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配偶者(特別)控除と年収の関係|扶養控除との違いもわかりやすく解説

配偶者控除および配偶者特別控除は、適用条件や計算方法が複雑なため、従業員から適用可否について質問を受けることも多いのではないでしょうか。特に配偶者特別控除は、納税者と配偶者の両方の年収によって控除額が変動するため、担当者も混乱しやすいポイントです。

本記事では、配偶者控除と配偶者特別控除の概要、適用される年収条件、計算方法について、早見表を活用しながらわかりやすく解説します。

※本記事は2025年3月16日時点の情報を基に制作しており、今後変更される可能性があります。

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配偶者控除とは

配偶者控除とは、所得税法における税制上の優遇措置の1つで、一定以下の所得金額の配偶者を持つ納税者が受けられる所得控除です。ここでは以下の3つのポイントを基に、配偶者控除について解説します。

  • 配偶者控除を受ける条件
  • 控除額
  • 納税者の合計所得金額が900万円を超えると50万円ごとに控除が減額され、1,000万円を超えると配偶者控除を受けられない

条件によって控除額が変わったり、控除が受けられなかったりするため、しっかり理解しておきましょう。

配偶者控除を受ける条件

配偶者控除の適用を受けるには、その年の12月31日時点で、配偶者が以下の条件をすべて満たしている必要があります。

  • 民法の規定による配偶者であること
  • 納税者と生計を一にしていること(日常の生活費を共用している状態)
  • 合計所得金額(給与所得以外の所得もすべて含めた所得額)が年間58万円以下
  • 給与収入のみでは123万円以下(給与収入123万円-給与所得控除65万円=58万円)
    ※交通費や通勤手当は基本的に給与収入に含まない
  • 青色申告者の事業専従者として給与の支払いを年内に一度も受けていない、または白色申告者の事業専従者でない

この中で多くの方にかかわる条件は、配偶者の所得要件でしょう。「令和7年度税制改正の大綱」に基づき、この所得要件は2025年から変更されました。この税制改正により、所得税の基礎控除の最低保障が48万円から95万円に引き上げられ、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられたことによるものです。

参照:財務省「令和7年度税制改正の大綱新規タブで開く

控除額

配偶者控除による控除額は以下のとおりです。

控除を受ける納税者本人の合計所得金額 控除額
一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

上表の老人控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で、年齢が70歳以上の控除対象配偶者を指します。このように、控除される金額は納税者本人の所得や、配偶者の年齢によって変わります。

なお、配偶者控除の適用を受けるための所得要件は緩和されましたが、控除額自体に変更はありません。

参照:国税庁「No.1191 配偶者控除新規タブで開く

納税者の合計所得金額が1,000万円を超えると配偶者控除を受けられない

配偶者控除および、後述する配偶者特別控除には、納税者本人の側にも所得要件があります。いずれも納税者本人の合計所得が900万円を超えると50万円ごとに控除が減額され、1,000万円超になるとゼロになります。配偶者の年収だけでなく、納税者本人の年収も控除が適用されるか否かにかかわるため注意が必要です。

該当する可能性がある場合、年末調整の際に納税者本人の合計所得金額を調べて、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられるか確認してみましょう。

配偶者特別控除とは

配偶者控除が適用されない場合でも、条件に応じて控除を受けられる場合があります。これが配偶者特別控除です。ここでは、以下のポイントを解説します。

  • 配偶者特別控除を受けるための条件
  • 控除額

配偶者控除を受けられなくても配偶者特別控除なら受けられる場合があるため、内容を理解しておきましょう。

配偶者特別控除を受けるための条件

配偶者特別控除を受けるには、配偶者がその年の12月31日時点で、以下の条件をすべて満たしている必要があります。

  • 民法の規定による配偶者である
  • 納税者と生計を一にしている(日常の生活費を共用している状態)
  • 合計所得金額(給与所得以外の所得もすべて含めた所得額)が年間58万円超133万円以下(給与収入のみの場合、123万円超201.6万円以下)であること
    ※交通費や通勤手当は基本的に給与収入に含まない
  • 青色申告者の事業専従者として給与の支払いを年内に一度も受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
  • 配偶者が、配偶者特別控除を適用していない
  • 源泉控除対象配偶者がある居住者として、配偶者が源泉徴収されていないこと(年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けていない場合は除外)

配偶者特別控除を受けるうえで覚えておきたいのは、配偶者どうしでお互いに控除を適用できない点です。仮に夫と妻の所得が両者とも要件に合致したとしても、どちらか1人しか申請できません。

なお、配偶者特別控除が適用される所得要件の上限(合計所得金額133万円以下)に関しては、「令和7年度税制改正の大綱」では変更されません。

参照:財務省「令和7年度税制改正の大綱新規タブで開く

控除額

配偶者特別控除で控除される金額は以下のとおりです。

配偶者の合計所得金額 控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下
48万円以下 配偶者控除を適用
48万円超 95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超 100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超 105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超 110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超 115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超 120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超 125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超 130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超 133万円以下 3万円 2万円 1万円

配偶者控除に比べて、配偶者の所得金額は細分化されています。合計所得金額が58万円を超える場合は、上表を参考にして控除額を計算してください。なお、上表は「令和7年度税制改正の大綱」で変更された内容を反映したものです。これにより、配偶者特別控除が満額適用される上限が、従来の年収150万円から160万円へと引き上げられました。控除額自体に関しては変更がありません。

参照:国税庁「No.1195 配偶者特別控除新規タブで開く

配偶者控除と配偶者特別控除の違い

配偶者控除と配偶者特別控除は、配偶者の所得に応じてどちらが適用されるかが変わります。

配偶者控除を受けられるのは、配偶者の年間所得が58万円以下の方です。その一方で、配偶者特別控除は配偶者の年間所得が58万円超133万円以下の方に適用されます。

つまり、配偶者の所得が58万円を超過したために、配偶者控除を受けられない方が利用するのが配偶者特別控除です。

なお、納税者本人の所得要件に関しては、両制度とも共通しています。どちらの控除を利用する場合も、納税者本人の年間所得が1,000万円以下であることが条件です。

配偶者控除と扶養控除の違い

扶養控除は、配偶者以外の扶養親族(子どもや親など)を扶養している場合に適用される所得控除で、配偶者控除と混同されやすい制度です。扶養控除は扶養親族の属性ごとに3種類あり、それぞれ以下の金額の控除を受けることが可能です。

  • 一般の控除対象扶養親族(16歳以上):38万円
  • 特定扶養親族(19歳以上23歳未満):63万円
  • 老人扶養親族(70歳以上) 同居老親:58万円 同居老親以外:48万円

つまり、配偶者控除と扶養控除では、納税者と扶養対象者の続柄が異なります。配偶者控除は「納税者の配偶者」、扶養控除は「配偶者以外の扶養親族」がいる場合に適用される制度です。要件を満たす配偶者と扶養親族がいる場合、配偶者控除と扶養控除は併用することが可能です。

配偶者控除と扶養控除では、納税者本人の所得要件が異なります。

配偶者控除では、納税者本人の合計所得が1,000万円以下であることが条件です。その一方で、扶養控除には納税者本人の所得制限がないため、所得額にかかわらず適用可能です。ただし、扶養控除は扶養親族本人の所得に対しては厳格であり、年間所得が58万円(給与収入のみの場合、年収123万円)を1円でも超えると控除を受けられません。

なお、「令和7年度税制改正の大綱」によって「特定親族特別控除(仮称)」が新たに創設される予定です。この改正により、扶養親族本人の所得が58万円を超えた場合でも、合計所得金額が123万円以下ならば、一定の控除が受けられるようになります。合計所得金額が85万円以下までなら63万円の控除が適用され、それを超過すると段階的に控除額が減額されます。このしくみは、配偶者特別控除と似た形式です。

【年収別】配偶者控除と配偶者特別控除の控除額早見表

配偶者控除および配偶者特別控除は、配偶者や納税者本人の所得によって控除額が変わるため、わかりにくいと感じる方も少なくありません。以下は、所得ごとの控除額がひとめでわかる早見表です。

なお、以下の表は、配偶者が給与所得者であることを前提にしています。表には合計所得金額と対応する給与年収も併記していますが、あくまで概算のため、目安として参考してください。

納税者本人の合計所得金額
(給与所得のみの場合における給与等の収入金額)
配偶者の給与年収(概算)
900万円以下
(1,095万円以下)
900万円超
950万円以下
(1,095万円超
1,145万円以下)
950万円超
1,000万円以下
(1,145万円超
1,195万円以下)
配偶者控除額 給与等の合計所得
58万円以下
38万円 26万円 13万円 123万円以下
配偶者特別
控除額
給与等の合計所得
58万円超 95万円以下
38万円 26万円 13万円 123万円超
160万円以下
95万円超100万円以下 36万円 24万円 12万円 160万円超
165万円以下
100万円超105万円以下 31万円 21万円 11万円 165万円超
170万円以下
105万円超110万円以下 26万円 18万円 9万円 170万円超
175万円以下
110万円超115万円以下 21万円 14万円 7万円 175万円超
180万円以下
115万円超120万円以下 16万円 11万円 6万円 180万円超
185万円以下
120万円超125万円以下 11万円 8万円 4万円 185万円超
190万円以下
120万円超125万円以下 6万円 4万円 2万円 190万円超
197万円以下
130万円超133万円以下 3万円 2万円 1万円 197万円超
201万円以下
133万円超 0円 0円 0円 201万円超

上表を参考に、適用される配偶者控除または配偶者特別控除の控除額を確認してください。

参照:国税庁「No.2672 年末調整で配偶者控除または配偶者特別控除の適用を受けるとき新規タブで開く
参照:国税庁「No.1410 給与所得控除新規タブで開く

ケース別の控除金額シミュレーション

控除を受けるにあたっては、「配偶者と扶養親族がそれぞれいる」「配偶者控除は受けられないが、配偶者特別控除は受けられる」などさまざまなケースが考えられます。そこで、具体的にどのくらいの金額が控除されるのか、ケース別に控除金額をシミュレーションしてみましょう。取り上げるケースは以下のとおりです。

  • 配偶者控除のみのケース
  • 配偶者特別控除のみのケース
  • 配偶者控除と扶養控除のケース
  • 配偶者控除と扶養控除(特定扶養親族あり)のケース

配偶者控除のみのケース

  • 納税者:合計所得800万円
  • 配偶者の合計所得:36万円(給与収入のみの場合101万円)
  • 配偶者以外の扶養親族:なし

納税者本人の合計所得が1,000万円以下、配偶者の合計所得が58万円以下のため、所得要件を満たし配偶者控除が適用されます。納税者の合計所得は800万円で、900万円以下のため、適用される控除は満額の38万円です。

配偶者特別控除のみのケース

  • 納税者:合計所得950万円
  • 配偶者の合計所得:100万円(給与収入のみの場合165万円)
  • 配偶者以外の扶養親族:なし

配偶者の合計所得が58万円を超えており、納税者の合計所得が1,000万円以下に収まっているため、配偶者控除ではなく配偶者特別控除が適用されます。ただし、納税者と配偶者の両方とも満額支給のラインを超える年収を得ているため、満額での控除は適用されません。納税者の合計所得は950万円、配偶者の合計所得が100万円のため、適用される控除額は24万円です。

配偶者控除と扶養控除のケース

  • 納税者:合計所得800万円
  • 配偶者の合計所得:36万円(給与収入のみの場合101万円)
  • 配偶者以外の扶養親族:1人(17歳の高校生)
  • 扶養親族の所得:20万円(給与収入のみの場合85万円)

納税者の合計所得が1,000万円以下で配偶者の合計所得は58万円以下のため、配偶者控除が適用されます。納税者の合計所得は800万円で、900万円以下のため、控除額は38万円です。

また、扶養親族である17歳の子どもがアルバイトで得た合計所得が20万円のため、扶養控除の所得要件(58万円以下)を満たします。一般の控除対象扶養親族に該当するため、適用される控除額は38万円です。配偶者控除の38万円と、扶養控除の38万円を合わせて、控除額合計は76万円です。

配偶者控除と扶養控除(特定扶養親族あり)のケース

  • 納税者合計所得:800万円
  • 配偶者合計所得:36万円(給与収入のみの場合101万円)
  • 配偶者以外の扶養親族:2人(15歳の中学生と21歳の大学生)
  • 扶養親族の所得:15歳の扶養親族は無収入、21歳の扶養親族は所得45万円(給与収入のみの場合110万円)

まず、納税者の合計所得が1,000万円以下であり、配偶者の合計所得も58万円以下のため、配偶者控除の対象となります。納税者の合計所得が800万円で、900万円以下のため、控除額は38万円です。

続いて、扶養控除を計算します。15歳の子が1人いますが、扶養控除では16歳未満の子は対象外となるため控除を受けられません。

その一方で、21歳の扶養親族は大学生で、アルバイトの給与所得45万円を得ています。所得が58万円以下なので、扶養控除を適用可能です。年齢的に「特定扶養親族」に該当するため、63万円の控除を受けられます。

なお、21歳の大学生は、19歳以上23歳未満の親族に該当するため、「令和7年度税制改正の大綱」で創設される「特定親族特別控除(仮称)」の対象です。この制度により、今後21歳の大学生の所得が増えても、58万円超から123万円以下の範囲内であれば、一定の控除を受けられます。

いずれにしても、上記のケースで受けられる控除の合計額は38万円+63万円の合計101万円です。なお、15歳の中学生には扶養控除は適用されませんが、児童手当の支給対象となります。

よく聞く配偶者控除の年収の壁3つ

配偶者控除や配偶者特別控除の適用には所得制限が設けられていることから、各控除が適用されるラインは「年収の壁」と呼ばれることがあります。主な年収の壁は次の3つです。

  • 1.
    年収103万円の壁【所得税の課税ライン】
  • 2.
    年収150万円の壁【満額控除を受けられる限度額】
  • 3.
    年収201万円の壁【配偶者特別控除を受けられる限度額】

それぞれの年収の壁について解説します。

1.年収103万円の壁 【所得税の課税ライン】

年収103万円の壁とは、2024年までの税制において、配偶者控除を受けられる配偶者の年収の上限です。年収103万円の場合、給与所得控除55万円を差し引いて所得金額が48万円になります。配偶者控除の所得要件の1つに「配偶者の所得が48万円以下」とあるため、他の控除が一切ない場合、年収103万円は配偶者控除が受けられる最大の給与収入額です。

配偶者控除では納税者の所得から38万円が控除されますが、現在は「配偶者特別控除」が導入され、年収103万円を超えても段階的に控除が適用されます。つまり、税務上の年収103万円の壁はなくなっています。

それでも、多くの方が年収103万円を基準に調整する理由は、企業が支給する扶養手当などの影響です。企業によっては年収に上限を設けた扶養手当があり、これが103万円の壁と感じさせる一因です。

ただし、「令和7年度税制改正」により、2025年以降、年収103万円の壁は「年収160万円の壁」へと引き上げられました。これは基礎控除額の最低保障額が48万円から95万円に、同じく給与所得控除額が55万円から65万円に引き上がるためです。これにより、年収103万円の壁を気にして働き控えをする傾向が緩和されると予想されます。

参照:財務省「令和7年度税制改正の大綱新規タブで開く

2.年収150万円の壁 【満額控除を受けられる限度額】

年収150万円の壁とは、2024年までの税制において、配偶者特別控除の満額38万円の控除を受けられる、配偶者の年収上限です。配偶者特別控除で38万円の満額控除を受けるためには、配偶者の合計所得が48万円超95万円以下でなければなりません。

年収150万円の場合、給与所得控除の55万円を差し引くと所得が合計で95万円になるため、満額控除の所得要件を満たします。ただし、年収が150万円を1円でも超えると控除額は36万円に減少するため、この150万円のラインも働き控えを誘発する年収の壁となっていました。

しかし、年収103万円の壁が年収160万円の壁になるのと同様、年収150万円の壁も「令和7年度税制改正の大綱」によって変更される予定です。給与所得控除が55万円から65万円に増額されたことに伴い、年収150万円の壁は2025年(令和7年)以降、年収160万円の壁になります。

参照:財務省「令和7年度税制改正の大綱新規タブで開く

3.年収201万円の壁 【配偶者特別控除を受けられる限度額】

配偶者特別控除を受けられる年収の上限が、年収201万円の壁です。より厳密には、年収201万6,000円を超えると配偶者特別控除を受けられなくなります。配偶者特別控除において、控除を受けられる配偶者の所得上限は133万円です。年収201万6,000円の場合、給与所得控除は68万4,800円であるため、控除後の所得は133万1,200円となり、133万円を超えます。

ただし、配偶者特別控除は配偶者の年収が増えるにつれて控除額が段階的に減少するため、必ずしも年収を201万円以下に抑えることが得策とは限りません。控除額と実際の手取り収入を比較したうえで、働き方を検討するのがおすすめです。なお、年収201万円の壁については、「令和7年度税制改正の大綱」による変更はありません。

年収130万円と106万円の壁は社会保険の扶養に関係する

よく耳にする言葉として「年収130万円の壁」と「年収106万円の壁」もあります。103万円の壁などと一緒に語られることが多いため混同しがちですが、これら2つの壁は社会保険の扶養に関する壁であるため配偶者控除などとは関係がありません。

年収130万円の壁とは、雇用形態や企業の規模などに関係なく、だれもが社会保険の扶養から外れる年収です。外れた後は、自身で勤務先の厚生年金や健康保険(社会保険)、あるいは国民年金や国民健康保険に加入することになります(保険者などによっては向こう1年での収入として該当するケースも存在する)。

年収106万円の壁は、勤務先の雇用条件や規模によっては扶養から外れてしまう年収です。適用拡大した社会保険適用事業所の標準報酬月額88,000円×12か月を、便宜的に106万円の壁と呼んでいます。外れた後は自身で厚生年金保険と健康保険に加入しなければなりません。

社会保険の適用範囲は以前より拡大し、2024年10月以降は、従業員51人以上の企業などにおいて、勤務時間が週20時間以上の場合は加入することになりました。

社会保険の扶養については、こちらの記事で解説しています。

年末調整で配偶者控除の申告を忘れてしまった場合の対処法

年末調整で配偶者控除の申告を忘れてしまった場合、会社に申告のやり直しを申請するか、自分で確定申告するかの2つの対処法があります。

年末調整における配偶者控除の申告では、事前に会社から書類を受け取り、期限内に収入や控除にかかわる内容を記入して提出するのが一般的です。配偶者控除に関する記入を忘れていたり、期限を過ぎて提出したりする場合、会社に相談すれば、配偶者控除の申告をやり直せる可能性があります。そのため、まずは会社に確認をしましょう。

やり直しができない場合は、自分で確定申告を行います。確定申告では、会社が行う年末調整の作業を自分で行うため時間や手間がかかります。年末調整で手間や時間を取られず配偶者(特別)控除を受けるために、申告内容を忘れず記入して、期限内に年末調整の申告書を提出するようにしましょう。

確定申告の申告期限を過ぎてしまったら?

確定申告は原則、毎年2月16日~3月15日まで(土曜・日曜・国民の祝日・休日に当たる場合は、翌日(または翌々日)の月曜日が期限)に済ませる必要があります。期限を過ぎた場合は「期限後申告」として申告を受け付けてもらうことが可能です。

しかし、期限後申告にはペナルティがあり、納めるべき所得税が足りていないと加算税や延滞税が発生する可能性があります。期限内に確定申告をしなかった場合、「無申告加算税」が課されます。指摘を受ける前に自主的に申告すれば、5%で済みますが、税務署に指摘されてから申告すると15~30%にもなります。加えて、納税が遅れた日数分、延滞税の納付も必要です。そのため、早めに申告しましょう。

ただし、還付申告の場合は、年明け1月1日から5年間可能となります。

配偶者(特別)控除を満額で受けられるのは年収160万円まで

「令和7年度税制改正」により、長年にわたり労働者の働き控えを誘発していた「年収の壁」に変化が生じ、2025年以降、配偶者控除が適用される配偶者の上限年収は123万円へ変更されました。また、配偶者特別控除の満額控除を受けるための上限年収も160万円になりました。念のため、必ず最新情報を確認してください。

さらに、年収が160万円を超えると控除額は段階的に減額され、配偶者の年収が201万6,000円以上になると控除は適用されなくなるため注意しましょう。

とはいうものの、年収の壁を気にしすぎると、より多くの収入を得られる機会を逃す可能性があります。そのため、配偶者控除や配偶者特別控除における年収の壁を越えるべきか検討する際は、控除を受けて節税できる金額と、配偶者が壁を気にせず働いた場合に増加する収入を計算して比較してみるのが大切です。

解説した配偶者控除と配偶者特別控除に加え、扶養親族がいる場合は扶養控除の条件や控除額も参考に、控除を適用するか考えてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務

中小企業を経営する上で代表的なお悩みを「魅せる会計事務所グループ」として自ら実践してきた経験と、約3,000社の指導実績で培ったノウハウでお手伝いさせて頂いております。
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