按分とは?確定申告での家事按分の割合の決め方や仕訳方法
監修者: 齋藤一生(税理士)
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個人事業主は自宅の一部を仕事場にする場合も多く、「家賃や電気代は、どこまで経費になるのだろう?」と迷うことも多いでしょう。支出した費用を、プライベートでの利用分と事業での利用分に振り分けることを「家事按分」といいます。本記事では、「按分」の意味や、按分する際の割合の決め方、迷いがちな勘定科目や仕訳例を解説します。
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按分(あんぶん)とは割合に応じて分けること
按分(あんぶん)とは、全体を特定の基準で分け合う際に用いられる考え方で、「割合に応じて分けること」を意味します。
この考え方を学校の部費を例に見てみましょう。部費の予算総額が100万円、全部員が100人だったと仮定します。部員数に応じて予算を按分する場合、部員が30人のサッカー部には30万円、部員が20人の野球部には20万円、その他の部には50万円がそれぞれ配分されます。このように、基準の比率に基づき、全体を配分するのが按分です。
按分と似た言葉に「等分」や「折半」がありますが、等分は文字どおり「等しく分けること」、折半は「半分に分けること」を意味し、どちらも分ける割合は常に均等です。一方、按分は必ずしも均等に分けるわけではありません。40%と60%、20%と80%、といったように割合を変動させて配分する点が違いまず。
家事按分できる経費
フリーランスをしている個人事業主などの場合、事業と生活の両方で使用する支出が発生します。これを「家事関連費(かじかんれんひ)」といいます。個人事業主が家事按分を行うのは、1つの支出の中に事業での使用分とプライベートでの使用分が混在するときです。例えば、以下のようなケースです。
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- 自宅の一室を仕事部屋や事務所として使っている
- 自家用車を事業用としても使っている
- 1台のスマートフォンをプライベートでも仕事でも使用する
- 1階が店舗で2階を自宅として居住している
確定申告における家事按分(かじあんぶん)とは、個人事業主が自宅兼事務所の家賃や、プライベートと共用するスマートフォンの通信費など、事業と生活の両方にかかわる支出を、プライベートでの利用分と事業での利用分に振り分けることをいいます。
確定申告で家事按分ができる代表的な支出として、以下のようなものが挙げられます。
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- 地代家賃(自宅の家賃や住宅ローンの金利、固定資産税など)
- 水道光熱費(電気代、ガス代など)
- 通信費(インターネット回線料、スマートフォンの利用料金など)
- 車両費(ガソリン代、駐車場代、有料道路の通行料、車検費用など)
どのような費用でも無条件に按分できるわけではなく、経費として認められるためには、ルールにしたがって行う必要があります。とはいえ、按分の基準は「絶対にこの比率でなくてはいけない」ということや「これが正解」と言い切れるものがあるわけではありません。税務署に説明を求められた際に、合理的な説明ができることが重要になります。
家事按分できない費用
家事按分は、あくまで事業とプライベートの両方で利用する支出を、合理的な基準で分けるものです。所得税法では、経費として認められるのは「所得を得るために直接必要であった費用の額」と定められています。
そのため、事業との直接的な関連性がなく、プライベートな支出と見なされる場合は、家事按分の対象にはならず、経費として計上することはできません。例えば、以下のような費用です。
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- スポーツジムの会費
- メガネやコンタクトの購入費
- 住宅ローンや家族の生活費(自宅兼事業所の場合には、利息については家事按分して経費計上可能)
- 仕事に使用する車の違反金
- 事業主本人や家族従業員の健康診断費用(雇っている従業員の健康診断費用であれば「福利厚生費」として計上可能)
- 所得税などの税金や、生命保険などの保険料(一部例外あり)
これらのプライベートな費用を経費に含めると、税務調査の際に指摘を受け、過去にさかのぼって追徴課税などのペナルティが課される可能性があります。事業の経費とプライベートの費用は明確に区別しましょう。
家事按分で経費計上する際の要件
青色申告の場合、業務上必要であったことが客観的に示されていれば、家事関連費を経費として計上できます。10%や20%であったとしても、その割合が区分できるかどうかで判定するため、その比率は関係ありません。
一方、白色申告の場合、支出全体のうち50%を超える部分が業務遂行のために必要であった場合、経費として計上できます。しかし、国税庁の通達では、「事業遂行上、直接必要であった部分を明確に区分できるのであれば、その部分に相当する金額を経費にしてよい」と示されています。そのため、青色申告か白色申告を問わず、本質的な要件に違いはありません。使用割合が50%を超えるかどうかにかかわらず、客観的な根拠に基づいて事業に必要な部分を明確に証明できることが重要です。
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参照:国税庁「〔家事関連費(第1号関係)〕
」
家事按分の割合の決め方とポイント
家事按分の割合(按分比率)には、「この経費は何%まで」といった明確なルールはありません。最も重要なのは、税務署に質問された際に、だれが聞いても納得できる客観的かつ合理的な基準で計算していることです。
そのため、経費の性質に合わせて、使用した面積や時間、日数といった数値を基準に、実態に即した割合を算出する必要があります。
また、仕事の状況が変わり、事業での使用実態が変化した場合は、その都度割合を見直すようにします。例えば、取引先に常駐して働いていた月と、主に在宅ワークをしていた月がある場合は、家事按分の割合が月ごとに変わることもあり得ます。
以下では、主な支出ごとにどのような基準で按分比率を決めればよいのか、具体的な計算例と仕訳例を取り上げます。
地代家賃
自宅兼事務所の家賃は、使用面積に応じて按分するのが、客観的で合理的な方法です。事業用スペースの面積が家全体の面積に対してどのくらいの割合を占めるかを計算し、その割合に相当する家賃を経費とします。
例えば、家全体の面積が50平方メートルで仕事場の面積が10平方メートル、月の家賃が10万円だとします。この場合、事業用の経費として計上できるのは、「10平方メートル÷ 50平方メートル=0.2」で家賃の20%にあたる2万円です。
なお、持ち家の場合は家賃が発生しませんが、建物の減価償却費や住宅ローンの金利、固定資産税、火災保険料などは按分して経費に計上できます。
家賃を経費として計上する場合の勘定科目は「地代家賃」です。上記の例で、家賃10万円を事業用の口座から支払い、事業分2万円を経費計上する月の仕訳は以下のようになります。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 20,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 家賃(事業用面積:20%) |
| 事業主貸 | 80,000円 |
事業主貸とは、個人事業主が事業とプライベートの金銭のやり取りを記録するために用いる勘定科目です。事業用口座からプライベートな支出に対して支払った際や生活費を引き出した場合に使用します。
個人事業主が家賃を経費にする場合の計算方法については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
水道光熱費
電気代・ガス代・水道代をまとめた水道光熱費も、家事按分が可能です。電気・ガス・水道で事業との関連性が異なるため、それぞれ分けて考える必要があります。
特に電気代は、事業での使用を証明しやすいため按分に適しています。基準としては、1日の活動時間における仕事時間の割合で計算する「時間按分」や、家賃のように事業用スペースの面積割合で計算する「面積按分」が合理的です。
例えば、1日の活動時間16時間のうち4時間、毎日仕事をしているなら、使用時間を基に「4時間÷16時間=0.25」、つまり25%が事業割合となります。電気代8,000円だった月であれば、2,000円を経費として計上できます。
一方で、ガス代や水道代は、飲食業や飲食関連事業(料理教室運営・フードコーディネーターなど)や理美容業などを除き、一般的なデスクワークでは事業に必須とは言い切れず、経費計上が難しいのが実情です。
ただし、自宅の1階で店舗経営や教室運営をしており1階のトイレがお客さま専用の場合、それにかかる水道代などを明確に示すことができれば、家事按分で計上可能かもしれません。家事按分できるかの判断については、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
これらの経費を計上する場合、勘定科目は「水道光熱費」を用います。例えば、上記の例で、ガス代と水道代は経費を計上せず、電気代8,000円を事業用口座から支払い、事業分2,000円を経費計上する月の仕訳は以下のようになります。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 水道光熱費 | 2,000円 | 普通預金 | 8,000円 | 電気代(事業用途25%) |
| 事業主貸 | 6,000円 |
個人事業主が水道光熱費を経費にする場合の計上方法については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
通信費
自宅のインターネット回線や、事業とプライベートで共用するスマートフォン料金も家事按分が可能です。按分の基準には使用時間や使用日数を用いるのが合理的です。
例えば、使用日数で算出する場合、スマートフォンを週5日は主に事業で、2日はプライベートで利用しているとすると、「5日÷7日=0.714…」で71%を事業割合とできます。
また、自宅のインターネット回線であれば、総利用時間のうち、仕事で利用した時間の割合で計算するのが一般的です。例えば、1週間の利用時間が合計50時間で、そのうち30時間が仕事であれば、事業割合は60%となります。
これらの経費を計上する際の勘定科目は「通信費」です。例えば、月々のインターネット回線料金5,000円のうち、事業割合が60%(3,000円)だったとします。この金額を事業用の口座から支払った場合の仕訳は以下のとおりです。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 通信費 | 3,000円 | 普通預金 | 5,000円 | インターネット回線料金(事業用途:60%) |
| 事業主貸 | 2,000円 |
個人事業主の携帯電話・スマートフォンの本体代・通信費などの経費の計上方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
ソフトウェア代
仕事で使うコンピューターのソフトウェアやクラウドサービスなどの月額・年額契約(サブスクリプション)を、プライベートと兼用している場合は家事按分が可能です。
按分割合は、そのサービスの実態に応じて設定します。例えば、パソコンのアンチウイルスソフトがインターネットの利用と連動するサービスは、前項で算出したインターネット回線の事業割合と同じ比率で按分するのが合理的です。
一方、Web会議システムやオンラインストレージなどを主に事業用に使用しているものの、たまにプライベートでも活用しているサービスもあるかもしれません。その場合は、使用時間や使用量に応じて按分するとよいでしょう。例えば、週に10時間使用するクラウドサービスで、事業には8時間、プライベートでは2時間使用しているなら、事業割合は80%です。
勘定科目は、このようなクラウドサービスの場合、一般的に「通信費」で処理します。また、ソフトウェアの利用料については、事業の遂行上必要な手数料の勘定科目である「支払手数料」を使用することも可能です。
例えば、使用しているクラウドサービスの定額料金が月額1,000円で、事業割合が80%(800円)だったとします。この金額を事業用の口座から支払った場合の仕訳は以下のとおりです。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 通信費 | 800円 | 普通預金 | 1,000円 | クラウドサービス利用料(事業用途:80%) |
| 事業主貸 | 200円 |
車両費
事業とプライベートで共用している自家用車の関連費用は、走行距離の比率で按分するのが一般的です。日々の走行記録から、月間の総走行距離と事業での走行距離を把握し、事業割合を算出します。
例えば、月の総走行距離が500kmで、そのうち事業での走行が200kmだった場合、事業割合は「200km÷500km=40%」となります。
ガソリン代の勘定科目は「車両費」などを用います。月のガソリン代10,000円をプライベートの財布から現金で支払い、4,000円を経費計上する場合の仕訳は以下のとおりです。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 車両費 | 4,000円 | 事業主借 | 4,000円 | ガソリン代10,000円(事業用途:40%) |
個人事業主がガソリン代を経費にする場合の経費の計上方法については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
家事按分を行う際の注意点
家事按分は、個人事業主にとって重要な経費計上の手段ですが、生活費と事業費の境界があいまいになりがちなため、税務調査で最もチェックされやすい項目の1つです。
あいまいな基準で経費を計上すると、後から否認されるリスクもあります。ここでは、そうした事態を避け、適切に家事按分を行うために、特に注意すべきポイントを解説します。
領収書や按分比率算出のデータを残しておく
税務調査では、たとえ適正な申告をしていても、その計算根拠を尋ねられる可能性があります。家事按分を行った経費について、その計上が妥当であると証明するためには、客観的な証拠が必要です。そのためには、支出の事実を証明する領収書や請求書に加えて、按分比率の計算根拠を示した資料をセットで保管しておきましょう。
按分比率の計算根拠として、事業用スペースと全体の面積がわかる自宅の間取り図や、業務時間を記録したスケジュール帳、自動車の走行距離や行き先などの記録を提出できるようにしておきます。それらの証拠を整理・保管しておくことで、なぜその割合で按分したのかを論理的に説明できます。
家事按分を楽にしてくれる確定申告ソフトで作業効率化
個人事業主やフリーランスにとって、確定申告の際の家事按分は、事業のために使った分を経費として計上するための大事な作業です。家事按分を適切に行うには、客観的な根拠に基づいて割合を算出し、その証拠となる資料を保管する必要があります。項目ごとに最適な基準を考え、計算するのは手間がかかりますが、確定申告ソフトを使えば割合を指定するだけで自動計算してくれます。
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よくあるご質問
按分額の意味をわかりやすく教えてもらえますか?
按分(あんぶん)とは、全体を特定の基準で分け合う際に用いられる考え方で、「割合に応じて分けること」を意味します。個人事業主の確定申告の場合、事業と生活の両方で使用する支出が発生します。事業で使用している費用は割合を按分して、経費に計上できます。
詳しくはこちらをご確認ください。
青色申告と白色申告で家事按分に違いはありますか?
実質的な違いはありません。客観的な根拠に基づいて事業に必要な部分を明確に証明できることが重要です。
詳しくはこちらをご確認ください。
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