二重請求とは?請求ミスを起こさないための原因と防止対策を解説
監修者:小林祐士(税理士法人フォース)
2024/07/30更新
請求にかかわる業務において、ミスはあってはならないことです。特に請求書は、商品やサービスを販売した対価を支払ってもらうための重要な書類のため、適切な管理が求められます。
一方で、人が行う業務にミスは付きものです。今回は、請求書に関するミスの代表例である「二重請求」について解説します。二重請求が発生した際の対処法の他、二重請求を防ぐための対策も紹介します。
二重請求とは同じ内容の請求書を二度送付してしまうこと
二重請求とは、同じ内容の請求を二度行ってしてしまうことです。二重請求をしてしまうと、請求先には同じ内容の請求書が2通届くことになります。
請求・入金の管理に不備があると、状況を正確に把握できないため請求先に重複して請求してしまう可能性が高くなるでしょう。例えば、入金内容を見間違えており、入金されているはずの請求内容を未入金と誤認するケースもあります。
請求書は「記載されている取引に関する代金を支払ってほしい」と伝える書類のため、請求書が2通送られていれば入金処理も2回行われてしまうおそれがあります。請求先が本来支払うべき代金の倍の金額を入金することにもなりかねません。
また、既に請求先が入金済みの場合、入金したはずの代金を再び請求されていることになります。相手としては支払うべき金額はもう入金しているわけですから、再び同じ内容の請求書が届けば不審に思うはずです。請求先に確認の手間を取らせたり、信用を失ったりする事態に陥ることも想定されます。
このように、同じ内容の請求書を二度送付することは単なる書類上のミスにとどまらず、企業としての信用を損なうおそれのある重大な問題なのです。
二重請求が起きてしまう原因は、多くの場合「人的ミス」や」「管理ミス」です。社内の伝達漏れや確認不足といったささいなミスが、二重請求につながってしまうケースは少なくありません。
二重請求が発生してしまう原因
二重請求が発生すると同じ売上に対する請求書が2枚存在するために、金額を倍で請求してしまうことになります。既に発行済みの請求書を、なぜ再び発行してしまうのでしょうか。
一例として、請求書を発行したのち、請求書の発行をした履歴がないなどで、再び同じ内容の請求書を発行するといったケースです。本来は1回の請求書発行であるところを同じ内容の請求書を複数発行してしまうのです。
あるいは、請求書の送り先から再発行依頼を受けるパターンもあり得ます。再発行した請求書と最初に発行した請求書の区別がつかない状態になっていると請求を二重でしてしまいかねません。
何らかの理由で請求書を再発行した場合には「再発行」などと目立つ位置に記載し二重請求を防ぐ必要があります。
二重請求が発生した際の対処法
二重請求はあってはならない事態ですが、万が一発生してしまった場合にはどのように対処すれば良いのでしょうか。最優先でやるべきことと、事後に必要な対処について解説します。
お詫びを最優先にする
二重請求の事実が判明した時点で、最優先で着手すべきことは相手先へのお詫びです。請求先に請求書が届いているかどうか、既に入金されているかどうかにかかわらず、すみやかに連絡する必要があります。
お詫びをする際には、次の3点を必ず伝えましょう。
- お詫びの連絡で伝えること
- どのような事態が発生しているのか(事実)
- なぜそのような事態が生じたのか(原因)
- どうすれば同様のミスを防げるのか(再発防止策)
二重請求は、そもそもあってはならないことです。単にお詫びの言葉を伝えるだけではなく、今後は同じような事態が起こらないことを伝え、請求先の信用を損なうリスクを最小限に抑える必要があります。
具体的には、下記の例文を参考にお詫びのメール文を作成してください。
- 二重請求に対するお詫びのメール文例
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- 件名:
- ◯◯月度 二重請求についてのお詫び
- 本文:
- 株式会社◯◯(請求先の企業名)
◯◯様(請求先の担当者名)
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
株式会社△△ 経理部の××××でございます。このたび、◯◯月度の●●に関する請求につきまして、下記を重複して送付していることが判明いたしました。
- ◯月◎日付 ●●に関する請求書
- ◯月▲日付 ●●に関する請求書
原因を調査しましたところ、弊社側で未送付の請求書を確認する際の業務フローに不備があったことが判明いたしました。
このたびの事態が発生したことを重く受け止め、再び同様の問題が生じることのないよう、請求書の送付確認に関する社内のチェック体制を見直すことにいたしました。◯月▲日付の請求書につきましては、大変お手数ではございますが破棄していただきたく存じます。
本件に関しまして、ご不明点などございましたら弊社××××までご連絡いただけますでしょうか。貴社におかれましては、多大なご迷惑とご心配をおかけすることとなり大変申し訳ございません。
略式にて恐縮ではございますが、心よりお詫びいたします。
今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。(署名)
なお、二重請求に対するお詫びのメールはできるだけ早く送る必要があるものの、メールの文面に誤字脱字がないか十分に確認しておくことも重要です。
特に、送付済みの請求書発行日や請求書に記載されている品名・取引内容に誤りがあると、該当の請求書を確認するにあたって相手に手間を取らせることになりかねません。メールを送付する前に何度も読み返し、誤りがないことを確認したうえで送付してください。
お詫び以外に必要な対処
お詫びのメールを送信する以外にも、二重請求が発覚した際にするべきことがあります。二重請求により相手先が二重に振り込みをしていないか、入金状況を確認してください。既に両方の請求書に対して入金が完了している場合は、返金手続きを行う必要があります。返金する際は、必ず取引先に返金することを伝えたうえで処理を進めるようにしましょう。
また、以後同様のミスが発生することのないよう、お詫びのメールに記載した再発防止策を実際に講じておくことも重要なポイントです。請求書のダブルチェックや社内の情報共有方法など、再発防止のための具体的な対策を講じる必要があります。担当者の個人的な問題として片付けるのではなく、誰にでも起こり得るミスと捉え、組織全体で再発防止策に取り組むことが大切です。
二重請求をしないために必要な対策
二重請求は企業としての信用を大きく損なうおそれのある事態であることから、そもそも発生しないよう対策を講じておくことが重要です。誰でもミスをする可能性があることを前提に、ミスが生じないようにする仕組みや体制を整備しておく必要があります。
次に挙げる2つの対策を講じることで、二重請求を未然に防ぐようにしてください。
社内のダブルチェック体制や情報共有を徹底する
二重請求をしないためには、請求書の未送付・送付済みの区分や、区分する際の具体的な作業フローを標準化し、担当者によって管理方法が複数になるのを防ぐ必要があります。そのうえで、社内のダブルチェック体制や情報共有を徹底していくことが大切です。
担当者が一人でチェックするのではなく、必ず複数人で確認作業を行い、発送前に再度確認するようルール化するなど、十分にチェック体制を整えてください。
例えば、確認用の請求書を仮発行する場合、後から正式な請求書が発行されることを周知徹底しておかなくてはなりません。相手先に送付すべき書類と送付してはならない書類が一目でわかる表記にするなど、仕組みによってミスを防ぐのがポイントです。
また、請求書の記載ミスが発覚した場合には、請求書を社内で再発行する必要があります。その際、記載内容を修正した請求書を安易に発行できないよう、ルールを決めておくことが大切です。
例えば、記載ミスのあった請求書には大きくバツを書く、誤って発送することのないよう別ファイルで保管するといった具体的な手順をマニュアル化しておくことが重要です。
請求書管理システムの導入を検討する
請求書に関するミスは取引先からの信用を大きく毀損するリスクを伴うため、手間や時間がかかる作業ではあるものの、ミスなく請求書を発行することが非常に重要です。
一方で、請求書の発行・発送作業は担当部署にとって大きな負担になりかねません。担当者がどれほど注意していても、人がかかわる以上はミスをゼロにするのは困難です。
請求書関連の業務負担の軽減やミスの防止策として、請求書管理システムを導入するのは効果的な手段といえます。システム上で請求書を一元管理することにより、送付済み・未送付の請求書を一目で確認できるからです。
また、入金状況が随時システムに反映されれば、入金済みの請求を未入金と誤認するリスクも大幅に軽減されるでしょう。請求書の記載内容に関する誤りや送付先の間違いといったミスも未然に防げるため、請求業務の効率化とミス防止を同時に実現可能です。二重請求のリスク低減を図りたい事業者様は、請求書管理システムの導入を検討されてはいかがでしょうか。
二重請求をしないための防止策を万全に!
請求書は企業間取引の証拠となる非常に重要な書類のため、二重請求が発生するリスクは極力抑える必要があります。人的ミスを回避するためのチェック体制を確立し、社内で周知徹底を図ることが大切です。
ただし、作業上のミスは、どれほど注意を払っていても避けられないケースもあります。請求書発行業務をよりスムースかつ正確に進めるためにも、請求書管理システムの導入を検討するのも1つの方法です。
請求書管理システム「Misoca」は、請求書・見積書・納品書をまとめて作成・管理できるシステムです。受注データを自動的に取り込み、納品・請求に至るまでのステータスを随時確認できます。見積もりから入金までのステータス管理にも対応しているため、入金漏れや請求書の送付済み・未送付の確認も正確かつ効率良く進められます。
また、インボイス制度では適格請求書(インボイス)の発行と保管が義務化されている他、電子帳簿保存法における請求書の保存方法・保存期間の要件を遵守しなくてはなりません。「Misoca」はインボイス制度や電子帳簿保存法にも対応していますので、法令を遵守した請求書の運用に役立つでしょう。請求書に関する業務を正確かつ効率的に進めたい場合は、ぜひ「Misoca」の導入をご検討ください。
この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
税理士法人フォース 代表社員
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