レシートは領収書の代わりになる?違いは?発行するときの注意点も解説
監修者: 宮川 真一(税理士)
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税法上、レシートも手書きの領収書と同様に証憑書類として扱えます。以前は手書きの領収書が重要視されてきましたが、近年ではレシートの方が不正の余地が少ないと考えられています。本記事では、レシートと領収書の違いをはじめ、それぞれの有用性や発行時の注意点、業種による特性、システム対応などを解説します。
レシートと領収書の違い
実はレシートと領収書の使い分けは、日本独自の商慣習です。海外ではレシートとは別に手書きの領収書を渡すことはなく、言葉のうえでも英語で領収書は” receipt(レシート)”と表記されます。しかし、日本ではレシートと領収書と使い分けます。レシートと領収書では記載内容が大きく異なり、特徴は以下のとおりです。
レシートとは
レシートとは、商品・サービスの購入があった事実を証明する書類です。一般的にレシートは機械で印刷され、支払日・店舗名・購入品目・単価・取引内容・購入金額の総額などの情報が含まれます。レシートは基本的に不特定多数の購入者宛てに発行するものであり、購入者の名称は記載されません。購入者が特に希望せずとも、自動的に発行される場合が多いです。具体的には、小売や飲食店、タクシー、駐車場などで発行されます。
領収書とは
領収書も購入の事実があったことを証明する書類です。記載内容は、支払日・店舗名・取引内容(但し書き)・購入金額の総額・購入者の名称などです。領収書の特徴としては、取引の詳細(個々の購入品目や単価)は記載しきれないため、「飲食代として」というように大まかな情報のみが示されることが挙げられます。また、購入者の名称(宛名)が記されるのも特筆すべき点です。
具体的には、卸売業や製造業などレシートを発行しない事業者どうしの取引で発行されます。また、小売や飲食店であっても、レシートが発行されない場合に、買手が必要な証憑として領収書を売手に依頼することとなります。
領収書と領収証の違い
領収書は、「領収証」と呼ばれることもあります。領収書と領収証は、形式的には「書類」と「証書」の違いがあると言われますが、基本的には同じものを意味します。国税庁のガイドラインでも、「領収書」の分類の中に「領収証」や「レシート」が含まれており、税務上でこの違いが問題になることはありません。
参照:国税庁「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」
レシートは領収書の代わりになる
税務上、レシートも領収書と同様に証憑書類として扱われます。消費税法においても「領収書」という用語は明記されておらず、レシートとの区別は特にされていないので、どちらを使っても問題ありません。
ただし、社内のルールで「経費精算は領収書でなければならない」と定められているなら、それに従う必要があります。以下で示すように、レシートと領収書は証憑書類としてそれぞれ一長一短があるので、ケースバイケースで使い分けるのもよいでしょう。
レシートの有用性
レシートの利点は、取引内容の詳細が印字されていることです。レシートには、購入品目やその単価が個別に記載されます。この点、但し書きに「お品代」といったあいまいな内容しか記されていない領収書よりも、支出の詳細な内容が分かります。
また、レシートの大きな特徴として、改ざんのリスクが低いことも挙げられます。宛名や金額などの情報を手書きする領収書は、機械的に印字されるレシートと比べると改ざんが容易です。そのため、書類の真正性の確保という面ではレシートが上という考え方もできます。
さらに、消費税の仕入税額控除を受けるには、宛名が記載された証憑書類(インボイス)が必要とされますが、小売や交通費、駐車場代、飲食代などに関してはそれも不要です。そのため、「お店で消耗品を購入した」「得意先を接待した」「移動にタクシーを使った」など、多くの場面で使えます。
領収書の有用性
以前は手書きの領収書が重要視されましたが、近年では人の手を介さないレシートの方が不正の余地が少ないと考えられています。ただし、小売や飲食店などであってもレシートを発行していないお店もあります。その場合は、領収書を発行してもらえば問題ありません。
また、卸売業や製造業など事業者どうしの取引であれば、宛名のないレシートは不可となり、領収書が必要となりますので、ご注意ください。
レシートよりも領収書が重視される理由
税法上ではレシートも領収書と同様に証憑書類として認められているにもかかわらず、領収書を重視している企業もあります。その理由は主に、不正防止と長期保存という2つの観点が考えられます。
不正を防止するため
企業が領収書を重視する第一の理由は、従業員が経費を私的利用することを防ぐためと考えられます。
ただし、小売や飲食店であれば、買手のことを知らない売手は、領収書の宛名を買手から言われた通りに記載するだけですので、本当に不正防止につながるとは考えにくいでしょう。
さらに、領収書では、取引内容も詳細に記載されませんので、むしろ不正の余地が高くなります。レシートであれば、人の手を介さず、取引内容も詳細に分かるため、手書きの領収書よりレシートの方が不正防止につながると考える方が合理的と言えます。
レシートが長期保管に適さないため
第二の理由としては、レシートが紙質的に長期保存に適さないことが挙げられます。レシートの多くは感熱紙を使用していますが、この紙は光や熱、湿気に弱く、時間がたつと文字がかすれやすいのが特徴です。法人の場合、経費に関する証憑書類は7年間保存する必要があるため、紙が劣化しやすいレシートだと、その間に文字が読めなくなってしまうリスクがあります。
いくら詳細な取引内容が記載されていても、肝心の文字が読み取れないのでは支払いの証明とするのは困難です。そのため、長期保存の観点からも、劣化の不安が少ない領収書が優先されます。
レシートでの長期保存の対策として、電子帳簿保存法に基づき、レシートをスキャナ保存するという方法もあります。
レシート・領収書を発行するときの注意点
レシートでも領収書でも、適切な証憑書類として認められるには、その発行時に以下の点に注意する必要があります。取引先や顧客に不要な手間や迷惑をかけないように、しっかり把握しておきましょう。
宛名や但し書きを省略せずに記載する
領収書の宛名や但し書きは正確に記載することが大切です。宛名を「上様」と記載したり、空欄のままにしたりすると、買手が会社の経費精算で経費として認められない可能性があります。但し書きは、簡潔かつ具体的な文言が良いでしょう。
そのため、宛名に関しては「株式会社〇〇」など、会社の正式名称を必ず記載し、省略や間違いがないようにしましょう。但し書きについても、「文具代」「飲食代」「タクシー代」など、何に対して支払いが行われたのかを明確に示すのが大切です。
また、金額の記載も、文頭に「¥」、末尾に「-」または「也」といった記号を使い、3桁ごとにカンマで区切って記載することで、改ざんリスクを減らせます。例えば金額が1万円なら、「¥10,000-」と記載する形です。
二重に発行しない
レシートと領収書の両方を同じ取引で発行してしまうと、受け取った側が二重に経費申請する危険があります。こうした不正行為に加担したと税務署から疑われないように、発行するのは片方だけにしましょう。もしも両方を渡してしまった場合は、取引先からいずれかの回収を求めてください。
もちろん、同じ領収書を2枚渡してしまうことも避けるべきです。もしも記載ミスがあった場合は、その場で二重線と訂正印での修正を行うか、新しい領収書を再発行し、ミスのあった方は回収してバツ印をつけて保管しましょう。修正より再発行の方が望ましいです。また、再発行が後日になる場合は、古い領収書を回収し、再発行である旨を新しい領収書に明記しましょう。
5万円以上は収入印紙を貼付する
レシートと領収書のどちらであっても、5万円以上の現金払いの場合は、収入印紙を貼付する必要があります。収入印紙を貼った場合は、必ず割印(消印)も必要です。割印はシヤチハタやゴム印、あるいはペンでの署名でも構いません。割印が必要なのは、印紙が再使用されないようにするためです。
必要であるにもかかわらず収入印紙を貼らないと、印紙税未納として過怠税(本来の印紙額の3倍に当たる罰金)が課せられる可能性があります。
出典:国税庁「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」
出典:国税庁「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」
収入印紙が不要なケース
収入印紙が必要なのは「5万円以上」「現金払い」「紙の領収書またはレシートを発行」という3条件を満たした場合です。以下の場合は、収入印紙は必要ありません。
- 金額の合計が5万円未満の場合
- 決済方法が電子マネーやクレジットカードなどによるキャッシュレス決済の場合(ただし、その旨を領収書に記載することが必要)
- 紙ではなくデジタルで領収書を発行した場合
不要な出費をしないように、収入印紙が必要/不要な条件を正確に把握しておきましょう。
【Q&A】レシート・領収書に関するよくある質問
レシートや領収書に関してよくある質問をQ&A形式でまとめました。
レシート・領収書は経費精算に必要?
経費精算を行う際には、その支出が経費として処理されるべきものであることを示すために、レシートや領収書などの証憑書類の提出が必要です。小売や飲食店、タクシー、駐車場など広い業種で税法上はレシートも領収書と同じように扱えます。
詳しくは、以下の記事をご参照ください。
レシート・領収書はインボイスとして発行可能?
レシートや領収書も、インボイス(簡易インボイス)として発行することが可能です。ただし、インボイスとして有効性を得るには、インボイス制度で定められた特定の項目を記載する必要があります。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
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レシートも領収書も、経費精算や税務処理における証憑書類として扱えます。レシートの方が人の手を介さず、また取引内容が詳細に分かるため、不正防止の観点から望ましいです。手書きの領収書はレシートに比べて改ざんのリスクがあるため、宛名や但し書きをしっかり記載するなど、発行者側がいくつかの点に注意する必要があります。
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この記事の監修者宮川 真一(税理士)
税理士法人みらいサクセスパートナーズ代表
税理士/CFP®
1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応をはじめ、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っている。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事する。