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納品書の管理・整理方法を紙と電子データにわけて簡単に解説

更新

納品書は取引が成立したことを証明する証憑書類であり、法律で一定の期間、保管することが義務付けられています。本記事では、納品書の管理・整理方法を、紙の場合と電子データの場合とにわけて、わかりやすく解説します。さらに管理・整理する際に気をつけたいポイントや紛失時の対応も紹介します。

納品書の管理・整理方法|紙の場合

2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法により、納品書の電子データ保存要件が緩和されましたが、依然として紙の納品書を使用しているという事業者は数多く存在します。納品物をその場で確認する際に、紙の書類と照合する方が便利であることが理由の一つです。

特に、製造業や個人経営の飲食店など、材料の仕入れ先が多い業種では、納品書の数が非常に多くなるため、紙の書類を使う場合には、紛失を避けるためにも速やかに整理・保管することが重要です。また、発行者側としては、控えを忘れずに保管しておくようにしましょう。

本記事では紙の納品書の管理・整理方法を、以下にわけて解説します。

  • 受け取り側
  • 発行する側

受け取り側

受け取り側の管理・整理時の注意点としては、以下が挙げられます。

  • 企業ごとにファイリングして保管する
  • できるだけ速やかに保管する

企業ごとにファイリングして保管する

発注した商品の納品書を紙で受け取った場合には、企業ごとにファイリングして保管することをおすすめします。特に取引先が多い場合、毎週、毎月のように納品書が増え続けるため、煩雑にならないよう、ファイリングの保管方法にも工夫する必要があります。

例えば、枚数に応じて月別や費目別などで細かく仕分けすれば、後から見やすくなります。企業ごとにファイリングしたら、年度別に箱にわけてまとめておくと、保存期間を過ぎたものから破棄できるため、管理しやすくなります。

できるだけ速やかに保管する

納品書は発注ごとに届くため、そのつどファイリングしておかないと紛失してしまうおそれがあります。発注内容と納品物とを突き合わせ、相違なければ、できるだけ速やかにファイルに保管します。ファイリングしておけば、納品書の紛失を防止できます。

発行する側

発行する側の注意点は以下です。

  • 発行順にナンバリングして納品書の写しをファイリングする
  • 年度別にまとめる

発行順にナンバリングして納品書の写しをファイリングする

発行側で注意したいことはまず、発行した順番に納品書にナンバリングをして、写しをファイリングしたうえで保管することです。

何らかの理由によって、納品先で納品書紛失等してしまった場合、発行者側で納品書を保管していないと、発注内容と納品物とに相違がないかを確認する手段がなくなってしまいますが、控えが保管されていれば、このような事態が発生しても取引上のトラブルにつながる可能性は低いでしょう。

時系列にナンバリングしてファイリングしておけば、納品書が多くなっても、目的の納品書の写しを速やかに見つけられます。取引先ごとに管理番号を設定しておけば、さらに探しやすくなります。

年度別にまとめるのが効率的

例えば、取引先ごとにインデックスの仕切りを作ったり、タグをつけたりして保管しておけば、必要なときはすぐに探し出せます。保存期間を過ぎた時点で破棄できることもあり、年度別にまとめておくのが効率的です。

納品書の管理・整理方法|電子データの場合

冒頭でも述べた通り、改正電子帳簿保存法によって、納品書や請求書などの証憑書類の電子データ保存要件が緩和されました。紙で受け取った書類を紙のまま保存するのか、電子データとして保存するのかは、現時点では各事業者に委ねられています。

ここでは、紙の納品書を電子データとして管理・整理する方法を、それぞれの立場別に解説します。

  • 受け取り側
  • 発行する側

受け取り側

受け取り側が電子データとして管理・整理する際の注意点は、以下が挙げられます。

  • 納品書をPDFデータに変えて保管する
  • 年度別にフォルダを作成して整理する

納品書をPDFデータに変えて保管する

紙の納品書を電子データとして保管するには、スキャナでデータ化したうえで、PDF形式のファイルに変換する方法が一般的です。紙を電子データとして保存ための届け出は不要ですが、電子帳簿保存法に規定された条件を満たす必要があります。電子データ保存には、データの改ざんを防止するために「真実性の確保」と「可視性の確保」が求められます。

具体的には、

  • 200dpi以上の解像度でスキャンすること
  • タイムスタンプを付与すること
  • 検索機能を確保すること

などの要件が定められています。

年度別にフォルダを作成し、整理すると効率的

PDFに変換したら、必要なときにすぐに取り出せるよう、例えば「20240628_〇〇株式会社_納品書.pdf」のように、ファイル名に日付と取引先名とを入れ、さらに年度別にフォルダを作成して整理すると効率的です。そのほかにも月別や取引先別などで管理しておけば、わかりやすくなります。

ただし、電子データとして保存したからといって、100%の安全が確保されたと安心することはできません。不測の事態によりファイルが消失してしまったり、破損してしまったりする可能性もあります。万が一に備えてバックアップの体制も整備しておく必要があります。

発行する側

発行する側の注意点としては、

  • 発行した順にナンバリングし、データの控えを保管する
  • 年度ごとに分類する

といったことがあります。

発行した順にナンバリングし、データの控えを保管する

納品書を電子データとして発行する場合も、発行順にナンバリングしたうえで、データの控えを保管するようにします。紙の書類を保管する場合と同様に、取引先ごとに管理番号を割り当てたフォルダを作成して保管しておけば、後から見るときでもすぐにわかります。特に納品書を扱う担当者が複数名いるような場合は、共有する保管場所と保存する際のルールを作成し、厳守する必要があります。

年度ごとに分類すると効率的

電子データの納品書も年度ごとに分類しておくと効率的に管理できます。電子データは紙の書類のように物理的なスペースは取りませんが、データ容量は増えていくため、データを保管するためのストレージ容量は必要です。保存期限が来たデータを速やかに破棄できるという意味でも、年度ごとの分類をおすすめします。

納品書を管理・整理する際のポイント

納品書は、法人税法では7年、会社法では10年、個人事業主の場合は5年または7年の保管義務が定められており、長期間保存することになるため、紛失や破損がないように、また必要なときにすぐに取り出せるようにしておくことが重要です。改正電子帳簿保存法により電子データの管理・整理で注意する点も新たに増えました。
ここでは紙や電子データで納品書を管理・整理する際のポイントについて解説します。

  • 参照しやすいこと
  • A4サイズより小さい納品書は台紙に貼る
  • 電子データをプリントして紙保存するのはNG
  • 電子データ保管では削除やセキュリティに注意

参照しやすいことが大切

上述した通り、紙で発行された納品書は、そのままの状態で保管することも、電子データとして保管することも事業者の判断に委ねられています。

紙でそのまま保管する場合、5年から10年分となると、相当な分量になります。保管する際には、年度や月ごとにわけたボックスにファイリングしてまとめておけば、過去の納品書を探す負担が減らせ、税務調査があった場合でも慌てることなく書類を提示でき、さらに紛失防止にもなります。

管理・整理のポイントは「第三者でも参照しやすいようにする」ことです。最近は用途に応じて使いわけられる、さまざまな形状のファイルが販売されているので、ファイリング方法に合わせて、使いやすい形のファイルを選択してください。

A4サイズより小さい納品書は台紙に貼ると管理しやすい

納品書のサイズには特に規定が定められているわけではありませんが、一般的にはA4サイズが多く用いられています。

ただし、取引先によってはA4以外のサイズでやり取りすることもあり、そのままでは保管できないことがあります。納品書がA4サイズより小さい場合には、用紙の小ささから見つけにくく、大きなサイズの書類に比べれば、紛失リスクも高いと考えられます。A4サイズより小さな納品書を扱う場合には、A4サイズの紙を台紙として、これに貼り付けておくと管理がしやすくなります。

電子データをプリントして紙保存するのはNG

電子帳簿保存方法が改正されたことによって、2024年1月1日から電子データとして受け取った(発行された)納品書を含む帳簿書類を、プリントアウトして紙として保存することは認められなくなりました。

納品書などを電子データとして保存する際には、

  • (1) タイムスタンプが付与されていること
  • (2) 改ざん防止措置が取られていること
  • (3) 検索機能を備えていること
  • (4) ディスプレイなどに出力できること
  • (5) システム概要書が備え付けられていること

といった要件が規定されています。管理上のメリットも考えると、納品書などの書類は電子データで発行・受け取りすることをおすすめします。

電子データ保管では削除やセキュリティに注意

納品書を電子データで保管する場合には、誤操作などによるファイルの削除に注意する必要があります。紙の書類とは異なり、内容を確認しないままでも、マウスやキーボードで簡単に削除できてしまうためです。

さらにファイルを保管する場所には、十分なセキュリティ対策を施す必要があります。アクセス権限の管理などが甘く、外部からでも参照できるような場所に保管してしまうと、悪意を持つ第三者からのサイバー攻撃を受けてしまうかもしれません。

第三者の不正なアクセスを防ぐにはデータのアクセス権限を制限する必要があります。さらにデータのバックアップ体制を整えることも忘れてはいけません。自社でセキュリティ対策を行うのが難しければ、専門のサービス業者に依頼する方法もあります。

納品書の保存期間

上述した通り、納品書の保存期間は法人税法や所得税法などで規定されています。基本的には請求書の保存期間と同じです。ここでは、法人の場合と個人事業主の場合とにわけて、保存期間について解説します。

詳しくはこちらの記事もご覧ください。

法人の場合は7年

法人は、納品書や請求書だけでなく、見積書や契約書、領収書、注文書、送り状などの取引上の書類を7年間保存しなければならない、と法人税法に定められています。この期間は、納品書の発行期日から7年間ではなく、当該事業年度の確定申告書提出期限の翌日から起算して7年間です。

この保管期間を守らなかった場合には、直ちに罰則されないとはいえ、最悪の場合は青色申告者の承認が取り消さる可能性があります。さらに、この期間中に税務調査があった場合、納品書がなければ、申告内容の正当性を証明できません。その結果、修正申告を求められたり、追加課税がされたりすることがあります。

会社法では証憑書類の保管期間を10年と規定しています。法人の場合、「取引関係書類は、最低10年間保管する」と考えておけば、間違いありません。

個人事業主の場合は5年か7年

個人事業主の納品書の保管期間は消費税の納税義務があるのか否かで異なります。納税義務のない免税事業者の場合は5年、義務のある課税事業者の場合は7年です。保管期間の起算日は法人同様、当該事業年度の確定申告書提出期限の翌日です。

納品書を紛失したら発行元に再発行を依頼する

誤って納品書を破棄したり、紛失したりしてしまった場合でも、発行元に依頼すれば、再発行に応じてもらえることがあります。取引先から再発行を依頼された場合においても、今後の取引のことを考慮して、再発行に応じることをおすすめします。基本的な記載内容は元の納品書と同じにしますが、紛失したはずの納品書が出てきた場合のことも考えて、再発行した書類である旨、明記しておきましょう。

納品書の再発行については以下の関連記事もご覧ください。

まとめ:納品書の管理・整理は法令を遵守して行おう

2022年に施行された改正電子帳簿保存法により、納品書の電子データ保存の要件が緩和された一方で、電子データを紙にプリントして保存することは禁止されました。納品書は紙か電子データかによって管理・整理方法が異なり、受け取り側・発行側でそれぞれ注意すべきポイントがあります。法人、個人事業主ともに納品書にはある程度長期の保存期間が定められています。納品書の管理・整理は法令を遵守して行ってください。

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この記事の監修者竹村 由紀子(税理士)

民間企業での経理事務を経て、東京都で固定資産税、軽油引取税、徴収事務、用地買収などの部署で勤務し、2018年に税理士法人ベリーベスト新規タブで開くに入所。資産税事務をを担当した後、2年前からTax audit and service部門にて税務案件のリサーチ、申告書のレビュー等を行っている。行政機関で得た知識を活かした情報提供を心掛けている。

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