納品書の保管期間とは?保存年数や電子化について徹底解説

2023/03/10更新

この記事の監修辻・本郷 税理士法人/辻・本郷ITコンサルティング

仕入れをしたときや消耗品を購入したときなど、品物といっしょに「納品書」が送られてくることがあります。事業を営んでいる場合、「帳簿に関連する重要な資料(証憑)」として受け取った納品書を一定期間保管しなければいけません。

本記事では、個人事業主・法人が求められる納品書の保管期間や保管方法、さらに納品書のデータ化などについて解説します。

納品書とは商品の内容を示すための書類

納品書は、商品やサービスの提供をした際に、その内容を示すために作成される書類です。商品やサービスを提供した側が、注文をした側に対して発行します。

納品書をいつ、どのように発行するのかは事業者次第ですが、多くの場合、商品などと同梱する形で送付されます。これは、納品書を受け取った側が納品物の内容確認に利用するためです。

納品書は依頼主にとって便利な書類

納品書がどのような書類なのか、ある取引を例に見てみましょう。

商品Aを100個と商品Bを50個注文したとします。このとき、納入されたものを見て、すぐに何個あるかを把握するのは困難です。また、商品Aと商品Bが似通った形状をしている場合、本当に該当の商品か確認するのにも時間がかかってしまいます。

納品書が同封されていれば、納品書の品名と数量を確認することで、注文どおりの商品と個数が納品されているかどうかがすぐにわかります。もちろん、納品書の内容と実際の納品物が一致するかどうかも確認する必要がありますが、納品書を見ることで、取り急ぎ問題がなさそうかを確認できるのです。

納品書は法的に義務付けられていない

納品書の発行は、法的に義務付けられているものではありません。しかし、取引先(買手側)とのトラブルを避け、スムースなやりとりを行うためには、発行した方が良いでしょう。

なお、納品書には納品された商品の品目や金額が記載されていますが、これを領収書の代わりとして利用することはできません。納品書はあくまでも商品を納品した証拠で、代金を支払った証明ではないからです。ただし、納品書に「領収済み」「クレジット払い」など、すでに支払いが済んでいることが明記されている場合は、支払いの事実の証明に利用できます。

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一般的な納品書に記載されている項目

納品書には、納品物の名称や数量、金額などが記載されています。法律でフォーマットが決まっているわけではありませんから、発行元の企業がそれぞれ自社の定めた様式で納品書を作成しています。

とはいえ、どの納品書であっても、基本的な記載事項は変わりません。見積書や注文請書などを発行している企業は、同じデザインのテンプレートを使うこともあります。また、納品した商品の名称や金額は、見積書や注文書などと同一です。書類のタイトルを確認し、混同しないように注意してください。一般的な納品書に記載されている項目は、下記のとおりです。

注文者(または企業)の名称

注文者(または企業)の名称とは、納品書の宛先です。誰宛の書類なのかがわかるように、注文した個人名や企業名が記載されます。

納品書発行元の名称

納品書を誰が発行したのかも、重要な情報です。企業や個人の名称の他、連絡先として住所や電話番号、メールアドレスなどが併記されます。

発行年月日

納品書を発行した年月日です。郵送などで商品が送られてきた場合、受け取った日とは一致しない可能性がありますが、特に問題はありません。

商品(サービス)名ごとの数量や料金、税額など

納品される商品やサービスの名称、それぞれの納品数、単価、金額といった内訳に関する情報を記入します。「ボールペン」といった書き方ではどの種類の商品か特定できないため、品番を併記したり、固有の商品名を記載したりします。

なお、内訳には消費税額の記載も含まれるので、消費税率と納品した商品にかかる消費税額を記載してください。

合計金額

合計金額とは、それぞれの商品やサービスごとの金額と、消費税額の合計です。納品書は、請求書の役割を持つものではありませんが、納品した商品の対価がいくらなのかについては明記します。

納品書は保管が義務付けられている

発注先から受け取った納品書は、証憑(しょうひょう)書類に該当します。証憑書類とは、取引があった際に、その内容や事実を証明するために発行される書類です。

証憑書類は、法律で一定期間保管しなければならないと義務付けられています。保管期間は、事業者の状況によって異なります。個人事業主、法人、雑所得がある方、それぞれの保管期間は下記のとおりです。

個人事業主の納品書の保管期間は5年間もしくは7年間

個人事業主は、受け取った納品書を5年間保管する義務があります。(所得税法施行規則102条④)なお、5年というのは、受け取った日から数えて5年ではなく、確定申告期限の翌日から5年です。個人事業主の確定申告期限は、例年3月15日(税務署の休日にあたった場合は翌日または翌々日)ですから、そこからカウントしてください。

ただし、課税売上高が1,000万円を上回る個人事業主は消費税課税事業者となるため、仕入税額控除を受けるための納品書は7年間保管しなければいけません。(消費税法施行令第50条)

課税売上高が1,000万円を上回った個人事業主は、その翌々年に課税事業者になります。常に上回っているわけではない場合、課税事業者になる年とならない年が頻繁に切り替わることもあるので、仕入税額控除を受けるための納品書の保管期限を間違えないように気をつけてください。

なお、個人事業主であっても、事業とは関係のない個人的な買い物で受け取った納品書を保管する義務はなく、必要がなければ破棄しても問題ありません。

法人の納品書の保管期間は原則7年間

法人は、法人税法によって証憑書類の保存が義務付けられています。保管期間は、該当する事業年度の確定申告書の提出期限翌日から7年間です。確定申告書の提出期限は、事業年度終了の翌日から原則2か月以内ですから、納品書の保管は、事業年度終了の翌日から2か月と7年間ということになります。

なお、法人は納品書に限らず、見積書や契約書、注文書、送り状、領収書といった、取引に関連してやりとりした書類のすべてを上記の期間保存する必要があります。

例:
4月1日から3月31日までを事業年度としている企業が、2022年10月10日に受け取った納品書の保管期限

上記の企業の確定申告期限は、2022年5月31日です。よって、2029年5月31日まで納品書を保管します。

ただし、上記は通常の場合の保管期間です。「欠損金の繰越控除」を適用する場合は、通常10年間保管しなければいけません。これは、欠損金の繰越控除が10年前までさかのぼって可能なためです(2018年4月1日以降に開始した事業年度の場合)。

雑所得を得ている方の納品書の保管期間は5年間

雑所得がある方のうち、前々年の該当の業務によって得られた収入金額が300万円を超える方は、納品書を5年間保管しなければいけません。納品書以外の書類であっても、取引に関連する書類は5年間保管してください。

2022年1月以降、電子データの納品書は電子データでの保存が義務化

電子帳簿保存法の改正により、2022年1月1日から納品書を電子データとして受け取った場合は、電子データのまま保存することが義務づけられました。

2021年12月31日までは、受け取った納品書を紙に印刷して保存することができました。2023年12月31日までは、猶予期間(正確には宥恕)されていますが、2024年1月1日からは電子データでの保存が必須になります。

そもそも、納品書のような取引関係の書類は、かつては紙で発行・保管するのが当たり前でした。しかし、近年では電子データとして書類を発行・保管することも増えています。電子帳簿保存法は、このような状況に対応するために定められた法律です。

また、電子帳簿保存法には、紙で受け取った書類をスキャンして電子データとして保管する「スキャナ保存」についても規定されています。2022年1月からはスキャナ保存の要件が大幅に緩和され、より利用しやすくなりました。

電子データとして受け取った納品書と紙の納品書がそれぞれ保管されていると、管理が煩雑になるおそれがあります。電子帳簿保存法への対応の際は、スキャナ保存の利用を検討してください。スキャナ保存の対応は任意です。

納品書を保管する際のポイントとは?

法人税法や所得税法などで保管が義務付けられている納品書ですが、その保管には気をつけておきたいこともあります。紙の納品書、データ化した納品書、電子データの納品書、それぞれのポイントを解説します。

紙で保管するときのポイント

紙で受け取った納品書は、そのままファイリングして保管することができます。2024年1月1日以降も、紙に受け取った納品書は紙のまま保管することは違法ではありません。

これは、自社で作成した納品書の控えを保管する場合も、発注先から送られてきた紙の納品書を保管する場合も同様です。ただし、自社で作成した納品書をプリントアウトせず、電子データとして取引先に送付した場合は「電子取引」に該当するため、電子データのままでの保存が必要です。

紙の納品書をそのまま保管する方法は一見かんたんですが、必要なときにすぐに見つけられるよう、事業年度ごとにファイリングするといった工夫をし、紛失が起こらないように管理方法を検討してください。

また、5年間や7年間、10年間といった保管期間中に、水濡れや破れ、汚損などが発生することも懸念されるため、適切な保管方法を講じることが必要です。

電子データで保管するときのポイント

電子帳簿保存法が定められたことで、納品書を電子データとして保管することが可能になりました。また、以前は電子保存のための届出が必要でしたが、現在は届出をしなくても、任意で電子保存を始められるようになっています。

受領した納品書の電子保存には「電子取引」と「スキャナ保存」の2種類があります。これは、電子帳簿保存法によって定められている区分です。両者を混同しないように気をつけてください。

電子取引

電子取引とは、インターネットなどを介して電子的にやりとりする方法のこと。メールで納品書が送られてきた場合や、請求システムなどを介して納品書をダウンロードした場合などが該当します。自分が受け取った場合だけでなく、自分が電子的に発行した納品書も電子取引といえます。

スキャナ保存

スキャナ保存とは、紙で受け取った納品書をスキャンして電子データとして保存することです。紙の納品書もデータとして保存できるため、管理コストやスペースを大幅に削減することができます。スキャナ保存を利用するには、タイムスタンプの付与または訂正や削除の履歴が確認できるシステムの利用といった要件を満たす必要があるため、スキャナ保存に対応したシステムの利用が確実です。

電子取引は、電子データでの保存が必須ですが、スキャナ保存については、導入するかどうかは任意です。

納品書を電子化するメリットとデメリット

納品書の電子化には、メリットとデメリットの両方があります。

メリットとしては、紙の納品書の保管によって起こる問題の解消が挙げられます。電子データは劣化することがなく、データ管理をしっかりと行っておけば紛失リスクも減らせます。タイトルなどで検索することも容易になりますから、業務効率化にもつながるでしょう。

また、セキュリティのしっかりしたシステムを導入することで情報漏洩リスクを低減することができます。

一方で、これまでとは異なる業務フローを導入することへの抵抗感や、慣れるまでに時間がかかるといった問題もあります。使いやすいシステムの導入や、導入当初にまとまった時間を確保して、操作方法を確認しておくといった対処もおすすめです。

納品書のデータ保管には対応システムの導入がおすすめ

事業を行っていると、納品書をはじめとしたさまざまな書類を受け取ります。こうした書類の管理や保管には、多大な手間と時間がかかってしまいます。その分、本業にあてる時間が少なくなってしまうという点から見ても、事務作業の効率化は急務だといえるでしょう。管理コスト削減のために、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入と、電子保存への移行をおすすめします。

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この記事の監修辻・本郷税理士法人

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この記事の監修辻・本郷ITコンサルティング

国内最大級の税理士法人である辻・本郷 税理士法人のグループ会社として2014年に創業。実践した数多くのDX化ノウハウをグループ内外に展開。バックオフィスに課題を抱える組織のコンサルティングから導入までをワンストップで行う。電子帳簿保存法やインボイス制度対応等、最新のコンサルティング事例にも精通。「無数の選択肢から、より良い決断に導く」をミッションとし、情報が多すぎる現代において、お客様にとっての「より良い」を見つけるパートナーを目指す。

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