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事業所得とは?雑所得との違いや確定申告の方法、税率について解説

監修者:田中卓也(田中卓也税理士事務所)

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個人事業主の所得は、一部の例外を除き、原則として「事業所得」として確定申告をすることになります。事業所得がどのような所得なのか、事業所得にかかる税金、申告方法などについて解説します。

また、本記事では、事業所得と間違えやすい雑所得の意味や両者の違いについても説明しています。事業所得や雑所得の意味を知り、正しい申告を行いましょう。

事業所得とは事業から得る所得のこと

事業所得とは、その名のとおり、事業を営むことによって得られた所得のことです。また、「事業」とは、下記の7つの分類のいずれかに該当する業務のうち、生計を立てられる一定以上の規模で反復・継続・独立して行われているものを指します。

所得が「事業所得」に該当する事業は、下記の7種です。

事業所得に該当する事業の種類

  • 農業
  • 漁業
  • 製造業
  • 卸売業
  • 小売業
  • サービス業
  • その他の事業

なお、その他の事業に、不動産の貸付けと山林譲渡は含まれません。不動産の貸付けは、原則として不動産所得、山林譲渡による所得は山林所得として申告します。つまり、部屋を貸すなどの家賃収入は不動産所得です。部屋や建物を貸すだけでなく、駐車場など、土地を貸した場合も不動産所得になります。

しかし、土地や建物を貸しても事業所得や雑所得に該当する場合があります。下宿で、部屋を貸すだけでなく食事を出すなど役務提供を含んだりする場合などは、事業所得または雑所得になりえます。悩む場合は、税理士などの専門家や税務署に相談をしましょう。

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事業所得と雑所得の違い

事業所得と混同されやすい所得に、雑所得があります。同じようにハンドメイド作品の販売を行っている方でも、それが事業規模、つまり生計を立てられる規模であれば事業所得、余暇で作った趣味の作品を販売しているなど小遣い稼ぎ程度であれば雑所得に該当します。

ここでは、雑所得と事業所得の制度上の違いについて具体的にご説明します。

副業は雑所得に該当する場合が多い

事業所得か雑所得かは、それが事業規模であるかどうかや、独立・継続・反復して行われる仕事かどうかといった観点から総合的に判断されます。事業の売上で生計を維持している場合は事業所得、会社員が副業で行っているものは雑所得に該当する場合が多いでしょう。

例えば、会社員が休日に配達業務をしたり、余暇で運営しているサイトでアフィリエイト収入を得たりといったケースは、多くの場合雑所得となります。

このような雑所得は、給与所得者の場合、収入から必要経費を引いた金額が20万円を超えるか、その他の理由(医療費控除の適用を受ける、初年度の住宅ローン控除の申告をするなど)で所得税の確定申告をする場合、申告が必要になります。

雑所得と比較した事業所得のメリット

雑所得と事業所得を比較すると、制度上、さまざまな面で違いがあります。雑所得と比較した事業所得のメリットを4つ見ていきましょう。

青色申告特別控除が受けられるかどうか

事業所得を青色申告していれば、青色申告特別控除が受けられます。青色申告特別控除とは、一定の金額を所得から差し引いて税金の計算ができる制度です。

差し引ける金額は、要件をすべて満たした場合が65万円、e-Taxでの申告または電子帳簿保存の利用という要件のみ満たさない場合は55万円、それ以外の場合は10万円です。65万円の控除を受けられれば、所得税や住民税を大きく節税できるでしょう。

純損失の繰越しと繰戻しができるかどうか

事業所得を青色申告している場合は、純損失の繰越しができます。これは、事業で赤字が出た際に、それを翌年以降3年間にわたって繰り越しできる制度です。翌年以降黒字になった場合に、税額を抑えることができます。

また、前年も青色申告をしていた場合は、前年分に赤字を繰戻して還付を受けることもできます。

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30万円未満の少額減価償却資産の特例が利用できるかどうか

青色申告事業者は、30万円未満の少額減価償却資産を年間合計300万円まで一括で経費計上できます。

例えば、20万円のパソコンを事業用として買った場合、青色申告事業者は購入した年に一括で経費計上できますが、雑所得の必要経費として購入した場合、一括で経費計上ができないため、法定耐用年数をもとにした減価償却が必要です。

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給与所得などと損益通算できるかどうか

雑所得は、給与所得など他の所得と損益通算をすることができません。例えば、給与所得が300万円あり、雑所得(副業など)で50万円赤字が出たという場合、給与所得の300万円に税金がかかり、雑所得は0円という扱いになります。

一方、給与所得が300万円あり、事業所得で50万円赤字が出た場合は、給与所得から事業所得の赤字を差し引いて税額の計算ができます。

なお、損益通算は、青色申告でも白色申告でも利用できる制度です。

事業所得の計算方法

事業所得は、「総収入金額」から「必要経費」を差し引くことで求められます。事業所得の計算にかかる収入金額や必要経費について、詳しく見ていきましょう。

総収入金額:事業によって得られた売上のこと

総収入金額とは、該当の事業によって得られた売上のことです。

ただし、普通預金利息は利子所得になりますので事業所得には含まれず、生活用動産を売買したことにおけるフリマアプリの収入があったとしても、これらは事業における総収入金額には含まれません。

なお、売上は発生した時点で収入金額として計上する必要があります。例えば、末締め翌末払いで取引をしている個人事業主は、1~12月に入金された金額ではなく、1~12月に売上を立てた金額、例えば、商品を引き渡した日の売上の金額をその年の総収入金額とします。通帳の入金履歴とは合致しませんから、注意してください。

必要経費:売上を上げるための必要な経費のこと

必要経費とは、事業で売上を上げるために必要な経費のことです。具体的にどのような金額が必要経費に入るかは事業内容によって異なりますが、一般的には売上原価や事業に使う文具などの消耗品費、通信費、光熱費、宣伝広告費、荷造り運賃、営業交通費などが該当します。

ただし、個人事業主の場合、自家用車を事業とプライベート両方で利用していたり、事業用とプライベート用の携帯電話を分けていなかったりすることもあるでしょう。このようなケースの場合、例えば、自宅兼事務所(店舗)の家賃は、仕事場に床面積と家屋全体の床面積の比で按分、あるいは、自宅兼事務所(店舗)の電気代といった場合では仕事場にコンセントに数と家屋全体のコンセントの数の比といった何らかの合理的な基準で家事按分を行って、事業に使った分の金額だけを必要経費として計上します。

家事按分の例

月々の通話料のうち、おおよそ半分が事業、半分がプライベートで使っている携帯電話の料金の場合は、事業とプライベートの割合は50:50ということになります。そのため、月々の携帯電話料金のうち、半額を事業の必要経費として計上します。

この割合は、一度決めたら基本的に変更しません。携帯電話の料金といった場合では、月によって多少利用割合が変動するかもしれませんが、平均的な割合を合理的な基準により最初に定めて、常にその割合で計算します。

一方、半分が事業、半分がプライベートで使っている車のガソリン代ですが、月間で使った走行距離数のうち仕事で使った走行距離数の比で按分というのも合理的な基準と考えられます。この場合、こちらの合理的な基準が継続して用いられていれば、月ごとの変動も許容されるでしょう。

なお、仕事中の昼食代など、「仕事をしていなくても必要になる費用」については、必要経費にすることができません。一方、取引先との会食など、事業上必要がある費用については、必要経費にできる場合があります。

個人事業主の事業所得に課せられる税金と税率

個人事業主の事業所得には、「所得税」「個人住民税」「個人事業税」の3つの税金が課せられます。それぞれの税金の計算方法や対象者について見ていきましょう。

所得税

所得税は、所得にかかる税金です。事業所得がある方は、原則として全員納めます。控除の額が大きく税金が0になれば納税は不要ですが、その場合も申告は必要です。原稿料や弁護士・会計士・税理士といった源泉所得税が差し引かれて入金になっている方でも、「差し引かれた源泉所得税」より「正しい所得税」のほうが多ければ納付となりますし、逆に「差し引かれた源泉所得税」より「正しい所得税」のほうが少なければ還付となります。

なお、所得控除と配当控除や住宅ローン控除に代表される税額控除を反映させた結果の税額が0円であっても、青色申告や所得額の証明のためには申告することをおすすめします。

所得税の金額は、事業所得から所得控除を差し引いた後の課税所得額に所得税率を掛けることで決まります。

所得税率は、課税される所得金額が195万円未満の部分が5%、195万円以上330万円未満の部分が10%など段階的に決められていますが、これを一つひとつ計算するのは大変なため、多くの場合、速算表が使われます。

所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円~1,949,000円 5% 0円
1,950,000円~3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円~6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円~8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円~17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円~39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円~ 45% 4,796,000円

所得税の計算例

課税所得額が300万円の場合

300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円

よって、所得税額は20万2,500円から税額控除の額を差し引いた金額となります。なお、税額控除を利用できる場合は、上記の金額から税額控除の額を差し引いてください。税額控除とは、上記で算出した所得税から一定の金額を控除するもので、配当控除や住宅ローン控除などがあります。

また、2037年までは所得税額の2.1%を復興特別所得税として納税する必要があります。

個人住民税

個人住民税は、1月1日時点で住んでいる地方自治体に支払う地方税です。前年の所得をもとに算出されます。基本的にすべての方が対象となりますが、所得が一定以下の場合など、非課税になるケースもあります。非課税になる具体的なラインは、各地方自治体の規定にもとづいて決まります。

個人住民税の税率は全国どこでも原則として同じで、区市町村民税が6%、道府県民税および都民税が4%の合計10%です。その他、均等割として区市町村民税3,500円、道府県民税および都民税1,500円の5,000円が加算されます。

ただし、地方自治体によっては多少金額が前後することがあります。

個人事業税

個人事業税は、法定業種に該当する事業を営む個人にかかる税金です。法定業種は多岐にわたり、業種ごとに税率が異なります。

なお、個人事業税は所得税のような国税ではなく、地方税のひとつで、都道府県に対して納付する税金です。下記は、法定業種と税率の一例です。

個人事業税の例

第1種事業(37業種):5%

物品販売業、製造業、電気供給業、運送業、飲食店業、広告業、遊技場業など

第2種事業(3業種):4%

畜産業、水産業、薪炭製造業

第3種事業(30業種):5%または3%

医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、理容業、クリーニング業など(5%)
あんまやマッサージ・はり・柔道整復など医業に類する事業、装蹄師業(3%)

法定業種に該当しない業種を営んでいる事業者については、事業税の納税は必要ありません。また、対象となる方には、例年8月に納付書が送られてきますので、納付をします。

事業所得の申告方法

個人事業主の事業所得は、所得税の確定申告によって申告をします。その際、事業所得の額を算出した根拠として、売上額やかかった必要経費の額、内訳などについても申告しなければいけません。

申告方法は、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。

青色申告

青色申告とは、原則として複式簿記など、正規の簿記の原則に則って日々の取引の記帳を行い、申告することです。損益計算書と貸借対照表で構成される「青色申告決算書」で申告を行います。

青色申告を行う事業者は、下記のようなメリットを得られます。

青色申告のメリット

  • 最大65万円の青色申告特別控除が利用できる(簡易的な帳簿で申告をする場合10万円、e-Taxまたは電子帳簿保存を行っていない事業者は55万円)
  • 純損失の繰越しと繰戻しができる
  • 5.5%までの貸倒引当金を必要経費にできる(金融業は3.3%)
  • 青色事業専従者給与を必要経費にできる
  • 30万円未満の固定資産を事業の用に供した場合一括で必要経費にできる

ただし、青色申告を行うためには、所轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を下記の期限までに提出する必要があります。希望する場合は早めに用意をしておきましょう。

青色申告承認申請書の提出期限

  • 新規開業の場合:事業を開始した日がその年の1月16日以降の場合は、その事業開始等の日から2か月以内。開業日が1月1日~1月15日の場合は、2か月以内ではなく、3月15日が提出期限。
  • 白色申告で申告を行っていた者が青色申告に切り替えたい場合:適用を受けたいの年の3月15日まで。

青色申告承認申請書の書き方については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

白色申告

白色申告では、青色申告決算書の代わりに収支内訳書を作成して申告を行います。青色申告の承認申請をしていない事業者は白色申告となります。

白色申告で求められる記帳方法や収支内訳書の作成は、青色申告ほど複雑ではありません。とはいえ、記帳は必要です。青色申告の10万円控除である簡易簿記での記帳と手間はそれほど変わりません。

さらに「やよいの青色申告 オンライン」などの申告アプリを使用すれば、簿記の知識がなくても、取引入力が行え、自動的に複式簿記での帳簿が作成されて、青色申告に必要な書類がかんたんに揃います。

そのため、青色申告承認申請書の提出が間に合わなかったなどの理由がなければ、青色申告をした方が、メリットが大きいでしょう。

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この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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