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広告宣伝費とは?似ている勘定科目との違いや仕訳例などを解説

監修者:齋藤一生(税理士)

2024/08/05更新

法人や個人事業主が事業を展開するにあたり、自社の製品やサービスをアピールするために広告や宣伝は欠かせません。宣伝活動に充てた費用は「広告宣伝費」という勘定科目で仕訳します。

この広告宣伝費は、販売促進費や交際費と混同されがちな勘定科目の1つで、適切に処理しなければ広告宣伝費に該当しない費用を計上してしまう可能性もあるため注意が必要です。

ここでは、広告宣伝費に該当する費用や他の勘定科目との違い、仕訳例などについて解説します。

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広告宣伝費とは、宣伝にかかる費用を計上する際の勘定科目のこと

一般的に、自社の製品やサービスをアピールする宣伝や広告のためにかかった費用が、「広告宣伝費」の勘定科目で処理されます。

しかし、広告宣伝費に該当する費用は多岐にわたります。そのため、本来は別の勘定科目で処理すべき費用を、誤って広告宣伝費として計上してしまうケースもあります。広告宣伝費として処理できない経費を計上してしまうと、税務調査などの際に否認されることがあるため注意しなければなりません。

原則として、広告宣伝費として計上できるのは、不特定多数に向けた宣伝にかかる費用に限られます。まずは、広告宣伝費と混同されがちな「販売促進費」、「交際費」、「外注費」との違いを見ていきましょう。

販売促進費との違い

販売促進費とは、販売促進のために使った費用を経費計上する際の勘定科目です。広告宣伝費と販売促進費は明確な違いがわかりにくく、区分が難しいという側面もあります。

広告宣伝費は、テレビやインターネットなどの広告媒体を利用して、不特定多数に向けて自社の製品やサービスを間接的に宣伝するためにかかる費用です。

一方で、販売促進費は多くの場合、一定の範囲内の顧客へ直接的な販促活動を行う際に生じた費用を指すと区別すると良いでしょう。自社の魅力を伝えるためにサンプルを配布したり、キャンペーンやイベントを開催したりする際にかかる費用などが該当します。

交際費との違い

交際費とは、得意先や仕入先など事業に関係する対象に対して、接待や供応、慰安、贈答などを行う際の支出が該当します。広告宣伝費は不特定多数に対して行う宣伝活動にかかる費用を指しますが、交際費は見込み顧客や得意先など、特定の対象に向けて生じる費用という点で異なります。

外注費との違い

外注費とは、業務そのもの、または業務の一部を外部へ委託する場合に発生する、請負契約に基づいた勘定科目です。広告宣伝費と外注費では、広告物の制作に依頼側が関与しているかどうかが異なります。広告物の制作にあたり、依頼側がディレクションを一切行わないのであれば、外注費として計上することが可能です。

一方、制作において依頼側がデザインやコピーなどについて指示出しをしたり、提案された複数の案の中から選定したりするといった作業を行った場合は、広告宣伝費として計上する必要があります。

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広告宣伝費に該当する費用

広告宣伝費に該当する費用は、大きく分けると「媒体への広告掲載に関する費用」「媒体への広告掲載に関する費用」「セールスプロモーションに関する費用」の3つに分けることができます。

それぞれに当てはまる費用は、下記のとおりです。

広告宣伝費に該当する費用
費用の種類 具体例
媒体への広告掲載に関する費用
  • 新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどの媒体利用料
  • インターネット広告の媒体利用料
  • CMの動画素材やキャッチコピーなどの広告クリエイティブにかかる制作費
セールスプロモーションに関する費用
  • チラシ、パンフレット、ポスター、カタログ、POP類の制作費
  • 不特定多数に配布するノベルティやプレゼントの制作費
  • キャンペーン用のWebページの制作費および運用費
会社広報に関する費用
  • 求人広告の制作および掲載費
  • 自社サイトの制作および運用費
  • 自社の公式SNSの運用費

広告宣伝費に該当しない費用

広告宣伝費と混同しがちな費用についても確認しておきましょう。似たような支出でも、広告宣伝費としては計上が認められない費用もあるため注意が必要です。

寄付金・協賛金

宣伝広告を目的としていない寄付金や協賛金は、「寄付金」の勘定科目で処理する必要があります。

広告宣伝費は、自社の製品やサービスをアピールし、ターゲットの認知促進や売上向上を図るための支出です。その点、寄付金や協賛金は対価性がなく、支出によって何かを得ることを目的としていないため、広告宣伝費には該当しません。

ただし、寄付金や協賛金という名目でも「寄付の対価として相手から商品やサービスを受け取る」「協賛企業としてイベント会場にロゴを掲示してもらう」といった場合は、対価性が認められます。このような場合は、広告宣伝費や交際費などの勘定科目で処理する必要がある点にも留意しましょう。

特定の個人・法人との関係構築に関する費用

宣伝目的に支払った費用でも、それが特定の企業や個人との関係を構築するためのお金である場合は、広告宣伝費として計上することは認められません。

例えば、「得意先を招待した新年会や忘年会などの懇親会費用」「得意先だけに配布する贈答品の制作費用」などの支出は、宣伝目的だとしても「交際費」として処理します。

商標登録に関する費用

権利保護を目的として、自社の企業名やロゴマーク、サウンドロゴなどを商標登録するケースもあります。こうした商標登録に関する支出は「無形固定資産」として計上する必要があり、制作費や登録費は広告宣伝費には該当しません。

広告宣伝費の仕訳例

広告宣伝費は、日々の帳簿付けにおいて正確に仕訳処理する必要があります。ここでは、広告宣伝費の仕訳例を、7つのケースに分けて見ていきましょう。

宣伝用のWebページの制作費を支払った場合

自社の製品やサービスを宣伝するためのWebページの制作費30万円を、普通預金から支払った場合の仕訳は下記のとおりです。

宣伝用のWebページの制作費を支払った場合の仕訳例
借方 貸方 摘要
広告宣伝費 300,000円 普通預金 300,000円 Webページ制作費

1年分の看板代を期中に一括で支払った場合

自社の看板代1年分50万円を、期中に現金で支払った場合の仕訳について考えてみましょう。この場合、未経過分は決算期に前払費用にする必要がありますが、支払日から1年以内の前払費用については、短期前払費用の特例が適用され、継続適用を条件として一括で経費処理することも可能です。

1年分の看板代を期中に一括で支払った場合の仕訳例
借方 貸方 摘要
広告宣伝費 500,000円 普通預金 500,000円 看板代一括支払い

2年契約の看板設置料を期首に支払った場合

2年契約の看板設置料5万円を、期首に普通預金から支払った場合の仕訳について考えてみましょう。この場合、次期以降に相当する支出は「前払費用」で仕訳します。また、全額を「広告宣伝費」として処理して、決算時に「前払費用」に振り替えます。

2年契約の看板設置料を期首に支払った場合の仕訳例
借方 貸方 摘要
広告宣伝費 25,000円 普通預金 50,000円 看板設置料当期分
前払費用 25,000円 看板設置料前払分

なお、決算時期から1年以上先の部分の前払も行った場合には、その部分に関しては「長期前払費用」となります。

折込チラシを制作し、印刷費や折込手数料を支払った場合

キャンペーン用の折込チラシを制作し、印刷費と折込手数料を計5万円、普通預金から支払った場合の仕訳は下記のとおりです。

折込チラシを制作し、印刷費や折込手数料を支払った場合の仕訳例
借方 貸方 摘要
広告宣伝費 50,000円 普通預金 50,000円 折込チラシ印刷、手数料

一般消費者が対象のプレゼント用商品を購入した場合

一般消費者が、対象のプレゼント用商品を購入した場合の仕訳について考えてみましょう。不特定多数の一般消費者に対してプレゼントを配るために要する費用は、「広告宣伝費」として計上できます。また、決算期末の未使用の在庫については、「貯蔵品」に振替処理します。

例えば、一定金額以上の商品を購入したお客さまにエコバッグ(単価300円)をプレゼントするキャンペーンのために、エコバッグ100個を購入し、普通預金から支払った場合の仕訳例は、下記のとおりです。

一般消費者が対象のプレゼント用商品を購入した場合の仕訳例
借方 貸方 摘要
広告宣伝費 30,000円 普通預金 30,000円 景品のエコバッグ代

バナー広告の掲載料を支払った場合

検索エンジン会社にバナー広告の掲載を依頼して、2万円を普通預金から支払った場合の仕訳は下記のとおりです。

バナー広告の掲載料を支払った場合の仕訳例
借方 貸方 摘要
広告宣伝費 20,000円 普通預金 20,000円 バナー広告費

発注したカタログが納品され、代金を月末支払いにした場合

発注した自社製品のカタログが納品され、代金3万円は月末払いにした場合の仕訳例は下記のとおりです。

発注したカタログが納品され、代金を月末支払いにした場合の仕訳例
借方 貸方 摘要
広告宣伝費 30,000円 未払金 30,000円 カタログ代

広告宣伝費を計上する際の注意点

広告宣伝費を計上する際は、いくつか注意点があります。正確に処理しなければ税務調査で否認されてしまう可能性もあるため、下記4つの注意点を意識して帳簿付けをしていきましょう。

原則、課税対象になる

広告宣伝費は、原則として課税仕入れの対象となる点には注意が必要です。仕訳の際は、課税仕入れの扱いで処理する必要があります。ただし、海外における支出は課税対象になりません。この場合、消費税区分は「不課税」で計上します。

実際に広告宣伝が行われたタイミングで計上する

広告宣伝費は、実際に広告宣伝が行われたタイミングで経費計上しましょう。広告掲載を申し込んだときや契約料を支払ったときに誤って計上することのないよう、注意が必要です。特に、広告宣伝費を前払いした際は、仕訳処理に気を付けてください。

決算をまたぐ場合には、前払費用として計上する

決算をまたぐ広告宣伝費については、各月で分割計上するのではなく、原則「前払費用」として計上しなければならないため、注意しましょう。具体的には、「屋外看板の設置利用を2年契約した場合」などがあげられます。

ただし、例外もあります。例えば、「支払いが契約期間1年以内に発生する場合」や「毎期同じ内容の支払いが発生する場合」は、支払い日時を含む年度で広告宣伝費として計上して問題ありません。

変動費になるケースがある

広告宣伝費は売上や販売数量によって金額が変動することがないため、基本的には「固定費」に該当しますが、広告宣伝の方法によっては「変動費」となるケースもあるため、覚えておきましょう。

例えば、「商品を一定数購入すると1つ無料」のようなキャンペーンを実施した場合、広告宣伝費は売上に比例して変動するため、固定費ではなく変動費の扱いになります。

広告宣伝費の計上の仕方を正しく理解して、経理業務を効率化しよう

広告宣伝費について、販売促進費・交際費との違いや、具体的な仕訳例などをご紹介しました。広告宣伝費は、明確な基準や他の勘定科目との区別がわかりにくい点もありますが、支出を正しく計上できなければ、翌年以降の税負担に大きな影響を与える可能性もあるため、正しく理解して日々の帳簿付けをしていくことが大切です。

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この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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