領収書の正しいもらい方とは?注意すべきポイントを解説
監修者:齋藤一生(税理士)
2024/08/26更新
経費処理において、重要な役割を持つ書類が領収書です。例えば、経費精算をするときには、事業にかかわる費用を支払ったことを証明するために領収書が必要です。また、日々の記帳においても、領収書が経費計上の根拠となります。
仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書等保存方式(インボイス制度)の要件を満たす領収書やレシートが必要です。さらに、領収書の保存にあたっては、電子帳簿保存法にも対応しなければなりません。そのため、領収書のもらい方を正しく理解していないと、支払った金額を経費として処理できなかったり、仕入税額控除を適用できなかったりする可能性があるため注意が必要です。
ここでは、領収書の正しいもらい方や保存方法、領収書をもらうときの注意点などを、適格請求書等保存方式や電子帳簿保存法への対応も含めて解説します。
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領収書は、金銭を受け取ったことを証明するために発行する書類
領収書は、取引において金銭を受け取ったことを証明するために、受け取った側が発行する書類です。領収書には、金銭を受け取った側の氏名または名称、取引年月日、取引金額、取引内容、発行者などが記載されています。金銭を支払った側は、領収書を受け取ることで、確かに相手側へ金銭を渡したことを証明することが可能です。
また、領収書は、税法で定められた国税関係書類にも該当し、経費の支払いの際に受け取った領収書は、帳簿などと共に、一定期間の保管が義務付けられています。
決算や税金にもかかわる事業上の経費について、正当に計上されていることを証明するためにも、領収書は重要な役割を果たします。なお、領収書と似ている言葉として領収証がありますが、いずれも金銭の受領を証明する証憑書類のため、大きな違いはありません。
領収書とレシートとの違い
領収書と同じような役割を持つ書類に、レシートがあります。レシートも後述する必要事項さえ記載されていれば、領収書と同様に経費計上の証拠書類として使用できます。
なお、レシートの場合、領収書とは違って宛名が記載されないことが一般的です。詳しくは後述しますが、2023年10月より、仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書等保存方式の要件を満たす領収書が必要になりました。この適格請求書等保存方式の記載要件の1つが、「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」、つまり領収書の宛名です。
ただし、小売業や飲食店業、タクシー業などのように、不特定多数を相手に取引を行う一定の業種に関しては、宛名の記載がない適格簡易請求書の発行が認められます。そのため、スーパーやコンビニ、タクシーを利用して受け取ったレシートは、適格簡易請求書の要件を満たしていれば、仕入税額控除の対象になります。
領収書の正しいもらい方
領収書を受け取るときは、正しいもらい方を知っておくことが大切です。受け取った領収書に不備があると、経費精算などに使用できないことがあります。領収書を証憑書類として扱うために、領収書をもらう際には下記の点を意識するようにしましょう。
宛名は正確に書いてもらう
領収書をもらう際には、宛名を正確に書いてもらうことが重要です。法人の場合は、会社名を省略することなく正しく記載してもらい、前株・後株なども間違えないようにきちんと相手に伝えましょう。個人事業主の場合は、「屋号+個人名」または「個人名」を正確に書いてもらう必要があります。
なお、前述した適格簡易請求書の要件に該当する場合は、領収書やレシートに宛名の記載がなくても、仕入税額控除を受けるうえでは問題ありません。適格簡易請求書が認められるのは、小売業や飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業など、「不特定多数の者に販売等を行う取引」に当たるケースです。
ただし、宛名の記載がなくても問題がないケースでも、「上様」の記載は避けることをおすすめします。そもそも、特定の業種に対して適格簡易請求書の発行が認められている理由は、不特定多数の人を相手に取引をする業種では、支払いのたびに領収書に宛名を書いていると業務に支障が出るおそれがあり、現実的ではないからです。
宛名が上様だからといって領収書が無効になるわけではありませんが、誰が支払ったのかが証明できないので、税務調査で指摘を受ける可能性があります。つまり、他人から領収書をもらったのではないかと疑われるというリスクがあるのです。 そのため、宛名を書くのであれば、上様ではなく、社名や氏名などを正しく記載してもらうことが大切です。
また、会社によっては、宛名に正しく社名が書かれていない領収書では、経費精算に対応しないというルールを設けている場合もあります。
但し書きは具体的に記載してもらう
領収書の但し書きは、できるだけ具体的に書いてもらうことが必要です。但し書きの内容を指定しないと、「お品代として」と記載されることがあります。
但し書きが「お品代として」だけだったり空白だったりすると、実際に何に対して支払いをしたのかが不明瞭です。そのため、税務調査で不信感を持たれることがある他、後で仕訳をする際、どの勘定科目を選べばいいのかわからなくなってしまうこともあります。誰が見ても何を購入したか明らかになるように、領収書には具体的な商品やサービス名を記載してもらうことが大切です。
もし、複数の商品を購入してすべての品目を書くことが難しい場合は、最も価格が高いものや代表的な商品・サービスを記載し、「他◯◯点」と記載してもらうといいでしょう。
領収書に関する注意点
経費に関する領収書には、いくつか気を付けるべき点があります。領収書に関する注意点と、それに対応するための方法について見ていきましょう。
必要事項が正しく記載されているか確認する
経費精算をするためには、「いつ、どこで、何のために」使ったのかがわかるように記載された領収書が必要です。領収書をもらうときには、「日付」「宛名」「金額」「但し書き」「発行者情報」といった必要事項が正しく記載されているかどうかを確認しましょう。
また、領収書の記載金額が5万円以上の場合は、収入印紙の貼付が必要です。収入印紙の貼付(印紙税の納付)義務は領収書を発行する側にあるため、受け取った領収書に収入印紙が貼られていなくても無効にはなりませんが、貼り忘れがないかチェックしておくことをおすすめします。
なお、2023年10月からの適格請求書等保存方式により、課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、下記の事項が記載された適格請求書(インボイス)が必要です。
適格請求書に記載が必要な項目
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象になる場合は、その旨)
- 取引金額を税率ごとに区分した合計金額と適用税率(税込でも税別でも可)
- 税率ごとの消費税額
- 宛先
領収書を適格請求書として利用する場合は、従来の一般的な記載事項に加えて、税率ごとの消費税額および適用税率(内訳)と登録番号の追加記載が必要になります。そのため、領収書を受け取る際にも、適格請求書の記載事項を満たしているかを確認することが大切です。
経費精算のルールを事前に確認する
領収書を使って経費精算を行う際には、社内ルールを事前に確認することが大切です。経費精算は、従業員が立替払いした経費を領収書と共に会社に申請し、後日精算するという流れが一般的です。しかし、経費精算のルールは会社によって異なります。
例えば、他社では経費として認められる領収書でも、自社のルールでは無効になる可能性もあります。経費精算のルールを事前にしっかり確認しておかないと、「領収書を提出したのに経費精算ができない」というトラブルを招きかねません。
そのため、経費として認められる範囲や領収書に必要な記載事項、金額の上限、申請期限、領収書がないときの対処法など、社内ルールを確認しておきましょう。
領収書をもらい忘れた場合の対処方法を確認する
領収書をもらい忘れてしまった場合は、後日でも領収書の発行を依頼することが可能です。また、領収書をもらっていなくても、レシートを受け取っていて必要事項が記載されていれば、領収書と同様に認められます。ただし、会社によっては、経費精算にレシートを認めないケースもあるため注意が必要です。
「領収書を受け取ったが紛失してしまった」という場合は、再発行してもらえることもありますが、同じ支払いに対して領収書を二度発行すると、不正な取引ではないかと疑われるリスクがあるため、断られる可能性が高いでしょう。
なお、経費の中には、自動販売機での支払いや取引先への冠婚葬祭の慶弔金など、領収書が発行されないケースもあります。その場合は、支払日や支払先、支払内容、金額といった詳細を出金伝票に記載するなど、あらかじめルールを定めておくことが大切です。会社によっては、領収書を紛失、破損した場合なども、出金伝票で代用可能な場合もあります。
領収書の保管期間と保存方法
税法上の国税関係書類に該当する領収書は、一定期間の保管が義務付けられており、適切な方法で保存しなければなりません。
ここでは、法人と個人事業主による領収書の保管期間の違いや、領収書の形式別の保存方法について解説します。
領収書の保管期間
領収書の保管期間は、法人と個人事業主で異なります。それぞれの領収書の保管期間は、下記のように定められています。
法人
法人の場合、領収書の保管期間は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。ただし、繰越欠損金の控除を受ける場合は、10年間(2018年4月1日前に開始した事業年度は9年間)の保存が必要です。
個人事業主
個人事業主は、青色申告か白色申告かによって領収書の保管期間が変わります。青色申告の場合、領収書の保管期間は7年間(前々年の所得が300万円以下なら5年間)です。一方、白色申告であれば、保管期間は5年間です。
ただし、消費税の仕入税額控除の適用にあたり、領収書を適格請求書として利用する場合は、所得額にかかわらず、受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間の保管が必要になります。
領収書の保存方法
領収書を保存する際には、電子帳簿保存法への対応も必要です。電子帳簿保存法は、領収書を含む国税関係書類や帳簿をデータで保存するための要件を定めた法律です。領収書の保存方法は、受け取った形式が紙かデータかによって異なります。
紙で受け取った領収書
紙で受け取った領収書は、そのまま保存してもかまいませんが、電子化して保存することも可能です。電子化の方法には、スキャナによるスキャンと、スマートフォンなどによる撮影の2種類があります。ただし、どちらの場合も、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件を満たす形式で取り込まなければいけません。
電子データで受け取った領収書
電子データで受け取った領収書は、電子帳簿保存法上の「電子取引」に該当し、電子保存が義務付けられています。従来は、データで受け取った領収書を紙にプリントアウトして保存することも認められていましたが、現在は禁止されています。そのため、領収書をはじめとする電子取引の書類は、電子データのまま保存しなければいけません。
適切な経費処理のために、領収書の正しいもらい方を確認しておこう
領収書は、経費の支払いを証明するための重要な書類です。領収書をもらうときには、必要な事項が記載されているかしっかりと確認することが大切です。
また、適格請求書等保存方式の開始や改正電子帳簿保存法の施行によって、領収書の処理方法も変化しています。法令に基づき適切な対応ができる体制を整えると同時に、領収書の記載要件や扱い方などについて、社内に周知しておく必要もあるでしょう。
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