消費税還付とは?仕組みや受けられる条件、仕訳方法などを解説
監修者: 税理士法人アンサーズ会計事務所
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消費税の納付義務のある課税事業者は、商品などを販売したときに消費者から預かった消費税と、仕入れの際に支払った消費税を計算し、消費税の確定申告を行います。このとき、預かった消費税額より納付した消費税額の方が大きかった場合に、還付されるのが消費税還付です。ただし、消費税の還付は誰でも受けられるわけではなく、いくつかの条件が揃わないとなりません。
本記事では、消費税還付の仕組みや消費税が還付される条件の他、還付を受けた際の仕訳方法、消費税還付の申請方法についても解説します。
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納付しすぎた分が戻ってくる消費税還付
消費税還付とは、事業者が仕入れなどで支払った消費税額が消費者から預かった消費税額よりも大きい場合に、払いすぎた分が返金される仕組みのことです。
消費税は間接税といい、税金を負担する方(消費者)と納税者(事業者)が異なる税です。事業者は、商品やサービスを販売したときに消費者から消費税を預かり、その預かった消費税を消費者に代わって税務署に申告します。その際、消費税を受け取った事業者も、仕入などで商品や原材料を購入する際には消費税を支払っています。そのため、消費者から預かった消費税額から、事業活動の中で支払った消費税額を差し引き、実際に納付する消費税額を算出しなければなりません。
ただし、高額な仕入を行ったときなど、場合によっては、仕入などで支払った消費税額の方が、消費者から預かった消費税より多くなることがあります。このような場合、事業者は消費税を多く納付しすぎている状態です。この多く納付した分の消費税額が返金されるのが、消費税還付です。
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還付金の計算
本来納付するべき消費税額は、預かった消費税額から支払った消費税額を引くことで求めることができます。本来納付するべき消費税額がマイナスだった場合は、消費税の還付を受けられる可能性が高いでしょう。その一方で、プラスだった場合は、算出された金額の消費税を納付しなければなりません。
なお、この計算によって消費税額がマイナスになったとしても、実際に消費税の還付を受けるには、後述する条件を満たす必要があります。
消費税還付の計算から除外される費用
消費税還付の計算のもとになるのは、消費税の課税対象になる取引です。課税対象にならない売上や経費は、そもそも消費税が発生していないため、還付の計算にも関係がありません。すべての費用が課税対象になるわけではないので注意が必要です。課税対象ではない費用には、以下が挙げられます。
従業員に支払った給与・賃金
従業員に支払った給与や賃金は、消費税還付の計算から除外されます。給与・賃金は雇用契約にもとづく労働の対価であり、事業として対価を得て行われる取引ではないからです。
事業税や固定資産税をはじめとする租税公課
事業税や固定資産税をはじめとする租税公課も消費税還付の計算から除外される費用です。租税公課は原則として不課税です。
社会保険料や生命保険料などの保険料
社会保険料や生命保険料などの保険料も消費税還付の計算から除外される費用です。保険料や共済金は、課税の対象となっていないためです。
国外取引により支払った経費など
国外取引により支払った経費なども消費税還付の計算から除外される費用です。国外取引では消費税は課税されません。
寄附金、祝金、見舞金
寄附金、祝金、見舞金は一般的に対価として支払われるものではないため不課税です。
無償による試供品や見本品の提供
無償の試供品や見本品には対価の支払いがないため、課税対象にはなりません。
還付金の受け取り方法と受け取れる時期
消費税の還付を受けるには、消費税の確定申告を行う必要があります。消費税の確定申告期限は、法人の場合は事業年度終了の日の翌日から2か月以内、個人事業主は翌年の3月31日までです。どちらも、申告書類の提出先は納税地を所轄する税務署です。
e-Tax(電子申告)を利用すると、早ければ確定申告書の提出から2~3週間で還付が受けられることもありますが、還付金が受け取れる時期の目安は、おおむね1か月~1か月半後になります。特に、2月から3月にかけての所得税や消費税などの確定申告期間中は、還付金の支払い手続きにも時間がかかることを想定しておいてください。
還付金の受け取りは、預貯金口座への振り込みか、最寄りのゆうちょ銀行各店舗または郵便局に出向いて受け取る方法の2種類があります。預貯金口座への振り込みを希望する場合は、確定申告書の「還付される税金の受取場所」欄に、申告者本人名義の口座の情報を記載します。入金前には、税務署から国税還付金振込通知書が送付されます。
消費税の申告については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
消費税還付が受けられる条件は?
消費税の還付を受けるには、消費税の預かり額より納付額がプラスになっていることに加え、以下の条件を満たす必要があります。消費税還付が受けられる条件を詳しく見ていきましょう。
課税事業者であること
課税事業者とは、消費税の申告・納付義務のある事業者のことです。以下に挙げる「基準期間」または「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超えた事業者は、法人・個人事業主共に課税事業者になります。なお、課税売上高とは消費税の課税対象になる日本国内、または輸入などによる売上のことで、対価を得て行う取引のほとんどが該当します。
法人の基準期間と特定期間
基準期間:前々年の事業年度
特定期間:前年の事業年度開始の日以後6か月間
個人事業主の基準期間と特定期間
基準期間:前々年の1月1日から12月31日まで
特定期間:前年の1月1日から6月30日まで
また、税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、自ら課税事業者になるケースもあります。2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応するためには、課税事業者であることが要件になります。基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていなくても、インボイス制度に対応したい場合は、税務署に届出をすれば課税事業者になることができます。
課税事業者については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
原則課税を適用していること
消費税の確定申告における計算方法には、「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2種類があります。
原則課税方式は、課税売上高にかかる消費税額から、事業者が仕入や経費で支払った消費税額(仕入税額控除)を差し引いて計算する方法です。
その一方で、簡易課税方式は、課税売上高にかかる消費税額を基礎として業種ごとに定められた「みなし仕入率」を掛け、その金額を仕入などにかかった消費税額として計算する方法です。簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者しか選択できません。
消費税の還付を受けられるのは、この2つの計算方法のうち、原則課税方式を適用している事業者に限られます。簡易課税方式ではあらかじめみなし仕入率が決まっているため、売上の消費税額より仕入の消費税額が多くなることはないからです。
消費税還付を受けられるケース
消費税還付が発生しやすいのは、課税売上が少ないときや課税仕入が多いときです。特に次のようなケースは、消費税の還付を受けられる可能性が高いといえます。原則課税方式を採用している課税事業者で、以下のケースに該当するような場合は、支払った消費税額が預かった消費税額を上回っていないかをしっかり確認してください。
不動産、設備投資など高額な課税仕入れを行ったとき
不動産や機械、車両など、大規模な設備投資を行うと、支払う消費税額が多くなります。特に、創業間もない時期や新規事業をスタートさせたばかりの時期などは、軌道に乗るまで売上も低いことが多く、消費税還付を受けられる可能性が高いでしょう。ただし、土地を購入した場合や居住用の賃貸業のみを営んでいる場合は、消費税還付の対象外となります。
大幅な赤字があったとき
事業が赤字になったときは、売上よりも費用を多く支払っている状態です。課税仕入が増えると、消費税還付が発生する場合があります。ただし、経費の中には消費税の課税対象にならないものもあるため、赤字だからといって、必ずしも消費税が還付されるわけではありません。
輸出が事業の主軸で売上の多くが免税取引の場合
輸出取引は消費税が免除されます。そのため、輸出取引については、輸出許可書などを保存することで、売上にかかる消費税は免税になります。また、国内で仕入を行った場合、その取引には消費税が課税されます。国内で仕入れた商品を輸出して販売している事業者であれば、仕入は課税、売上は免税となり、仕入時に支払った消費税が還付となる可能性が高いでしょう。
還付金を受け取った場合の仕訳方法
ここからは、還付金を受け取った場合の仕訳方法について見ていきます。消費税の仕訳は、経理処理の方法が「税抜経理方式」か「税込経理方式」かによって異なります。課税事業者の場合、税抜経理方式と税込経理方式のどちらを選択するかは事業者の任意です。
税抜経理方式
税抜経理方式とは、本体価格と消費税額を分けて処理する方法です。税抜経理方式には期中の数字が把握しやすいメリットがありますが、本体価格と消費税を分けて計上するため経理処理が煩雑になります。ただし、会計ソフトを使えば自動で処理できるので、さほど手間はかかりません。
税抜経理方式の場合、消費税還付の仕訳は次のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仮受消費税 | 7,000円 | 仮払消費税 | 10,000円 |
未収消費税 | 3,000円 |
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 3,000円 | 未収消費税 | 3,000円 |
税込経理方式
税込経理方式とは、売上高や仕入高に消費税額を含める形で処理する方法です。税込価格だけを記帳すれば良いため仕訳に手間がかかりませんが、期中の数字が把握しづらいというデメリットがあります。
税込経理方式の場合、消費税還付の仕訳は次のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収消費税 | 3,000円 | 雑収入 | 3,000円 |
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 3,000円 | 未収消費税 | 3,000円 |
税込経理方式と税抜経理方式については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
消費税還付の申告期限と必要書類
消費税の還付を受けるためには確定申告を行う必要があります。還付申告の期限や申告方法について、改めて確認してください。申告期限は、法人の場合は事業年度終了の日の翌日から2か月以内、個人事業主は翌年の3月31日までです。消費税還付申告の際に提出する書類は、以下のとおりです。納税地を所轄する税務署に提出しましょう。
提出書類 | 書類の概要 |
---|---|
消費税及び地方消費税の申告書 | 事業者の基本情報や、計算した消費税額などを記載する書類です。 |
課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表 | 課税売上額や免税売上額などをもとに、課税売上割合などを計算するための書類です |
消費税の還付申告に関する明細書 | 消費税の還付を受ける理由や、仕入れの明細などを記載する書類です。法人用と個人事業者用があります。 |
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課税事業者になったら消費税の確定申告は必須
課税事業者になると、消費税の申告・納付の義務が生じます。消費者から預かった消費税額よりも、仕入などで支払った消費税額が多かった場合は、確定申告を行うことで還付を受けることができます。ただし、消費税の還付を受けるには原則課税方式を選択していることが要件になり、仕訳に手間がかかります。
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よくあるご質問
消費税還付とは?
消費税還付とは、事業者が仕入などで支払った消費税額が消費者から預かった消費税額よりも大きい場合に、払いすぎた分が返金される仕組みのことです。詳しくはこちらをご確認ください。
消費税の還付金はいつ受け取れる?
還付金が受け取れる時期の目安は、確定申告書の提出からおおむね1か月~1か月半後です。e-Tax(電子申告)を利用すると、早ければ確定申告書の提出から2~3週間で還付が受けられることもあります。詳しくはこちらをご確認ください。
消費税還付が受けられる条件は?
消費税の還付を受けるには、消費税の預かり額より納付額がプラスになっていることに加え、課税事業者であること、原則課税を適用していることが条件となっています。詳しくはこちらをご確認ください。
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この記事の監修者税理士法人アンサーズ会計事務所
吉祥寺にオフィスを構えて10年以上の実績と、40名以上のスタッフのマンパワーで、個人事業主から従業員100名を超える会社まで、幅広く対応中。司法書士、社会保険労務士など他士業との連携で法人のお悩み事にワンストップで対応可能。