【領収書の書き方】数字に付ける記号から但し書きまで詳細に解説
監修者:小林祐士(税理士法人フォース)
2024/09/27更新
「領収書の書き方って、どうすればいい?」と思う方も多いのではないでしょうか。誤った領収書は、相手からの信頼を失ったり、税務的な問題の原因となったりするため、注意が必要です。本記事では、そもそも領収書とは何か、基本的な知識を身につけたうえで、領収書を正しく書けるように、わかりやすく解説しています。
金額を書くときの記号のつけ方や、宛名・但し書きの書き方まで、具体的に説明しますので、「初めて、領収書を書くことになった」という方も、ぜひ参考にしてみてください。
領収書の目的と書き方の留意点
領収書の正しい書き方を身につけるために、まずは基本の知識から確認しておきましょう。
領収書の基本的な意味
領収書とは、金銭を受け取った証として、金銭を受け取った人が金銭を支払った人に渡す書類です。
領収書が発行されるのは、事業者による商品・サービスの提供や売買取引などで、金銭の受け渡しが生じたときです。たとえば、タクシーを利用した場合は、料金を支払ったときに、料金を支払った証拠として、タクシー運転手から領収書を受け取ります。
領収書の目的
領収書は、受け取った人がさまざまな目的で利用します。ここでは以下の主要な目的別に、書き方の留意点をお伝えします。
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(1)金銭の授受が行われた事実を証明
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(2)税務署に対する証拠としての保管
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(3)勤務先などに対する経費精算の必要書類
(1)金銭の授受が行われた事実を証明
領収書の第一の目的は、金銭の授受が行われた事実を証明することです。とくに、領収書を発行しないと金銭の授受を証明しにくい、「対面・現金」でのやり取り時に、この目的は重要性を増します。お金を支払う側の立場から見ると、領収書がなければ、以下の点で不安です。
領収書がないと起きる不安
- お金を払ったのに「払っていない」と主張されて、二重請求されるのではないか
- 後から問題が起きて、苦情を伝えたり返金を希望したりするとき、相手の連絡先がわからない
- 法的にトラブルとなったとき、お金を払った証拠がないと、法的な救済が得られない
領収書を発行する立場から見ると、相手(顧客)をこのような不安に陥らせないように、「お金をたしかに領収いたしました」という証明として、領収書を発行します。よって、金銭受領の証明書として適切な書き方をすることが、まず大切です。
(2)税務署に対する証拠としての保管
次に、領収書の第二の目的として挙げられるのが、税務署に対する証拠としての保管です。第一の目的では、お金を支払った人と受け取った人の間で、事実関係を証明するために、領収書が存在していました。その一方で、お金を支払った人と税務署との間では、適切な税務処理がなされていることを証明する証拠として、領収書が機能します。
よって、領収書を書くときには、受け取った人が税務署に対する証明として使いたいときに、証明として成立するように書く必要があります。
税務署に対する書類として保管される場合、次の2つに大きく分けられます。
- 所得税法における「必要経費」として計上する
- 消費税法における「仕入税額控除」として計上する(一般課税の場合)
所得税法では、領収書の具体的な要件は定められていません。それが必要経費として適切であると証する書類であればよいとされています。その一方で、消費税法における「仕入税額控除」が認められるためには、細かな要件があります。2023年10月1日に開始した「インボイス制度」の適格請求書が、それにあたります(具体的な書き方は後述)。
(3)勤務先などに対する経費精算の必要書類
第三の目的としては、経費精算の必要書類としての利用があります。経費精算とは、会社の従業員などが業務に必要な支払いを、従業員が立て替えた際に、後から会社に申請して、立て替えた金銭の払い戻しを受けることです。
参考:経費精算とは?やり方や経費精算書の種類、効率化のポイントを解説
領収書を書くときには、領収書を受け取る人の都合によって、イレギュラーな要望を受けることがあると、知っておきましょう。また、あらかじめ多くの用途に適用できるように作成しておくことで、再発行や書き直しの手間を省略できるでしょう。以上を踏まえつつ、続いて具体的な実践について、解説していきます。
領収書を書く前に準備するもの
領収書を書く前に、必要なものを準備しましょう。ここでは、以下について解説します。
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1.フォーマット(テンプレート)
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2.公文書に使えるボールペン(手書きの場合)
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3.収入印紙と消印用の印鑑
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4.発行者の押印用のはんこ(あるとベター)
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5.適格請求書発行事業者の登録番号(インボイス制度に登録済の場合)
フォーマット(テンプレート)
まず、領収書のフォーマット(テンプレート)が必要です。領収書のテンプレートは「無料領収書エクセルテンプレート(Misoca)」から、80種類以上の種類が無料でダウンロードできます。
上はExcel形式となっています。Excelを持っていない方や苦手な方は「Misoca」がおすすめです。
また、紙に出力する必要があるがプリンターを持っていない場合や、手書きしたい場合には、文房具店などで購入しましょう。
公文書に使えるボールペン(手書きの場合)
領収書をパソコンからの印刷ではなく、手書きで書く場合は、「公文書に使えるボールペン」を準備します。
鉛筆や消せるボールペンは、内容を改ざんされるリスクがあるため、領収書には不適切です。領収書を書くときに最適なのは、耐水性や耐光性があるインクを使用した、消えない黒色のボールペンです。
収入印紙と消印用の印鑑
領収書に記載する金額が5万円以上の場合、領収書に収入印紙を貼る必要があるため、収入印紙を購入して準備しておく必要があります。
領収書の印紙税額の一覧表
出典:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」より作成
収入印紙は、郵便局・法務局のほか一部のコンビニでも購入できます。
収入印紙を領収書に貼る際に、印章または署名で消印する必要があるため、消印用の印鑑も準備しておくとよいでしょう。発行者の押印用の印鑑(会社の角印など)も、準備しておきましょう。
発行者の押印は必須ではありませんが、あるとフォーマルな印象を与えられます。
また、領収書の受取者によっては、「押印のない領収書は、正式ではない」と誤解している方もいます。あらかじめ押印しておけば、問い合わせ対応などの労力を減らせます。
適格請求書発行事業者の登録番号(適格請求書発行事業者に登録済の場合)
2023年10月1日開始のインボイス制度(適格請求書等保存方式)で、適格請求書発行事業者になっている場合は、その登録番号を用意します。便宜上、「適格請求書」という名称で呼ばれていますが、実際には領収書もインボイス制度の対象となる書類です。
参考:適格請求書とは
- 「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、登録番号のほか、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類するものをいいます。
○ 請求書や納品書、領収書、レシート等、その名称は問いません。
適格請求書発行事業者の登録を受けると、Tから始まる登録番号が通知されます。登録番号の構成は、次のとおりです。
登録番号の構成
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1.法人番号を有する課税事業者
「T」(ローマ字)+法人番号(数字13桁) -
2.上記以外の課税事業者(個人事業者、人格のない社団等)
「T」(ローマ字)+数字13桁(注)
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- (注)13桁の数字には、マイナンバー(個人番号)は用いず、法人番号とも重複しない事業者ごとの番号になります。
出典:国税庁「登録番号とは」
インボイス制度について詳しくは、「インボイス制度でやるべきことがわかる特設サイト」にまとめていますので、ご確認ください。
項目ごとの領収書の書き方
ここからは項目ごとに分けて、細かく領収書の書き方を解説していきます。
さまざまな領収書の目的に広く対応できる領収書の書き方をするために、適格請求書のガイドラインにも準拠した書き方を紹介します。
適格請求書の記載事項
適格請求書発行事業者でない方も、このガイドラインに合わせて領収書を発行することで、最も正式な形式の領収書を作りやすくなります。
では、項目ごとに見ていきましょう。
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1.事業者の氏名(名称)・登録番号
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2.取引年月日
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3.受領した金額
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4.取引内容(但し書き)
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5.税率ごとの内訳と消費税額及び適用税率
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6.宛名
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7.収入印紙
事業者の氏名(名称)・登録番号
まず、事業者の正式な氏名(または名称)を明記します。
電話番号などの連絡先も記載しておくと、領収書を受け取った人に対して親切です。押印する場合は、名称や住所の右側のあたりに押印します。適格請求書発行事業者の場合は、Tから始まる登録番号も記載します。なお、適格請求書発行事業者の登録を受けていない場合には、登録番号の欄は作らずに、行ごと削除します。適格請求書と誤認されるおそれがある書類を交付することは、禁止されているためです。
取引年月日
次に、取引年月日を記入します。
取引年月日は、実際に金銭を授受した日を書き入れます。実際に現金を受け取った日、銀行振込で入金された日、代金引換で支払いが行われた日など、金銭のやり取りが行われた日が、取引年月日です。領収書の発行日や商品の引渡し日と、金銭を受け取った日が異なる場合でも、領収書に記載するのは「金銭を受け取った日」です。
受領した金額
実際に受領した金額を記載します。
金額の書き方は、改ざんされるリスクを減らすように、工夫する必要があります。
3桁ごとに「,(カンマ)」を入れ、数字と数字の間の余白を空けすぎずに、詰めて書きます。さらに、金額の前後に記号を入れて、改ざんを防ぎます。
- 金額の前に入れるマーク:「¥」「金」など
- 金額の後ろに入れるマーク:「.-(ピリオド+ハイフン)」「-(ハイフン)」「※」「円」「円也」など
取引内容(但し書き)
但し書きで、受領金額が何の対価として支払われたものなのか、その取引内容を明確にします。
「お品代」のようにあいまいな書き方の場合、領収書を受け取った人の用途によっては、不適切となる場合があります。たとえば、勤務先の経費精算で認められない、税務署の調査で経費の証として認められない、などです。できるだけ具体的な明細を書くようにしましょう。
複数の商品がある場合は、品目・単価・数量などの内訳を記載し、軽減税率(8%)の対象商品には、記号を付けて明確にします。
記載の例
税率ごとの内訳と消費税額及び適用税率
適格請求書の要件を満たすためには、以下を記載しておく必要があります。
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
なお、消費税額の明記は、収入印紙の要否を判断するうえでも、重要となります。
記載金額が5万円以上の領収書は、印紙税の課税対象となりますが、税抜金額が明らかになっていれば、税抜金額が判断基準の金額となります。
宛名
宛名は、必要性が状況によって変わるため、注意が必要です。
1つめのパターンとして、適格請求書発行事業者ではなく、インボイス制度に対応する必要がない場合には、基本的には領収書を発行する相手の希望に応じて、対応します。
宛名の例
上記の宛名の書き方の詳細は、「「領収書の宛名」の疑問を解決!宛名なし・上様・自分で書く…はOK? 」にて解説しています。あわせてご覧ください。
2つめのパターンとして、インボイス制度に対応する場合、かつ以下の事業は、適格請求書に代えて適格簡易請求書を交付できます。適格簡易請求書は、宛名の記載が不要です。
適格簡易請求書を交付できる事業(宛名不要)
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(1)小売業
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(2)飲食店業
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(3)写真業
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(4)旅行業
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(5)タクシー業
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(6)駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)
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(7)その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
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小売業や飲食店業などの場合は、宛名なしで発行するか、領収書を発行する相手の要望に応じた氏名・名称を記入する選択肢があります。
3つめのパターンとして、簡易ではない適格請求書を発行する場合は、「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」を宛先に記載します。
相手方の正式な会社名・団体名・氏名などを確認して、間違いのないように書きましょう。
収入印紙
最後に、収入印紙です。
収入印紙が必要となる主要な条件を以下にまとめました。
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(1)紙の実物の領収書を発行したとき:PDFやメール送信などのデジタルの領収書は不要
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(2)支払い方法がクレジットカード決済ではない:クレジット販売は信用取引であり金銭の受領事実がないため印紙税の課税対象ではない(ただし領収書内にクレジットカード利用の旨を記載しておく必要あり)
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(3)記載金額が50,000円以上:税抜金額が明らかな場合は税抜金額で計算する
印紙税の税額の一覧表を再掲します。
領収書の印紙税額の一覧表
出典:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」より作成
収入印紙は、領収書の印紙貼付欄または空いているスペースに貼り付け、印紙と領収書にかかるように印章または署名で消印します。
- ※印紙に関する情報は、「注文書に収入印紙は基本必要ない|収入印紙が必要になる5つのケース」 にて、詳しく解説していますので、あわせご覧ください。
領収書の発行業務を効率化したいときの対策
クラウド領収書作成サービスを利用する
第一におすすめなのは、クラウド領収書作成サービスを利用することです。正確な領収書をスピーディに作るためには、できる限り手作業を削減し、自動化を目指すことが大切です。そんなときにおすすめなのが、領収書作成サービス「Misoca」です。
「Misoca」は、見積書・納品書・請求書といった書類を作成できるツールですが、「領収書の作成機能」も兼ね備えています。
各書類を作成する画面には、入力必須項目や消費税などの計算式があらかじめ設定されており、入力漏れや計算ミスの防止が可能です。社印やロゴなども自由に設定でき、素早くキレイな領収書を作成できます。
テンプレートを活用する
クラウド領収書作成サービスの導入が難しい場合は、テンプレートをうまく活用することが、効率化に役立ちます。
Excel形式の領収書テンプレートを「無料領収書エクセルテンプレート」からダウンロードしたら、頻繁に利用する形式に合わせて、カスタマイズしましょう。発行者の氏名(名称)や連絡先の部分はもちろんですが、よく使う但し書きをドロップダウンリストから選べるようにしたり、計算式を入力したりすることで、領収書の作成時間を短縮できます。
まとめ
領収書の目的は、大きく3つ分けられ、それぞれに対応するように領収書を作ることが大切です。
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(1)金銭の授受が行われた事実を証明
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(2)税務署に対する証拠としての保管
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(3)勤務先などに対する経費精算の必要書類
領収書を書く前に準備するものは、以下のとおりです。
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1.フォーマット(テンプレート)
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2.公文書に使えるボールペン(手書きの場合)
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3.収入印紙と消印用の印鑑
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4.発行者の押印用の印鑑(あるとベター)
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5.適格請求書発行事業者の登録番号(インボイス制度に登録済の場合)
項目ごとの領収書の書き方として、以下を解説しました。
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1.事業者の氏名(名称)・登録番号
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2.取引年月日
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3.受領した金額
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4.取引内容(但し書き)
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5.税率ごとの内訳と消費税額
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6.宛名
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7.収入印紙
領収書の発行業務を効率化したいときの対策として、以下が挙げられます。
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1.クラウド領収書作成サービスを利用する
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2.テンプレートを活用する
弥生のクラウド見積・納品・請求書サービス「Misoca」を使えば、簡単に領収書や請求書の自動作成が可能です。シンプルな操作性で見積書、納品書も素早く作成、送付、管理できます。
各書類を作成する画面には、入力必須項目をはじめ消費税(内税・外税)や源泉税などの計算式があらかじめ設定されており、インボイス制度に必要な適格請求書の発行にも対応しています。領収書の作成・管理を効率化したい場合は、ぜひ「Misoca」の利用を検討してみてください。
この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
税理士法人フォース 代表社員
お客様にとって必要な税理士とはどのようなものか。私たちは、事業者様のちょっとした疑問点や困りごと、相談事などに真剣に耳を傾け、AIなどの機械化では生み出せない安心感と信頼感を生み出し、関与させていただく事業者様の事業発展の「ちから=フォース」になる。これが私たちの法人が追い求める姿です。