見積書の保管期間は?保管の方法や注意点について解説
監修者: 小林祐士(税理士法人フォース)
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見積書には、一定期間の保存が義務付けられています。
見積書が紙の場合も電子データの場合も保存期間は同じです。改正電子帳簿保存法によって、2024年1月1日以後、電子取引は電子データのまま保存することが完全義務化されています。
これはほぼすべての事業者が対象となるため、見積書の保管方法や保存期間についても正しく理解して対応をする必要があります。
ここでは、見積書の保管について、その保存期間や方法を詳しく解説します。併せて、見積書の役割や保管時の注意点についても紹介します。
見積書は一定期間の保存義務がある
見積書は証憑書類の1つです。証憑書類は、会計処理の真実性を裏付けるものであるため、法人税法や会社法・所得税法などによって一定期間の保存が義務付けられています。
税務調査での指摘や取引先とのトラブルを避けるためにも、適切な方法で保管しておく必要があります。これは、見積書を自社で発行した場合も、売手側から受領した場合も同様です。
見積書は電子帳簿保存法の対象書類でもあります。そのため、電子データで保管する際は、電子帳簿保存法の要件に則って保存する必要があります。特に「電子取引のデータ保存」は、2024年1月1日以後、完全義務化されているため、電子データで授受した見積書は要件に従った形での保存が必要です。詳しい保存方法については後述します。
見積書の保存期間
見積書の保存期間は以下のとおりです。法人の場合と個人事業主の場合とで期間が異なるため、確認して適切な期間保管しましょう。
法人の場合は原則7年
法人の場合、見積書の保存期間は原則7年間です。これは、見積書の発行日から7年間ではなく、法人税の申告期限の翌日から7年間となります。
法人は事業年度を自由に定められます。確定申告の時期も企業によって変わってくるため、自社の期限はいつになるのかを正確に把握し、見積書を管理することが大切です。
2018年4月1日以降に開始した事業年度で欠損金が生じた場合などは、見積書は法人税の申告期限の翌日から10年間保存(2018年4月1日前に開始した事業年度は9年間)する必要があります。
個人事業主の場合は原則5年
個人事業主の場合、見積書の保存期間は所得税の確定申告期限の翌日から原則5年間です。これは、青色申告・白色申告を問わず同じです。
見積書が適格請求書に該当する場合は7年
見積書が適格請求書に該当するケースは、まれですが、見積書が適格請求書(インボイス)に該当する場合、その見積書は7年保存する必要があります。請求書等と組み合わせて見積書が適格請求書に該当するケースは、あり得るのでその場合の保存期間は7年となります。
適格請求書発行事業者登録をしている場合は、個人事業主でも最長の保存期間にあわせて、取引関係書類は7年間保存しておくと安心でしょう。
見積書の保管方法とポイント
見積書の受領側は、受領した見積書の原本を一定期間保存する必要があります。これは、見積書が電子データである場合も同様です。不適切な方法で保管すると、途中で紛失してしまうといったことがあるため、適切な方法で管理してください。特に見積書を電子取引でやり取りした場合やスキャナ保存をする場合、要件に従った保存が必要です。不適切な方法で保存すると電子帳簿保存法に抵触する可能性があります。
なお、見積書をパターン別に複数受領し、そのうちの1パターンを採用して取引を行った場合、採用しなかった見積書を保管する必要はありません。
見積書の保管方法は、「紙で保管する方法」「電子取引をデータで保管する方法(義務)」「紙の見積書を電子化して保管する方法(任意)」の3とおりに大きく分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
紙で保管する方法
見積書を紙で保管する方法は、大きく2パターンあります。それぞれ以下のとおりです。
紙で保管するとなると一定のスペースが必要となるため、量が多い場合や閲覧頻度の低い書類については、書類保管サービスや倉庫などの利用を検討することをおすすめします。
取引先別に保管する
見積書を取引先別に整理すると、同じ取引先と継続的に取引をしている場合に管理がしやすいというメリットがあります。デメリットは、月ごとの全体取引額を把握しにくいことです。
月別に保管する
見積書を月別で整理すれば月間の取引額を把握しやすくなります。ただし、特定の取引先との取引総額や回数などを確認したい場合などにそれぞれ各月から該当する取引先の見積書をさがす時間がかかる点はデメリットといえます。
さらに見積書を事業年度の月でまとめておくと保存期間の過ぎた書類が一目で判断できるので、廃棄するタイミングがわかりやすくなります。保存期間の過ぎた見積書をスムースに廃棄するためには、「毎年1年分の見積書を業者に廃棄してもらう」など、廃棄のルールを決めておくのがおすすめです。こうしたルールを決めておけば、手間をかけずに見積書を管理できます。
一般には見積書は納品書や請求書と併せて「月別に整理する」ケースが多いようです。
発行側は見積書番号を振ると管理が容易
見積書を発行する場合、通番を振ると管理が容易です。
例えば、同じ顧客の見積書については同じ親番号を使用し、枝番のみを増やしていく方法をとると、過去の取引を確認しやすくなります。検索するのにも便利です。見積書を保管する際のポイントとして押さえておきましょう。
電子取引をデータで保管する方法(義務)
見積書を電子データで授受した場合は、電子データのまま保存しなくてはなりません。
電子帳簿保存法の「電子取引のデータ保存」は義務であり、「真実性」「可視性」の確保が要件として定められています。
真実性の確保は①~④のうちいずれか一つを満たす必要があります。弥生製品をお使いであれば、「スマート証憑管理」を利用することで、③の措置に該当するので、真実性の確保が満たせます。可視性の確保は原則的にすべてを満たす必要性があります。
以下を確認し、適切に対応してください。なお、どのように分類して保存するかは、紙で保管する方法とルールを合わせるとわかりやすいでしょう。
なお、社内の説明書類や予算承認用として見積書を印刷して使用することもあるでしょう。
そのため、データで受け取った見積書はデータのまま保存することが前提とはなりますが、紙に印刷して運用することは可能です。
電子取引のデータ保存の要件
電子取引のデータ保存 ついてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
紙の見積書を電子化して保管する方法(任意)
見積書を紙でやり取りをした場合は、スキャナを使い電子データ化して保存することが可能です。
電子帳簿保存法では、国税関係書類のうちの取引関係書類をスキャナで電子データ化して保存することを「スキャナ保存」として、要件が定められています。「スキャナ保存」の要件に則ることで、紙の見積書を電子データ化して保存ができます。
なお、スキャナ保存への対応は任意となっているため、紙で受領したら必ず電子データ化して保管しなければならないわけではありません。
スキャナ保存についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
見積書の主な役割
そもそも、見積書はビジネスにおいてどのような役割を果たす書類なのでしょうか。
見積書は、商品・サービスの金額や取引条件を、事前に買手側へ提示するために使用する書類です。ビジネスの過程で頻繁に授受される書類の1つで、契約に至るための最初のステップとしても大切な役割を担っています。
ここでは、見積書の主な役割について、発行側(売手側)と受領側(買手側)に分けてまとめました。
発行側にとっての見積書の役割
見積書の発行側にとっての主な役割は、以下のとおりです。
受注へのステップを進める
見積書は、発行側にとって受注へのステップを進める役割があります。受領側から見積書の発行を依頼されたということは、発行側にとっては受注に一歩近づいたことを意味します。見積書で提示する金額や取引条件が受領側のニーズを満たせるものであれば、受注につながる可能性が高くなるでしょう。
他社と比較される場合も、見積書を基に金額や取引条件を調整することで、受注に向けた交渉を進められます。
取引をスムースに進める
取引をスムースに進めることも、見積書の役割の1つです。見積書を発行せずに取引を進めると、後になって金額や支払方法、納期など取引条件についての認識の齟齬が発生し、トラブルに発展してしまうこともあります。
見積書は発行が義務付けられているわけではありませんが、発行することで受領側と金額や取引条件について共通認識を得られます。取引上でトラブルが起きるリスクを軽減できる役割を果たしているのです。
受領側にとっての見積書の役割
見積書の受領側にとっての主な役割は、以下のとおりです。
発注するか否かの判断材料にする
見積書を発行してもらうことで、受領側は金額や取引条件を把握でき、発注するか否かの判断材料にすることができます。
複数の会社の取引条件を比較する
複数の会社の金額や取引条件を比較したい場合にも、見積書があると便利です。複数の会社に見積書を発行してもらうことで、同じような商品・サービスを発注する場合の相場を知ることができます。そのうえで、商品・サービスの詳細や取引条件の違いを比較しつつ、発注先を検討することが可能です。
見積書を適切に保管し、ビジネスをスムースに進めよう
見積書は、商品・サービスの金額などの条件を、買手側に提示するための書類です。定められた期間内は保管することが義務付けられているため、ルールに則って保管してください。見積書を適切に保管すれば、取引の過程でのトラブルなどを避けることができ、ビジネスをスムースに進められるでしょう。
見積書を管理・保管する際は、専用ソフトの導入がおすすめです。
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この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
税理士法人フォース 代表社員
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