個人事業主の固定資産税は経費計上できる!勘定科目と仕訳例を解説
監修者: 税理士法人 MIRAI合同会計事務所
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土地や建物といった固定資産を所有している場合は、固定資産税がかかります。この固定資産税は、個人事業主の経費として計上できる場合があるのをご存じでしょうか。また、固定資産税以外にも、個人事業主が納める税金の中には経費にできるものがあります。
ここでは、固定資産税を経費にできるケースや、固定資産税を経費計上する場合の仕訳方法、固定資産税の特例による軽減措置などの解説に加え、経費にできる他の税金についてもご紹介します。
固定資産税とは、所有している土地や建物に対してかかる税金のこと
固定資産税は、土地や建物といった固定資産に対して課される税金です。一戸建て住宅やマンション、店舗、土地などを所有している人は、固定資産税を納める必要があります。
個人が所有する固定資産は、土地や建物だけではありません。例えば、パソコンなど、金額が10万円以上の備品や機器も固定資産に該当します(取得原価20万円未満で3年間の一括償却したものを除きます)。
ただし、同じ固定資産でも、土地や建物と、それ以外の機器などでは、税金の取り扱いが異なりますので注意が必要です。所有する土地や建物にかかる税金を「固定資産税」、それ以外の固定資産にかかる税金は「償却資産税」といいます。なお、償却資産税は、正確には「固定資産税(償却資産)」ですが、土地や建物にかかる固定資産税と区別するため、一般的には償却資産税と呼ばれます。
固定資産税の納税スケジュール
固定資産税は、地方税のうち、土地や建物が所在する市町村に納める市町村税です。ただし、東京23区の場合は、区ではなく都税として課税されます。固定資産税の納付時期は自治体によって異なりますが、原則として、一括納付か年4回の分割納付です。納税通知書は、毎年4月から6月頃に送付されます。
土地や建物は申告の必要はない
所得税などとは異なり、固定資産税に申告の必要はありません。土地や建物は所有したときに所有権の登記をするので、申告がなくても自治体は所有者を把握することができます。
各自治体が決定した固定資産税評価額(課税標準額)に所定の税率を掛けて固定資産税額が決定され、1月1日現在の所有者に納税通知書が送られてきます。なお、償却資産税については、各自治体が固定資産の所有の有無を確認できないため、申告が必要です。
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個人事業主の固定資産税は経費になる
個人事業主が固定資産を事業に使用している場合、固定資産税を経費に計上することができます。例えば、持ち家である自宅を事務所などとして使っている場合が、これに相当します。
ただし、自宅兼事務所の場合、固定資産税の全額を経費にできるわけではありません。経費として計上できるのは、自宅の中で、業務に使用している範囲とプライベートに使用している範囲を分け、事業分のみです。このように、生活費と事業費が混在しており、「合理的な基準」によって分けて計算することを、「家事按分(かじあんぶん)」といいます。
自宅にかかる個人資産税を按分するには、床面積のうち事業に使っている割合から計算する方法と、自宅で事業を行う日数や時間から計算する方法があります。いずれの方法においても、合理的な基準にもとづいて計算することが大切です。
個人事業主の固定資産税の勘定科目と仕訳例
個人事業主が固定資産税を経費計上する場合、仕訳するときの勘定科目は「租税公課(そぜいこうか)」で処理をするのが一般的です。租税公課とは、国や地方に納める税金である「租税」と、公共団体などに対する公的な課金である「公課」を合わせた勘定科目です。
固定資産税の仕訳方法は、主に次の2種類です。
固定資産税の仕訳方法
- 固定資産税を納めた日に経費計上する
- 固定資産税の金額が確定した日に経費計上する
固定資産税が10万円だった場合を想定して、各ケースの仕訳例を見てみましょう。
固定資産税を納めた日に経費計上する
事業分の固定資産税10万円を現金で一括で納めた場合の仕訳は、下記のようになります。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
租税公課 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 | 固定資産税 |
また、10万円の固定資産税を、2万5,000円ずつ4回に分けて納めた場合は、納付した日ごとに下記のような仕訳を行います。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
租税公課 | 25,000円 | 現金 | 25,000円 | 固定資産税 |
固定資産税の金額が確定した日に経費計上する
固定資産税の金額が決まった日に仕訳をする場合は、未払金で処理します。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
租税公課 | 100,000円 | 未払金 | 100,000円 | 固定資産税 |
その後、納付したときに、次のような仕訳を行います(4回に分けて納めた場合)。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
未払金 | 25,000円 | 現金 | 25,000円 | 固定資産税 |
個人事業主の経費にできる租税公課
個人事業主が納める税金には、固定資産税の他にも経費にできるものがあります。ここからは、個人事業主が租税公課として経費計上できる税金をご紹介します。
償却資産税
償却資産税は、土地や建物以外の固定資産にかかる税金です。事業に使用しているものであれば、償却資産税は経費に計上できます。例えば、パソコンなど、プライベートと兼用している償却資産の場合は、実態に即して按分したうえで経費計上します。
個人事業税
個人事業税は、都道府県に対して納める地方税のひとつで、前年の所得に応じて税額が決まります。個人事業主のうち、地方税法等で定められた事業(法定業種)に該当する場合は、この個人事業税を納める必要があります。
なお、法定事業に該当しても、年間の事業所得が290万円以下の場合は、個人事業税はかかりません。
個人事業税は、租税公課として、全額を経費に計上することが可能です。
消費税
個人事業主のうち課税事業者は、仕入れなどの際に支払った消費税を経費にすることができます。消費税を申告・納付していない免税事業者は、消費税を経費計上することはできません。
なお、消費税を経費にできるかどうかは、会計処理が「税込処理方式」か「税抜処理方式」かによっても異なります。税込処理方式で処理している場合は、仕入れにかかった消費税を租税公課として経費計上できます。一方、税抜処理方式の場合は、消費税は「仮受消費税等」や「仮払消費税等」の勘定科目で処理し、経費としては扱いません。
都市計画税
都市計画税は、市街化区域内に土地や建物を所有している人に対して課税される税金で、一般的には固定資産税と合わせて納付します。事業専用で使っている土地や建物なら全額を、自宅兼事務所の場合は按分して経費計上が可能です。
自動車税(軽自動車税)
自動車税(軽自動車税)は、自動車や軽自動車を所有する人が納める税金です。事業用の自動車なら、全額を租税公課として経費にすることができます。
また、自家用車を仕事にも使っている場合、事業の割合分が経費になります。なお、租税公課ではありませんが、車にかかる自動車保険料も、按分して経費計上が可能です。
印紙税
印紙税は、契約書や領収書といった一定の文書(課税文書)に課せられる税金です。事業に必要なものなので、全額が経費になります。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や家屋などを取得したときに課せられる税金です。ここでいう「取得」には、購入の他に贈与や増築、改築も含まれます。固定資産税と同様に、事業専用の不動産である場合には全額を、事業とプライベート兼用の場合は按分して経費計上できます。
登録免許税
登録免許税とは、商業登記や不動産登記、船舶登記など、登記や登録、特許、免許についてのさまざまな場面で課税される税金です。事業に用いる不動産の取得時の登記などは、経費として計上できます。
利子税
利子税とは、税金を期日までに納付できないときに、税務署に申告して延長が認められた場合、その期間に応じて課税される税金のことです。所得税を延納した場合の利子税は、原則として経費計上できませんが、事業所得や不動産所得、山林所得に関するものは必要経費にできます。
商工会議所や組合などの会費
個人事業主が商工会議所や組合などに入会すると、入会費や年会費がかかります。これらの会費は事業に関わるものなので、全額経費計上が可能です。勘定科目は「租税公課」に該当しますが、「諸会費」で仕訳する場合もあります。
個人事業主にかかる税金については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
固定資産税の特例による軽減措置
固定資産にかかわる税金には、さまざまな特例による軽減措置が設けられています。特に、自宅を事務所や店舗などに使用している個人事業主の方は、軽減措置についても確認しておきましょう。
新築住宅に係る税額の軽減措置
新築住宅に係る税額の軽減措置とは、住宅取得者の初期負担を軽減して質の良い住宅の建設を促進することと、居住水準を向上させて良質な住宅ストックを形成することを目的とする措置です。新築住宅にかかる固定資産税が、一般住宅は3年間、マンションなどは5年間、半分に減額されます。
耐震改修に関する特例措置
耐震改修に関する特例措置とは、性能向上リフォームを推進することで、耐震性に優れ、次の世代に資産として承継できる良質な住宅ストックを形成するための特例措置です。一定の耐震改修工事を行うと、改修工事を完了した年の所得税額が一定額控除されます。
省エネ改修に関する特例措置
省エネ改修に関する特例措置は、耐震改修に関する特例措置と同様に、性能向上リフォームを推進するための特例措置です。省エネ性に優れた、良質で次の世代に承継できる住宅ストックを形成することを目的としています。一定の省エネ改修工事を行った場合、改修後居住を開始した年の所得税額が一定額控除されます。
バリアフリー改修に関する特例措置
一定のバリアフリー改修工事を行った場合、改修後居住を開始した年の所得税額が一定額控除されます。性能向上リフォームを推進し、バリアフリー性に優れた良質な住宅ストックの形成を目指すものです。
長期優良住宅リフォームに関する特例措置
長期優良住宅リフォームに関する特例措置とは、一定の耐震改修または省エネ改修工事と併せて、一定の耐久性向上改修工事(長期優良住宅化リフォーム)を行い、増改築による長期優良住宅の認定を取得した場合に適用できる特例措置です。要件を満たすと、改修後、居住を開始した年の所得税額が一定額控除されます。
固定資産税は忘れずに経費計上しよう
事業に使う土地や建物を所有している場合や、持ち家である自宅を事業にも使用している場合は、固定資産税の全額または一部を必要経費にすることができます。自宅兼事務所や自宅兼店舗などの場合は、事業に使う部分とプライベートの部分をきちんと按分して経費計上しましょう。
所得税や住民税といった税金は、収入から経費を差し引いた所得をもとに算出されるため、必要経費を漏れなく計上することで節税にもつながります。固定資産税の他にも経費にできる税金などを確認し、忘れずに計上することが大切です。
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よくあるご質問
個人事業主は自宅(持ち家)を固定資産税として経費に計上できますか?
個人事業主が自宅(持ち家)を固定資産税として計上できるのは、自宅を事務所や店舗としても兼用している場合です。ただし自宅兼事務所、店舗兼自宅として使用している場合は、固定資産税や水道光熱費などを全額経費に計上できるわけではありません。経費にできるのは事業で使用している範囲のみになり、プライベートで使用している範囲は経費に計上できないため注意が必要です。このように事業費と生活費を分けて考えることを「家事按分」と言います。家事按分については以下の記事で詳しく解説していますので、自宅を事務所としても兼用している方はぜひ参考にしてみてください。
個人事業主の固定資産税を減免する制度はありますか?
個人事業主の固定資産税を減免する制度としては、2021年度の固定資産税・都市計画税をゼロまたは半分にする制度が存在します。この制度は新型コロナウイルスの影響で事業収入が大きく減少した方向けの制度で、固定資産税の税額の負担を減らすことが可能です。事業用の設備や家屋を多く保有している方で事業収入が低迷している方は、この制度の利用を視野に入れてみてください。
個人事業主が自宅を固定資産税として経費計上する際に勘定科目は何で処理すればいいですか?
個人事業主が自宅を固定資産税として経費計上する際、勘定科目は「租税公課(そぜいこうか)」で処理をするのが一般的です。固定資産税の仕訳方法としては「①固定資産税を納めた日に経費計上する」「②固定資産税の金額が確定した日に経費計上する」の2種類があります。これらの仕訳方法については本記事内で詳しく解説していますので、自宅を固定資産税として経費計上するやり方がわからない方はぜひ参考にしてみてください。
個人事業主の固定資産税の仕訳方法についてはこちら
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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