軽減税率で確定申告はどう変わる?個人事業主への影響

2023/02/21更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

2019年10月1日に消費税が10%に引き上げられ、同時に軽減税率制度がスタートしました。
軽減税率の導入は個人事業主の確定申告にどんな影響があるのか、気になっている人もいるのではないでしょうか。
個人事業主としてチェックしておきたい、軽減税率が確定申告に与える影響について解説します。

消費税の軽減税率制度とは?

まずは「軽減税率」について、内容を確認しておきましょう。
軽減税率とは、消費税の引き上げによる消費者の負担をやわらげることを目的に導入された制度です。消費税が10%となる中で、「酒類・外食を除く食料品」と「週2回以上発行される定期購読新聞」を対象に税率を8%に軽減します。これにより市場の商品サービスは、消費税が10%と8%の両方が混在することになりました。

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事業者に対応が求められる具体的な変更点

軽減税率の導入に伴い、軽減税率の対象品目の売上や仕入があるすべての事業者は、これまでの記載事項に、税率ごとの区分を追加した請求書等の発行や記帳などの経理を行うこととされました。
それに加えて、課税売上にかかる消費税から課税仕入等にかかる消費税を控除する「仕入税額控除」を行うためには、区分経理に対応した帳簿および区分記載請求書等の保存が必要とされています。

区分を記載した請求書の発行

従来の請求書への記載事項は、請求書発行者の氏名または名称、取引年月日、取引の内容、対価の額、請求書受領者の氏名または名称の5つとされてきました。しかし、2019年10月1日~2023年9月30日までは、これらに加え「軽減税率対象品目である場合はその旨」と「異なる税率ごとに算出した税込金額」を記載する必要があります。

区分を整理した帳簿づけ

従来の帳簿への記載事項は、相手方の氏名または名称、取引年月日、取引の内容、対価の額の4つとされてきましたが、2019年10月1日~2023年9月30日までは、これらに加え「軽減税率対象品目である場合はその旨」を記載しなければいけなくなりました。
実務としては、軽減税率対象品目については、帳簿の摘要欄に「※」をつけるなどで区別するのが一般的です。確定申告ソフトでは税率コードを使います。

会計ソフトを使った軽減税率対象品目の区別

消費税の軽減税率制度が確定申告に与える影響

軽減税率は、確定申告にどのように関わってくるのでしょうか?軽減税率への対応は、同じ個人事業主でも「消費税を納税する義務があるかどうか」で変わってきます。

消費税の納税義務があるのは「課税事業者」のみ

消費税を直接負担しているのは消費者ですが、それを預かって国に納めているのは、法人や個人事業主からなる事業者です。ただ、すべての事業者に消費税の納税義務があるわけではありません。
次の2つの要件をともに満たす場合は「免税事業者」に該当し、消費税の納税義務が免除されます。

免税事業者の条件

  • 基準期間における課税売上高が1,000万円以下
  • 個人事業主なら前年の1月1日~6月30日までの期間の課税売上高かつ給与等の支払額が1,000万円以下

ここでいう「基準期間」とは、課税期間の前々年の1月1日~12月31日を指します。新規で事業を興した場合、2年目まではそもそも基準期間が存在しないので、この間は売上にかかわらず原則として免税事業者になります。

消費税を納める義務は過去の売り上げで判定

なお、「免税事業者」に対し、消費税の納税義務を負う事業者は「課税事業者」といいます。
課税事業者は、毎年税務署に「消費税及び地方消費税の確定申告書」を提出し、消費税を納める義務を負います。

課税事業者は、税率ごとに消費税額を計算・納税

課税事業者については消費税に関する手続きにも変更が加えられています。
課税事業者が納める消費税の納付税額は、「課税売上にかかる消費税額-課税仕入等にかかる消費税額」で計算するのが基本です。その原則は変わりませんが、軽減税率の導入により、売上と仕入をそれぞれの税率ごとに区分して消費税額を計算し、消費税を納めることになりました。
なお、同じ税率8%でも2019年9月30日までの一般税率8%(旧税率)と10月1日以降の軽減税率による8%では消費税率と地方消費税率の割合が違うため、分けて計算する必要があります。

個人事業者やフリーランス・自営業者への軽減税率の影響

フリーランスや自営業者は、免税事業者であれば消費税の納税については考えなくて良く、軽減税率の影響は、記載事項に税率ごとの区分を追加した請求書等の発行と区分経理を行えば問題ありません。
なお、消費税転嫁対策特別措置法により、大手が下請けに対して増税分の報酬を値引きするのは規制されています。

中小事業者の税額計算の特例

売上、仕入を税率ごとに分けて計算し、納めるべき消費税額を計算するのは簡単ではありません。
そこで、2019年10月1日~2023年9月30日に限定の措置として、売上または仕入を消費税率ごとに区分することが困難な中小事業者については、売上または仕入の一定割合を軽減税率の対象売上または仕入として税額を計算することが認められています。
適用できる事業者と、軽減税率対象とされる売上・仕入の割合は、下記のようになります。

軽減税率対象とされる売上
事業者の種類 税額の計算方法
(1)仕入を区分できる卸売業、小売業者の場合
  • 軽減税率対象とされる売上=売上×軽減税率対象の割合
  • 軽減税率対象割合=軽減税率対象品目の課税仕入(税込)/課税総仕入(税込)
(2)(1)を適用する事業者以外の中小事業者
  • 軽減税率対象とされる売上=売上×軽減税率対象の割合
  • 軽減税率対象売上の割合=連続する10営業日の軽減税率対象品目の課税売上(税込)/連続する10営業日の課税総売上(税込)
(3)(1)(2)の計算が困難な中小事業者(主に軽減税率対象品目を販売する中小事業者)の場合
  • 軽減税率対象とされる売上=売上×軽減税率対象の割合
  • 軽減税率対象売上の割合=課税総売上の2分の1
軽減税率対象とされる仕入
事業者の種類 税額の計算方法
(1)売上を区分できる卸売業、小売業者の場合
  • 軽減税率対象とされる仕入=仕入×軽減税率対象の割合
  • 軽減税率対象仕入の割合=軽減税率対象品目の課税売上(税込)/課税総売上(税込)
(2)(1)以外の事業者の場合 次の項目で解説する「消費税簡易課税制度選択届出書 新規タブで開くを使用します。」を提出して同制度を利用可能(みなし仕入率により税額を計算)

簡易課税制度の届出の特例を利用する方法もある

複雑な消費税納税額の計算は、「簡易課税制度」を利用することでも回避することができます。
簡易課税制度は、計算の手間を軽減するために設けられたもので、条件を満たす事業主は、実際の課税仕入等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額を算出することができます。

「課税期間の前々年または前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下」かつ「原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前月までに『消費税簡易課税制度選択届出書』を税務署に提出している」事業主が利用でき、簡易課税制度を利用した場合、仕入控除税額は「課税売上にかかる消費税額×みなし仕入率」で計算されます。
みなし仕入率は事業種ごとに次のようになります。なお、簡易課税制度と中小事業者の税額計算の特例は両立できないので、どちらか一方を選ぶことになります。

みなし仕入率
事業区分 みなし仕入率
第一種事業(卸売業) 90%
第二種事業(小売業) 80%
第三種事業(製造業等) 70%
第四種事業(その他の事業) 60%
第五種事業(サービス業等) 50%
第六種事業(不動産業) 40%

課税事業者は消費税の納税に注意

軽減税率による納税への影響は、免税事業者であればありませんが、課税事業者では納税すべき消費税額の計算方法が変わってきます。
確定申告ソフトを使えば十分に対応可能ですが、簡易課税制度や事業主の税額計算の特例も利用して、スムーズな納税に役立ててください。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

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