領収書の印鑑は必須ではない!それでも押すべき理由・形・色など解説
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「領収書の印鑑(社印や認印)は押す必要があるのだろうか?」と疑問に思われる方も多いと思います。結論からいうと、領収書の発行者欄に押す印鑑は必須ではありません。押印がないからといって、領収書が無効になることもありません。しかしながら、領収書の偽造防止の観点から、領収書を渡す場合には印鑑を押した方が良いという現状があります。
この記事では、領収書に押す印鑑の必要性を詳しく解説した後、印鑑を押す場合には「どんなハンコが良いのか」「形・種類・色・押す場所」なども説明します。
なお、「印鑑」という言葉は、本来は自治体に届け出て印鑑登録した実印や会社印の印影のことを指します。しかし、本来の意味よりも広く、認印やシヤチハタなどのハンコも含めて「印鑑」という言葉が使われることが多い現状があります。そこでこの記事では、本来の意味よりも広い意味で「印鑑」という言葉を使用します。
領収書の印鑑の必要性まとめ(必須ではないけど押すのがおすすめ)
まずは「領収書の印鑑は押す必要があるのか?押さなくても良いのか?」の結論をまとめておきます。
法律の観点からいうと「領収書の印鑑は必要ない」
法的には、領収書の印鑑の有無が効力に影響を与えることはありません。「印鑑があるから有効」「印鑑がないから無効」ということは一切ありません。なぜならば、領収書に求められている要件の中に印鑑は入っていないからです。印鑑があってもなくても、法的には何ら問題はなく、領収書に印鑑を押す義務はありません。
「領収書に印鑑が必須ではない(押す義務はない)理由」でさらに詳しく解説しています。
自治体では「領収書の印鑑廃止」が進められている
法的には領収書の印鑑は必要ないことを解説しましたが、実際、現在では自治体の窓口でも、領収書や請求書などの書類への押印廃止が進められています。総務省の資料によると、「会計手続きにおいて、契約書以外の見積書、請求書、領収書等については、押印不要とする」ことが記載されています。
参考:総務省/地方公共団体における書面規制、押印、対面規制の見直しについて(令和2年7月発行)
今でも「領収書の印鑑を押すことにしている事業者は多い」
領収書の印鑑に法的効力はなく省庁や自治体で押印廃止の流れがある一方で、領収書の印鑑を押すルールを採用している事業者が多いのが現状です。その理由としては、以下の4つがあります。
- 簡単に偽造されるのを防止できるため
- 根強い押印文化があるため
- 印鑑がないと「失礼だ」と感じる人もいるため
- 社内規定で押印のある領収書しか受理しないケースがあるため
これについては、「義務ではなくても印鑑を押した方が良い4つの理由」で詳しく解説します。
迷ったら「領収書の印鑑は押しておくと良い」
領収書の発行者の印鑑は、法的には押さなくても問題ないものです。しかしながら、実際には「押した方が良い」理由がたくさんあるのが実情です。そのため、押すか押さないか迷う場合には、押すことをおすすめします。ただし、押さなくても領収書としての要件は満たしていますし、押す義務はないことを覚えておくと良いでしょう。
領収書に印鑑が必須ではない(押す義務はない)理由
【法律上】領収書に印鑑が必要という法律はない
領収書に発行者の印鑑が必要と規定する法律や条例はありません。つまり、領収書に印鑑があることにより効力が発生することもありませんし、領収書に印鑑がないから無効になるということもありません。
【税法上】領収書への印鑑は必要要件に含まれていない
前述した通り、領収書に求められている要件の中に印鑑は入っていないため、税法上も領収書に印鑑がないことが問題になることはありません。
例えば、領収書を使って仕入控除を適用するために必要な記載事項は以下の5つです。
- 領収書を発行した相手の氏名・名称
- 領収書を発行した年月日
- 取引の内容
- 取引の金額
- 領収書を受け取る側の氏名・名称
発行者の押印は、適用するための必要要件に入っていません。印鑑があってもなくても、法的には何ら問題はありません。
※ただし、領収書の金額が5万円以上で収入印紙を貼る必要がある場合には、印紙への割印は必須です。詳しくは、のちほど「収入印紙の割印(消印)は必須なので注意しよう」にて解説します。
義務ではなくても印鑑を押した方が良い4つの理由
ここまで説明した通り、領収書の印鑑は必須ではなく、印鑑がない領収書も法的には何ら問題はありません。それでも、現状では「領収書を発行するときには印鑑を押した方が良い」といえます。その理由を解説していきます。
簡単に偽造されるのを防止できるため
領収書の発行時に印鑑を押した方が良い理由として最も大きいのが、偽造防止です。複写式になっている領収書は、100円ショップや文具店で誰でも簡単に購入できます。そのため、誰でも簡単に領収書を偽造することができてしまいます。領収書に会社の印鑑を押すルールにしていれば、印鑑がある領収書について「正式に自分の会社が発行した領収書である」と証明できます。
根強い押印文化があるため
慣習的に日本には押印文化が根付いており、「領収書には印鑑を押すものだ」という認識を持っている人が多いのが現状です。省庁や自治体を発端として、押印文化からハンコレスへの動きは進んでいますが、いまだに押印文化は浸透しています。前述した通り、印鑑のない領収書は簡単に偽造できてしまうため、領収書を発行する側も受け取る側も、「領収書に印鑑があった方が安心」と感じる方が多いでしょう。
印鑑がないと「失礼だ」と感じる人もいるため
押印文化とも関係しますが、領収書に印鑑を押さずに発行した場合、受け取った相手の心証が悪くなる可能性があります。「領収書には印鑑が押されているものだ」と当たり前に感じている方からすると、印鑑が押されていない領収書を見て「失礼だ」「マナー違反だ」と感じる可能性があります。相手の心証を悪くしないためにも、領収書には印鑑を押しておいた方が無難といえます。
社内規定で押印のある領収書しか受理しないケースがあるため
領収書の印鑑を押した方が良い理由の4つ目は、領収書を受け取った方の会社の規定で「押印のある領収書しか経理処理できません」というケースがあるためです。領収書を受け取る人の多くは、経費処理をするために領収書を必要としています。その人が会社勤めの場合、経理部門に領収書を提出することで、立て替えていたお金が返ってくる仕組みになっていることが多いでしょう。会社の規定で「押印のある領収書しか受理しません」となっている場合、立て替えていたお金を受け取ることができなくなってしまいます。上記のような方がいる可能性を考えると、やはり領収書には印鑑を押して渡した方が良いということになるでしょう。
理想的な領収書の印鑑の種類・押し方・ルール
ここからは、領収書に印鑑を押す場合に、「どんな印鑑がいいのか」「どこに押せばいいか」などをまとめて紹介していきます。
領収書に押す印鑑:領収印を購入する必要はない
領収書に押す印鑑の要件がある訳ではないため、印鑑はどのようなものでも問題ありません。領収書に押すハンコというと、「領収済」や「受領済」という文言と日付が記載されたハンコを思い浮かべる方もいるかもしれません。必ずしも、上記のような専用の領収印を購入しなければならない訳ではありません。職場に既にあるハンコで代用できることを覚えておくと良いでしょう。
領収書に押す印鑑の形:決まりはないが角印や認印が一般的
領収書に押す印鑑の形は、特別な決まりはありませんが、法人の場合には角印、個人事業主の場合には認印が一般的です。会社の実印にあたる丸印や、個人事業主の実印は、みだりに使わない方が良いという観点から避けた方が無難です。
なお、厳密にいうと、本来は「印鑑(いんかん)」という言葉は、役所に届け出をした実印を指します。この記事では、冒頭で説明した通り、「印鑑」を、本来の意味よりも広い「ハンコ・印章」の意味で使用しています。役所に印鑑登録するときに使われることが多い「丸印」や「実印」は、みだりに使用せず、重要な書類だけに使うことをおすすめします。
領収書に押す印鑑の種類:シヤチハタでも良いが認印の方が良い
前述した通り、領収書に押す印鑑は、法的に必要な要件ではないため、「このような印鑑でなければならない」という決まりはありません。そのため、朱肉を付けて押印する「認印」でも、インクを内蔵している「シヤチハタ」でも、特に大きな問題になることはありません。しかしながら、偽造防止の目的で領収書に印鑑を押すことを考えると、同一の印影が大量生産されるシヤチハタよりも、できれば認印の方がおすすめです。
領収書に押す印鑑の色:決まりはないが朱色(赤)が一般的
前述した通り、領収書に押す印鑑には「こうであるべき」という決まりはありませんが、色はできれば朱色(赤)が良いでしょう。その理由としては、以下の2つがあります。
-
(1)一般的に印鑑は朱色(赤)で押されることが多いため
-
(2)領収書の印刷は黒なので、印鑑も黒だと被って見えにくいため
朱色(赤)でなければならない訳ではありませんが、無難に朱色(赤)を採用することで、受け取った方が違和感を覚えにくいメリットがあります。
領収書に印鑑を押す場所:発行者の文字の上にかぶせるのがおすすめ
こちらも同様に「こうでなければならない」という決まりはありませんが、領収書の印鑑は発行者情報(会社名や住所)の上にかぶせて押すことをおすすめします。
文字の上にわざと重なるように押すことで、印影を写しとって悪用されるのを防止することができます。
※領収書の書き方や作り方など、以下で解説していますので参考にしてください。
領収書の印鑑についてのよくある質問
領収書の印鑑について、多くの方が疑問に感じるポイントとその答えを解説していきます。
領収書に印鑑を押す代わりに「印影を印刷」でも良いの?
印鑑を用意して領収書に押す代わりに、印影を紙に直接印刷しても問題はありません。また、領収書をメールで送る場合などに、データ化した印影を使うことも問題ありません。
印影データ(電子印鑑)はどうやって作るの?
印影データ(電子印鑑)を作成できる専門サイトを利用するか、Excelや画像ソフトを使って自分で印影を作ってみましょう。また、実際の印鑑を印影にしたい場合には、白い紙に押した印影をスマートフォンで撮影して、角度やハイライトなどを調節することで印影データを作成できます。
参考:Misoca/iPhoneできれいに印影画像を作る方法
領収書に印鑑を押し忘れたらどうなるの?
領収書への印鑑は必須ではなく、印鑑がなくても領収書は有効です。税務処理の観点から見ても、印鑑がない領収書も税務上の問題はありません。押し忘れたからといって何か対処が必要な訳ではありませんが、いつも取引している相手で気になる用であれば、領収書を回収して印鑑を押しなおすと丁寧な印章に繋がるでしょう。なお、領収書の収入印紙の割印を押し忘れた場合には、納税を忘れたことになってしまうため、必ず押しなおす必要があります。
収入印紙の割印(消印)は必須なので注意しよう
領収書の印鑑は必須ではないことを繰り返し説明してきましたが、領収書に収入印紙を貼る場合に、収入印紙の割印(消印)は必須となるので注意しましょう。収入印紙とは、税金を納めるために貼る切手サイズの証票のことです。領収書の場合、記載金額が5万円を超える場合には収入印紙が必要となります。
領収書の金額 | 収入印紙の金額 |
---|---|
5万円未満 | 必要なし(非課税) |
5万円以上~100万円以下 | 200円 |
100万円超~200万円以下 | 400円 |
200万円超~300万円以下 | 600円 |
300万円超~500万円以下 | 1,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 2,000円 |
収入印紙はただ貼り付けるだけではなく、貼り付けた上に割印(消印)を押す必要があります。
※一般的には「割印」という言葉が使われますが、印紙税法上は「消印」と呼ばれています。領収書に割印をする場合、収入印紙と領収書の用紙にまたがって押します。
※割印の代わりに自署(手書きで会社名や氏名を書くこと)も有効です。
収入印紙の割印(消印)を忘れてしまった場合、納税できていないことになります。そのまま放置すると「印紙不消印過怠税」が課されるので注意しましょう。領収書への印鑑は必須ではありませんが、「収入印紙への割印は必須」ということを従業員に周知し、万が一忘れた場合には押しなおしましょう。
まとめ
本記事では「領収書の印鑑」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
領収書の印鑑の必要性まとめ(必須ではないけど押すのがおすすめ)
- 【前提】法律の観点からいうと「領収書の印鑑は必要ない」
- 自治体では「領収書の印鑑廃止」が進められている
- ただし今でも「領収書の印鑑を押すことにしている事業者は多い」
- 【結論】迷ったら「領収書の印鑑は押しておくと良い」
領収書に印鑑が必須ではない(押す義務はない)理由
- 【法律上】領収書に印鑑が必要という法律はない
- 【税法上】領収書への印鑑は必要要件に含まれていない
義務ではなくても印鑑を押した方が良い4つの理由
- 簡単に偽造されるのを防止できるため
- 根強い押印文化があるため
- 印鑑がないと「失礼だ」と感じる人もいるため
- 社内規定で押印のある領収書しか受理しないケースがあるため
理想的な領収書の印鑑の種類・押し方・ルール
- 領収書に押す印鑑:領収印を購入する必要はない
- 領収書に押す印鑑の形:決まりはないが角印や認印が一般的
- 領収書に押す印鑑の種類:シヤチハタでも良いが認印の方が良い
- 領収書に押す印鑑の色:決まりはないが朱色(赤)が一般的
- 領収書に印鑑を押す場所:発行者の文字の上にかぶせるのがおすすめ
今回紹介した領収書の印鑑についての情報を基に、ぜひ社内で統一ルールを決めて周知しておくことをおすすめします。
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