見積もりとは?見積書の作成時の注意点も簡単に解説
監修者: 高崎文秀(税理士)
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見積もりとは、作業時間や行程、費用などについて、必要となる程度をあらかじめ概算することを意味する言葉です。ビジネスにおける見積もりとは、提供する商品やサービスの価格、期間など内容を事前に算出し提示する行為のことで、円滑な取引に欠かせない行為です。
本記事では、特に事業を始めたばかりの事業者やフリーランスなどの個人事業主の方に向けて、見積もりの基本的な意味から、具体的な「見積書」の書き方、作成時の注意点までをわかりやすく解説します。取引の相手方に信頼される、正確な見積書をスムーズに作成するために役立ててください。
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見積もりとは
ビジネスにおける「見積もり」とは、提供する商品やサービスの金額、数量、工程、時間などを、あらかじめ算出する行為そのものを指します。例えば、「作業にかかる費用を見積もる」「代金と納期を見積もる」といった使い方をします。
そして、この見積もった金額などを、書類形式でまとめたものを「見積書」として取引の相手方に提示するのが一般的です。
見積書とは受発注双方の認識のズレを防ぐための書類
見積書とは、具体的な金額や条件を「見積もり」した結果を記載した書類のことです。一般的に、製品やサービスを提供する受注側が、発注側に対して「提供する内容と金額はこのようになります」と契約前に提示します。
見積書の提示には、取引内容や金額に対する双方の認識のズレをなくし、後のトラブルを防ぐ重要な役割があります。また、発注側にとっては、予算を組んだり、上長に決裁を仰いだりするための検討材料となります。なお、見積書は郵便法に規定される「信書」に該当する書類のため、郵送する際は、日本郵便と総務省の認可を受けている民間信書便事業者(バイク便や配送業者などが提供する信書送達サービス)のみの利用となります。
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参照:総務省「信書便事業者一覧(令和7年6月23日現在)
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相見積もりとは発注側が複数の業者に見積書を依頼すること
見積もりと関連する用語に「相見積もり(あいみつもり)」があります。これは、発注を検討している側が複数の事業者に見積もりを依頼し、提示された価格やサービス内容、納期などを比較検討することです。「合見積」と表記したり、「あいみつ」と略して呼ばれることもあります。また、公的機関などでは「見積もり合わせ」と言ったりします。
複数の提案を比べることで、適正な相場感を把握したり、自社・自事業の要望に最も合う発注先を選定したりする目的で行われます。
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見積書が持つ役割
見積書は、単に価格を提示するだけの書類ではありません。取引を円滑に進めるために、発行する側と受け取る側の双方にとって、重要な役割を担っています。それぞれの立場から、具体的な役割について紹介します。
受注側は金額だけではなく条件なども伝えられる
受注側にとって見積書は、単に金額を提示するだけでなく、取引の前提となる重要な条件を相手方に伝える役割を持ちます。
例えば、支払いに関する条件や納期、提供するサービスの具体的な範囲、納品後の保証期間といった詳細な情報を明記します。これらを契約前に書面で提示しておくことで、取引開始後の「言った、言わない」といった認識のズレによるトラブルを未然に防ぎ、双方の円滑な合意形成をサポートします。
双方の支払時のトラブルを防止する
追加費用が発生するような業務の場合、その条件などを見積書に明記することで、認識の違いによる支払時のトラブルを防止できます。特に、追加費用が発生する可能性や、特定の条件下での料金変動など、事前に明確にしておくべき情報を見積書によって提示できます。例えば「修正回数が〇回以上は別途」など、特定条件の下での金額の変更を記載します。
書面として残ることで、万が一の際に参照できる客観的な証拠となり、スムーズな取引を促進できるでしょう。
発注側は契約の検討材料として使用できる
発注側にとって見積書は、契約を結ぶか否かだけでなく、発注や仕事を依頼するかどうかを判断するための重要な検討材料です。複数の事業者から相見積もりを取ることで、価格や納期、サービス内容などを客観的に比較し、要望に最も合う発注先を選定できます。
また、見積書の記載内容の具体性やていねいさは、その事業者が信頼できる相手かどうかを推し量る1つの判断材料にもなり得ます。提示された内容は、その後の契約交渉におけるたたき台となり、より良い条件での取引を目指すための根拠としても機能します。
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見積書の書き方を項目ごとに解説
ここからは、見積書に記載すべき項目と、その書き方を具体的に解説します。それぞれの項目で必須の要素を押さえて作成しましょう。
より詳しい作り方は下記の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
タイトル
その書類が何であるかを明確に示すため、用紙の上部中央などのわかりやすい位置に、大きな文字で「見積書」と記載します。
受け取った相手方が、請求書や納品書といった他の書類と見間違うことがないように、だれが見てもひとめでわかるようにするのがポイントです。よりていねいに表現したい場合は、「御見積書」というタイトルにしても問題ありません。
見積書の発行日・見積番号
いつ作成された見積書なのかを明確にするため、発行日を記載します。この日付は、後述する有効期限の起算日にもなる重要な項目です。「2025年9月1日」のように、西暦から年月日を省略せずに書きましょう。
また、後から管理しやすくするために見積番号を記載します。これは社内で管理するための番号で、ルールは任意です。例えば、「弥生株式会社」宛の2025年の3つ目の見積書の場合、取引先の頭文字と発行年、通し番号を組み合わせて「YYI-2025-003」のような形式にすると、どの取引の見積書かがひとめでわかり、問い合わせの際にもスムーズに対応できます。
宛名
見積書を提出する相手の正式名称を、正確に記載します。会社名の場合は「(株)」のように省略せず、「株式会社」と正式名称で書きましょう。
敬称の使い分けも重要です。会社や部署全体に宛てる場合は「御中」を、特定の担当者個人に宛てる場合は「様」を使用します。「御中」と「様」は併用しないように注意してください。
- (記載例)
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- 〇〇株式会社 御中
- 〇〇株式会社 経理部 弥生太郎 様
発行元情報
見積書の発行元を明確にするための、事業者自身の情報です。法人の場合は「会社名・住所・連絡先・担当者名」を記載します。事業者やフリーランスなどの個人事業主の場合は、会社名の代わりに「屋号や氏名」を記載しましょう。
また、発行元情報の右側や社名の上にかぶせるように、会社の角印(角判)を押印するのが一般的です。必須ではありませんが、角印を押すことで書類の信頼性が増し、改ざん防止にも役立ちます。
見積書の有効期限
提示した金額や条件がいつまで有効かを示す「有効期限」は、必ず記載しましょう。見積書の有効期限には、主に2つの考え方があります。「発行日より1か月間有効」といったように期間を定める方法と、「2025年9月30日まで」と明確な期日を定める方法です。
一般的には、2週間〜6か月程度で設定されるケースが多く、具体的な期間は業種や取引内容・商材によって異なります。例えば、原材料費や人件費が変動しやすい商品やサービスを扱っている場合、リスクを回避するために短く設定するケースがあります。また、高額商品や大規模な工事の場合は、顧客が十分に検討できる期間が必要です。そのため、期間を長めに設定することがあります。
見積もり商品・サービスの詳細
見積書の中核となる、提供する商品やサービスの詳細を記載する項目です。ここがあいまいだと、後々のトラブルに直結するため、だれが見ても誤解のないよう具体的に記載する必要があります。
商品名、サービス内容、型番などを、項目ごとに1行ずつわかりやすく記載します。「作業一式」のようにまとめず、具体的な作業内容や商品名を列記することで、「○○のサービスがなかった」などという発注側との認識のズレをなくし、信頼性を高めることができます。
単価・小計・消費税・合計金額
前の項目で列記した商品やサービスごとに、「単価」「数量」「金額(単価×数量)」をそれぞれ正確に記載します。
それらをすべて合計した金額を「小計」として算出し、その下に「消費税」の金額を明記します。最後に、小計と消費税を足し合わせた「合計金額」を記載しましょう。この合計金額は、取引の相手方が最も確認したい部分のため、太字にしたり文字を大きくしたりするなど、他の数字に紛れないように強調するのが一般的です。
備考欄
見積書の各項目に書ききれない補足事項や、取引の前提となる条件などを記載するのが備考欄です。
例えば、「詳細な納期は発注確定後、別途ご相談」「10個以上のご注文で合計金額から5%割引」といった情報を記載します。その他、支払方法の選択肢や、見積もりに含まれていないオプションサービスについて触れることも可能です。
備考欄を有効に活用することで、よりていねいな情報を提供でき、取引の透明性を高めることができます。
なお、見積書の作成は契約や発注前の段階となるため、納期に関しては「別途相談」とするケースも少なくありません。また、単価での金額を記載する場合も、ロット発注となる場合には「○%引き」といった補足情報も記載するケースがあります。
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見積書を作成する際の注意点
見積書は、記載項目を正しく記載するだけでなく、取引全体を円滑に進めるための工夫も大切です。ここでは、後々のトラブルを防ぎ、事業者自身を守るために押さえておきたい、特に重要な3つのポイントを解説します。
支払条件などは必ず記載する
見積書には金額だけでなく、支払サイト(取引の締め日から実際に支払うまでの猶予期間)や支払方法、振込手数料の負担者といった、より詳細な支払条件も記載するのがおすすめです。
これらの条件を取引開始前に提示し、双方で合意しておくことで、支払う段階でのトラブルを未然に防ぐことができます。法的な記載義務はありませんが、円滑な取引のために、可能な限り明記しておくと、お互いにとって安心です。
有効期限を必ず設ける
提示した金額や条件がいつまで有効なのかを示す「有効期限」を必ず記載しておきましょう。仕入価格や市場の状況は変動するため、提示した条件がいつまでも有効のままでは、事業者が不利益を被るおそれがあります。数年後に販売が終了している製品を発注されても困ります。また、市場の価格変動や原材料費の高騰などが理由で見積金額を変えざるを得ないケースも考えられます。
価格高騰以外にも、仕入れ値の変更や人件費、期間限定のキャンペーン価格や数量限定の特別価格などの見積もりをすることもあるでしょう。
そのため、適切な期限を設けることが重要です。発行日を起点とした有効期限を明記しておけば、提示した金額や条件がいつまで有効なのかを明確に示すことができ、相手方に早期の意思決定を促す効果も期待できます。限定品や販売期間が限られた商品やサービスを扱っている場合には、有効期限の記載が販売終了後の発注防止につながります。
上述したように、有効期間は業種や取引内容によりますが、「2025年〇月〇日まで」または「見積日から2か月間有効」などと記載します。状況に応じて対応できるよう、取引頻度や取引内容や商材も考慮して、2週間〜6か月程度を目安に設定しましょう。
なお、民法第523条により、有効期限を設定した見積書の期限が到来するまでは、原則として発行者側が一方的に価格などの内容を撤回することや変更することはできません。
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参照:e-Gov「民法 第五百二十三条(承諾の期間の定めのある申込み)
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見積書の保存方法に注意する
発行したり受け取ったりした見積書は、税法上の取引関係書類に当たるため、法律で定められた期間の保存義務があります。保存期間の目安は、法人が原則7年、事業者やフリーランスなどの個人事業主は帳簿・書類の区分により5年または7年です。
また、電子帳簿保存法により、PDFなど電子データでやり取りした見積書は、電子データのまま保存することが義務付けられています。紙で保存する場合とはルールが異なるため、電子保存の要件を満たせるようにしましょう。紙でやり取りをおこなった見積書は、紙のまま保存しても問題ありません。
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見積書の主な作り方
見積書はどのように作成すればよいのでしょうか。作成方法には、手書きから、表計算ソフトのテンプレート活用、そしてクラウド上で簡単・正確に作成できる請求書作成ソフトの利用まで、いくつかの選択肢があります。
手書きで作成する
市販されている複写式の見積書用紙に直接手書きで作成する方法です。この方法であれば、パソコンの操作に不慣れな方でも、必要な項目を埋めるだけで簡単に見積書を完成させられます。
一方で、手作業であるため、消費税や合計金額の計算ミスが起こる可能性があります。書き損じた場合の修正にも手間がかかるため、作成後は計算に間違いがないか、複数回確認することが大切です。
表計算ソフト対応のテンプレートを使用する
手書きでの計算ミスや書き損じのリスクを減らすのに有効なのが、Excelなどの表計算ソフトとテンプレートを活用する方法です。
あらかじめ計算式が組まれたテンプレートを使えば、単価と数量を入力するだけで小計や消費税、合計金額が自動算出されるため、計算ミスを大幅に防げます。見た目も整った見積書が作成できる点もメリットです。
弥生では、無料でダウンロードでき、インボイス制度にも対応したテンプレートを用意しています。
請求書発行ソフトなどで作成する
手書きや表計算ソフトの課題を解決し、簡単かつ正確に見積書を作成できるのが、専用の請求書作成ソフトを利用する方法です。
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見積書は正しく発行しよう
見積もりとは、提供する商品やサービスの金額や数量、工程、かかる時間をあらかじめ計算する行為です。これらの情報を書類形式のまとめ、書類にしたものがビジネスシーンにおける「見積書」です。見積書は、単に価格を提示するだけでなく、取引の相手方との認識を合わせ、円滑な関係を築くための重要なコミュニケーションツールです。
ご紹介した記載項目はもちろん、特に重要な有効期限の設定や控えの保存義務といった点をしっかり押さえることで、取引相手に信頼される見積書を作成できます。
ご自身に合った作成方法を選び、正確な見積書の発行を心がけることが、事業の成長にもつながります。
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この記事の監修者高崎文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。

