請求書の本書とは?保管方法や電子化するメリットをご紹介
監修者: 中川 美佐子(税理士)
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ビジネスや手続きで使用される文書には、原本、謄本、抄本、正本、副本など、さまざまな種類がありますが、「本書」とは何でしょうか。本記事では、請求書の「本書」がどのような文書であるのかとともに、本書を電子保存するメリットや、電子化する際の注意点・ポイントについても解説します。
請求書の本書とは
請求書の「本書」とは、どのような文書を指すのか、その意味や重要性について解説します。
本書は「主となる文書」
請求書の「本書」とは請求書そのもので、請求書の内容や形式に関する正式な文書のことを指します。
本書の重要性
請求書の本書は、請求の対象となる商品やサービスの詳細、金額、支払期限、発行者の情報などが記載されています。通常、請求書は取引先に送付され、支払いを求めるために使われます。
請求書は法律行為が行われた事実を証明するためにも必要です。例えば、契約書とともに請求書を保管することで、取引の全体像を明確にし、双方の合意内容を確認できます。誤解や不正行為を防止でき、信頼性の高いビジネス関係を築くことが可能です。
請求書の本書は、一定期間保存する義務があります。法人税法や所得税法では、法人には7年間、個人事業主には5年間の保存を義務付けています。この保存期間中に請求書を勝手に破棄することはできません。保存期間が過ぎた後も、税務調査や監査の際に必要となる場合があるため、適切に保管することが求められます。
電子帳簿保存法では、紙の請求書をスキャナで読み取り、電子データとして保存することも認めていますが、一定の要件を満たす必要があります。
出典:国税庁「はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存(電子帳簿等保存)【令和6年1月以降用】(令和5年7月)」
請求書の本書を保管する方法
ここでは、請求書の本書を保管する方法について、請求書の本書を紙で受け取った場合と電子データで受け取った場合に分けて解説します。
請求書の本書を紙で受け取った際の保管方法
請求書の本書を紙で受け取った場合には、以下2つの方法があります。
- 紙のまま保管する
- 紙で受け取った請求書を電子データで保管する
また、電子化した請求書の本書は破棄が可能です。ここでは、これらについて詳しく解説します。
紙のまま保管する方法
郵送や手渡しで受け取った請求書は、原則として原本を保存・保管しなければなりません。コピーや写しではなく、受け取ったそのままの状態で保管することが求められます。保管の手順としては、以下で行います。
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(1)会計処理
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(2)ファイリングとタグ付け
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(3)書庫での保管
まず、受け取った請求書は会計処理を行います。請求書の内容を確認し、必要に応じて会計システムへの入力を行います。
次に、後で必要になった際、迅速に見つけられるよう、取引先別にファイリングやタグ付けを行います。ファイルには、発行日や取引先の名前などを記載しておくと便利です。ファイリングやタグ付けが完了したら、書庫で分類して保管します。年度や取引先ごとに整理しておくと、必要なときにすぐに取り出せます。
紙の書類を保存する方法について詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
紙で受け取った請求書を電子データで保管する方法
紙で受け取った請求書は、電子データとして保管することも可能です。物理的な保管スペースを節約し、検索や管理が容易になります。ただし、電子データで保存する場合、電子帳簿保存法に基づくスキャナ保存の要件を満たす必要があります。具体的な手順は以下の通りです。
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(1)スキャナで読み込むか、スマートフォンで撮影する:受け取った紙の請求書の画像データを作成する
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(2)画像データを社内システムにアップロードする
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(3)2か月以内にタイムスタンプを付与する:データの改ざん防止と信頼性確保のため、画像データにタイムスタンプを付与する
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(4)規定期間、スキャナ保存に対応し、電子帳簿保存法の要件を満たしたJIIMA認証のシステム上で保管する:電子帳簿保存法で定められた期間、システム上で画像データを保管する
請求書の電子化について詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
電子化した請求書の本書は破棄が可能
上述した通り、電子帳簿保存法の要件を満たしたうえで、紙の請求書を電子データで保管する場合には、紙の原本は破棄することが可能です。第三者に判読されないよう、必ずシュレッダーにかけてから破棄するか、機密文書処理専用のサービスを利用して溶解処理を行うようにします。
請求書の本書を電子データで受け取った際の保管方法
2005年に施行された「e-文書法(「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」および「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)」により、請求書は紙以外の電磁的記録で保存することが認められています。
PDFファイルで受け取った請求書は、そのまま電子データとしてPDFファイルを保管できます。ただし、以下に挙げる電子帳簿保存法の要件を満たさなければなりません。
- 真実性の確保:データの改ざん防止措置が取られている
- 可視性の確保:必要なときにすぐに閲覧できる状態にある
PDFファイルで受け取った請求書を紙に出力して保管することは、2022年1月施行の改正電子帳簿保存法によって認められなくなりました。
出典:e-Gov 法令検索「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」
出典:国税庁「Ⅱ 適用要件【基本的事項】問9」
出典:国税庁「1ページ 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和6年1⽉以降⽤】(令和5年7月)」
請求書の本書を電子保存するメリット
請求書の本書を電子保存するメリットとしては、以下が挙げられます。
- 事務作業の負担が減る
- 即日受領が可能
- 情報の共有がしやすくなる
事務作業の負担が減る
紙の請求書を保管する場合、ファイルや封筒を用意して月別・費目別に分類したり、ノートに貼って管理したりする必要があるため、特に大量の請求書を扱う企業では大きな負担となります。しかし、請求書を電子化すれば、この手間を省けるほか、物理的なファイルやキャビネットが不要になり、スペースの節約にもつながります。
電子化することによって、ファイル名や請求日などのキーワードで簡単に検索できるようになり、過去のデータを参照する際にかかる時間を大幅に短縮できます。紙の請求書の場合、必要な書類を探すために大量のファイルを手作業で確認する必要がありますが、電子データなら短時間で目的の情報にアクセスすることが可能です。
即日受領が可能
紙の請求書では、発行から受け取りまでに時間がかかります。これに対して、電子化された請求書は、発行されたその日にデータとして受領することが可能です。同時に郵送の遅延や紛失のリスクを回避し、迅速に請求書を受け取れるようになります。
請求書を即日受領できることで、支払いや帳票処理に余裕が生まれ、遅延のリスクを回避できます。帳票処理のスケジュールも柔軟に調整できるため、業務の効率化を図れます。
会計システムを導入している場合、電子化された請求書であれば、受領後すぐにシステムに取り込めるため、手作業での入力作業は不要です。
情報の共有がしやすくなる
紙の請求書の場合、複数人が確認するためには順番に回覧する必要があり、全員が閲覧するまでに時間がかかりますが、電子化されていれば、複数人が同時にデータを閲覧できるようになります。チーム全員がリアルタイムで情報を確認し、迅速に対応することが可能です。紙の書類は紛失するリスクもあり、重要な情報が失われる懸念があります。
電子データとして保存された請求書を、共有ファイルとして格納すれば、いつでも自由にアクセスできます。これにより、必要なときにすぐに情報を確認でき、一斉に回覧することも容易です。
請求書の本書を電子化する際の注意点やポイント
請求書の本書を電子化する際は、保存方法に関して周知し、トラブルを想定した対応方法を検討することが必要です。また、電子化された文書にパスワードを付すなどセキュリティ面にも配慮しましょう。
保存方法に関する周知が必要
電子帳簿保存法に基づく保存方法を従業員に周知することが不可欠です。電子データの保存には、紙の請求書とは異なる要件が求められます。電子帳簿保存法の保存要件を理解し、実践するための教育が必要です。従業員に対してどのように周知するかは、検討すべき点を洗い出し、効果的なプログラムを組む必要がります。例えば、マニュアルの作成や、eラーニングの導入などが考えられます。
トラブルを想定した対応方法を検討する
請求書の電子化においては、初期段階でトラブルや問い合わせが発生することが予想されます。これらに対処するための準備が不十分だと、業務の停滞や混乱を招く可能性があります。そのため、事前にトラブルを想定し、対応方法を確立しておくことが重要です。具体的には、以下のようなことを検討・実施する必要があります。
- セキュリティ面への配慮
- サポート体制の整備
- FAQの作成
- 電子データの定期的なバックアップ
- リスク対応計画の策定
- 定期的なトラブル対応訓練
請求書の保管は紙・電子データでの保管が可能!
請求書の本書は、取引の証拠となる重要な文書であり、原本として法的効力を持ちます。紙で受け取った場合は原本の保存が必要ですが、電子データで保存することも可能です。2022年1月施行の改正電子帳簿保存法以降、PDFファイルで受領した請求書を紙に印刷して保存することは認められなくなりました。
請求書の電子保存にはさまざまなメリットがあるので、検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事の監修者中川 美佐子(税理士)
税務署の法人税の税務調査・申告内容の監査に29年勤務後、令和3年「
たまらん坂税理士法人」の社員税理士(役員)に就任。法人の暗号資産取引を含め、法人業務を総括している。