入金管理とは?エクセルやシステムによる管理方法、請求業務の効率化を解説
監修者: 高崎文秀(税理士)
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商品やサービスを提供した後、請求した代金が期日どおりに入金されているかを確認する入金管理業務は、事業の資金繰りや経営の安定に直結します。しかし、これを手作業で行う場合、取引先の増加や取引内容の複雑化につれて管理が難しくなるという課題もあります。
本記事では、入金管理の基本的な業務内容から、エクセルによる管理方法、入金管理システムやアプリケーションの活用まで詳しく解説します。注意点や課題、効率化のポイントも紹介しますので、業務改善の参考にしてください。
入金管理とは?
入金管理とは、提供した商品やサービスの代金が正確に支払われているかを確認し、記録や未入金の確認・回収を行う経理業務を指します。取引の流れを管理することで、取引先との信頼関係を維持し、資金繰りを安定させる役割を果たします。正確な入金管理は、信用力向上や健全な財務運営に不可欠です。
経理業務においては、取引先ごとの請求書を発行し、入金内容の確認、売掛金の消込、未入金時の催促までを行う必要があります。入金確認後は、取引内容に応じた帳簿上の仕訳処理を正確に行います。
このような業務を確実に遂行することで、未入金リスクを低減し、健全な資金管理体制を維持できます。企業規模の大小にかかわらず、正確かつ効率的な入金管理は経営の安定に直結するため、常に見直しや改善を意識することが重要です。
入金管理の主な業務内容
入金管理業務は、買手側からの入金予定の確認から入金消込まで、複数のステップで構成されています。入金予定日になったらすぐに作業を行えるよう、事前の準備と正確な記録が重要です。
以下では、入金管理の主要な業務プロセスについて、それぞれの役割を詳しく解説します。
買手側からの入金予定を確認する
入金管理では、取引先からの入金予定を正確に把握するため、入金管理台帳を活用します。
この台帳は「入金予定表」や「回収予定表」とも呼ばれ、取引先ごとの案件番号・取引先名・案件名・担当者名・見積もり日・受注日・請求日・請求額・入金予定日・入金日などが記載されます。案件番号は、見積もり作成時に振っておくと統一的に管理ができ、業務上のミスを防ぐために有効です。
取引先や取引金額、商材など管理項目も多岐にわたるため、これらの情報を適切に管理する必要があります。入金予定を確認することは、入金予定日を迎えた際にすばやく作業を行うためだけでなく、キャッシュフローを把握するうえでも重要な役割を果たします。
実際の入金を売掛金と照合する
入金予定日を過ぎたら、取引先からの入金を売掛金と照合し、取引が正確に行われたかを確認します。
入金確認は、請求書の金額や案件情報と、実際に入金された金額・入金日を照合する作業です。入金額に過不足があったり、入金先情報に不一致があったりした場合は、請求書の内容を確認したうえで取引先に連絡を取る必要があります。
このような入金確認作業を定期的かつ徹底的に行うことで、信頼性向上や資金繰りの安定に寄与し、取引先との良好な関係を築くことが可能となります。
未入金があれば対応をする
期限を過ぎても入金が確認できない「未入金」が発生した場合は、まず、発行側である自分に請求ミスがないかどうかチェックしましょう。送付した請求書の宛先は正しいか、買手側の締め日までに請求書が到着しているか、誤った振込先情報を伝えて忘れていないかなど、さまざまな原因が考えられます。
発行側のミスで請求書が未着となっている場合は、取引先に謝罪の連絡を入れたうえで改めて請求書を送付します。
発行側にミスがない場合、取引先に連絡をして請求書が届いているか確認しましょう。請求書が届いているうえで未入金となっていることが分かったら、ていねいに入金の催促を行います。取引先との信頼関係を損なわないよう配慮することが重要です。
未入金時の具体的な連絡方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
入金消込を行う
入金が確認できたら、帳簿上で売掛金を消し、現金や預金として計上する仕訳を行います。この入金消込の作業では、入金額が分割されていたり、複数の取引分が合算されていたりするケースがあるため、照合には慎重さが求められます。
入金消込を行う際は、取引ごとの請求金額と入金額の突合や取引先名の照合をていねいに進めることが重要です。消込漏れや誤処理を防ぐため、入金データを正確に管理し、仕訳処理を確実に行う必要があります。
このような地道な確認作業を通じて、経理業務の精度を高め、資金管理の安定化を図れます。
入金管理の方法
入金管理を効率的に行うには、業務フロー全体を見直し、適切な管理手法を取り入れることが重要です。取引先ごとの入金予定や実績を正確に把握することは、経理業務の基本となります。ここでは、入金管理の具体的な方法について順をおって解説します。
エクセルを使う
入金管理を行う際には、エクセルを活用する方法があります。エクセルを使用することで、売掛金の入金状況をひとめで把握できる管理表の作成が可能です。関数を使えば、未回収の売掛金を自動的に計算したり、データを入力したりするだけで一覧表が完成します。
また、会計ソフトから入金データを取り込み、集計や分析を行うことも可能です。インターネット上にはさまざまなテンプレートが提供されており、自社に合ったフォーマットを手軽にダウンロードできます。エクセルは、手間をかけずに管理を行いたい場合の有力な選択肢です。
エクセルによる入金管理のメリット
エクセルを使った入金管理は、追加コストが不要な点が大きな魅力です。既に導入済みの場合はアプリケーションの購入費用を気にせず始められるため、ハードルが低くなります。
加えて、関数やマクロ機能を活用することで、作業効率を高め、入金台帳の自動化やフォーマットの作成が可能です。このように、エクセルは拡張性に優れ、業務に応じたカスタマイズをしやすい点もメリットの1つです。企業規模に応じて柔軟な形で使用できるため、特に小規模事業者や個人事業主には手軽で便利な選択肢といえます。
エクセルによる入金管理のデメリット
エクセルを利用した入金管理では、データの入力や更新、集計を手作業で行う必要があり、件数が多い場合は作業時間も膨大になりがちです。また、誤入力や関数の設定ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすく、確認や修正に時間を要することがあります。
加えて、エクセルファイルはコンピューターの不具合によるデータの破損や消失のリスクもあるため、定期的なバックアップを取らなければ、重要な入金データを失う恐れもあります。
このように、エクセル管理はコスト面や柔軟性に優れる一方で、手作業の負担やデータ消失リスクに注意が必要です。さらに、データ量が増えると動作が重くなることもあるため、使いやすい状態を維持する工夫が求められます。
入金管理システムやアプリを使う
入金管理を効率的に行う方法として、専用のシステムやアプリケーションを活用する手段もあります。これらのツールは、入金消込作業を自動化できる機能を備えており、煩雑な業務を簡素化できます。特にクラウドサービスを利用することで、取引先からの入金情報をリアルタイムで照合でき、作業の正確性や迅速性が向上します。
システム導入には初期費用や運用コストが発生しますが、長期的には経理業務の負担軽減やヒューマンエラーの防止につながるメリットが期待できます。導入前に、自社の業務フローやシステムとの親和性を確認することが重要です。
入金管理システムやアプリによる入金管理のメリット
入金管理システムやアプリケーションを利用することで、作業時間を大幅に短縮できるメリットがあります。エクセルに比べてミスが発生しにくく、業務効率を向上させやすい点も特長です。
クラウドサービスを活用すれば、データ消失のリスクを抑えられるうえ、取引先ごとの未入金状況をリアルタイムで把握できるため、管理の手間が軽減されます。また、自動消込機能を利用することで、手入力の負担を減らし、業務の正確性と効率を高められます。
導入後は担当者の作業負担が大幅に減り、他の業務に集中できる時間を確保しやすい点も魅力です。
入金管理システムやアプリによる入金管理のデメリット
入金管理システムやアプリケーションを導入する際は、初期費用や月額料金が発生する点がデメリットとして挙げられます。もっとも、システム活用により経理業務の効率化を実現すれば、導入・運用にかかる費用を上回る効果を得られることも少なくありません。
しかし、不要な機能が多いシステムを選んでしまうと、コストに見合った効果が得られない可能性が生じるため、事前に自社の業務に必要な機能を把握し、最適なシステムを選定することが重要です。継続的なメンテナンスやアップデート対応も必要になるため、システム選定時には長期的な視点も忘れずに検討しましょう。
入金管理業務におけるポイント
入金管理業務は、資金繰りを安定させるために重要な役割を果たします。この業務を的確かつ効率的に実施することは、経営の安定化に直結します。
以下では、入金管理業務における流れや具体的な手法、気を付けるべきポイントについて解説します。
振込手数料について事前に確認しておく
振込手数料は原則的に支払い側が負担するものですが、どちらが負担するかを明確にしておかないと、後々トラブルにつながる恐れがあります。あらかじめ振込手数料について取り決め、請求書の備考欄に記載しておきましょう。
振込手数料を支払い側が負担する場合、入金額に差異が生じるため、事前に確認しておかないと金額が合わなくなる可能性があります。特にインボイス制度では、請求元が振込手数料を負担する場合、双方の処理が大変になるので注意が必要です。
なお、振込手数料の処理についての詳細は、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
入金額に誤りがあった場合の対処法を把握しておく
入金額に過不足があった場合は、まず買手側に連絡を取り、入金不足であれば不足分を再入金してもらい、入金過多であれば返金や次回請求分との相殺を提案する必要があります。相殺による処理は振込手数料や手間を削減できるため、効率的な対処法といえますが、翌月の処理を忘れないよう注意が必要です。
加えて、入金誤差の原因を明確にし、再発防止策を取ることも大切です。例えば、請求書の内容や振込名義の確認を徹底することで、同様のトラブルを未然に防止できます。適切な対応を心がけることで、取引先との信頼関係の維持にもつながります。
入金管理業務の課題
入金管理業務は手作業や不明確なルールによってミスが発生するリスクを含んでいます。こうした課題を放置すると、誤った入金処理や未入金の放置など、取引相手や企業との信頼関係に悪影響を及ぼす恐れがあります。最後に、入金管理業務で直面しやすい具体的な課題について解説します。
入金消込に手間がかかる
入金消込は、取引先からの入金を正確に処理し、帳簿と照合する作業であり、経営に欠かせない業務です。しかし、これを手作業で行う場合、入金データと請求データを1件ずつ照合する必要があり、非常に手間がかかります。
また、取引先の数が増えると消込作業の件数も増加し、業務負担が膨大になります。複数の請求や入金がある場合、確認作業が煩雑になるため、入金消込作業の効率化は重要な課題です。
自動消込が難しい
自動消込を導入している企業は多く見られますが、完全な自動化は難しいのが実情です。手作業の負担軽減が可能とはいえ、入金の過不足や相殺、複数の請求を合算または分割して入金するケースでは、自動消込が適用できないことがあります。そのため、取引ごとに確認作業を行わなければならず、結果として工数が増えることもあります。自動消込を導入する際、例外的なケースに対応可能な体制を整えることが求められます。
未入金の回収に時間がかかることもある
未入金は、入金管理業務における大きな課題です。取引先が単に支払いを忘れている場合もあれば、支払いが困難な状況の場合もあり、特に後者は回収までに時間がかかることがあります。こうした状況は、資金繰りに悪影響を与える可能性があるため、未入金への対策が必要です。
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入金管理の課題解決にはシステムの活用がおすすめ
入金管理の課題を解決するためには、システムの導入が有効です。システムを活用することで、手作業によるミスを防ぎ、業務効率を向上させられます。未入金への迅速な対応や正確な入金確認により、キャッシュフローの安定化も期待できます。
弥生の「Misoca」を活用すれば、請求書の作成から入金管理まで効率的に行えるようになり、業務負担を大幅に軽減可能です。業務改善や経理体制の見直しを考えている方は、よりスムーズで正確な入金管理のために、ぜひ導入を検討してみてください。
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この記事の監修者高崎文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。
