請求書が届かない場合はどうする?確認メールの文例も紹介
監修者: 齋藤一生(税理士)
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企業間の取引で商品やサービスの料金を請求するにあたり、請求書の授受は欠かせません。請求書の授受は義務付けられているわけではありませんが、取引上のトラブルを避けるためにも多くの事業者が行っています。
例えば、取引の買手側が適格請求書(インボイス)発行事業者である場合、買手側は売手側から適格請求書(インボイス)を発行してもらわないと原則的に仕入税額控除が適用できません。
また、中には請求書が届かないという事態が発生することもあるのではないでしょうか。請求書が届かなくても支払いの義務はあるため、適切に対処する必要があります。
ここでは、買手側に請求書が届かない場合の対応方法について詳しく解説していきます。
請求書が届かない場合の対処法
請求書は、取引先へ納品した商品の料金やサービスの対価を請求するために発行される書類です。企業間取引の記録や、トラブル回避の点でも請求書は重要な役割を果たします。
請求書が届かなくても、支払いの義務がなくなるわけではありません。なお、請求書の発行は義務付けられているわけではないものの、2023年10月からの消費税のインボイス制度の導入以後は、適格請求書発行事業者は売手側から適格請求書を交付してもらう必要があります。適格請求書がないと、買手側は原則として仕入税額控除ができないためです。
請求書が届かない主な原因としては、「売手側の請求忘れ」「請求書の宛先間違い」「売手側の社内手続きの遅延」「郵便のトラブル」などが挙げられます。ここではまず、請求書が届かないときの基本的な対処法について、順を追って見ていきましょう。
1. 原因を確認する
まずは、請求書が届かない原因が自社にないかを確認することが大切です。既に受け取った請求書を紛失している、誤って破棄してしまったといった自社のミスも考えられるためです。郵送された請求書を封筒から取り出し忘れて封筒ごと破棄してしまったという可能性もあります。
また、部署の多い企業の場合は、請求書が違う部署や別の担当者に誤って届いている可能性もあります。請求書が未着であることを別の部署とも共有し、持っている人がいないかを確認することも大切です。
さらに、メールやクラウドシステムなどで電子請求書を受け取っている企業の場合は、メールを見逃していたり、誤ってメールを削除していたり、迷惑メールに振り分けられていたりすることも考えられます。特に各々の社員が担当している取引先からその社員用のメールアドレス宛に請求書を送ってもらっている場合は見落としが多発しやすいので、請求書を受け取るメールアドレスは一元化した方が良いでしょう。
取引先名などの条件で検索をしてみましょう。
なお、電子帳簿保存法では、2024年1月以後の電子取引のデータ保存が完全義務化されています。電子取引の場合は、特に注意してください。
2. 請求書が届かないことを連絡する
自社側にミスがないことが確認できた場合は、請求書が届かない旨と、再送の依頼について取引先に連絡を入れます。
連絡方法はメールか電話になりますが、どちらにするかは支払予定日までに余裕があるかどうかで判断することをおすすめします。
入金日までに余裕がある場合は、メールでの連絡が無難です。メールの方が、お互いに詳しい内容を文面で確認できます。メールを送る際は、相手のミスを責めるような書き方をしないことが大切です。
入金日が迫っている場合は、迅速に確認ができる電話がおすすめです。
3. 支払いが遅れる可能性があることを伝える
請求書が届かない旨と再送依頼を連絡したら、支払いが遅れる可能性があることを伝える必要があります。
請求書が届かないことを連絡するタイミングで既に支払日が迫っているのであれば、支払いが遅れる可能性が高いことも忘れず伝えてください。
支払いの遅延は取引先である売手側との信頼関係にも悪影響を与える可能性があります。そうしたトラブルを避けるためにも、遅延する旨を事前に伝えておくことが重要です。
4. 社内の経理担当者と状況を共有する
経理担当以外の担当者が売手側に連絡した場合は、自社の経理担当者と状況を必ず共有してください。支払いのタイミングがずれる場合は、その旨も伝えます。
請求書が届かない場合の支払い義務
ここまでお伝えしてきたように、請求書が届かない場合でも支払い義務は発生します。取引を行った以上、買手側は支払い義務を果たす必要があるのです。
下請法では、物品などの代金はそれを受領した日から60日以内に支払うことが定められています。
親事業者は、下請事業者から請求書が届いていないことを理由に代金の支払日を遅らせることはできません。手元に請求書が届いているか否かにかかわらず、納品日から60日以内に代金を支払わなければ下請法違反となります。
請求書を確認する際のメールの書き方
取引先である売手側に請求書をメールで確認する場合は、メール文の書き方にいくつか注意すべきポイントがあります。トラブルを避けるためにも、下記の注意点を踏まえてメールを作成しましょう。
件名は具体的かつシンプルにする
メールの件名は具体的かつシンプルにして、メールを開封しなくても内容がわかるようなものにすることが大切です。
「【重要】◯月分の請求書について」「◯月分請求書ご送付の確認」などと記載し、請求書に関するメールであることが明確に伝わるようにしてください。
文章は丁寧かつやわらかく書く
請求書の確認メールの文章は、「送付をお忘れではないでしょうか」「請求書が届いていません」などの直接的な表現は避けて、丁寧かつ相手に威圧感を与えない言い回しにすることが大切です。
「◯月分の請求書につきまして、弊社にてまだ確認がとれておりません」といった書き方をすれば、相手の非を直接指摘せず、信頼関係を保ちやすくなります。
支払いが遅れる可能性があることを伝える
請求書を処理するフローは企業ごとに異なりますが、請求書の到着が遅れることで支払いが遅れてしまう可能性もあります。早急に対応してもらうためにも、催促メールではその旨も伝えてください。
行き違いである場合のお詫びをする
確認メールは請求書の発送と行き違いになる可能性があります。そうしたケースを想定して、メール末尾には行き違いであった場合のお詫びの文言も入れておいてください。
送信するタイミングを配慮する
請求書の確認メールを送る際は、曜日や時間帯に配慮しましょう。休日や終業時間の直前、深夜または早朝などのタイミングは避けるのがビジネスマナーです。
請求書の確認は早急な対応が求められるため、休日や終業時間の間際などに連絡すると、取引先の担当者への負担が大きくなります。できるだけ、上記を避けた時間帯にメールを送るようにしてください。
請求書を確認するメールの文例
請求書の確認メールの書き方のポイントを踏まえて、その構成と文例をご紹介します。
請求書の確認メールは、下記のような構成で作成します。
請求書を確認するメールの構成
- 件名
- 宛名(企業名・担当者の所属部署・担当者名)
- 挨拶文
- 本文(請求書の確認)
- 行き違いを考慮した文言
- 結び
続いては、請求書の確認メールのケース別の文例です。請求書が届かない場合に活用してください。
支払期日までに余裕がある場合の文例
件名:
◯月分の請求書について
本文:
◯◯株式会社
◯◯部 ◯◯様
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
株式会社●●の●●でございます。
◯月分の請求書につきまして、本日◯時現在、弊社にて確認ができておりません。
ご多忙の中、大変恐れ入りますが、ご確認いただきたくご連絡いたしました。
請求書の到着が◯月◯日を過ぎるとお支払いが遅れてしまうため、未発送の場合は、お早めにご郵送いただきたく存じます。
なお、本メールと請求書のご送付が行き違いになった場合は、何卒ご容赦くださいませ。
それでは、よろしくお願い申し上げます。
支払期日が近いため、取り急ぎ請求書の内容を確認したい場合の文例
件名:
◯月分の請求書について
本文:
◯◯株式会社
◯◯部 ◯◯様
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
株式会社●●の●●でございます。
◯月分の請求書につきまして、本日◯時現在、弊社にて確認ができておりません。
ご多忙の中、大変恐れ入りますが、ご確認いただきたくご連絡いたしました。
請求書の到着が◯月◯日を過ぎるとお支払いが遅れてしまいます。
期日までにお支払いできるよう、先行して処理を進めたく存じますので、◯月◯日までにメールにて請求書のデータをお送りいただいてもよろしいでしょうか。
念のため、ご請求内容を記載いたします。
商品名:▲▲
請求額:◯◯円
なお、本メールと請求書のご送付が行き違いになった場合は、何卒ご容赦くださいませ。
それでは、よろしくお願い申し上げます。
「お手数をおかけしますが」「ご多忙の中大変恐れ入りますが」など、請求書の確認メールには丁寧な前置きの文言を入れることがポイントです。また、支払いが遅延する可能性があることや、行き違いになった場合のお詫びの文言も忘れずに入れてください。
請求書の到着が遅れた場合の対処法
取引先からの請求書の到着が遅れると、支払いが遅延するなど自社の支払い業務に影響が出てしまう可能性があります。ここでは、請求書の到着が遅れた場合の対処法について、請求書が到着するタイミングごとに解説します。
請求書が支払期限の直前に到着した場合
請求書が支払期限の直前に到着した場合は、期日までに支払いができるのであれば問題ありませんが、期日を過ぎてしまいそうなのであれば取引先に連絡を入れることが大切です。
支払期限が短いために期日までの入金が難しいこと、期日を延ばしてもらうことが可能かなど、交渉したい内容を整理して電話かメールで連絡します。
請求書が支払期限の後に到着した場合
なんらかのトラブルやミスによって支払期限の後に請求書が到着した場合は、なるべく早く支払いましょう。すぐに支払うことが難しい場合は、期日が過ぎている旨を取引先に伝えたうえで、いつまでに支払いが可能かを連絡する必要があります。
取引先との信頼関係にも大きく影響するため、自社側のミスで遅延するのであれば必ず謝罪するようにしましょう。
請求書に支払期限が書いていない場合
請求書に支払期限が記載されていない場合は、常識の範囲内で早めに支払うことをおすすめします。期日が記載されていないからといって支払いを先延ばしにすると、取引先との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性もあるためです。いつまでの支払いを希望しているかを取引先に確認することも大切です。
請求書の管理には専用システムの導入が便利
請求書の到着が遅れると、自社の経理担当者の負担が大きくなります。また、請求書を発行する取引先にとっても、請求書の確認への対応が発生したり支払いの遅延の原因になったりするなど、さまざまなデメリットが生じます。
特に、紙の請求書を郵送でやりとりしている場合は到着までに数日のタイムラグが発生し、経理業務の効率を下げてしまいがちです。請求書関連の業務は経理業務において特に重要度が高いため、トラブルが発生すると取引先との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性もあります。
取引があったにもかかわらず、仕入先等から請求書が届かない場合、仕入管理システムや支払予定が管理できる会計システムがあると便利です。
請求書が届かない場合は早めに対応しましょう
請求書が届かなくても支払いの義務は発生し、迅速に対応しなければ自社の経理業務に負担をかけたり、売手側との信頼関係に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。特に請求書が適格請求書に該当する場合、買手側は売手側が発行した適格請求書がないと原則的に仕入税額控除ができず、余計な税金を支払うことになってしまいます(買手側が、簡易課税を選択している場合、仕入税額控除は適格請求書である必要はありません)。
経理上のトラブルを避け、取引先と良好な関係を築いていくためにも、請求書が届かない場合は、今回ご紹介したような方法で対処することが大切です。まずは自社側にミスがないか確認し、取引先へ確認する場合も丁寧な連絡を心掛けてください。
また、請求書が届かなかったり到着が遅れていたりする場合でも支払期限はできる限り守り、遅延が発生しそうな場合は必ず取引先へ連絡することをおすすめします。
請求書と支払いに関する業務を滞りなく、確実に進めることが、ビジネスの成長を支える力となるでしょう。
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