確定申告の所得控除とは?控除できるものの種類や条件を解説!
監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所
2023/03/01更新
所得税は、所得が大きければ大きいほど、その税額は大きくなっていきます。
しかし、確定申告の際に所得控除や税額控除を受けることで、納税額を減らすことが可能です。ここでは、確定申告で受けられる控除の種類や、控除を受けるための条件について解説します。
確定申告の所得控除とは、所得から差し引くことができる控除
所得控除は所得税を算出するときに、所得から差し引くことができる控除です。所得控除には物的控除と人的控除があります。
物的控除には、健康保険料を支払った場合に受けられる社会保険料控除や、医療費を支払った場合に受けられる医療費控除などがあり、それぞれ、1年間に支払ったお金を考慮して税額が調整されます。
一方、一定の要件の配偶者がいる場合に受けられる配偶者控除や、養っている家族がいる場合に受けられる扶養控除などの人的控除においては、人に関わる事情を考慮して税額が調整されます。
所得控除の種類 | 控除を受けられる主な条件 (※以下のほか、詳細な条件もあり) |
|
---|---|---|
物的控除 | 雑損控除 | 災害や盗難などによって損害を受けた場合に受けられる |
医療費控除 | 納税者本人とその人と生計を一にする配偶者やそのほかの親族の、一定額以上の医療費を支払った場合に受けられる | |
寄附金控除 | 国や地方公共団体などに寄附を行った場合に受けられる | |
社会保険料控除 | 健康保険料や国民年金保険料などの保険料を支払ったとき、または生計を同じくする配偶者や子供、親族の保険料を支払ったときに受けられる | |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済で支払った掛金の全額が所得から差し引かれる 対象:小規模企業共済の掛金、企業型確定拠出年金(企業型DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)、障害者扶養共済制度の掛金 |
|
生命保険料控除 | 生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料などの保険料を支払った場合に受けられる | |
地震保険料控除 | 特定の損害保険のうち、地震による損害部分の保険料や掛金を支払った場合に受けられる | |
人的控除 | ひとり親控除 | 本人がひとり親である場合に受けられる |
寡婦控除 | 本人が寡婦である場合に受けられる | |
勤労学生控除 | 働きながら通学する勤労学生である場合に受けられる | |
障害者控除 | 納税者本人や配偶者、扶養親族が障害者または特別障害者である場合に受けられる | |
配偶者控除 | 配偶者の所得が48万円以下であるなどの場合に受けられる | |
配偶者特別控除 | 配偶者がいて、配偶者控除の適用外(配偶者の所得が48万円超133万円以下であるなど)場合に受けられる | |
扶養控除 | 一定の所得以下の子供や親、親族を養っている場合に受けられる | |
基礎控除 | 一定の所得以下の納税者すべてが受けられる |
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物的控除の種類と控除額、受けるための条件
物的控除は、健康保険や年金などをきちんと納めている人や、生命保険や地震保険に加入している人を、税務上で優遇するという趣旨の控除です。
まずは物的控除の種類と、それぞれ控除を受けるための条件をご紹介します。
雑損控除
雑損控除とは、災害や盗難などによって損害を受けた場合に受けられる所得控除です。
雑損控除の控除額は下記の式で求められ、いずれか高いほうの金額が適用されます。
- 差引損失額-総所得金額等×10%
- 差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
なお、「差引損失額」とは、災害によって失った資産の金額や災害に関連して支出したやむを得ない金額から、受け取った保険金等の金額を差し引いた金額のことを指しています。
また、「災害関連支出の金額」とは、災害で損害を受けた住宅・家財などを、取り壊したり、除去したりするのにかかる費用のことです。
医療費控除
医療費控除とは、納税者本人とその人と生計を一にする配偶者やそのほかの親族の、一定額以上の医療費を支払った場合に受けられる所得控除です。
医療費控除額は、医療費の合計額から、保険金などで補填された金額、および10万円を差し引いた金額となります。ただし、年間の所得が200万円未満の人の場合、10万円の代わりに総所得金額等5%の金額を差し引きます。なお、総所得金額等とは、所得(合計所得金額)から純損失または雑損失等の繰越控除を適用した後の合計所得のことをいいます。
なお、2017年に設けられた「セルフメディケーション税制」とは、対象医薬品を購入した場合に、1万2,000円を超える額(上限8万8,000円)が所得から控除される、医療費控除の特例制度です。
注意点として、医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方しか利用できません。
寄附金控除
寄附金控除とは、納税者が国や地方公共団体などに寄附を行った場合に適用される控除です。
例えば、ふるさと納税では、自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分(上限あり)について、所得から控除されます。
ほかにも、政党に特定の寄附を行った場合や、一定の要件を満たす認定NPO法人・公益社団法人に寄附を行った場合に適用される寄附金控除があります。
社会保険料控除
社会保険料控除とは、納税者本人が健康保険料や国民年金保険料などの保険料を支払ったとき、または生計を同じくする配偶者や子供、親族の社会保険料を支払ったときに適用される所得控除です。
社会保険料控除では、1年間に支払った保険料の全額が所得から差し引かれます。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済で支払った掛金の全額が所得から差し引かれる所得控除です。小規模企業共済とは、廃業や退職時に備えて資金を積み立てることができる、個人事業主や小規模企業の経営者にとっての退職金制度のようなものです。
小規模企業共済等掛金控除の対象となるのは、小規模企業共済の掛金のほか、企業型確定拠出年金(企業型DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)、心身障害者扶養共済制度の掛金となります。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、納税者本人が、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料などの保険料を支払った場合に適用される控除です。生命保険料控除には「一般生命保険料控除(一般生命保険に適用)」「介護医療保険料控除(介護医療保険に適用)」「個人年金保険料控除(個人年金保険に適用)」の3種類があります。
また、生命保険料控除は、保険を契約した時期によって適用される制度が異なり、控除額が変わるので覚えておいてください。
2012年(平成24年)の1月1日以降に締結した保険については「新制度」が、2011年(平成23年)12月31日以前に締結した保険については「旧制度」が適用となります。
新制度では、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除のすべての控除を受けることが可能で、所得控除の控除額は、それぞれ4万円が上限となり、合計12万円までの所得控除を受けることができます。
一方、旧制度で受けられるのは一般生命保険料控除、個人年金保険料控除のみとなり、いずれも上限5万円、合計10万円の所得控除を受けることが可能です。
なお、2011年(平成23年)12月31日以前に契約した生命保険を、2012年(平成24年)の年の途中で更新した場合は、更新した月以後の保険料が新制度の対象になります。
ちなみに、生命保険契約で満期保険金や解約払戻金を受け取った場合、そのお金は課税の対象になる可能性があるため、申告漏れとならないように注意しましょう。
地震保険料控除
地震保険料控除とは、特定の損害保険のうち、地震による損害部分の保険料や掛金を支払った場合に適用される所得控除です。地震保険料控除の控除額は、1年間に支払った保険料や掛金が5万円以下の場合、その全額が控除されます。
1年間に支払った保険料や掛金が5万円を超えた場合には、控除限度額である5万円が地震保険料控除額となります。
なお、2006年12月31日までに締結した一定の長期損害保険の保険料については、地震保険料控除の対象とすることが可能です。
人的控除の種類と受けるための条件
続いては、所得控除のもう1つの種類である人的控除について、内容や受けられる条件を解説します。
ひとり親控除・寡婦控除
「ひとり親控除」とは、その年の12月31日の現況において未婚のひとり親などで、所得500万円以下の場合に受けられる控除です。ひとり親控除の控除額は35万円となっています。
また、「寡婦控除」とは、所得500万円以下で扶養親族がいて、夫と死別、あるいは離婚した後、婚姻をしていない人や、同じく所得500万円以下であり、夫と死別した後、婚姻をしていない(夫の生死が明らかでない)人が受けられる控除です。
なお、以前は所得500万円以下で養っている子供がいて、妻と死別あるいは妻と離婚した後、婚姻をしていない男性が受けられる「寡夫控除」という控除がありましたが、寡夫控除は2020年分の確定申告から、ひとり親控除に変更となりました。
勤労学生控除
勤労学生控除とは、納税者が働きながら通学する勤労学生である場合など一定の要件に該当するときに受けられる所得控除です。控除額は27万円となっています。
なお、勤労学生とは、給与所得など、勤労による所得があることや、給与の収入金額が130万円以下であることなどの条件を満たす学生のことを指します。
障害者控除
障害者控除は、納税者本人や配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けられる所得控除です。
障害者控除の対象となる「障害者」と認められるには、一定の条件を満たしている必要があります。また、障害の程度によって「障害者」と「特別障害者」に区別されます。
障害者控除の控除額は、納税者本人や、同じ家計で生活している配偶者や扶養親族が、障害者であるときは27万円であり、本人が特別障害者であるときは40万円です。
なお、障害者控除は扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます。
また、同じ家計で生活している配偶者または扶養親族が特別障害者に該当し、かつ、納税者本人または本人の配偶者もしくは本人と生計を一にするその他の親族のいずれかと同居している場合、障害者控除の控除額は75万円となります。
区分 | 控除額 |
---|---|
本人または、同一生計の配偶者・親族が障害者である場合 | 27万円 |
本人または、同一生計の配偶者・親族が特別障害者である場合 | 40万円 |
本人または、同一生計の配偶者・親族が特別障害者と同居している場合 | 75万円 |
出典:国税庁「障害者控除 」
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除・配偶者特別控除とは、納税者本人に配偶者がいる場合に受けられる控除です。
配偶者控除と配偶者特別控除とでは、控除を受けるための条件や、控除の内容が異なります。
それぞれ、解説します。
配偶者控除
配偶者控除を受けるには、配偶者が下記の条件をすべて満たしている必要があります。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しない)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の所得が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
配偶者が70歳未満(一般の控除対象配偶者)の場合の配偶者控除の控除額は、納税者本人の所得が900万円以下の場合38万円、900万円超950万円以下の場合は26万円、950万円超1,000万円以下の場合は13万円となります。
また、配偶者が70歳以上(老人控除対象配偶者)の場合の控除額は、納税者本人の所得が900万円以下の場合48万円、900万円超950万円以下の場合は32万円、950万円超1,000万円以下の場合は16万円となります。
2020年分以降の所得税について、納税者本人の所得が1,000万円を超える場合、配偶者控除は受けられません。
納税者本人の所得額 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
出典:国税庁「配偶者控除 」
配偶者特別控除
配偶者特別控除とは、配偶者に48万円を超える所得があり、前述の配偶者控除が受けられない場合に適用される所得控除です。配偶者特別控除を受けるための条件の概要は下記のとおりです。
- 控除を受ける納税者の所得が1,000万円以下である
- 配偶者が民法の規定による配偶者である(内縁関係の人は該当しない)
- 配偶者が控除を受ける人と生計を一にしている
- 配偶者がその年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない
- 配偶者の年間の所得が48万円超133万円以下である(給与のみの場合は給与収入が103万円超201万円以下)
- 配偶者が配偶者特別控除を適用していない
- 配偶者が他の人の扶養親族に入っていない
配偶者特別控除の控除額は、納税者本人と配偶者の所得によって決まり、納税者本人の所得が900万円以下で、配偶者の所得が48万円超95万円以下の場合、38万円となります。
なお、「配偶者が配偶者特別控除を適用していない」とは、夫婦両方が互いの配偶者特別控除の条件を満たす場合であっても、配偶者特別控除を受けられるのは夫か妻か、どちらか一方であるということを表します。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配偶者の合計所得金額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
出典:国税庁「配偶者特別控除 」
扶養控除
扶養控除とは、子供や親、親族を養っている場合に受けられる所得控除です。
扶養控除の対象となる扶養親族とは、納税者と生計を一にしていることや、年間の所得が48万円以下(2020年分以降)であることなどの条件を満たす、配偶者以外の親族などのことを指します。
扶養控除の控除額は、扶養している子供や親、親族の年齢、または同居しているかどうかによって異なります。例えば、扶養控除の控除額は、扶養親族が16歳以上の「控除対象扶養親族」である場合は38万円で、19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」である場合は63万円です。
また、扶養親族が、70歳以上の「老人扶養親族」であり、納税者またはその配偶者の直系の父母・祖父母などに該当する場合、「同居老親等」とみなされ、58万円の扶養控除を受けることが可能です。
扶養親族が70歳以上で、同居老親等に該当しない場合は、48万円の扶養控除が適用されます。
基礎控除
基礎控除とは、一定の所得以下のすべての納税者が受けられる所得控除です。基礎控除の控除額は48万円です。ただし、所得が2,400万円を超える場合、段階的に控除額が引き下げられ、2,500万円を超えると基礎控除額は0円となります。
税額控除の種類と控除額、受けるための条件
税額控除とは、算出した税額から直接差し引くことができる控除のことです。
ここでは、所得税に適用される代表的な税額控除について、内容や受けられる条件をご紹介します。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
住宅借入金等特別控除とは、所得3,000万円以下の人が住宅ローンを組んで住宅を新築、購入、増改築した場合に適用される税額控除です。
住宅借入金等特別控除の控除額は、住宅ローンの借入額によって決まります。
配当控除
配当控除とは、株の配当金や投資信託の分配金など、配当金を受け取ったときに、その配当金に一定率を掛けた金額が所得税から控除される税額控除です。
青色申告を行うと青色申告特別控除を受けることができる
個人事業主が確定申告をする際は、白色申告と青色申告のどちらかの方法を選ぶことができます。このうち、青色申告を選べば、所得控除などのほかに青色申告特別控除を受けることができます。青色申告特別控除では、10万円/55万円/65万円の控除を受けることが可能です。
ただし、青色申告を行うには税務署に青色申告承認申請書などの書類も提出する必要があり、期限が定められています。また55万円/65万円の特別控除を受けるには、複式簿記による帳簿付けが必要です。65万円の特別控除は前述の条件に加え、e-Taxを利用して申告すること、または電子帳簿保存を行うといった条件を満たす場合に受けることができます。
青色申告のメリットを最大限に活かすには、e-Taxもスムーズに行える確定申告ソフトなどを利用するのがおすすめです。
節税するなら所得控除を確実に受けることが大切
節税するためには、所得控除を確実に受けることが大切です。また、税額控除や青色申告特別控除も含めて、自分が受けることができる控除にはどのようなものがあるのか、確認しておくようにしましょう。確定申告では、節税効果が高い青色申告にしたいけれど、帳簿作成が難しいのではという人に、確定申告ソフトのご利用をおすすめします。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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