支払明細書とは?領収書や請求書との違い、書き方を徹底解説
監修者: 辻・本郷税理士法人 / 辻・本郷ITコンサルティング
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支払明細書は、企業間や企業と個人が金銭の発生する取引を行ううえで発行される書類です。請求書や領収書などと比べてなじみがないと感じるかもしれませんが、支払明細書はさまざまなシーンで発行されています。
ここでは、支払明細書の種類やその他の書類との違い、支払明細書を発行する具体的なケースの他、記載する項目などについて解説します。
支払明細書とは取引の内訳金額を明らかにする書類
支払明細書とは、一般的に金銭のやりとりを行う際の内訳とそれぞれの金額を明らかにするために支払う側が発行する書類です。取引上の支払い明細と金額が確定したことを知らせるために、請求書を発行する前に作成します。企業間取引だけでなく、支給と控除が混在して支払い額の算出が煩雑な給与明細書などを指すことも。その際は支払明細書という名称ではないこともありますが、意味としては支払明細書と同等のものといえるでしょう。
なお、商取引の際に発行する書類には、支払明細書の他に、見積書や請求書、領収書などがあります。これらは、どれもお金を支払う側と支払われる側のどちらが発行するのかが決まっている書類。支払明細書については、一般的にお金を支払う側(買手側)が発行する書類です。
支払明細書の発行の多くは義務付けられていない
支払明細書は、企業間の商取引にかかわらず、金銭のやりとりを伴うさまざまなシーンで発行されます。
ただし、企業間の商取引において、支払明細書の発行は義務ではありません。発行しなかったからといって、支払い義務がなくなるわけでもなく、内訳を明確にすることでトラブルを避けるために発行されるものといえます。ただし、給与明細書のように、所得税法によって発行が義務付けられている支払明細書もあります。
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支払明細書を発行する目的は大きく2つ
支払明細書を発行する目的としては「取引内容を互いに確認のため」と、「支払う金額を説明するため」の大きく2つがあります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
取引内容をお互いに確認するために発行する
企業間の商取引では、お互いに取引内容を確認するために支払明細書を発行することが多いようです。例えば、「買掛金計上明細書」は、掛け買いをした企業が売手側に対して明細を通知するために発行するもので、支払明細書と同じ役割の書類です。相手方からの請求書を待たずに、いくら支払う予定があるのかを伝えられるのがメリットといえます。
支払う金額を説明するために発行する
お金を支払う側が受け取る側に対して、なぜその金額を支払うのかを説明するために支払明細書を発行するケースもあります。例えば、給与明細書や業務委託報酬の支払明細書などです。
このような支払明細書には、支払う金額の内訳の他に、計算の根拠などが記載されていることもあります。時給1,000円で10時間働いたパート社員の給与額は1,000円×10時間=1万円ですが、給与明細書には、「給与 1万円」だけでなく、時給や勤務時間、勤務日数なども記載されます。こういったケースの書類も、支払明細書のひとつです。
支払いを受ける側が、受け取った金額の根拠を確認するために内訳を示す支払明細書の例は、下記のとおりです。
給料
給料明細書には、振込金額の他に、基本給や残業代といった支給の内訳と、所得税や厚生年金保険料などの控除の内訳、勤務日数などの勤怠の内訳が記載されています。また、寮費や団体保険料、持株会など、従業員ごとの事情によって控除される金額も給料明細に記載されます。
給料明細は、企業に対して発行が義務付けられている明細書です。紙で発行されるのが一般的でしたが、近年は、給料明細書を従業員に電子データとして発行する企業も増えています。電子データで発行することで、明細の取り違えや紛失などのリスク軽減や再発行が不要になるなどがメリットです。
給与明細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
賞与
賞与明細書にも、支給額と控除額それぞれについての内訳が明記されています。賞与明細書も、必ず発行しなければいけません。給料明細書と同様に、紙で発行する企業も、電子データとして発行する企業もあります。
退職金
退職金明細書は、入社日と退社日、勤続年数、支給額、控除額などが記載された書類です。入社日や退社日が書かれるのは、それによって退職金の所得税額の計算が変わるためです。ただし、所得税の計算方法までは記載されません。計算結果にもとづいて、支給額と控除される所得税額、住民税額などが記載されます。
配当金
株式会社が、株主に対して発行する配当金の書類も支払明細書です。支払通知書という名称で発行される書類もあります。配当金の支払いの際に発行される支払明細書は支払う側に発行が義務付けられており、配当を受け取った側が確定申告をする際に提出書類に添付します。
利息
クレジット会社などが発行する利息を示す支払明細書は、主にカードローンなどを利用した際に発行される書類です。現在の借入残高や利息額、次回の支払い額などが記載されています。
業務委託の報酬
業務委託で働いている方に対しては、給与明細書が発行されません。その代わりに、支払明細書が発行される場合があり、委託した業務の内訳や金額、日付などを記載します。
高額な賞金
競馬で高額な賞金を受け取る場合などにも、支払明細書が発行されます。
支払明細書と領収書・請求書との違い
支払明細書、領収書、請求書はそれぞれ異なる目的で発行される書類です。
各書類がどのような意味を持っているのか、詳しく見ていきましょう。
支払明細書と領収書は「支払いが行われたかどうかが違う」
支払明細書と領収書には、金銭の受け渡しが完了しているか否かという大きな違いがあります。
支払明細書は、通常、支払いが行われるよりも前に発行されます。実際の金銭の受け渡しの前に内訳を売手側に伝えたり、双方で確認し合ったりするのが支払明細書の目的だからです。一方、領収書は支払いが完了した後に、「確かに料金を受け取りました」という証明のために売手側が発行します。
なお、電気料金などの明細書には、領収書が付属していることがあります。しかし、この領収書は明細書に記載されている分についての領収書ではなく、前月分の支払いに対する領収書です。いつの分の領収書や明細なのかも記載されていますから、確認してみてください。
支払明細書と請求書は「支払いの要求があるかどうかが違う」
支払明細書と請求書は、どちらも金額の内訳などと合計額が記載された書類です。しかし、支払明細書が内訳確認を主目的として発行されるのに対し、請求書は料金の請求のために発行されます。
支払明細書、請求書、領収書は「発行タイミングが違う」
企業間の商取引における書類の中でも混同しがちな支払明細書、請求書、領収書は、発行のタイミングに違いがあります。ただし、どの書類を発行するかは、企業によって異なります。
企業によっては、支払明細書や領収書を発行しない場合や、検収書を請求書代わりに利用する場合などもあります。それぞれの書類の一般的な発行タイミングは、下記のとおりです。
支払請求書を発行する場合の各書類の発行タイミング
-
1.
「支払明細書」を発行し、取引内容の内訳と金額の確認を行う(支払い側)
-
2.
支払明細書の内容をもとに、支払い期日や支払い先が明記された「請求書」を作成する(請求側)
-
3.
請求書を取引先(買手側)に送付することで、支払いを要求する(請求側)
-
4.
支払いが行われる(支払い側)
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5.
支払いに対する「領収書」を発行する(請求側)
支払明細書の書き方のポイント
支払明細書は、給与明細などの一部を除いて法的に発行が義務付けられているものではなく、決まったフォーマットがありません。しかし、支払いの証明として発行するものですから、わかりやすく、内訳確認という目的を達成しやすい構成を心掛けてください。
一般的な商取引で発行される支払明細書には、主に下記のような内容を記載します。
書類名
書類の種類がわかるように、「支払明細書」という名称を最初に記載します。
管理ナンバー
支払明細書の管理番号を記載します。見積書や請求書などと連動させると、管理がしやすいのでおすすめです。特にない場合は、書かなくても構いません。
発行した日付
支払明細書を発行した日付を書きます。西暦でも和暦でも問題ありませんが、統一すると管理しやすくなります。
相手方の企業名・個人名
先方の企業名や個人名を記載します。企業の場合の敬称は「御中」、個人の場合は「様」です。相手の住所や電話番号は必要ありませんが、窓付き封筒を利用する場合など、記載する必要があれば書いても問題ありません。
発行する側の企業名・個人名
支払明細書を発行する側の企業名や事業主名などを記載します。内容に問題があった場合に連絡がつきやすいよう、住所や電話番号、メールアドレスなども併記してください。
社印
ビジネスでかわす書類は、慣習として企業名の隣に角印を押すのが一般的です。個人が発行する場合は、慣習として氏名の横に認印を押してください。
取引内容を記載
支払明細書で確認を行うべき取引について、個別の内訳や金額などについて記載します。すべての内訳を記載したら小計を出し、消費税率を明記したうえで消費税額、合計額を示します。
項目 | 内容 |
---|---|
日付 | 納品した日やサービスを提供した期間 |
ナンバー | 自社の商品コードや管理コード |
内容 | 商品名・サービス名 |
数量 | 納品した個数や重量など(単位も記載) |
単価 | 消費税を含まない単価 |
金額 | 数量と単価を掛け合わせた金額 |
小計 | 税抜の合計金額 |
消費税 | 小計に対する消費税 ※軽減税率があれば欄を設けて記載する |
合計 | 税込金額の合計 |
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便利なシステムを導入すれば支払明細書の発行もかんたん
一般企業においては、主に買手先に対して支払いの内訳を示すために支払明細書が発行されます。取引をスムースに進めるために、支払明細書を活用しましょう。
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この記事の監修者辻・本郷税理士法人
国内最大規模の税理士法人。専門分野に特化した総合力を活かし、一般企業の税務顧問をはじめ、医療法人、公益法人、海外法人など多種多様なお客様へサービスを提供。開業支援から事業承継、相続・贈与対策、オーナー向けの資産承継など、法人・個人問わずお客様のニーズに柔軟かつ的確に応えるべく、幅広いコンサルティングを行っている。
Webサイト:https://www.ht-tax.or.jp
この記事の監修者辻・本郷ITコンサルティング
国内最大級の税理士法人である辻・本郷 税理士法人のグループ会社として2014年に創業。実践した数多くのDX化ノウハウをグループ内外に展開。バックオフィスに課題を抱える組織のコンサルティングから導入までをワンストップで行う。電子帳簿保存法やインボイス制度対応等、最新のコンサルティング事例にも精通。「無数の選択肢から、より良い決断に導く」をミッションとし、情報が多すぎる現代において、お客様にとっての「より良い」を見つけるパートナーを目指す。