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扶養控除とは?扶養の要件や確定申告の方法、配偶者控除との違い

扶養控除は所得控除の一種で、申告すると所得税や住民税の節税につながります。個人事業主でも給与所得者でも、一定の要件を満たす扶養親族がいれば申告できますが、どのような親族が扶養親族と見なされるのでしょうか。

ここでは、扶養控除の適用を受けるための要件、年末調整や確定申告で扶養控除を申告する際の方法、配偶者控除との違い、扶養控除と児童手当の関係など、扶養控除に関する情報をわかりやすく解説していきます。

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扶養控除とは、扶養する親族がいる場合に申告できる所得控除

扶養控除は、確定申告年末調整の際に申告できる所得控除の1つです。親や子供、兄弟姉妹など、扶養する親族がいる場合に申告できます。また、配偶者の親や兄弟姉妹といった姻族を扶養の対象にすることも可能です。

なお、所得控除とは、所得税住民税の計算をする際、所得金額から一定の金額を差し引く制度です。所得控除で多くの金額を所得から差し引ければ、それだけ税金を少なくできます。所得控除は15種類あり、基本的に自己申告制です。適用を受けるには、確定申告や年末調整で、該当する控除を申告する必要があります。

扶養控除の対象となる親族の区分と金額

扶養控除の控除額は、控除対象扶養親族の年齢と人数に応じて決まります。控除対象扶養親族とは、扶養控除の対象となる親族のことです。控除対象扶養親族の要件を満たす親族がいる場合は、扶養控除の申告を行いましょう。

申告する際には、対象者が誰で、何歳なのかを明確にしなければなりません。なお、年齢は控除を受ける年の12月31日時点で判定します。

以下は、扶養控除の年齢別の区分と、それぞれの控除額です。

控除対象扶養親族の区分と扶養控除の金額

控除対象扶養親族の区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(16歳~18歳・23歳~69歳) 38万円
特定扶養親族(19~22歳) 63万円
老人扶養親族 同居老親等以外の者(70歳以上) 48万円
同居老親等(70歳以上) 58万円

15歳以下の子供は、扶養していたとしても扶養控除の対象にはなりません。0歳から15歳までは、扶養控除の代わりに児童手当が支給されます。

なお、2024年10月以降は16歳から18歳までの子供がいる世帯にも児童手当が支給されることになりました。それに伴い、16歳から18歳の控除対象扶養親族の控除は2026年以降縮小予定となっています。

控除対象親族の区分について、詳しく見ていきましょう。

一般の控除対象扶養親族

一般の控除対象扶養親族とは、16歳から18歳と23歳から69歳の控除対象扶養親族を指し、控除額は38万円です。特定扶養親族や老人扶養親族に該当しない扶養親族は、子供でも、親や兄弟姉妹などでも、関係性を問わず全員が一般の控除対象扶養親族です。

特定扶養親族

特定扶養親族は、控除を受ける年の12月31日時点で、19歳以上22歳以下の控除対象扶養親族です。特定扶養親族の控除額は、63万円になります。

老人扶養親族

老人扶養親族は、控除を受ける年の12月31日時点で、70歳以上の控除対象扶養親族です。同居しているか別居しているかによって、控除額が異なります。同居している場合は58万円、別居している場合は、48万円です。

なお、同居している老人扶養親族は「同居老親等」という名称で呼ばれますが、親以外の兄弟姉妹などでも対象です。ただし、別居の場合、生活費を送金しているなどの事実がなければ扶養控除の対象にはなりません。申告する際には、銀行振込の振込票や現金書留の写しなど、送金していることを証明できる書類を控えておくと安心です。

老人扶養親族の種類は以下のとおりです。

老人扶養親族の種類

  • 同居老親等以外の者:別居もしくは老人ホームなどに入居している
  • 同居老親等:同居している(長期入院している場合などは同居と見なされる)

扶養控除を適用した場合の控除額の例

控除対象扶養親族が複数人いる場合、実際に扶養控除の金額はどれくらいになるのでしょうか。例をあげて説明します。

控除対象扶養親族が複数いる家族の例

  • 父:会社員
  • 母:パートタイマー
  • 第1子:16歳
  • 第2子:14歳
  • 祖父(父の父・老人ホーム住まい):71歳
  • 祖母(父の母・同居):70歳

上記の家族の場合、控除対象扶養親族になるのは、第1子、祖父、祖母の3人です。配偶者は扶養控除の対象外、第2子は年齢が15歳以下であるため、どちらも控除対象扶養親族には含まれません。

この家族の扶養控除の合計額は以下のようになります。

控除対象扶養親族と控除額

控除対象扶養親族 区分 控除額
第1子 一般の控除対象扶養親族 38万円
祖父 同居老親等以外の老人扶養親族 48万円
祖母 同居老親等 58万円
扶養控除合計額 144万円

控除対象扶養親族となる要件

扶養控除の適用を受けるには、扶養する親族が控除対象扶養親族の要件を満たしていなければなりません。控除対象扶養親族とするための要件は、以下の5点です。

控除対象扶養親族とするための要件

  • 6親等内の血族および3親等内の姻族である(ただし、配偶者は該当しない)
  • 確定申告をする人と生計を一にしている
  • 年間の合計所得が48万円以下である
  • 青色申告者の事業専従者給与を受けておらず、白色申告者の事業専従者ではない
  • 控除を受ける年の12月31日の時点で16歳以上である

それぞれの要件の内容について、詳しく見ていきます。

配偶者以外の6親等内の血族および3親等内の姻族である

扶養控除の対象になる親族は、6親等内の血族および3親等内の姻族です。配偶者は該当しません。都道府県知事から養育を委託された、いわゆる里子や、市町村長から養護を委託された老人は含まれます。

6親等内の血族および3親等内の姻族とは、それぞれ以下を指します。

6親等内の血族

6親等内の血族とは、自分と血縁関係にある6親等までの親族です。自分の親や子供、兄弟姉妹、祖父母、叔父や叔母のひ孫が6親等内の血族で、控除対象扶養親族に含めることができます。血族である必要があるため、叔父や叔母の配偶者など血縁関係にない人物は該当しません。

3親等内の姻族

3親等内の姻族とは、配偶者と血縁関係にある3親等までの親族です。配偶者の親や祖父母、曾祖父母、叔父叔母、甥姪が3親等内の姻族で、控除対象親族に含めることができます。

確定申告をする人と生計を一にしている

控除対象扶養親族は、確定申告をする納税者と生計を一にしている必要があります。

生計を一にするとは、同じ家計で暮らしているということです。6親等内の血族や3親等内の姻族に該当していても、生計が別であれば扶養親族には該当しません。

弟がいる納税者を例に考えてみます。納税者は、この弟と同居していて、弟には収入がないため生活費の面倒を見ているという場合、生計を一にしているといえます。納税者が弟と別居している場合でも、弟の収入が一定の金額以下であり、仕送りをしていたり、余暇には実家での同居を常としていたりするのであれば、生計を一にしていると考えられるでしょう。

しかし、弟が別の世帯を持っていて独立した生活をしているのであれば、生計を一にしているとはいえません。弟の所得が扶養親族の要件である年間48万円以下でも、納税者が仕送りなどを行っておらず、生計を一にしている事実が認められなければ扶養控除の対象外となります。

年間の合計所得が48万円以下である

控除対象扶養親族になれるのは、年間の合計所得が48万円以下の人のみです。給与を受け取っている場合、年間の給与所得の計算で給与所得控除を適用できます。給与所得控除は給与の金額によって異なり、年収が162万5,000円までの場合の控除額は55万円です。そのため、アルバイトやパートなどの給与収入のみで、年収103万円以下であれば、年間の合計所得が48万円以下に該当します。

ただし、給与所得のほかに副業所得などがある場合、すべての所得の合計額が48万円以下でなければ控除対象親族には該当しません。

例えば、アルバイトの給与収入が100万円、副業のフードデリバリー報酬が30万円、副業の経費が5万円の場合、給与所得は「給与収入100万円-給与所得控除額55万円=45万円」です。一方、副業の所得は「報酬30万円-経費5万円=25万円」です。これは雑所得に該当します。両方を足すと、所得は「45万円+25万円=70万円」となり、48万円を超えています。この場合、控除対象扶養親族にはなりません。

上記の例が、大学生の子供の所得の合計額だった場合、親は子供を扶養親族として申告することができなくなります。扶養親族の申告をするためには、正確な所得の合計額を確認することが重要です。

青色申告の事業専従者給与を受けておらず、白色申告の事業専従者ではない

青色申告の事業専従者給与を受けている人や、白色申告の事業専従者になっている人は、扶養控除の対象になりません。

青色申告の事業専従者給与とは、青色申告者の事業を手伝っている親族や配偶者に支払った給与を、経費として計上できる制度です。青色申告の事業専従者として給与を受け取った人は、控除対象扶養親族にはなれません。

一方、白色申告者の事業を手伝った親族や配偶者がいる場合は、事業専従者控除を利用できます。これは、該当する人数に応じて一定の金額を控除できる制度です。白色申告の事業専従者控除の対象になっている人も、控除対象扶養親族の対象外です。

例えば、親の事業専従者として事業を手伝い、事業専従者給与を受け取っている19歳の子供がいるとします。事業専従者給与の金額が所得48万円以下に該当したとしても、親はこの子供を扶養控除の対象として申告することはできません。なお、19歳は特定扶養親族に該当するため、扶養控除の対象になった場合の控除額は63万円です。

控除を受ける年の12月31日の時点で16歳以上である

控除対象扶養親族として申告できる親族には年齢制限もあります。16歳以上であれば控除対象扶養親族に該当し、扶養控除の申告が可能です。

控除対象扶養親族が国外で暮らしている場合

控除対象扶養親族が国外で暮らしている非居住者である場合でも、扶養控除を適用できます。年齢制限は、国内に居住している場合と同様です。ただし、国外で暮らす親族が30歳以上70歳未満である場合、一定の要件を満たさなければ、控除対象扶養親族には該当しません。

なお、控除対象扶養親族が非居住者の場合、扶養控除の申告の際には「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要です。また、控除対象扶養親族が30歳から69歳の場合、扶養控除の適用を受けることができる要件と提出書類が異なります。

非居住者である控除対象扶養親族の年齢と申告に必要な書類

非居住者である控除対象扶養親族の年齢と要件 扶養控除の申告に必要な書類
16歳以上30歳未満または70歳以上 親族関係書類・送金関係書類
30歳から69歳 留学により国内に住所及び居所を有しなくなった 親族関係書類・送金関係書類および留学ビザなどの書類
障害がある 親族関係書類・送金関係書類
生活費または教育費として38万円以上の支払を受けている 親族関係書類・38万円送金書類
上記以外 控除の対象外

親族関係書類とは、戸籍の附票の写し、パスポートの写し、外国政府や地方公共団体が発行した書類など、非居住者が納税者の親族であることを証明する書類のことをいいます。

また、送金関係書類とは、金融機関が発行した書類またはその写しで、納税者が親族に送金したことを証明できる書類です。なお、38万円送金書類とは、送金関係書類のうち、送金した金額の合計が38万円以上であることを証明する送金書類のことをいいます。

配偶者控除・配偶者特別控除との違い

配偶者は、扶養控除を適用できませんが、配偶者控除や配偶者特別控除を適用できます。配偶者控除や配偶者特別控除は、要件を満たす配偶者がいる場合に利用できる控除です。納税者と生計を一にしており、収入が一定の金額以下でなければならない点は扶養控除と同じですが、対象者は配偶者のみです。

控除対象となるのは、民法上の配偶者に該当する人のうち、納税者と生計を一にしており、事業専従者になっておらず、所得が一定の金額以下の人です。所得金額が48万円以下であれば配偶者控除、48万円超133万円以下であれば配偶者特別控除の対象になります。

配偶者が給与所得を受けている場合の控除額は、それぞれ以下のとおりです。

給与所得者である配偶者の収入および納税者の所得別にみる配偶者控除・配偶者特別控除の金額

配偶者の収入 控除を受ける納税者本人の合計所得金額
(給与所得のみの場合の給与などの収入金額)
900万円以下
(1,095万円以下)
900万円超950万円以下
(1,095万円超1,145万円以下)
950万円超1,000万円以下
(1,145万円超1,195万円以下)
配偶者控除 103万円以下 38万円 26万円 13万円
配偶者特別控除 103万円超150万円以下 38万円 26万円 13万円
150万円超155万円以下 36万円 24万円 12万円
155万円超160万円以下 31万円 21万円 11万円
160万円超166.8万円未満 26万円 18万円 9万円
166.8万円以上175.2万円未満 21万円 14万円 7万円
175.2万円以上183.2万円未満 16万円 11万円 6万円
183.2万円以上190.4万円未満 11万円 8万円 4万円
190.4万円以上197.2万円未満 6万円 4万円 2万円
197.2万円以上201.6万円未満 3万円 2万円 1万円
201.6万円以上 0円 0円 0円

配偶者控除・配偶者特別控除については、以下の記事で解説しています。

税金と社会保険にかかわる年収の壁

扶養親族の年収について「年収の壁」という言葉があります。年収の壁とは、扶養親族の年収が該当の金額を超えると税金や社会保険料が生じる、あるいは高額になる境目を指す言葉です。年収の壁にはいくつかの種類があり、該当の壁を超えると、本人または家族の手取り収入が減少する可能性があります。

扶養家族が103万円、106万円、130万円、150万円の4つの壁を超えた場合について、それぞれ見ていきましょう。なお、この壁の金額は、扶養親族がパートやアルバイトなどの給与所得者の場合のみ該当します。個人事業主の場合は該当しません。

年収103万円の壁

扶養親族の年収が103万円を超えた場合、給与所得控除の55万を差し引いた所得金額が48万円を超えることになるため、控除対象扶養親族ではなくなります。

また、年収が103万円を超えると、扶養親族自身が支払う所得税も発生します。

年収106万の壁

扶養親族の勤務先の規模などによっては、年収が106万円を超えると、勤務先の社会保険に加入する必要があります。扶養者の健康保険の扶養から外れて、扶養されていた人自身の給与から社会保険料を徴収されるため、手取りが減る可能性が高くなります。ただし、学生は対象外です。

また、年収が106万円を超え、勤務先の規模などの一定の条件を満たした場合、国民年金ではなく勤務先の厚生年金保険に加入することになります。収入額によっては、勤務先が半額を負担してくれる厚生年金保険になることで、国民年金よりも支払う年金保険料が下がる可能性があるでしょう。

一方、扶養親族ではなく配偶者の場合は、保険料負担のない国民年金第3号被保険者から厚生年金保険の被保険者になるため、月々の手取りの減少幅は大きくなります。

年収130万の壁

扶養親族の年収が130万円を超えると、すべての人が社会保険の扶養から外れます。年収106万円の壁の対象にならなかった扶養親族も、自分自身で国民健康保険に加入しなければなりません。

年収150万円の壁

年収150万円の壁は、配偶者特別控除に関連する年収の金額です。配偶者特別控除とは、配偶者と納税者の収入によって控除額が変わる控除で、配偶者控除と併用はできません。

配偶者の年収が150万円を超えると、配偶者特別控除の控除額が満額よりも少なくなっていきますが、控除自体は配偶者の年収201万6,000円(所得133万円)まで対象です。なお、納税者の所得金額が1,000万円を超える場合は配偶者当別控除の対象外です。

社会保険上の扶養と税法上の扶養は基準が異なる

扶養控除は、所得税や住民税に関する制度です。一方、社会保険にも扶養のしくみがありますが、扶養の対象となる親族の考え方や収入の基準が異なります。扶養について考える際は、税法上の扶養なのか、社会保険の扶養なのかを明確にしておきましょう。

社会保険の扶養は、所得ではなく年収で判定します。また、同居か別居かによっても基準が変わります。

社会保険上の扶養に関する収入基準

  • 同居の場合:年収が130万円未満かつ被保険者(扶養する人)の年収の2分の1以下
  • 別居の場合:年収が130万円未満かつ保険者が援助する生活費よりも少ない

社会保険の扶養について判定の基準となる年収は、給与所得者であれば、勤務先から支給される年収の額のほか、老齢・障害・遺族年金などの公的年金、雇用保険の失業給付、健康保険の傷病手当金や出産手当金など所得税が課税されない収入があれば、その額も合算します。個人事業主の場合は、健康保険組合の規定に沿って判定を行います。

社会保険の扶養と税法上の扶養は、どちらか一方のみに該当することもあります。例えば、育児休業中の人は勤務先の社会保険に加入しているため、配偶者の社会保険の扶養には入れません。しかし、収入がないため、税法上の扶養には入ることができます。なお、育児休業給付金は非課税のため、税法上の扶養を判定する際の所得に含めません。

扶養控除の申告方法

扶養控除の申告は、年末調整または確定申告で行います。会社員やパート、アルバイト、派遣社員などの給与所得者は年末調整、それ以外の個人事業主などは確定申告で申告してください。

年末調整と確定申告、それぞれにおける扶養控除の申告方法は以下のとおりです。

給与所得者である会社員は年末調整を行う

給与所得者は、一般的には、10月から11月ごろに勤務先から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が配布されます。年末調整で扶養控除を申告する際は、この書類に必要事項を記入してください。

通常は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」という2枚の書類と併せて3枚、もしくは、翌年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と併せて4枚配布されます。

なお、年収が2,000万円を超える給与所得者は、年末調整の対象外です。翌年の給与から源泉徴収する所得税額を決めるために「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出は必要ですが、年末調整はできません。そのため、年収が2,000万円を超える給与所得者は、以下に説明する記載方法に沿って書類の記入と提出をしたうえで、確定申告を行ってください。

令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、扶養控除の申告をするための書類です。上部に給与支払者の名称や自分の氏名などを記載したのち、AからDまでの各区分と住民税に関する事項欄を記入しましょう。それぞれの書き方は以下のとおりです。


A 源泉控除対象配偶者

申告者本人の合計所得の見積額が900万円以下、配偶者の合計所得の見積額が95万円以下に該当する場合、「A 源泉控除対象配偶者」の欄に、配偶者の氏名や生年月日などを記載します。なお、これは、給与から源泉徴収される所得税額を求める際に必要な情報で、配偶者控除や配偶者特別控除の申告とは関係ありません。配偶者控除や配偶者特別控除については、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」で申告します。


B 控除対象扶養親族

「B 控除対象扶養親族」の欄は、扶養控除の申告を行う欄です。対象となる扶養親族の氏名、続柄、生年月日、個人番号、所得の見積額、特定扶養親族や同居老親等などに該当するか否かなどを記入します。

海外に住む非居住者の場合は満たすべき要件が増えるため、併せて申告が必要です。親族関係書類と送金関係書類または38万円送金書類、和訳文についても年末調整を行う事業者に提出しなければいけません。

C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生

「C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄は、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除の申告欄です。申告者本人、配偶者、扶養親族が障害者に該当する場合、または、申告者本人が寡婦やひとり親、勤労学生に該当する場合にチェックを付けて内訳を記載します。


D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等

「D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の欄は、自分の扶養には該当しないものの、ほかの所得者が控除を受ける扶養親族がいる場合に記入する欄です。

例えば、夫婦ともに会社員で、子供を夫の扶養親族として申告した場合、妻はこの欄に子供の氏名や年齢などを記入します。扶養控除の対象にはなりませんが、所得金額調整控除の対象になるかどうかの判定に利用されます。

なお、所得金額調整控除は、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」での申告が必要です。


住民税に関する事項

「16歳未満の扶養親族」「退職手当を有する配偶者・扶養親族」がいる場合は、「住民税に関する事項」の欄に記入してください。16歳未満の扶養親族は住民税の扶養控除についても対象外ですが、所得金額と扶養人数に応じて住民税が非課税になるケースがあるため、記入を求められます。所得税への影響はありません。

年末調整を行わない人は確定申告で申告する

年末調整を行わない個人事業主や、年末調整の対象外となる年収が2,000万円を超える人などが扶養控除の適用を受ける場合、確定申告を行います。確定申告書の第一表に控除額の合計、第二表に細かい内訳を記載して提出します。

それぞれの詳しい書き方は以下のとおりです。

令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書 第一表

令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書 第一表

確定申告書 第一表の「所得から差し引かれる金額」の「扶養控除」欄に、扶養控除の合計額を記入します。控除対象扶養親族が複数人いる場合は、控除金額の合計を記入する必要があります。間違いのないように、対象者それぞれの控除額を確認したうえで合計を記入してください。なお、扶養親族が障害者に該当する場合は障害者控除の対象にもなりますが、こちらは「勤労学生、障害者控除」欄で、記入場所が異なります。

「扶養控除」の区分欄は、控除対象扶養親族が国外に居住している場合にのみ記入します。給与所得者で、勤務先に「親族関係書類」や「送金関係書類」などの必要書類をすべて提出している人は「2」、提出していない人は「1」を記入してください。

確定申告書 第二表には、第一表の記入内容の内訳を記載します。

令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書 第二表

令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書 第二表

確定申告書 第二表は、用紙の真ん中よりやや下の「配偶者や親族に関する事項」に必要事項を記入します。それぞれの記入方法は以下のとおりです。


氏名、個人番号、続柄、生年月日

1行目は配偶者用の欄です。2行目以下に、扶養親族それぞれの氏名、個人番号、続柄、生年月日を記入します。

障害者

「障害者」の欄は、扶養親族が障害者または特別障害者に該当する場合に記入する欄です。該当する箇所に○を記入します。


国外居住

「国外居住」は、扶養親族が国外に居住している場合に記入する欄です。□の中に以下の区分から、あてはまる番号を記入します。また、国外に居住している親族について、年末調整で扶養控除の適用を受けている場合は「年調」欄に〇を記入してください。

国外に居住している扶養親族の区分

  • 1:16歳以上30歳未満、または70歳以上
  • 2:30歳以上70歳未満で、留学している
  • 3:30歳以上70歳未満で、障害者
  • 4:30歳以上70歳未満で、納税者が38万円以上の生活費または教育費を送金した実績がある
  • 5:それ以外(扶養控除の対象外)


住民税

「住民税」は、扶養親族の住民税に関する欄です。16歳未満の扶養親族の場合、「16」に○を記入します。また、扶養親族と別居している場合には「別居」に〇を記入します。


その他

「その他」の欄は扶養親族が、所得金額調整控除の要件の対象である場合に記入する欄です。以下をすべて満たす場合に○を記入します。

所得金額調整控除の要件

  • 申告する人が給与所得者で、年収が850万円を超える
  • 該当の扶養親族は、ほかの納税者の扶養親族または控除対象配偶者である
  • 該当の扶養親族は、申告する人の扶養控除や障害者控除の対象にならない扶養親族である
  • 該当の扶養親族が、特別障害者または23歳未満である

扶養控除がなくなる?児童手当との関連性

16歳から18歳までの子供に対する扶養控除は、2026年以降、縮小される見通しです。これは、令和6年度税制改正の大綱によって示された内容で、児童手当の所得制限撤廃や支給期間の延長を踏まえた措置です。令和6年度税制改正の大綱では、児童手当の拡充と扶養控除の縮小によって、子育て世帯に対する実質的な支援拡充と所得階層間の支援の平準化を図るとされています。

なお、2026年から控除額が引き下げられるのは所得税のみで、住民税は2027年度分から引き下げられる予定です。児童手当と扶養控除について、具体的な変更点を詳しく見ていきましょう。

児童手当の変更点

児童手当は、15歳までの児童を養育している人に対して支給される手当です。2024年10月以降、児童手当が拡充されました。

具体的な変更点は以下のとおりです。

(旧)2024年9月以前 (新)2024年10月以降
所得制限 保護者の所得制限あり(具体的な額は扶養人数により異なる) 所得制限なし
支給対象 15歳の誕生日後、最初の3月31日までの児童を養育している人 18歳の誕生日後、最初の3月31日までの児童を養育している人
第3子の算定に含める子供の年齢 第1子の18歳の誕生日後、最初の3月31日まで 第1子の22歳の誕生日後、最初の3月31日まで
支払月 2、6、10月の年3回 2、4、6、8、10、12月の年6回
支給額 3歳未満 一律1万5,000円 1万5,000円(第3子以降は3万円)
3歳以上小学校修了前 1万円(第3子以降1万5,000円) 1万円(第3子以降は3万円)
中学生 一律1万円
高校生 なし

児童手当の主な変更点として、所得制限の撤廃と支給期間の延長があげられます。これまで児童手当の対象外だった15歳から18歳の子供についても、支給対象になりました。

さらに、第3子の算定に含める子供の年齢も見直されています。児童手当は子供の人数が増えると金額が多くなりますが、従来の第3子の算定に含める子供の年齢は、18歳到達後の最初の年度末まででした。そのため、子供が3人いる家庭でも、第1子が18歳の誕生日後、最初の3月31日を過ぎると、第3子に対する加算がなくなってしまうという問題がありました。

2024年10月以降は、児童手当の対象でない子供であっても、22歳の誕生日後の年度末まで、実際に親が養育しているのであれば人数に含めるという制度に変更されています。実際に養育している子供がいるにもかかわらず加算が打ち切られる事態がなくなり、養育状況に応じた児童手当を受け取ることができます。

扶養控除と児童手当の関連性

2024年現在、15歳以下の児童は扶養控除の対象外ですが、これは、15歳までの児童に対する手当を創設した際に「所得控除から手当へ」という考え方があったためです。15歳までは児童手当、16歳からは扶養控除の対象とすることで、それぞれの形で養育者の支援を行う形になっています。そもそも児童手当は、子供の扶養控除と密接な関係があったといえます。

しかし、2024年10月以降、児童手当の対象年齢が18歳まで引き上げられることになりました。15歳から18歳までの子供を養育している世帯では、児童手当と扶養控除の両方を利用できることになります。ただし、2026年以降は所得税の扶養控除、2027年以降は住民税の扶養控除について、縮小される見通しです。

令和6年度税制改正の大綱では、16歳から18歳までの扶養親族に対する扶養控除の額をそれぞれ以下のとおり縮小するとしています。

16歳から18歳の子供を対象とする扶養控除額の縮小計画

現行の控除額 縮小後の控除額
所得税 38万円 25万円
住民税 33万円 12万円

現状、控除が全面的に廃止される見通しではありません。しかし、控除額が下がることで所得税や住民税の負担は増すと考えられています。控除額の縮小は、所得が多い人ほど影響が大きくなりますが、その一方で、児童手当の所得制限がなくなり、所得が多い人でも手当を受け取れるようになります。なお、児童手当による収入は非課税のため、所得税や住民税はかかりません。

扶養親族の所得を確認して、扶養控除の申告をしよう

扶養控除の申告をするためには、家族が控除対象扶養親族に該当するかどうかを判定しなければなりません。申告時期が近づいたら、年間の所得見込みを確認しておきましょう。併せて、控除対象となる扶養親族を見落とさないことも大切です。漏れなく申告することが、節税につながります。

やよいの青色申告 オンライン」や「やよいの白色申告 オンライン」を利用すれば、年間の売上や所得金額を簡単で正確に確認できるため、扶養控除の判定に役立ちます。また、申告者が個人事業主の場合、確定申告までをソフト上から行えるため、扶養控除の申告も容易です。スムーズな確定申告に、ぜひお役立てください。

よくあるご質問

扶養控除は年収103万円と130万円の場合どっちがお得ですか?

どちらがお得と回答するのは難しいですが、扶養控除を受ける方の年収が103万円以下と130万円以下のどちらの場合でもメリットが存在します。例えば、パートやアルバイトの給与での年収103万円以下の場合は所得税がかからないなどのメリットがありますが、年収130万円以下の場合には世帯年収が増えるなどのメリットがあるのです。年収が125万円の場合にかかる所得税は10,000円程度なので、このケースでは年収103万円の場合より世帯年収が多くなります。所得税を支払いたくない方は年収を103万円以下に、世帯年収を増やしたい方は年収を130万円以下に抑えると良いでしょう。

大学生の扶養控除はいくらですか?

一般的な大学生の年齢である19〜22歳の扶養控除額は1人あたり63万円です。ただし大学生で扶養控除に入るためには、アルバイトなどで得た年収が103万円以下でなければいけません。103万円を超えると扶養控除が外れ、親の税負担が増えることになります。大学生を扶養控除に入れたい場合は年収を103万円以下に抑えるようにしましょう。なお、扶養控除は扶養する納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えても適用が受けられます。

年齢別の扶養控除の金額についてはこちら

23歳以上の子供の扶養控除はいくらですか?

23歳から69歳 の扶養控除額は38万円です。23歳未満の場合の扶養控除額は1人あたり63万円なので、23歳を超えると大きく扶養控除額が減ります。23歳以上の子供が扶養控除を受けるためには、アルバイトなどの給与収入が103万円以下でなければいけないので注意しましょう。103万円を超えた場合には扶養控除が適用されなくなり、親の税負担が増えます。また、税制改正により、2023年1月1日以降、非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用について見直されました。30歳以上70歳未満の非居住者で要件に当てはまる場合は扶養控除の対象となる扶養親族の範囲から除外されます。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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