四半期決算とは?決算の種類や必要な書類、手順などを解説
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四半期決算とは、四半期(一般的には3か月)ごとに行われる決算のことです。通常、決算とは、事業年度に1度行われる本決算を指します。金融商品取引法の適用を受ける上場企業では、四半期での業績の公表が義務付けられています。非上場の中小企業には四半期での業績の公表の義務はありませんが、任意で四半期決算を行う場合もあるため、手順を把握しておくことが大切です。
本記事では、四半期決算の概要や決算の種類、四半期決算に必要な書類、四半期決算を行う手順などについて解説します。
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四半期決算とは3か月に一度行われる決算のこと
四半期決算とは、一事業年度(会計期間)を4つに区切った四半期ごとに行われる決算のことです。四半期決算においては3か月を1期分とし、それぞれ第1四半期、第2四半期、第3四半期、第4四半期と呼ばれます。英語の「Quarter」の頭文字をとり、1Q、2Q、3Q、4Qと表現されることもあります。
例えば、事業年度が4月から翌3月の企業では、6月末が第1四半期決算、9月末が第2四半期決算、12月末が第3四半期決算となり、3月末の第4四半期決算が事業年度に一度の本決算です。
なお、金融商品取引法の適用を受ける上場企業などには、四半期での業績の公表が義務付けられています。非上場の中小企業は、四半期での業績の公表の義務はありませんが、自社の経営状態を把握するために任意で四半期決算を行うこともあります。
四半期決算は、3か月ごとに業績を区切って経営状態を把握できるため、ステークホルダーはタイムリーな情報を基に投資判断を行ことが可能です。また、企業は損益の変化を迅速に把握し、課題の早期発見や戦略の修正ができます。
決算の種類
決算とは、事業者の一定期間ごとの収益と費用を取りまとめて損益状態を明らかにすることです。決算日時点の資産、負債、純資産を確定させて、経営状態を把握します。決算には、四半期決算の他にも、以下のような種類があります。
月次決算:1か月単位で行う決算
月次決算とは、1か月単位で行う決算のことです。
上場・非上場にかかわらず、企業に月次決算を行う法的な義務はなく、実施するかは任意となります。月次決算の大きな目的は、1か月ごとの財政状態や経営成績を明らかにして、経営管理に役立てることです。月次決算を行うと、1か月ごとの売上や費用が明確になるため、期首に定めた事業計画が順調に進んでいるかを判断でき、タイムリーな事業戦略の検討につながるメリットがあります。
四半期決算:四半期(3か月)ごとに行われる決算
四半期決算とは、3か月の四半期ごとに行われる決算です。
上場企業などでは、四半期での業績の公表が義務付けられています。非上場の大企業や中小企業でも、四半期ごとの業績の変化を把握するために任意で四半期決算を行うことがあります。
中間決算:事業年度の半期時点で行う決算
中間決算とは、事業年度の半期時点で行う決算のことです。
一事業年度を上半期と下半期に分け、上半期終了時点(一般的には6か月)で決算を行います。四半期決算が義務付けられている上場企業は、中間決算は第2四半期決算に当たるため実施は必須です。その一方で、中小企業での実施は任意ですが、中間決算を行うことで上半期の自社の状況を正確に把握でき、事業戦略の実現に向けてよりスピーディーな対応が可能になります。
本決算:一事業年度に1度行う決算
本決算とは、一事業年度に1度行う決算のことです。
本決算はすべての企業の義務であり、一般的には、決算は本決算のことを指します。株式会社では、本決算の結果を株主総会で報告、または承認を受ける必要があります。法人の事業年度は、1年以内の任意の期間で自由に決めてよいことになっていますが、1年間としている企業が大半です。なお、事業年度の終了日のことを、決算日といいます。
こちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
四半期報告書の廃止による影響
これまで、金融商品取引法の適用を受ける上場企業などには、四半期決算の実施と併せて、四半期報告書の提出が義務付けられていました。しかし、金融商品取引法の改正により、2024年4月から四半期報告書が廃止されました。
四半期報告書の役割は、主に有価証券報告書の情報を補うことです。有価証券報告書とは、一事業年度ごとに企業自らが経営状態について外部へ開示するもので、金融商品取引法によって、上場企業などに提出が義務付けられている書類を指します。有価証券報告書の目的は、取引市場の透明性を保つために、ステークホルダーへ正しい情報を開示することです。開示情報には、企業の概況、事業や設備の状況などが含まれ、決算日から3か月以内に金融庁への提出が必要になります。
ただし、有価証券報告書の作成が年1回のため、ステークホルダーへのタイムリーな情報提供が難しい点が課題でした。そこで、四半期ごとに企業の概況や財務諸表などの情報をまとめ、四半期報告書を提出することになっていました。
その一方で、インタビューを基に財務データの分析などを行う四半期決算報告書の監査人レビューは、企業にとって大きな負担になっていたのが実情です。こうした背景から、企業の負担軽減と決算業務の効率化のため、四半期報告書が廃止されることになりました。その代わり、2024年4月以降は、半期ごとの半期報告書の提出が求められ、四半期決算状況の報告は四半期決算短信に一本化されたのです。半期報告書は、有価証券報告書で扱う企業の概況や財務諸表などの情報について、事業年度の開始から半期(第2四半期)までをまとめた書類を指し、上場企業は提出が義務付けられています。なお、四半期報告書の提出義務はなくなりましたが、任意での作成は可能です。
四半期決算短信は四半期での企業の決算発表をまとめた書類
決算短信とは、企業の決算発表の内容をまとめた書類のことです。四半期決算でまとめるものを四半期決算短信、本決算でまとめるものを通期決算短信といいます。上場企業は、決算を行ってから45日以内にステークホルダーに対して決算短信を開示します。なお、決算短信は正式な決算発表ではないため、監査の対象外です。よって、修正の可能性はありますが、有価証券報告書よりも早くステークホルダーに情報を届けることができるため、有用性が高いものといえるでしょう。
四半期決算に必要な財務三表
四半期決算においても、本決算と同じように、財務諸表の作成が必要になります。財務諸表のうち、四半期決算に用いる貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つは「財務三表」と呼ばれる重要な書類です。本決算で作成する決算書と違うのは対象期間が四半期(3か月)という点で、それぞれ「四半期貸借対照表」「四半期損益計算書」「四半期キャッシュ・フロー計算書」といいます。なお、中小企業にはキャッシュ・フロー計算書の作成義務はありませんが、上場企業には、四半期決算が法的に義務付けられています。四半期決算に必要な財務三表について詳しく見ていきましょう。
四半期貸借対照表:四半期ごとの期末時点における財政状態を示す書類
四半期貸借対照表は、第1四半期~第4四半期のそれぞれの期末時点における、企業の財政状態を示す書類です。
貸借対照表を見ると、企業が保有する現金や預貯金等の流動資産がわかります。他に、建物等の有形固定資産、ソフトウェアなどの無形固定資産等を含めた「資産」、いずれ返済しなければならない「負債」、返済義務のない自己資本(元手)である「純資産」も把握できます。よって、「企業がどれだけ資産を保有し、負債を負っているか」という、期末時点での財産の残高一覧のような書類といえるでしょう。
なお、貸借対照表の形式の一つである「勘定式」の記載方法では、貸借対照表は大きく左右2つに分かれており、左側に資産、右側に負債と純資産が記載されます。「資産=負債+純資産」となり、左右それぞれの合計額は常に同額になります。左右の金額が均衡状態を保っていることから、英語表記の「Balance Sheet(バランスシート)」を略して、「BS(ビーエス)」とも呼ばれます。ただし、上場会社が作成する決算短信での貸借対照表は、通常資産や負債などの勘定科目が縦に並んだ「報告式」が使われます。
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四半期損益計算書:四半期ごとの収益と費用の損益計算をまとめた書類
四半期損益計算書は、四半期(3か月)ごとの企業の収益と費用の損益計算をまとめた書類です。
損益計算書を見ると、「企業がどの程度の売上を上げて(収益)」「経費を何に使って(費用)」「どれくらい儲けが出たのか(利益)」がひと目でわかります。貸借対照表が決算時の残高一覧なのに対し、四半期損益計算書は企業の成績表といえるでしょう。損益計算書は、英語表記の「Profit and Loss Statement」を略して、「PL(ピーエル)」とも呼ばれます。
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四半期キャッシュ・フロー計算書:四半期における現金の流れを表す書類
四半期キャッシュ・フロー計算書は、四半期(3か月)における企業の現金の流れを表す書類です。
キャッシュ・フロー計算書を見ると、その会計期間中に、どのような理由でいくらのお金が出入りしたのかがわかります。会計期間中に企業がどれほど儲けたかは、損益計算書から読み取れます。それでもキャッシュ・フロー計算書が重要なのは、損益計算書上では利益が出ていても、実際に現金が増加しているとは限らないからです。特に、売掛金や買掛金といった掛取引を行っている場合、損益計算書上では売上となっていても手元に現金がないといったことが起こりえます。また、貸借対照表でも前期と比べてどの程度現金が増えているかはわかりますが、具体的な内訳までは把握できません。キャッシュ・フロー計算書を読み解くことで、損益計算書や貸借対照表だけを見るよりも、具体的かつ詳細に経営実績や財政状態を確認できるようになります。なお、キャッシュ・フロー計算書は、英語表記の「Cash Flow Statement」を略して「CF(シーエフ)」とも呼ばれます。
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四半期決算の手順
四半期決算の手順は本決算と同様ですが、負担軽減のため一部簡便な処理が認められています。例えば、倉庫や店舗にある商品の在庫を実際に点検し、数量・保管状態を確認する実地棚卸の省略などができます。四半期決算の主な流れは、以下のとおりです。
1. 勘定科目の残高を集計して確定する
四半期決算は帳簿を基に進めます。決算処理を行うためにはまず、該当する期間の記帳をすべて完了させなければなりません。日々の取引をすべて仕訳し、漏れがないようにします。記帳が完了した後、各勘定科目の残高を集計し、帳簿のデータと実際の残高を突き合わせて、内容が合致するかを確認しましょう。
記帳の確認が完了した後に試算表を作成します。試算表とは、記帳の整合性をチェックする役割を持つ集計表です。なお、試算表は原則として期をまたぐ取引を整理する決算整理の前後に作成します。この段階で作成する試算表を「決算整理前試算表」といいます。
2. 決算整理仕訳を行う
記帳内容と実際の残高を照らし合わせて数字を確定させた後、決算整理仕訳を行います。決算整理仕訳とは、期をまたぐ取引について、今期分と来期分に分けて整理する仕訳のことです。まだ支払が済んでいない、またはこれから代金を受け取るといった、入金や支払が来期になる取引を確認し、帳簿を修正します。決算整理仕訳を終えたら、試算表を改めて確定させましょう。
3. 財務諸表を作成する
基本的に、四半期決算でも他の決算と同様に財務諸表の作成が必要です。決算整理仕訳が完了して試算表が確定した後に、四半期貸借対照表、四半期損益計算書、四半期キャッシュ・フロー計算書といった財務諸表を作成します。
4. 取締役会・会計監査人の承認を得る
四半期決算で作成した財務諸表は、会社法によって定められている機関から承認を得る必要があります。取締役会と会計監査人を設置している株式会社は、株主総会での承認が不要ですが、定時株主総会で財務諸表の内容について報告を行う必要があります。
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四半期決算とは、一事業年度を4つに区切り、3か月ごとに行う決算のことです。中小企業には四半期決算の義務はありません。しかし、四半期決算を行うことで、より短期的な経営状態を確認でき、経営課題の早期発見や改善策の立案、経営戦略の修正などに役立ちます。四半期決算を行う場合は、会計ソフトを活用して決算業務を効率化することがおすすめです。決算の基になる帳簿付けも、弥生の会計ソフトなどを使えば、ミスなく効率化できます。なお、四半期決算を行わなくても、事業年度ごとの本決算はすべての企業に義務付けられています。自社に合った会計ソフトを活用して、決算をスムーズに行いましょう。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
