月から3か月間の平均の賃金によって決まる「標準報酬月額」をもとに算出します。
基本給に、役付手当、通勤手当、残業手当などの各種手当を加えた、1か月の総支給額(臨時に支払われるものや3か月を超える期間ごとに受ける賞与等を除いたもの)を「報酬月額」といいます。
報酬月額を、保険料額表の1等級(8万8,000円)から32等級(65万円)まで分け、その等級に該当する金額のことを「標準報酬月額」といいます。

厚生年金保険料の計算式
標準報酬月額×厚生年金保険料率(2022年度は18.3%)÷2=厚生年金保険料
最後に2で割っているのは、厚生年金保険料を従業員と企業が半額ずつ負担するためです。なお、厚生年金保険料の金額は、保険料額表と呼ばれる一覧表で調べることもできます。
例えば、標準報酬月額が17等級26万円の従業員の給与から控除する厚生年金保険料は、2万3,790円です。この金額は、標準報酬月額の変更か、保険料率の変更があるまで変わりません。
厚生年金保険料の計算方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
厚生年金保険料の計算方法とは?給与計算で迷わないための基礎知識
健康保険料および介護保険料
健康保険料と介護保険料も、標準報酬月額に保険料率を掛けて算出します。ただし、こちらも保険料額表が用意されているため、表を見て確認するのがいいでしょう。
下記は、会社が東京の協会けんぽに加入している場合の保険料額表です。保険料は、地域や加入している健康保険組合によって異なるため、必ず自社の保険料額表を確認してください。

なお、介護保険料は、40歳以上の従業員だけが負担する保険料です。40歳未満の従業員は支払う必要がありません。
また、健康保険料と介護保険料も、厚生年金保険料と同じく、標準報酬月額か保険料率の変更があるまで金額は変わりません。
雇用保険料
雇用保険料は、毎月の給与支給額に保険料率を掛けて算出します。計算の根拠となる支給額には、通勤費や残業手当、各種手当をすべて含みます。
業種別の保険料率は下記のとおりです。

例)
一般の事業(農林水産・清酒製造・建設にあてはまらない事業すべて)に従事する支給額30万円の従業員の雇用保険料
30万円×3÷1,000=900円
よって、給与から900円を控除します。
雇用保険料についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
雇用保険料の計算方法と納付方法は?初めて手続きする方向けに解説
住民税
毎年5月中旬~下旬頃に、従業員の住民税の税額通知書が会社に届きます。6月分の給与~翌年5月分の給与について、税額通知書に記載された住民税額を控除・納税しましょう。
源泉所得税
給与にかかる所得税額は、年間の給与の総額が確定してから決まります。しかし、会社に雇用されている従業員は、毎月の給与から概算の所得税が源泉徴収されます。これが、源泉所得税です。
源泉所得税の金額は、従業員の給与額と扶養者数によって決まります。該当の月の総支給額から、社会保険料と非課税通勤費を差し引いた金額を、下記の税額表にあてはめて金額を確認しましょう。なお、一般的な従業員(「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している従業員)は、「甲」欄に該当します。

例)
給与が30万円(うち通勤手当1万円)、社会保険料が4万3,065円、扶養親族なしの従業員の源泉所得税
30万円-1万円-4万3,065円=24万6,935円
上記の表にあてはめると、源泉所得税額は6,420円です。
源泉所得税の計算方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
源泉所得税とは?給与・賞与・退職金にかかる所得税の計算方法を解説
その他
その他、団体保険料や寮費など、従業員の状況や会社の規程に合わせた控除額を反映させ、最後に控除額の合計を算出します。
STEP4 振込支給額を求める
支給合計から控除合計を引いた金額が、振込支給額です。
例)
支給合計が30万円、控除合計が6万1,928円の従業員の振込支給額
30万円-6万1,928円=23万8,072円
上記が、従業員の口座に振り込む「手取り額」です。

給与計算の注意点
給与計算をするうえで、注意しておきたいポイントを4つご紹介します。「うっかり」では済まされないトラブルになることもありますから、十分注意しましょう。
情報漏洩
給与の額は、従業員にとって非常にプライベートなものです。他の従業員や取引先、他人に情報が漏れてしまわないように気を付けましょう。
計算ミス
従業員にとって「給与を間違えられる」というのは、会社との信頼関係に影響を及ぼしかねない大きな問題です。計算間違いや転記ミスなどによって、支給額を間違えることがないように注意してください。
スケジュール管理
給与計算は、毎月決まった時期に行わなければならない業務です。給与の締日~支払い日までの間に、必要な計算や手続きを終わらせる必要があるため、作業時間を確保しておきましょう。作業の抜けがないように、いつ、何をすればいいのか、毎月のスケジュールを立てておくのがおすすめです。
記録の保存
給与計算の記録は、賃金台帳に保存する必要があります。各月の給与計算結果の履歴は、年末調整や各種手続きを行う際に必須ですから、必ず記録を残さなければいけません。
また、会社には賃金台帳を5年間(改正労働基準法の施行日以降、経過措置として当分の間3年間)保管する義務があります。
給与計算は計画的に行おう
給与計算や明細書の作成、振り込みといった一連の手続きには、時間がかかります。ギリギリになってから手続きをしようとすると、給与の遅延といった問題につながる可能性がありますから、早めに取り掛かりましょう。
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この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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