見積書の管理・整理方法を紙と電子データにわけて簡単に解説
監修者: 竹村 由紀子(税理士)
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見積書は、紙と電子データでは管理・整理方法が異なります。本記事では、紙のケースと電子データのケースにわけて、見積書を管理・整理する際のポイントを解説します。併せて、電子データで保存する場合に守らなければならない、電子帳簿保存法の要件もお伝えします。
見積書の管理・整理方法|紙の場合
紙の見積書を管理・整理する際には、事業年度でわけてから管理・整理する方法と、取引先別に整理して管理する方法があります。
事業年度で分類して保管する
事業年度別にわけて保管する場合、見積書を日付順に並べて整理してから、事業年度内の分をまとめます。日々の取引の際に作成・受領した見積書を、日付順でそのままファイリングしてまとめるため、取引内容や取引先などの詳細情報が不要で、簡単に整理することが可能です。ファイリングした見積書は、事業年度ごとにダンボール箱や収納用コンテナーなどに入れてまとめ、キャビネットや保管庫に置いて保管します。
見積書は一定期間の保管が法令で定められているため、期間を過ぎるまでは破棄せずに保管しなければなりません(※)。事業年度別で保管していると、保存期間を過ぎた見積書を取り出して廃棄しやすいメリットがあります。毎年度、スムースに古い見積書を破棄して新しい見積書を保管するためには、あらかじめ保管から廃棄までの一連の流れを決めておくことが重要です。
※見積書の保管期間については以下のページで詳しく解説しています。
取引先で分類して保管する
少数の取引先と継続的に取引を行っている場合は、見積書を取引先別にわけて整理する方法が便利です。その際は、請求書や納品書などの経理書類も一緒に保管しておくと、後から取引内容を見返す際に効率よく検索できます。
ただし、取引先別にまとめる場合には、保存期間が過ぎた書類を破棄する際に、該当する書類だけを探して抜き出す手間や時間がかかります。
その対策として、他の書類と保存期間を合わせる方法があります。経理書類の中でも決算関係の書類や総勘定元帳などは10年間保管しなければならないため、見積書も同様に10年間保管とすると、管理が容易になります。
とはいえ、長期間多数の紙の書類を保管するには広いスペースが必要です。社内に十分なスペースを確保するのが難しい場合には、外部の倉庫などを借りて閲覧頻度が低い書類を置く必要が出てきます。
見積書の管理・整理方法|電子データの場合
電子データで管理・整理する際には、電子帳簿保存法の規定に従う必要があります。電子帳簿保存法によると、電子データで受け取った見積書は、プリントアウトして紙で管理することができず、電子データのまま管理しなければなりません。また、システム概要書の備付けや検索機能の確保など、電子取引における保存要件を満たす必要があります。
取引先から紙で見積書を受け取った場合には、そのまま紙で管理・整理する以外にも、スキャナやスマートフォンで読み取る「スキャナ保存」で管理が可能です。ただし、この場合には、解像度が200dpi以上の入力装置を使用して読み取るといった、一定の要件を満たす必要があります。
見積書を管理・整理する際のポイント
紙の見積書、電子データの見積書には、それぞれ管理・整理する際のポイントがあります。自社のケースではどちらの方法での保存が可能か、電子データの場合にはどのような要件を満たす必要があるのかなどを押さえておくと、適切に管理を行えます。
特に重要なポイントは以下のとおりです。
- 紙の見積書は電子データにて保存できる
- 電子データの紙面印刷保管は認められない
- 見積書の番号は体系化すると参照しやすい
- 電子データの場合は真実性と可視性を確保する必要がある
紙の見積書は電子データにて保存できる
電子帳簿保存法によって、一定の要件が満たされていれば紙の見積書も電子データで管理することが認められています。
紙の見積書を保管していると、年数が経つにつれ劣化によって記載されている文字が読みにくくなることがあるので注意が必要です。また、ファイリングする際に手間や時間がかかる、保管のためのスペースやコストが必要、書類を探すのが面倒などのデメリットもあります。
その一方で、電子データは紙のように経年劣化することがありません。ファイリングの手間がなく、検索も容易なので、業務負担の軽減につながります。
ただし、Excel(エクセル)やWord(ワード)などのデータファイルは、パスワードを設定して編集や閲覧を制限しても、改ざんのリスクが残るため注意が必要です。一方PDFは、特定の編集制限を強制するための高度な設定が含まれており、暗号化やアクセス権限の細かい設定など複数のセキュリティ機能が備わっています。データ保存形式をPDFにすることで、ファイルを編集されるリスクを低減できます。
電子データの紙面印刷保管は認められない
2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法によって、2024年1月以降は電子データで受け取った見積書をプリントして紙で管理・整理する方法は認められなくなりました。そのため、電子データで受け取った見積書は、プリントせずにそのまま電子データで保管しなければなりません。
その一方で、紙で受け取った見積書の場合は、スキャナ保存する方法と、紙のまま保管する方法があります。書類の管理業務の効率化や保管スペースの削減、検索の効率化などのメリットがあるため、紙媒体からスキャナ保存に移行していくことがおすすめです。
自社で作成した見積書の番号は体系化すると参照しやすい
見積書には、体系化した番号をつけると保管や検索の際に業務を効率的に行うことができます。
見積書は取引ごとに作成します。取引を行う際には見積書以外にも、請求書や納品書なども作成するため、すべての書類に同じ番号を付与するのがおすすめです。こうすることで、取引の内容を確認する際に、見積書と他の書類の確認をスムースに行えます。
番号を付与する場合には、「案件番号-通し番号(取引番号)」「取引先の番号-案件番号-通し番号(取引番号)」といった体系化した番号をつけると、容易に把握することができます。わかりやすい付与ルールを決めて番号を付番することが重要です。一度決めたルールを何度も変更すると混乱の原因になるため、番号の付与方法を決定したら簡単には変更しないようにしましょう。
電子データの場合は真実性と可視性を確保する
見積書を電子データで保管する場合は、紙で受け取った場合(スキャナ保存)と、電子データで受け取った場合のいずれも、「真実性」と「可視性」を確保する必要があります。真実性とはデータが改ざん・削除されていないこと、可視性とは保存されたデータが容易に検索・表示できることです。
真実性を高めるには、改ざん防止のための措置をとることが必要です。「タイムスタンプを付与する」「訂正や削除の履歴が残るシステムで受領・保存する」「改ざん防止のための事務処理規程を定める」といった方法があります。
可視性の確保としては「システム概要に関する書類の備付け」や「ディスプレイやプリンターなどの見読可能装置の備付け」「検索機能の確保」が必要となります。検索機能については、取引年月日・取引金額・取引先で検索できるものを選ぶようにしましょう。
電子帳簿保存法については以下の記事も併せてご覧ください。
見積書の保管義務
見積書には保存期間が定められています。法人の場合には、確定申告期限の翌日から7年間保管しなければなりません。ただし、赤字決算になった事業年度は、欠損金の繰越期間が10年間あるため、見積書も10年間の保管が必要です。
個人事業主の場合は、青色申告、白色申告に関わらず、原則5年間保管しなければなりません。個人事業主の中でも、消費税の課税事業者は7年間の保管が定められています。
詳しくはこちらもご覧ください。
まとめ:見積書の管理・整理は法令を遵守して行おう
見積書は、受領方法によって、紙と電子データのどちらかで保管が可能です。見積書を紙のまま保存する場合、書類の保管スペースが必要、検索に時間がかかるなどのデメリットがあります。電子データで保存すると、保管スペースやそれにともなうコストが不要になり、業務効率化にもつながります。電子データでの管理・整理方法は電子帳簿保存法で規定されているため、法令を遵守して適切に行いましょう。
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この記事の監修者竹村 由紀子(税理士)
民間企業での経理事務を経て、東京都で固定資産税、軽油引取税、徴収事務、用地買収などの部署で勤務し、2018年に税理士法人ベリーベストに入所。資産税事務をを担当した後、2年前からTax audit and service部門にて税務案件のリサーチ、申告書のレビュー等を行っている。行政機関で得た知識を活かした情報提供を心掛けている。